びっくりバコ
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3部分:第三章
第三章
「この箱を」
「とりあえず転がしてみる?」
チビはこう言いました。
「そうしたら開くかも知れないよ」
「転がしてみるんだ」
「そうだよ。やってみる?」
「そうだね。どうやって開くかわからないけれど」
コロもチビのその言葉に頷きました。
「そうしようか」
「うん、そうしよう」
こうしてまずは転がしてみることにしました。二匹は一緒に箱の一面に付いてです。それでそれぞれの前足で箱を押すのでした。
「それじゃあね」
「うん、それじゃあね」
まずは言葉を合わせてです。
「せいの」
「それっ」
動きも合わせて押します。それで転がしました。
箱はコロコロと転がります。二匹はすぐにそれを追っかけます。
「さあ、開くかな」
「どうかな」
追っかけながら話をします。
「中に何があるかな」
「一体」
開けば中から何が出て来るのか、問題はそれでした。
それで追っかけます。そうして止まった箱に追いつきました。
その一面に付いてです。箱を見ます。
「開く?」
「それで」
実は転がっている時にあるボタンが床に触れています。それで。
二匹が付いたその一面がです。いきなり開きました。そして。
中からです。何かが飛び出してきました。
「うわっ!?」
「何これ!?」
何と黒髭の海賊がです。舌を出して飛び出してきたのです。バネがあってそれで、です。二匹の前に飛び出してきたのです。
「お化け!!」
「違う、これ海賊だよ!!」
チビもコロも驚いています。
「で、出た!」
「それでも出た!」
そして慌てて部屋から飛び出してです。たまたま隣の部屋で積み木で遊んでいた男の子のところに飛んで来たのでした。
「あれっ、コロにチビ」
男の子はその二匹を見て言います。
「どうしたの?一体」
「どうしたもこうしたも」
「海賊が出たんですよ!」
コロとチビはこう男の子に対して訴えます。
「もう驚いたんですから」
「何なんですか、あれ」
「何を鳴いてるのかな」
けれど男の子には二匹の言葉はわかりません。犬と猫の言葉はです。人間である男の子にはわかる筈もないことなのです。
けれどです。男の子はその二匹を見て思いました。
「御飯が欲しいのかな」
それで来たと思ったのです。それで。
「わかったよ。それじゃあね」
そしてです。二匹の御飯とミルクをそれぞれ出します。そうして食べさせるのでした。
「たんとお食べ」
「そういうのじゃないんですけれどね」
「ですから海賊が」
二匹は自分達の御飯を出してきた男の子に対して言いました。けれどやっぱり男の子には二匹の言葉はわかりません。
「けれどまあ」
「いただきます」
それでも御飯は食べるのでした。そして食べ終わった時にはもう箱のことは忘れていました。あの部屋には箱がそのまま転がっています。海賊は舌を出してそのままいるのでした。
びっくりバコ 完
2010・9・3
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