moon light fantasy
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『血』を吸うという事。
前書き
ビーフジャーキースパイシーが美味しい。
「ん……!」
首元に鈍い痛みが走り、アリスは少しだけ喘ぐ。しかしフォルツは御構い無しにベッドの上のアリスの首に噛みつき、血を飲む。
「はぁ…はあ…。」
「フォ…ルツ…。」
アリスは息も絶え絶えにフォルツの名を呼ぶがフォルツには聞こえない。
なんて美味しいんだろう。
フォルツはそれしか考えずに一回息継ぎをして再びアリスに噛み付く。
「うっ……!」
アリスは再び呻く。その声も、この血もフォルツは支配していた。
もう貧血になるくらいの血をアリスから吸ったフォルツはもう一回吸おうとしたところで。
涙ながらの声をアリスが出す。
「フォルツ…。もうやめて。」
「…!」
アリスは泣いていた。メチャクチャに蹂躙されて心がズタボロになっていたのだ。
フォルツはそれを見て血を吸うのをやめてアリスを見ながら頭を抱える。
「ア、アリス…?
ぼ、僕は…?」
フォルツの口調がいつもと違っていた。そう、一人称が僕になっていた。
アリスはその様子を見て、それでも血がなくなり働かない頭で押し倒されている状態でフォルツの顔に手を当てる?
「フォルツ…。貴方の所為ではないですよ。私が誘ったのです。だから…。」
「やめて‼︎」
フォルツは顔を隠して悶える。すると今まで紅かった眼がいつもの黒い色に戻って行く。
「…やめろ。」
フォルツはそう言っていつもの様な口調に戻った。
…人を突き放す冷徹な口調へと。
そうしてフォルツはアリスの身体に跨るのをやめてベッドから立つ。
そして貧血で立てないアリスに対して。
「血を吸わせてもらった事には感謝している。
…だがこれでお前は『ヴァンパイアの花嫁』だ。」
「ヴァンパイアの花嫁…?」
アリスは息も絶え絶えにそうたずねるとフォルツはふ、と悲しげな笑いをしながら。
「詳しくはニナに聞いてくれ。
…それと。」
部屋の扉に向かいながからフォルツはいつもの様に暗い口調で。だけど何処か優しい声で。
「…ありがとう。」
「…。」
それを言ってフォルツが静かに部屋を出るのをみてアリスは意識を手放した。
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部屋に着いたゼツ達は乱れたベッドと横たわるアリスを見て遅かった事を悟った。僕達はアリスを頑張って起こして事情を説明してもらった。
「…んで。血を吸われたの?」
「はい。それはもう勢い良く。」
アリスはそう言って首元を見せる。すると赤い点が所々についている。 ゼツはそれを見てはあ、とため息を吐いた。
「本当に参ったな…。アリス。今のところで身体に異常は?」
「特にはありませんけど…。」
ゼツはそれを聞いて顎に手を当てて思考する中、リナがアリスの額に手を当てる。
「熱もない様だし…。今のところ大丈夫みたい。」
「うーん…。でも『ヴァンパイアの花嫁』になってしまったからね…。」
「そう言えば『ヴァンパイアの花嫁』ってなんですか?」
アリスが寝ながらふわふわといつもの様に浮いているニナに問いかけると困った表情で答える。
「簡単に言うと血を吸われたヴァンパイアから離れられなくなる。この場合『フォルツから離れられなくなる。』こと。まあ、心と身体が血を吸われたヴァンパイアの虜になる事だね。」
「…私、今も血を吸われる前もフォルツの印象変わりませんよ?
…それに今はフォルツいませんよ?」
「…ああ、それは…?」
アリスがキョトンとする中。ゼツはリナとアイコンタクトするといきなりドアに近づくとその勢いのままドアを開け、その死角にいる何かを掴んでいた。
「フォルツ!何、コソコソしてるんだ。リナがさっきからドアの外にいるって教えてくれたんだよ!さっさと入れ!」
「…分かった。」
ゼツにそう言われ、入ってきたのはフォルツ。どうやら吸血衝動はアリスの血を大量に吸った為、数日続く吸血衝動は起きていない様だ。
するとフォルツはアリスに頭を下げる。
「悪かった。」
「フォルツ…。」
「お前には悪い事をした。よりによって俺なんかの…。いや、ヴァンパイアの花嫁なんかにしてしまった。」
そう言ってフォルツは頭を下げ続けると以外にも声を掛けたのはリナだった。
「…とにかく!みんな。一回外に出よう!」
「えっ⁉︎」
「おい!リナ!」
そう言って元気良くリナは軽い身のこなしで右手でゼツの襟首をさっと掴み、左手でニナの胴体を掴み、引きずる。そうして1人と1匹を外に出すとフォルツに笑顔で。
「はい。フォルツ。ここは二人っきりで話した方がいいよ!」
俺はリナがそう言って部屋に出るのを確認して吸血され、疲れ切っているアリスを見つめた。
後書き
ヴァンパイアの花嫁編は後2話で終わる予定です。
次回は暗黒街の黒猫編です。ちなみにニナは白猫です。
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