カルタゴ人と海の妖精
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2部分:第二章
第二章
「興味を持ったしね」
「そうか、持ったかい」
「持ったよ。じゃあギリシアに行った時にね」
行くというのです。そうして。
「それでだけれど」
「それで?」
「その財宝の場所が書かれた地図はあるかな」
今度はこのことを尋ねるのでした。
「今君はスパルタの近くの海の底にあるって言ったけれど」
「ああ、あるよ」
友達はにこりと笑って彼のその問いに答えました。
「それはね」
「そうか、あるんだ」
「場所はわかってるんだ」
それはだといいます。
「それはね」
「場所はわかっていても」
「その妖精がいるから」
難しいというのです。
「それでも挑戦してみるかい?」
「そうさせてもらうよ、面白そうだしね」
こうしてでした。商人はギリシアに向かいました。そして地図を手にスパルタの海に出ました。
スパルタの海はとても青くて奇麗でした。とても静かで穏やかです。その海に小船で出ました。
商人はそこでも地図を見ていました。そうして目的地の上に来たところで。
海の中に飛び込みました。そのまま海の中を泳いでいきます。
そしてその底に。財宝を見つけました。
財宝は色とりどりの宝石や真珠、それに金や銀です。それが一体どれだけあるのか見当もつかないまであります。商人はそれを見て思わず飛び上がりそうになりました。
「うわ、これは凄いな」
商人は海の中で呟きました。
「これだけのものがあるんだ」
「おい」
しかしです。ここで声がしてきました。
「御前は誰だ」
「むっ、まさかその」
商人はその声を聞いてすぐに察しました。その声の主が誰なのか。
「妖精か?」
「そうさ、妖精さ」
出て来たのは人間に似てはいても全身鱗だらけの青い身体の男でした。服は着ておらず鱗がそのまま鎧になっているようです。
長い髭も髪の毛も緑色でまるで海藻です。そして右手には三叉の槍を持っています。
「トリトン様の部下でスクルゴスっていうんだ」
「あんた何でここにいるんだ?」
商人は落ち着いてその妖精に尋ねました。
「一体全体」
「決まってるだろう。この財宝を守ってるのさ」
「そうなのか」
「そうさ。この財宝は誰にも渡さない」
妖精は強い声で言ってきました、
「絶対にな」
「絶対にかい」
「若しこの財宝を手に入れるっていうのなら」
妖精のその言葉が剣呑なものになってきました。何時の間にか財宝の前に来てそのうえで商人からその財宝を守ろうとしています。
「俺が許さないからな」
「許さないのかい」
「その髪の毛一生生えないようにしてやる」
右手の三又の槍で商人を指し示して言ってきました。
「一本もな」
「一本もかい」
「それが嫌なら帰った帰った」
強い声で商人に対して告げます。
「わかったな」
「いやいや、待ってくれないかい?」
しかし商人も負けてはいません。ここであらためて妖精に対して言うのでした。
「君の話は聞いたよ」
「聞いたなら帰るんだな」
「だから待ってくれ」
また妖精に対して言います。
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