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夜空の星

作者:みすず
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度重なるトラブル

 あの事件から約一週間後、ニール家の執事さんがお店にやってきて、リチャードさんが被害に遭った女の子達からの通報で警察に捕まり、大学も無期停学になった事を教えてくれた。
 当主のご子息からは話しにくいことだろうから、って。
 本当に安心した。
 もうあんな怖ろしい目に遭うのは二度とごめんだわ。
 甘い話にも裏があるんだって思うようにならなきゃね。

 パパはここ数日、あたしの様子がおかしい事に気づいていたけど、心配かけたくないので、あの人とはもう別れて会う事はないとだけ伝えておいた。
 ロビンも、執事さん以外の人には話さないでいてくれたみたい。

 ただ、あれ以来ロビンと顔を合わせていない。
 いつもなら3日に一度は必ず来ていたんだけど。
 でもあんな事があった手前、正直恥ずかしくて顔を合わせられない…。
 だから逆にホッとしていた。

 そんな時、再び事件が起こってしまったんだ…。

「姉さん、今日は暑くない?」
 昼下がりの午後、お店は週に一度の定休日だったので、あたしはサラと買出しに市街地へ出掛けていた。
 帰り道でバスを降り、自宅に向かって歩いていると、川が見えた。
 小さい頃は水遊びもしていたんだけど、途中で深くなる箇所があり、パパに注意されてからは近づいた事はなかった。
「確かに日差しが強いわね。」
「川で水浴びして遊びたいわ!少しはいいでしょう?急いでいないんだし。」
「いいけど奥まで行かないでよ?深い場所があるみたいよ。」
「うん、わかってる!姉さんも土手で休んだら?」
「そうするわね。」

 あたしは荷物を置いて土手の方に座り、思いっきり伸びをした。
 サラは薄着になり、川で水浴びを始めた。
 いい天気だわ。気持ちがいい!
 そよ風も心地いいし。
 お昼寝したくなっちゃう。

 そのまま目を閉じて風を感じていると。
 バチャーン!!とすごい水しぶきの音が。
 驚いて川を見ると。
「サラ!?」
 溺れてる!!
 サラが思っていたよりも近い場所から、急に深くなりだしたらしく、足をつったみたい。
「ねえ…さ…たすけ…!!」
「待って!今何か掴める物を探す!」
 あたしもサラも泳げないのに!!
 探すといっても、周囲には草しかなく、ロープや浮き輪代わりになりそうな物は何一つない!
 どうしよう…!!
「誰かいませんかー!?妹を助けてください!!」
 あたしはありったけの力を込めて叫んだ。

 すると、少し離れた場所から聞き覚えのある声が。
「ミレーヌ!?大丈夫か!サラちゃん、今助ける!」
 大学からの帰りのようだったロビンは、荷物を置いて急いで川に飛び込み、サラの近くまで泳いだ。
「サラちゃん、掴まれ!」
「ロビ…さ…」
 サラを抱え、なんとか土手まで泳いで上がってきた。
「サラ…しっかりして!」
 あたしは混乱状態で、ぐったりしているサラに声を掛ける事しか出来なかった。
「ミレーヌ何してる!タオルでも何でもいいからくるむ物持って来い!」
 ずぶ濡れ状態のロビンが叫び、我に返ったあたしは急いで荷物からタオルを出した。
「ロビン、これを…!」
 タオルを渡すとロビンは素早くサラに巻きつけた。
「サラちゃん、声が聞こえるか?意識はあるか!?」
「姉さん…ロビン…さん…あたし…。」
「良かった、意識はあるな。」
 ロビンは意識が朦朧としているサラを抱え立ち上がった。
「ミレーヌ、早く帰って暖かくさせないと!」
 あたしとロビンは急いで自宅へ向かった。

 自宅に到着すると、パパが驚いた顔で声を掛けた。
「どうした!?一体何があったんだ!?どうしてニールの息子までいる!?」
「トムさん、話してる時間はありません、早くサラちゃんを暖めないと!」
 切羽詰った状況でずぶ濡れのまま叫ぶロビンを、パパは動揺しながらも家に入れてくれた。

「ロビンさん、ありがとうございました。」
 暖炉で暖まり、体力を取り戻したサラは毛布に包まりながらロビンに声を掛けた。
「用が済んだら早く出て行ってくれ!一応礼は言っておく…。」
 パパは不機嫌ながらも、サラを助けたロビンに目を合わせずに伝えた。
「当たり前の事をしただけですから。それじゃ、帰ります。」
「えっ!ロビンだってまだ服が濡れたままじゃない!」
 パパが睨む中、構わずあたしが止めようとしたけど。
「そんなの家でやれるから平気だ。トムさん、失礼します。」
 ロビンは足早に出て行った。
「パパ、いくらなんでもあの態度はひどいわ!サラを助けてくれたのよ!?」
「うるさい!ニール家の輩とは関わるなと言っているのに、きっかけを作ったお前たちも悪いぞ!あの息子がデーヴィスにこの事を伝えたら、また何て文句を言われるか分かったモンじゃない!」
「ロビンはそんな意地の悪い事はしないわよ!」
「ミレーヌ、お前はあの男を庇うのか!?家とあの男とどっちが大事なんだ!」
「今はそういう話をしているワケじゃないでしょう!?パパの方が意地っ張りよ!」
「何だと!?親に向かって何だその言い方は!」
「パパも姉さんも落ち着いて!溺れたあたしが悪かったの!姉さんもロビンさんも悪くないわ。パパ、心配かけてごめんなさい。もう無茶な事はしないわ。」
 サラが間に入って謝ったおかげで、パパはなんとか機嫌を直した。

「サラ、余計な事をさせてごめんね。」
「いいのよ、ロビンさんの事、姉さんがフォローしてあげてね。」
 小声で話しかけると、サラからそんな事を言われてしまった。
 家を出たロビンを追って確認すると、やっぱりくしゃみをしてた。
 もしロビンが風邪を引いちゃったら…大変!
 きっとデーヴィスさんにもバレて、パパが言ってたように沢山文句を言ってくるに違いない!
 あいつが風邪引かないようにするには…、なにか暖かい物を差し入れするしかないかな。

 約二時間後。
 手作りしたばかりのレモンパイを持って、パパにバレないように家を出た。
 早く持っていかないと!

 
 

 
後書き
次回へ続く 
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