| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ランス ~another story~

作者:じーくw
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第3章 リーザス陥落
  第48話 ヘルマンvsカスタム 最終戦開幕



~カスタムの町 周辺・荒野~


 ヘルマン兵達は、カスタムの前の荒野を突き進む。町の姿はまだ小さい。だが、確実に進んできている。ほんの数分、十数分でたどり着けるだろう。

「よし、隊列、陣形は《鋒矢》で行くぞ。弓兵は後列に配置しろ」
『はっ!』

 スプルアンスの言葉に皆返事はするが……、ヘルマン軍の兵士達は皆そこまで気合が入っていなかった。事前情報で、カスタムの頭脳であるマリア・カスタードが捕まっている事実もそれを拍車をかけているのだろう。

「ふん。まぁ、気持ちは判らんでもないがな。とっとと済ませて、町の女どもを……ぐふふ」

 スプルアンスもニヤけていた。
 上司であるヘンダーソンは、恐らく今頃は、あのマリア・カスケードとお楽しみ中だろう。それを思うと、俄然に自分もと思う。違う意味でやる気が出てくると言うものだろう。

 そして、何より彼はこれまでこんな最前線に来る事など殆ど無かったが、今回は喜々として参加している。……勿論権限を盛大に使ってだった。

「お前ら! 今日こそは、カスタムを堕とす! 女は生捕り、男どもは皆殺しだ!! 我らに逆った見せしめにしてやるのだ!」
『うおお!!!』

 毛嫌いしている相手の掛け声でも、盛大に鬨を上げるヘルマン軍の面々。それは悲しきかな、男の性と言う事だろう。ただ……連中は知らない。そのカスタムの門を潜るために、カスタムの中へ入る為に。
 
 最大にして最悪の関門が待っていると言う事を。相手も過去4度の進撃の中でも嘗てない程、気合が入っていると言う事を。

「へっ……、リーザス軍の連中は可哀想だよなぁ、こ~んな楽しみも判らずただただ、俺らの為だけに戦い続ける事しかできねえんだから」

弓兵である最後尾にいたティターヌは その更に後ろに控えているリーザス兵達を見て薄ら笑みを浮かべていた。

 その背後に並んでいるのは虚ろな表情をした兵士達、いろんな色の鎧を纏っており、一貫性が無い。

 そう、彼が言うようにその兵士達は、リーザスの洗脳兵。青、白、赤、黒と様々な色をしている理由は、統一されていないのではなく、各部隊からてきとうに合わせたからなのだ。

 ただ、命令通りに動く兵。駒である彼らだから 別にそこまでしっかりと統一する必要はないのだ。

「ははっ、これが かの有名なリーザスの総大将。一軍のレリューコフ様の好敵手とまで言われている男とはね。はは、哀れだなぁ」

 虚ろのままに、リーザス全軍の最前列に配備している隻眼の男。
 この男こそ、リーザス軍総大将にして、黒の軍の将軍である。洗脳されてはいるが、本能からなのだろうか、最前列にまで、進んで出てきていたのだ。それが、リーザスの為にならない行為なのは、憐れで仕方ないとも言えるだろう。軍人としての性だけが、残されている様だった。

 願わくば、醜態をさらし続けるのなら 殺してくれとさえ、思っているだろう。行動にはできないが、その姿にはそう、想像してしまう様な雰囲気を醸し出していた。

「………」
「安心しろよ! オレ達がお前らの分まで、しっかりと楽しんでやるからよぉっ!!」

 何度も頭を殴りながらそう言うティターヌ。それは、例え洗脳されて自我が無くても……、無念だろう。


 そして、その15分後。


 ヘルマン軍は、カスタムの入口付近にまで侵攻した。
 これまでであれば、実戦部隊が前線に立ち、砲撃部隊と魔法部隊が援護をしながら連携を取りつつ防衛を図っていた筈だが。

「くくく、それ程マリア・カスケードが抜けた穴はでかいと見えるな。烏合の衆とはまさにこの事か」

 先頭の男は、剣を担ぎながらそう言っていた。
 流石に人数的にも、カスタムの町に一度に同時に全部隊が侵攻する事は出来ない。だが、それでも何ら問題ないと思っている様だ。

「ん? いや、誰かいるぞ?」

 男の1人が気づいた。町の入口に佇んでいる者がいる。どうやら、1人の様だ。

「………」

 男は、腕を組んで目をつむっている様だ。腰には刀剣を携えている様だが。

「なんだ? 小僧。たった1人の門番のつもりなのか?」
「ぎゃははは! こんなガキ1人に見張りを立てるなんざ、本当に参ってるみたいだなぁ? カスタムの連中は」

 ニヤニヤとうすら笑みを浮かべ、近づいてくる2人。そして、後方にいる連中も皆 笑いを浮かべていた。

 たった1人で何が出来るのかと。

 だが……、この2人は言わなくて良かった言葉があった。

 本当の作戦は、この男の奇襲から始まり、混乱している間に一気に攻撃加えて畳み掛けると言うもの。まさか、たった1人で、攻撃をしてくるとは思わないだろうと言うのを逆手にとって。

 男達の言葉(ガキ)のおかげ? もあり、剣に込める殺気を一段階増していたのだ。

「ん~、ビビっちまったか~?」
「ちょっとここに来るのは、間違えちゃったなぁ? ぼーや」

 更に一歩、踏み込んだその時だ。2人の頭が宙に飛んだ。まるで、紙切れの様に胴から首が離れたのだ。

『………は?』

 当然、その光景を見た者達は唖然とする。
 当然だろう。さっきまでそこに合った筈の物が無くなったのだから。首から上が、有る筈、有るべきモノが無くなったのだから。

「煉獄・天照」

 いつの間にか、敵陣深くにまで移動していた男がそう言った瞬間。場が光に包まれた。

「うわあああっ!!」
「な、なんだぁぁぁっ!??」
「ぐ、め、目がぁぁぁ!!」

 突然の閃光に、本能的にかがみ込んでしまう面々。突如、強烈な光を目の当たりにしてしまえば、本能的に身を丸めてしまうのは仕方が無い事なのだ。それに、想定外の事が連続して起これば尚更だった。

「まぁ……これが夜だったら、もっと効果はあっただろうがな! これで十分」

 その声と同時に、剣を振るって、斬撃を飛ばした。前方にいたヘルマン兵数名をなぎ倒した。


「よしっ ユーリからの合図だ!!行くぞ!皆っ!!」
『うおおおおおおっっ!!!!』


 光が迸った瞬間に、街中から鬨が響き渡ってきた。

「うわぁぁぁぁ!! な、なんだぁぁ!!」
「てりゃああっ!! ですかねーー!!」
「ぬおおっ!?」
「まだまだ行くですよ~~!! うりゃああっ!!」
「ぎゃああっ!!」

 トマトも一気に飛び出し、敵を斬りつける。
 今回の成功報酬が彼女にとって、魅力的すぎる。だからか……本当に彼女はパワーアップをしているかのような力が出ていた。重装備のヘルマン兵相手に力で押し切っているのだから。
 その剣?は荒削りだが、見る人がみれば間違いなくこう思う事だろう。

『何故、アイテム屋の娘なんだ?』と。


「火爆破ッ!!」
「ぎゃあああっっ!!!」
「うわぁぁぁ!!」
「いくらでもかかって来なさい!! ファイヤーレーザー!!」
「ぎえええっ!!」

 志津香も、炎の魔法で周囲を吹き飛ばした。
 白色破壊光線を使えれば、この辺り一面の敵を一掃出来る可能性があるのだが、連日の無理が、祟っている為か、使用する事は不可だったのだ。ユーリや町の皆のおかげもあり多少なりとも休む?事は出来た様だが、自身の中で最大級の魔法を撃ち放てる程までのコンディションでは無かったのだ。
 だが、それでも最後まで戦うと誓っている。

 そして、不思議と負ける気もサラサラしない。


――それは、ランスを信じているから?……NO。
――一緒に戦ってくれているあの人がいるから?……YES。


 志津香は決して口には出さないが、間違いなく後者なのである。

「くらえっ!!」
「ぐえっ!!」

 ランも同じ気持ちだった。
 剣を振るい、そして追撃の魔法を撃ち放つ。魔法剣士ならではの技量、技術だろう。この町に償う為に……、そして何よりもこれが終わったあとの報酬の為に!

「(わ、私……、今回は、がんばれてる? きっと、がんばれてるよねっ!?)」

 ランは、何故だかそう自問自答を頭の中で繰り返していた。

 何故だろうか……?

 それは、恐らくかの世界でのもうひとりの自分の扱いが……あれなのだと言う事もあるだろう。その詳細をランが知るよしも無い事だが……、ランは必死に剣を振い、魔法を放っていった。

「くぅ、漸く目が慣れて……がっ!!」
「……させないわ」

 目を擦り、敵に攻撃をしようとした兵の首をかっ切るのはかなみ。忍者であるかなみは、持ち前の機動力を活かし、素早く、そして確実に敵を殲滅していったのだ。勿論、他のメンバー同様に、この戦いの先にあるものが目当て……だろう。色んな言い訳を考えて、かなみは、くないを、忍者刀を握る手に力を入れていた。あまり入り過ぎないように……とも思えるが 今は多分何を言っても無駄だろう。

 格好よく倒しているけど……、頭の中には妄想があるのだから。

「(ユーリさん……、絶対に勝ちましょう! そ、そして……// わぁ! 今は考えない考えない!! 邪気、邪気退散っ!!)」

 かなみは、何故か必死に十字を切っていた。

「オレらを舐めんじゃねえぞ!!」
「ぐああっ!!」

 ミリも、ランと共に前衛として応戦をしていた。
 だが、以前までのキレは見られない。時折、口元を手で押さえ、咳込を必死に抑えている姿もあった。

「お姉ちゃん!?」
「大丈夫だ。ミル! ほら、よそ見するなよ!」
「う、うんっ! いっけー幻獣さんっ!!」

 ミリの傍にいるのは小さな魔女、ミル・ヨークス。
 連戦に次ぐ連戦、そして彼女の幼さも相余り、疲労が溜まり今回は休養を、と思っていたのだが、、カスタムの最終決戦だから、一緒にと聞かなかったのだ。最後の最後まで一緒に戦う。その想いはミルも強く持っている。嘗て、四魔女の1人だった。その責務を幼いながらも判っていたのだ。

 ……だが、暗雲は 立ち込める。ミルの事よりも、もっと重大な秘密を内包しているのはミリだった。

「(……アイツの前では気を付けないとな。普段は超が付く鈍感な癖に、こう言うのだけは人一倍鋭いからな)」

 ミリは、心に秘めたモノを決して表へと出さず、ミルのサポートを受けつつ、ヘルマン兵達を屠っていった。それが吉とでるか、凶とでるのかは、まだ判らない。

「チューリップ!! 撃てぇぇ!!」
「マリアさんの分も暴れるよ!! うりゃああっ!!」
「うぎゃああっ!!!」

 マリアの部隊、チューリップ砲撃部隊も一斉砲撃をする。その火力は、ヘルマンの兵達をまとめて吹き飛ばしたのだ。

 そして、カスタムのメンバーの奇襲により、敵の第一陣の殆どを殲滅している。

 だが、全兵力から考えたら、一割にも満たないだろう。そして、こちら側を、完全に舐めきっている状態で乗り込んできたのだからこそ、カスタム側がこうも上手くいったっとも思える。だが、敵側には混乱していた。動揺も隠せないのだ。

「ば、馬鹿なっ! な、なんでこんな事が? もう、こいつらは戦えないって……、は、話がちがうじゃ……」

 仲間があっさりと倒されていく光景を見て、驚き立ち竦んでいた。一割程とは言え、カスタムの防衛軍よりは確実に多い。その圧倒的な数の差をモノともしないその力に驚きも隠せない。……ただ、蹂躙するだけだと言われていた筈なのに。どちらが優勢なのかは、今目の前で行われている戦いを見れば一目瞭然なのだから。

「戦えない? 馬鹿言うな……」
「ひっ!!」

 その背後には、男が立っていた。その声には怒気が孕んでいる。

「売ってきたのは、お前らだと聞いているぞ。……買わせてもらおう。ここからが戦争の本番だ!」

 ユーリのその一声と共に、男の身体が吹き飛んだ。その先には第二、第三陣と控えている。

「カスタムは、大切な人達の大切な場所だ。絶対に落させない。……絶対にな。命が要らん者からかかってこい!」

 剣の切っ先をその軍団に向け、そう吠えるユーリ。
 その姿を見たら、さっきまでの印象が消え失せてしまっていた。敵側からすれば、その殺気を向けられたら、まるで悪鬼が人の姿をしていると思えてしまうのだろう。その恐怖からか、後ずさりをしてしまう兵も出てしまっており、当初の勢いも露と消えている。
 そんな中、スプルアンスは激を飛ばした。

「ぐっ! 逃げるな! 馬鹿者!! 所詮は数ではこちらが圧倒している!! 数で潰せ! 今回率いている数は、今までの倍以上なのだ! こちらが負ける事は無い!!」

 前に出もせずにそう言う豚。説得力の欠片も無いと思われるが……、彼には勿論秘策もあった。

「リーザス兵共!! 出てこい!! 奴らを殺せっ!!」

 そう、洗脳兵を使う事だった。

 その兵力は4000。

 洗脳されている為、恐れること無くただ、命令に忠実に従う駒。乱れる事無く統率されたまま、その虚ろな兵士たちが侵攻してきた。

「……ここからが本番だ。と言いたげだな。間違いなさそうだが」

 ユーリは、相手を見てそう呟く。ぱっと見だが、あの軍団の中にも相応の手練が紛れている事に直ぐに気がついた。一朝一夕で、出来る様なモノではないのを持っている事を感じ取ったからだ。

「……こんな状況じゃなかったら、もっと違った形で戦いたかったな」

 ユーリはそう言うと、剣の柄を握る力を上げていた。先頭にいるのは、隻眼の老兵。だが、歴戦の猛者であろう風格を醸し出している。

 間違いなく強者だ。

「ランス。さっさと洗脳を解けよ。今回の一件。この彼らこそが リーザス解放の要なんだからな」

 ユーリは、ラジールで戦っているであろう男の名前をつぶやいていた。洗脳されている兵士は約4000名。彼らが戦力に加われば解放の可能性も高くなるからだ。

 そして、洗脳されている筈なのに、周りの男たちも、この隻眼の老兵に先陣を明け渡している。その隻眼の老兵に続き、もうひとり……ひとりと現れた。横に並んで立つ姿、堂に入っていると言えるだろう。

「ば、バレス様っ! そ、それにエクス様……、アスカちゃんまでっ!」

 かなみが驚きの声を上げていた。
 彼女が《上》として、見ている以上彼らはどうやら、将の冠を持っている猛者なのだろう。明らかに少女も紛れているが、見てくれで侮るでなかれ……。感じられる威圧感は、ヘルマンの兵とは比べ物にならない。……こんな幼子をも洗脳するヘルマン側に不快感が増したのは言うまでもない事だろう。

「……全員、あの2人には手を出すな。オレが相手をする。それ以外を頼む」

 第一陣を粗方倒し終えたカスタムの面々もユーリの傍にまで駆けつけていた。

 明らかに身に纏うオーラが違うのは2人いる。……恐らくはカスタムの皆には荷が重い相手だろう。

「ユーリさん……」
「大丈夫かよ……? 2人もいるぞ。それも相当出来るヤツだ。見ただけで判る」
「ああ、ミリは指揮を取りながら他のヘルマン兵達を頼む。……難しいと思うが、リーザス側の兵士は成るべく殺さない様にしてくれ」
「ああ、善処する。オレ達も殺人狂って訳じゃないからな」

 ミリはウインクすると、ユーリから離れた。戦闘を邪魔しないためにだ。

 そして、もうひとりの強者。

 この少女は、武器が杖なのを見ると恐らくは魔法を使う相手だろう。

「ユーリさん……アスカちゃんは、紫の軍。魔法部隊の将軍です」
「ああ……。大体判ったよ。見た感じは幼子。だが、かなり出来そうだ。……志津香、あの子を頼めるか? なるべく傷つけるな、と言いたいが」
「任せて……」

 志津香の表情も強ばっていた。
 幼い相手だ。だが恐らくだが、相手の方が格上だろう。魔法技能に関しては負けない自信は志津香にあったが 才能レベル的には相手が上だと言う事は直感した。

「軽くふん縛って悪さが出来ない様にしてあげるわ」
「……虐めるなよ?」
「誰がそんな事するのよ! 集中しなさい!」
「はいはい」
「はいは、一回!」
「はーい」

 こんな場面でも、こう言うやり取りが出来るのは流石と言えるだろう。それだけ信頼していると言える。

「かなみ……、志津香をフォローしてあげてくれ。身内と戦うのは気が滅入ると思うが、もう少しの辛抱だ」
「わかりました。お任せ下さい」

 かなみは、静かに頷くと、素早く移動していった。アスカの力の源は彼女が被っている着ぐるみにある。それを志津香に教えた。

「なるほど。噂程度で知ってたけど、本当だったのね。あの性悪魔女、《シゼル》の呪いを受けたって言うのは」
「はい……、あの着ぐるみ、チャカ様とアスカちゃんを引き剥がすことが出来たらこちらの勝ちです」
「判ったわ。……かなみ、私に敬語は必要ないわよ。私たちは共に戦う仲間なんだから。力……貸して」
「あ……うんっ!判った、任せて志津香っ!」

 かなみは強く頷くと、志津香と共に戦闘態勢に入っていった。

「………」
「………」

 2人の猛者。
 バレスとエクスは殆ど同時にユーリに襲いかかってくる。太刀筋、そしてその一撃の重さ。どれをとっても一級品である事に疑いはない。

「(斬撃が重いと感じるのは久しぶりだな。魔法が重いと思った事は極最近にあったが……)」

 ユーリは、2人の剣を捌きながらそう考えていた。
 洗脳されているせいか、太刀筋や威力は一流でも、如何せん通常技の連発である事に変わりはない。だからこそ、ひとりでも十分に受ける事が出来るのだ。

 ユーリは合間に他のメンバーの方を見た。

 最初と違って、所々で傷を負ったりしている者もいるが、戦闘不能者はまだ出ていないようだ。ヘルマンの兵達よりも明らかに士気が高いカスタム防衛軍。数のハンデをものともしない戦いぶりだった。……影に隠れながら、回復をしていってくれているロゼのおかげもあるだろう。

「さぁ! 気張りなさいよ! 全ては、金券、彼とのデート券、そして、意中の彼とのSE○券の為に!!」
『ーーーーっっ!!!』

 ロゼの滅茶苦茶の発言は、この修羅の場でも健在だった様だ。まぁ……本当に危険な時はそんなふざけたりせずに回復役に徹したりしてくれると信じよう。

「何言ってんだ! 死ねえ!!」

 一瞬の隙を付き、影から飛び出したヘルマン兵がロゼに刃を向けるが、それが届くことは無かった。

「ロゼ様に何するだ!」
「あ、あくまぁっ?? ぎゃあああっ!!」

 あの一瞬で、ロゼはダ・ゲイルを召喚していたのだ。……召喚技能のスキルを持ち合わせているかの様な速度だった。

「ふっふ~ん! この神に仕えるシスターロゼを殺そうなんて、なんて罰当たりな兵隊さんなのかしら?地獄に落ちるわよ?」

 神に仕えている者が悪魔なんか使うのか、とそれは、敵味方問わず突っ込みたくなる様な光景だった。

「なんですとーー!! そんな特典もついてくるのですかねーー!! それは先着何名までですかねーー!!」
「ゆ、ゆーりさんと、ゆぅりさんと……」
「おお、成る程な。その手があったか。ならあの薬とか使えるな。あれも、これも」
「こらぁぁ!! あんた達っ!! 集中しなさいっ!! かなみも、ぼけっとしないでっ!!」
「は、はうっ……!! う、うん。(ゆ……りさんと……せせ、せっく……///っっ~~///)」

 一気に騒がしくなるカスタムの面々。こればかりには、ヘルマン側も面食らってしまっていた様だ。

「こっちは真剣に凌ぎ削ってるってのに……あんの馬鹿」
「……」
「……」

 バレスとエクスの剣を捌きながら苦笑いをするユーリだった。ただ、ロゼを含め、カスタムの皆は本当に何処か頼りがいもあるとも思えている様だった。











~ラジールの町 町長の屋敷~


ランス達は必死に屋敷内を捜索していた。

「ランス様、本棚です」
「ふん。しけてやがるな。エロ本の一冊も無いではないか」

 ……そして更に必死に捜索を続けていく。

「ランス様、戸棚があります。ひょっとしたら、何か手がかりがあるかもしれません。調べますか?」
「面倒だからいい」
 
 ……必死に、以下略。

「ランス様、ただの花瓶の様ですね。綺麗なお花が生けてあります。……ほんと、綺麗なお花ですね。今度私たちの家にも飾りませんか?」
「飾るのは構わん。が、買ってきてはいけないぞ。んなもんは、予算の無駄使いだ。花などその辺に生えてるのを盗ってくれば良いのだ」
「うぅ……、ランス様、漢字が盗むになってます……」
「当然だろう? オレ様が盗ったとしてもそれは全て正しくなるのだ!」

 ……必s以下略。

「……今は戦争中だぞ! 女にかまけていてどうするんだ!」
「はは、モテない男の僻みだな。違いない」
「うるせー! どーせ、オレには彼女のひとりさえいねえよ!お前なんかにオレの気持ちが分かってたまるか!」
「うひひ~、可哀想になぁ~。こ~んな事も出来るのだぞ~?女がいれば」
「ひんひん……」

 ……。
 兎も角、いつも通りのランスワールドが展開されていた。ツッコミ役であり、操縦役でもあり、ケンカ仲間役……何個役があるんだ?とツッコミたく成る程、役のあるユーリが不在なのもあるだろうから、あまり捗っていない様だ。

 シィルも天然が入っている所もあるから、なかなか難しそうだ。そして、捜索?の中メイドに出会うランス。勿論、イヤらしい目つきをしていた。

「あっ……、すみません。そ、その 休んでいたわけでは……、お、お許し下さい」
「お、おう……?」

 ランスはいやらしい顔をしていて、あわよくば色々としてやろうと思っていたのだが、思ってもなかった言葉が返ってきた為、出鼻をくじかれてしまった。

「あ……、初めての方 ですよね……? すみません、すぐに支度を……」

 ランスと目を合わせずに、慌ててそう言い残すと、メイドの彼女はベッドメイクを始めた。

「ランス様……?」
「わからん。……それにしても、なんか匂うな、この部屋は」
「う……、そう、ですね。少し……」

 ずっと締め切っていたのだろう。そして 鼻の奥を突く様な嫌な匂いがする。そして、部屋の中もよく見てみると、ティッシュが散乱し、床にも染みが多数ある。極めつけは。

「ん、あそこには使用済みのゴムみたいなものもあるな。……っておい」
「あ、あの、お待たせしました。とりあえず、ベッドだけは用意できましたので……、お一人ですか? それとも、そちらの方も……」
「えっ? わ、私ですか? え、えと……きゃうっ!」

 話が違った方向へいってる事に流石のランスも気づいた様だ。そして、女の子を抱く事に躊躇などする筈もないのだが、訊くべき事があった。

「まてまて、一体何の話なのだ? それに、シィル。こんな事で戸惑うんじゃない」
「ひんひん……」

 ランスは、最後にもう一発拳骨を落とすと、メイドの女の子に向き直った。

「ええと、その……ヘルマン軍の方、ですよね?」
「違う違う。オレ様はランス様だ。あんなデカいだけのイモ野郎どもと一緒にするな」
「え……? で、でも……そのお洋服は……」

 メイドの女の子は戸惑いつつも、指をさしてそういった。 確かにランス達が身に付けているのは、ヘルマン軍の軍服。あのゴツく、何よりもデカい鎧ではなく、弓兵が身に付けている比較的軽装の服だ。

「これは、ヘルマン軍司令本部に潜入するために、このオレ様のナイス、作戦で 奪って着ているのだ」
「ら、ランス様、言っちゃっていいんですか? それに、この服はユーリさんの……きゃうっっ!」
「ふん! 馬鹿者アイツはオレ様の下僕なのだから、オレ様の活躍に変換されるのだ! それに、この子にばらす位問題ない。 それで、君は?」

 話の内容を把握する事が出来ない女の子は、戸惑いつつも、ランスに訊かれた為、頭を下げて答える。

「あ、失礼しました。私は、《ミーキル・デパ・ラジール》と申します」
「ほう、ミーキルちゃんね」
「え、ラジールって、この都市の名前と一緒ですね?」
「はい…… 父は都市町でした。ですが、ヘルマン軍の侵攻を防ごうと前線に出て……それで……」

 そこから先の言葉はミーキルは口を噤んだ。……どうなってしまったのかは、明らかだった。シィルも察した様で、慌てて頭を下げる。

「……ご、ごめんなさい」
「えい、こんな時ですから……、珍しい話では……」

 もう、涙も出ないのだろう。そんな顔で必死に笑顔だけは作ろうとしていた。

「それで、捕まってこんな事、されているのか?」
「は、い。……ラジールには、あまり酷い事をしないでください、とお願いして、その対価として……」 
「ふむふむ。ってことは、ヘルマン軍に、こーんな事、されちゃっていた訳だ」

 ランスは、ミーキルを抱き寄せた。すっぽりと収まるその小さな体。そして、僅かに震えているのも可愛らしい、とランスは思う。

「あっ……、そ、その。どうぞ……」

 ミーキルも抵抗らしい抵抗はしなかった。最初はヘルマン軍とは違うと訊いたが、どちらでも同じ事だったから。……拒むと言う選択肢は自分自身にはないのだから。そして 最初こそ、手は出さなかったのだが、やはり、そこはランスだ。ランスは鼻の下を伸ばしながら手を伸ばそうとするが。シィルが服の裾を掴んだ。

「ランス様……可哀想ですよ。ヘルマンの人たちに酷い事をされて……それに、カスタムの皆だって、今頃必死に……」
「ふん! 奴隷の癖に、オレ様に指図をするんじゃあない!」
「ひんひん……」
「……ケチがついたな。今日は抱かん」
「え……?」

 ランスは、流石にシィルの言葉で 少しは心に響いたのか、良心が少しは残っていたのかは判らないが、ミーキルを離した。

「というわけで、ミーキルちゃんと楽しむのは、また後だ」
「あ、は、はい…… えと、それで、ランスさんたちは、こちらに何をしに……?」

 ミーキルは 初めての事だったから、困惑をしていたのだが、この場所に来る以上、何かあるのだろう、と話を訊く事にした。

「ん? おう、サファイアってヤツを探してるんだが、見た事ないか?」
「サファイア……、見た事は、ないですけど、隊長の人達が、話してたのを、訊きました」
「えっ? 本当ですか! 何処にいるんです?」

 この屋敷を調べはじめて、初めて情報らしい情報を得て、シィルは喜んだ。

「あ、はい。ええと、たしか、地上灯台と……。場所は、ラジールの郊外近くにある遺跡です。街中からでも見えます」
「がははは! よーし! でかしたぞ、ミーキルちゃん。よし、早速向かうぞ!」
「ひゃっ……!?」

 ミーキルの頭をぐりぐり~っと撫でると、ランスはすぐに身を翻した。撫でられたのなど、一体いつ以来、だろうか、と思ったミーキルだったが、直ぐに聞き返した。

「あの、ランスさん。あなたは一体何者、で……」
「オレ様は、英雄。超英雄ランス様だ。見てろ、ミーキルちゃん。ラジールから直ぐにヘルマン軍は消えるぞ! がはは。もう、既にカスタムへ大分行ってる様だから 少なくなってるが、完全に0になるぞ!」
「………!! あっ……カスタムの人達は、今日総攻撃を受けると……訊いて……」
「がははは。カスタムなら、問題なしだ。オレ様の女たちがいるし、下僕ショタガキが 手足の如く働いている。ヘルマン如きに破れる筈がない」

 ランスは、自信満々にそう言っていた。それを見て、シィルはやっぱり思ってしまう。確かにカスタムの皆はとても強い。……何度も侵攻を退けてきた所を見れば明らかだ。だけど、ランスが言っているのはそこだけではない。 この大規模な戦いだと言うのに、ランスの口からは 1個人の事を言っているのだから。

「そうですね! ランス様も、ユーリさんの事信じてますものねっ! 本当にs“ぽかっ!”いたぁっ!」
「誰がだ、コラ! そんなんじゃない。あの戦闘狂から戦いを取ったら、ただのガキしか残らんではないか」
「ひんひん…… で、でも 戦いに関しては……」
「オレ様の下僕に貧弱者はおらんと言うだけだ。馬鹿者!」
「い、痛い痛いっ! ら、ランス様ぁ……」

 シィルを乱暴に扱っているランス。だけど、嫌な感じは一切シィルには無かった。寧ろ自然な感じなんだ、とミーキルは思っていた。ヘルマン軍が女性に対する接し方とは全く違う。

「(こんな……、大胆にヘルマン軍の本拠地に乗り込んでくる、凄い人……なのに……)……ぷっ。ヘンなの……くすっ、くすくす……」

 ミーキルは 久しぶりに、笑う事が出来た気分だった。心から 笑う事が。それ程までに、この2人のやり取りには安らぎを感じる事が出来た様だった。

「あ、コラ! シィルのせいで ミーキルちゃんに笑われたではないか」
「ひんひん……」
「くすくすっ……、ご、ごめんなさいっ……あは、あはははは……」

 ランスは、その笑顔を見て思う。

「(ふむ、怯えた顔も、何処かそそるというものだが、笑う顔もまた良いと言うものだ。世界の財産である女の子はこうでなければな)」

 ミーキルの笑顔につられて、シィルも笑い合っている。笑顔は笑顔を呼ぶものだから。

 ランスは、とりあえず目的地がはっきりとした、と言う訳だから。

「では、さっさと その地上灯台とやらに、行くぞ。シィル」
「あ、はい。ランス様」
「いってらっしゃいませ。ランスさん。シィルさん」
「おう、任せろ」

 ぺこりと頭を下げたミーキルに見送られ、ランスとシィルは部屋を出て行った。

 そして、屋敷を出ようとした道中の事。
 
「む?」

 ランスがふと見た廊下の先、部屋の扉の前では、兵士が1人ぽつんと立っており、何処か苛立ちを見せているようだった。

「くそ……、オレも戦争に志願したというのに、何でこんな所で……」
「なんだ? そんなに戦争に参加したかったのか?」

 ランスは普通に聞いていた。
 一応潜入任務~なのだが、やはり、そう言うのにはあまり、向いていないのだろう。……あまり?

「当然だろ? 勝った時になんか、その町の民なんか奴隷も同然。司令官も言ってるし、盗もうが、強姦しようが思いのままだ。今頃楽しんでるんだろうな」

 はぁ、っとため息を吐きながらそう言う男。それを訊いたランスは、呆れた様に呟いた。

「馬鹿か、貴様は。オレ様が行くならまだしも、お前らがユーリたちに勝てる訳がないだろうが。がははは!」
「む? ユーリたち?」
「げっ……」

 ランスは思わず言ってしまった言葉を思い出して口を抑えた。だが、それは勿論後の祭りなのである。

「貴様……まさか、カスタムの「ランスあたぁぁっく!!」ぎゃあーー!!」

 ランスは、バレる前にサクッ!っと殺してしまった様だ。幸いにもこの部屋には男1人しかおらず、増援を呼ばれる事も、見つかる事も無いだろう。

「おい、シィル! この男を何処かに隠しておけ。見つかったら面倒になりかねん」
「あ、はい。ランス様」

 シィルは重たいヘルマンの兵を必死に引きずると、大きめの戸棚があった為、そこに押し込んだ。正直、死体を触る事には非常に抵抗があったが、これは何度も強制させられた事でもあるからと諦めていた。

「でも、ランス様は、やっぱり、ユーリさんの事を信じてるんですね?」
「馬鹿者。だから、そんなんじゃないわ。さっきから 言ってるだろ! アイツはガキの癖に戦闘バカなのだ。そのくらいしか取り柄の無い男だからこれくらいは当たり前だと言っただけだ」
「ひんひん……はい」

 頭をグリグリ~とされていたシィルだったが、直ぐに笑顔で返事を返していた。



 そして、その後……ランスの立てた作戦、地上灯台の情報を集めると言うモノだ。楽して ダンジョンを攻略するためには、情報がまだ必要だとランスは判断した。

 ……ただ、その灯台についての話声が聞こえていたから、と言うのは ご愛嬌だ。

 ヘルマンの兵1人を誘惑させて情報を訊くというもの。

 そのまんまの作戦だが、見事に的中するのだ。ただ……ランスがしろと言った作戦なのだが、シィルを自分以外の男が触るのは勿論我慢できない男でもある。丁度誘惑が成功し、シィルの身体はひん剥かれてしまい、今まさに男の手がシィルの身体に触れそうに、犯されそうになった時だった。

 ランスは剣先を喉元に突き立てていたのだ。

「ら、ランス様ぁ……こ、怖かったですぅ……」
「おい貴様。よくもオレ様の女に手を出してくれたな? ……どうなるか、分かっているんだろうな」
「えっ……? そんな、でもこの女が俺を誘って……途中で嫌がるのだって、演技じゃ……」

 当然だが、ランスへの絶対服従魔法を受けているシィルは悪くなく……、侵攻をしている部分を除けたとしたら、この男も悪くない。
 いや……、シィルは途中で命令だけど、思わず泣いて止めてと言っていたのに 暴走した事を踏まえれば同情の余地はないとも思えるが、実際に一番悪いのは?と聞かれれば直ぐに答えられるだろう、……今は言わぬが花だ。

「そんなもんは、知らん。さて、どうしてやろうか……」
「ひぃぃ! す、すみません! すみません! どうか、命だけは!!」
「ふむふむ、助けて欲しいなら、サファイアがいると言う地上灯台について、話せ。何か話していただろ。オレ様のスーパーイヤーは どんな些細な情報も訊き逃さないのだ。確か 合言葉がどうこう、言っていたな?」
「さ、サファイア様? 合言葉? そ、それなら……、郊外にある地上灯台の事です。さ、サファイア様の元へ行く為に、合言葉が必要な魔法壁が存在してまして、それがないと開かれないのです」
「ふむふむ。流石はオレ様だ。無駄骨を折らずにすんだぞ」

 ランスが次の質問をしようとした時、男は漸く目の前の男が同僚ではないと言う事に気づいたようだ。……遅くないだろうか?

「あ、あんた達……何者なんだ? ヘルマンの兵隊じゃないんだな……?」
「がははは、そんな事はどうでもいいだろう。そんなことよりも気にするのは自分の身だ。オレ様の気がちょこっとでも変われば、貴様は昇天。それで終わりになるのだぞ? よーし、少し、試してみるか?」
「あぁぁ……は、はいっ! か、かんべんしてくださいっっ!!」
「素直でよし。では、さっさと 合言葉とやらをオレ様に教えろ。態々その灯台に出向いてやるというのに、いざ到着したら、通れませんでした。じゃ ムカつく」

 屋敷の探索ではそれなりに時間がかかってしまい、このままでは、マリアの貞操?も、ミーキルの様に 危ないと感じたランス。だから、さっさと地上灯台へ向かおうとしていたのだが、幸運にも 兵士達の話し声が聞こえてきて、ランスの言う通り無駄足にならずに済んだのだ。

 やはり、ユーリが言う天運のスキルの持ち主であろう、事がよく判ると言うものだった。

「あ、合言葉?」
「そうだ! とっとと言え、言わないんならこうだ!」

 ランスは、ヘルマン兵の足の甲に刃を突き立てた。床面に血が広がっていく。

「うぎゃあっ!!」
「ほらほら!! 言わないんならまだまだ、切創が増えていくぞ~? ほらほら~!」
「ぎえええっっ!!」

 中々言わないヘルマン兵にランスはどんどん刃を突き立てていった。両足、両手……血だまりが広がっていく。それでも喋らない。

「むぅ、見上げた忠誠心だな。がはは! 少し見直してやったぞ。さぁて、次は~」
「ら、ランス様……痛みが連続で続いてしゃべれないのでは?」
「がははは。おーおーそれはうっかりしてたな」

 ランスは、シィルの言葉にそう言いながら笑った。……それくらいは正直判っていた様子だが、恐らくはわざとだろう。シィルに手を出そうとした(自分の命令であっても)相手だから、必要以上に制裁を与えていたようだ。

「ぎゃあっ! いぎぃぃ!! うぐぅぅ!!」

 痛みで、全く喋ろうと言う気力が根こそぎ奪われてしまっている。当然だろう……、四肢の全てに切創があり、骨も折れている。痛みでショック死しないだけでも もった方だと思える。

「ふん。そろそろ良いか。シィル。死なない程度に直してやれ」
「あ、はい。いたいのいたいのとんでけー!」
「う、うぐっ……はぁはぁ……」

 兵士は、シィルのヒーリングのおかげでなんとか、痛みが和らぎ話す事が出来るようになったようだ。

「ひ、ひぃー…… うぎぅ……は、吐くっ! 何でも言うからもう止めてくれーー!!」
「サファイアの合言葉」
「あ、合言葉、合言葉はこうですっ、『うっきーまるまる』と聞かれたら『朝御飯食べたいな』ですぅ!! い、言いましたからお願いします! 止めてください!!」
「ほうほう、合言葉はよく判った」

 ランスは、うんうんと頷きそう言う。だが、刃は引っ込めていない様子。

「なら、お前はシィルが、『止めて』と言って止まるつもりだったのか?」
「う……そ、それは……」

 ランスは、返答の遅いヘルマン兵に 先に結論を伝えた。

「ゆるさんわ! オレ様の女に手を出したからには死んでもらう! 死ねえ!!」
「うぎゃああっ!! ひ、ひでぇ……や………」

 せめてもの情けとして、即死させてあげたのはランスにしては 優しいとも思える。……と言うか、その前に拷問の様なモノをしているからだと思えるが。

「ひんひん……、ランス様、ランス様、怖かったです……どうして直ぐに助けに来てくれなかったのですか……?」
「うむ、それはだな……(ラレラレ石を見てる気分だったから……だが、まあ言わなくていいだろう)オレ様にも、色々とあったのだ! 情報収集と言うやつだ」
「ら、ランス様、ランス様ぁ……」
「判った判った。もうこれからは、早く帰ってきてやるから泣くな泣くな」

 ランスは、少し乱暴気味にだが、シィルのもこもこの頭をわっしわっしと撫でた。シィルは、安心できたのか……、涙はもう流れていなかった。













~地上灯台~


 その場所は、ラジールの町にいればミーキルの言う通り何処からでも見えた大きな灯台。通常灯台と言うのは、迷わない様に道標となるべく建てられたもの、なのだが 実際の所 利用目的は不明である。そもそも名称が《灯台》となっているが 本当に灯台なのかどうかもよく解っていないとか。

「すっぱぱぱ~~んっ! ここが 地上灯台で~~すっ! いやぁ~ とっても大きいですね~✩ っとと、と言う所で、ジュリアちゃんメモっ!」

 何処からともなく現れたのは、ツアーガイドさんである。モンスターも蔓延っているこの灯台に、ツアーでやって来るとは大したものだと言えるだろう。それも、女の子がたったの2人で。

「え~~っと、先ほどの、なれ~しょん? さん からも合った通り、名称こそは、《地上灯台》となってますが、そもそも何のための施設なのか、詳しい事は一切わかってませんっ 不明、です~~! こうやって、これからも、自由都市の国の事、説明したげるねーーっ! なれ~しょんさんと一緒に!! さて、ではでは ここで10分休憩に入ります~! お好きに見て回ってくださいね~~!」

 ハイテンションのツアーガイド。時折現れるモンスターなど、なんのその。何やらハニーとは仲が良いのだろうか、襲ってきたりはしてなかった。それでも、無数のモンスターはいるのにも関わらず 命の危険など、微塵も感じない。……相当な使い手、なのだろうか? 真偽は定かではなかった。

 あと、なれ~しょん? さんには ガイドさん不要だと言う旨は宣言しておきます。

「ぶ~ぶ~、ジュリアちゃん、役に立つのに~! ねー? アテンちゃん!」
「…………」

 その隣で、不機嫌気味に佇んでいる女の子、《アテン》に話しかけるジュリア。アテンは、忙しなく手首に備え付けてある腕時計を見ていた。

「その訳の判らないやり取りは置いといて。……ツアーガイドさん。1ついいかしら?」
「もー、さっきも言ったよー? ジュリアちゃんでいいんだよー! なぁに? アテンちゃん」

 何度も何度も時計を見るアテン。次第に何故怒っているのかが判る気がしてきた。

「……既に、20分以上も予定を超過してるわ。なのに、10分も休憩?」
「そだよー! 時間に縛られない、自由なツアーなのですっ! 自由都市だけにっ!」
「ふ、ふ、ふ……」
「ふふふ?」

 その返答を訊いたアテン。ついに、体を震わせていた。もう時計は見ていない。

「不真面目すぎるわ!!」
「わぁ、びっくり! でも~、ここまで歩きづめでジュリア、疲れちゃったよ。それは、アテンちゃんも一緒でしょ? 沢山モンスターだってジュリア達の所に来てたし」
「……な、なんて、適当な。私だって、疲れてるけど、このくらい平気よ。……この辺のモンスター位なら、片手間だし」
「わぁ、すっごーい! アテンちゃんって、魔法研究が専攻なんでしょ? 普通はそんなに体力ある人、いないよ?」

 確かに基本的には、後衛で強力な火力のある魔法を撃つのが魔法使い(ソーサラー)。体力よりも、精神力を要求されるクラスだ。故に、ジュリアの言う通り 体力に難がある者が多いのだが、それは統計的に表したものであり、当然だが一概にはそうは言えない。

 ……あえて例に出すとすれば、たった1人でマルグリッドまで向かった最強?最狂?最凶?のへっぽこ魔法使いがいたり、そんなへっぽこをお付がいたとは言え、殆ど1人で 下層へと追いかけて行った 年中無休の苦労人 魔法使いもいたりするから一概には言えないのである。

 その点は、アテンも判っている。

「確かに、私は研究畑の人間だけど、材料の採取などで、ダンジョン離れてるわ。それに 色んな所で、問題起こして回る様な魔法使いだっているんだし。一括りでは言えないわよ」
「へぇー! さっすが! 研究論文で、リーザスから歴史研修に誘われている人は違うのねー」

 感心をした様にジュリアは言っているけど、アテンはまるで喜んでいない。寧ろ不満タラタラな様子だった。

「……だから、今回のツアーは、割と楽しみにしてたのに……。リーザス観光協会め……、こんな適当ツアーガイドをよこすなんて……」

 そう、全ては ジュリアのおかげで、色々と振り回されてしまっており、現時点では、実に為になってないツアーなのだ。

「リーザス歴史探検ツアー、もしかして、楽しくないの?」

 ジュリアが、思わずそう訊いた。雰囲気を読んだのだろうか。

「だー! もうっ 『歴史探検ツアー! しかして、その実態は ジュリアちゃんと行く自由都市~リーザスの食い倒れツアー』でしょうが!!」

 そう、ツアーの正式名称~と言う事で、ジュリアがそう明言しているのだ。それがアテンの不満の始まりでもある。明言、と言うより、迷言? ではないだろうか。 

 ジュリアはそれを訊いて表情を落としつつ、上目遣いをして言う。

「でもぉ……」
「でも、なによ?」
「さっき一緒に食べた芋ソフトクリーム。美味しかったでしょ?」
「…………」

 確かに、それをいわれてしまえばアテンは黙るしかない。これは事実であり、しっかりと完食しておかわりまでしてしまったのだから。だけど、それはあっても、納得出来ないのも事実だ。目的が変わっているのだから。

「はぁ~……こんな事なら、共同研究した相方に権利押し付けるべきだったわ。相方が忙しくなっちゃったのは、上層部のせいよ! ったく、自国の爆弾人間位、ちゃんと管理しなさいっての! その《ゆー、なんちゃら》って人の名前出しときゃ、おとなしくなるんじゃなかったの!」
「えー? アテンちゃん、何それ?」
「なんで、こんな話だけに喰いついてくんのよ!! さっきの表情と上目遣いは一体何処行った!!」

 ジュリアも、けろっとした様子に戻っている。しょぼ~んとした表情と上目遣い だったから 少なからず戸惑っていたアテンだったが、彼女もすっかりと元の調子を取り戻していた。

「え~、だって気になるじゃーんっ! 爆弾人間って、面白そうだしっ♪」
「面白くない! 歩く危険物って事なのよ! もしも、ココに来てたら、ここも吹っ飛ばすかもしれないんだから」
「あははは! それ、おもしろーい! でも、その、なんちゃらって人の名前出したら大人しくなる、っていうのも面白いね~! 私で言うアテンちゃんの事だね♪」
「なんでよ!!」
「あははは! あっ、アテンちゃん。ここからラジールが見えてるよー! 一緒に見よー!」
「アンタは、話がコロコロ変わり過ぎなのよ!!!」

 因みにここはダンジョン。モンスターも当然ながらいる場所。なのに……ここまで騒げるのは凄い。只者ではない2人組だと言う事がよく判るだろう。先ほどから、騒がしさからか、モンスター達も遠巻きに見ているのだが……、モンスターなりに空気を読んだのだろうか? 或いは触る方が危ないと直感したのだろうか、ヒソヒソと呟く様にしながら、立ち去っていったのだ。まるで、威圧したかの様に。

「ああっ、もう! しかも既に休憩時間を2分25秒もオーバーしてるし! 信じられない! なんて適当なツアーガイドなのっ!」
「アテンちゃん、まっじめーー!」
「やっかましい!! 全く……ぶつぶつぶつ……」

 ぶーぶー文句を言いながらも、2人組は奥へと進んでいくのだった。


 そしてそして……。

「む?」

 そんな入れ替わりで入ってきたのが、ランスとシィル。

「ランス様。どうしました?」
「今ここに観光客らしき、2人組がいなかったか?」
「観光客、ですか……。私は気づきませんでした。でも、ここは危険な場所ですし……」
「……ふむ。気のせいか」 

 ランスは、気のせいだと一蹴。なんとなく気にはなったらしいのだが、それを無視して探索を開始するのだった。


 そして、地上灯台の上へ上へと登っていくにつれて、おかしな空間が広がっている場所にたどり着いた。

「なんだ? これ」
「わ、何かあります!」

 ぶにぶに、とした感触。柔らかいものがあったのだ。透明な何かに触れた瞬間。

「何の用だ用だようだようだ……」

 突然声が聞こえてきた。その何か判らない壁が話しかけてきた様だ。……何故か、セルフエコーセットで。

「柔らかくて……、何だか 寒天みたいですね」
「なる程な。よし、ならシィル全部食え」
「む、無理です。こんなに……、トッピングが足りないです」

 シィルは、勿論無理だと言っていたのだが、……そう言う無理なのか? とツッコミたい。今ここにはツッコミが不足しているから。

「ふむ。ならば 仕方が無いな」

 ランスも変な所で納得したらしく、誰もツッコまない。……ぁぁ、ツッコミたい。

「用無くば立ち去れ去れされされ……」
「だぁ。五月蝿い!! 妙な壁め! さっさとのけ! サファイアに用事があるのだ!」
「サファイア様にぃにぃにぃ……?」

 サファイアの名前を出すと反応する壁。この場所でどうやら間違いはない様だ、とランスとシィルは確信をしていた。

「ではぁ……、合言葉を言え言えいえいえ……『うっきーまるまる』まるまるまる……」

 合言葉を知らなければ、この寒天のセルフエコーに送られて、灯台から戦略的撤退をしなければならないだろう。何故なら、この寒天壁は、一面に広がっており、これを超えるのは、合言葉を言うしかないからだ。

 ランスは、ニヤリと笑った。

「がははは! 知ってるぞ。『朝ごはん食べたいな』 だ!」
「……………」

 大笑いをしながら合言葉を言うランス。天運スキル、ここに有りである。

「通るがよいよいよいよい………」

 その言葉が響き、何かが弾ける様な音がした。そして 眼前の圧迫感が光を放ちながら消え去る。

「やりましたね、ランス様!」

 シィルが、ランスの前に来て喜びの声をあげていると……。

「とぅっ!」

 突然、ランス・キックが炸裂。

「きゃぁっ!?」

 シィルは、突き飛ばされた形になり、確かに進めなかった場所よりも 奥へと転がっていった。間違いなくあの寒天の壁は消失した証明であった。

「うむうむ。確かに、厄介な壁は消えたぞ! がはははは! 流石オレ様」
「うぅぅぅ……、私で試さないで欲しいです」
「がははは、人柱は奴隷の大事な仕事だろうが。ま、下僕のユーリがいたら、アイツに任せるんだがな。っと、そうだ。ここなら一目にもつかんし。フェリーース!」

 ランスは、大声でフェリスの名を呼ぶと、闇の中から フェリスが現れた。

「……呼んだ?」

 フェリスはげんなりとしながら出てくる。 もう、ランスにもタメ口OKが出たので、敬語は使っていない。たまにランスが命令で、色々といい方を変える場面はあるのだが、それは大概が夜の行為の時だけであり、ランスは喋り方に関しては基本問題視していないのだ。

「ここからは、常に呼んでおくから」、いちいち消えずにずっといろ」
「………はいはい。なんで私が、人間なんかの戦争に………。ぁぁ もう1人の方が呼んでくれてたら……でも、あんまし変わらないか……」

 フェリスは、更にげんなり、どんより としていた。そして、ランスは勿論、『ユーリが呼んでたら』と言う事に、いい気はしない。
 
「ええい! やかましい!! オレ様が呼んだ以上、オレ様の役に立っていればいいのだ! あんなガキの命令など、訊く必要なーい!」
「まぁ……、ランスが先に呼んだから……。そうだけど。はぁぁぁ……って、きゃあああっ! や、ちょっ、放してっ!!」


 ランスは、フェリスに飛びつき、胸やら尻やらを弄りまわしていた。少し、抵抗をするフェリス。因みに、ランスが『抵抗するな!』と言えば、全く出来ないのだが、『少しの抵抗、囁かながら、必死の抵抗は、そそる!』と言う理由から、ランスには許されているのだ。

「がはははは! テンション上がってきた! さぁて、所でサファイアってのは、男なのか? 女なのか?」

 ランスの考えは、大体そこにいる全員、シィルもフェリス判っていて、軽くため息を吐いたり、悲しそうな顔をしたり、である。どっちが、どの様な反応をしたのかは、一目瞭然だろう。

 
 そして、戦闘の準備とお仕置きの準備が終了したランス。意気揚々と灯台上層部へと登っていったのだった。





~同時刻、地上灯台最上階~


「……っっ!?」

 急に悪寒を覚えて、背筋を震わせていた者がいた。その者は上半身が半裸。ランスが喜びそうなスタイルの少女の姿をしていた。
 その傍らには、大きな蒼玉があり、それを宙に浮かせ、集中していた所だった。

「……いけません。コンセントレーションが……」

 開口部から遠くを見通すと、カスタムではわずかに洗脳兵隊達の動きが揺らぐ。
 そう、彼女こそが、4000もの兵士を洗脳し、操っている魔法使いである。通常では不可能とさえ思える大人数の洗脳術。それを可能にしているのは、魔人アイゼルにより能力を与えられているからだ。

 そう、彼女は 魔人アイゼルの使徒サファイア。

 人外の能力は全て魔人の力が根源だったのだ。

「コンセントレート……です。ピュアに、ピュアに……。今回のエネミー。……とても、ストロング。ヒューマンとは、思えない程に……だから、コンセントレート……コンセントレート……」

 深く深く、改めて集中する。目を伏せ、耳を閉ざし、五感を遮断して集中力を高めていく。

 現時点で、カスタム侵攻に洗脳兵士を使ってはいる。だが、その数の暴力を物ともしないのがカスタムの防衛軍である。
 その戦いぶりを見て、サファイアは当初から、集中力が乱れそうになっていたのだ。

「……アイゼル様の為に…… 全てはアイゼル様の為に……」

 最愛の主の名を呟いて、サファイアはどこまでも集中力を高めていく。

 それほどまでに、力を入れて 洗脳操作をしないと、勝てない。そう思える程の相手だったのだ。
 
 使徒であるサファイアは、この洗脳能力を見ても、人間とは一線を遥かに超えた力を持っている。それなのに、圧巻と言わしめる程の強さを内包しているのが、カスタム防衛軍なのだ。

 現に先行隊である、ヘルマン軍は殆ど潰され、洗脳兵達も無力化をさせていくのだ。

 ただ、操るだけでなく、人間の中に眠っているその者の潜在能力を引き出して戦わしているのにも関わらずに、だ。

「ヒューマンなんかに、……ルーザーされるわけにはいかないです……」

 集中力を増していくサファイア。

 だが、彼女は知らなかった。 
 この地上灯台を登ってきている者達がいると言う事を。……1人は鬼畜戦士。あっという間に集中力を乱されてしまうと言う事を。……そして更に、その内の1人は 魔人にも匹敵する強さを秘めていると言う事を。














~ヘンダーソンの部屋~


 同時刻。

 そこでは、ヘンダーソンが、マリアに無理矢理に媚薬を飲ませようとしている所だった。
 マリアは、抵抗に抵抗を重ねていた為、ヘンダーソンはまずは 理性を狂わせて、淫乱にさせてから 遊ぼうとしていたのだが……。

「この変態っっ!! 卑怯者!!」
「あぅっ!!」

 マリアは、縛られているのにも関わらず、ヘンダーソンに一撃を入れていたのだ。マリアから迸る何か(・・)がヘンダーソンに直撃する。

「な、な、何? これ!」

 身体が痺れてしまい、立つ事が出来ないヘンダーソン。その何かは、纏わりつくように、ヘンダーソンから離れずまるで逆に拘束をしている様だった。

「媚薬なんか使おうとするヤツに、私の身体を 好き勝手させてたまるもんですか! このっっ!!」
“がきーーーーーんっっ!!”
「ぎゃちょーーーっっ!!!」

 倒れているヘンダーソンに向かって、マリアは、金的に向かって、サッカーボールキック! 金切り声を盛大にあげるヘンダーソン。

 マリアには知るよしも無いが、通常であれば、屋敷に控えているヘルマンの兵士達に聞こえる程の声なのだが、今はカスタムへと進軍中である事、そしてヘンダーソン自身が兵士を遠ざけていると言う幸運が重なり、新たな兵士達が乱入してくる事は無かった。

「おぼぼぼぼぼ………!!!」

 如何に、オカマと言えども、男を象徴している《ソレ》を切ってる訳でも、取ってる訳でもないから、大々々……∞ダメージは必須なのだ。マリアは、肩で息をしつつ……とりあえず、ヘンダーソンをぶっ飛ばす事ができて、少しスッキリ、そして安堵をしていたが。

「(うぅ……、でも 逃げれそうに無いし…… いつまでもつか……)」

 マリアの拘束が解けている訳でも無いし、まだ部屋の中。そして捕まえられてる状況で 無防備にも外へと飛び出す事など出来ない。
 マリアには、外の状況が判らないから、ランスの帰りを待つしか出来ないのだ。

「もーー!! さっさと帰ってきてよ! ランスっっ!!」

 ランスの名を叫びながら、その後も決死の低抗が続くのだった。

























人物紹介〜


□ ミル・ヨークス(3)

Lv19/34
技能 幻獣召喚Lv1

元カスタムの四魔女の1人。
今はカスタム防衛軍のミリの実行部隊に所属している。
魔法使いの彼女だが、姉と共に戦った方が普段より安心でき、且つ今以上の力で戦えるからと言う理由。
ちゃっかり、前回は出演できなかったが、連続した戦いのせいで疲弊したのは仕方ないのである。
……まだ、幼子なのだから。
ただ、今後はどうなの?と聞かれれば、素直に答えられないのが現状でもある。


□ バレス・プロヴァンス

Lv30/37
技能 剣戦闘Lv1 統率Lv2 軍師Lv1

リア女王の祖父の代からリーザスに仕えている隻眼の宿将。
リーザスの総大将にして、黒の軍の将軍であり、大陸でも有数の名将で、ヘルマンでもその名は轟いている。
今回の件、トーマに不意打ちの形で不覚を取ってしまい洗脳兵とされてしまった。


□ エクス・バンケット

Lv25/29
剣戦闘Lv1 軍師Lv1

リーザスの白の軍の将軍。リーザス王国で発行されている新聞でも取り上げられている程有名である。(内容は詰チェス講座だが……)
剣戦闘よりは、統率性の方が優れており、戦略を立てるスペシャリストでもある。
今回ヘルマンの襲撃により、戦略を立てる前に破れてしまい洗脳兵となってしまった。


□ アスカ・カドミュウム/チャカ・カドミュウム

Lv39/44
技能 魔法Lv1 付与Lv1

小さな女の子の姿をしている。アスカと言う名の少女であり、チャカの孫娘。
チャカは着ぐるみの方。
とある事情によってその姿にされてしまった。
両方とも、1人では何も出来ない為、2人で強力して戦っている。

こんな姿だが、リーザス紫の軍の将軍




□ ジュリア・リンダム

 ゼスから留学して来る人のツアーガイドを務める少女。ハチャメチャであり、おバカな少女なのは見ての通りであり、留学に来た少女アテンを困らせてばかりであり、『全然ツアーガイドしてくれない』と不満を持たれているのだが、当任は全く気にした様子はなく、おちゃらけている。

 だが、それでもモンスターの蔓延るダンジョン、そして戦争がつづているリーザス領土や自由都市圏内でも悠々とツアーを出来て?おり その実力は未知数。

 ……一体何者だろうか?



□ アテン・ヌー

Lv26/48
技能 魔法Lv1 ????Lv??

 魔法大国ゼスから、リーザスへ留学の形で歴史探検ツアーに来た少女。折角ツアーを楽しみにしていたのに、メチャクチャなツアーガイドに振り回されてしまい、常に不機嫌状態。そのガイド、ジュリアよりも博識である為、何故かアテンが観光先の情報を教えている形になってしまっているとか。
 魔法大国ゼスの中でも将来をかなり有望とされており、実際に優秀であったから、リーザスへの留学する事が出来たのだが、本人は後悔している模様。 勿論、ゼスのとあるLv3の魔法使いの事は知っており、その例の人のおかげで、ここに来れたのだが…… 運がなかったとしか言い様がない、と落胆気味である。

 後に新たな技能に恵まれるようだが、今は未定。解放されるか、されないかは彼女次第である。



□ 使徒サファイア

Lv-/-
技能 魔法Lv2

 魔人アイゼルの使徒宝石3姉妹の一角であり、授けられた洗脳魔法を得意とする。
アイゼルに指示されて、ヘルマン軍に強力しているが、アイゼルの為だけであり、人間自体には何の感情もない。

 今回も任された役目を必死に果たそうとしているのだが…………。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧