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戦国異伝

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第二百二十三話 信貴山城攻めその六

「じっくりとな」
「何と、まことにか」
「殿の仰る通りではないか」
「話がしたいと」
「そう言うのか」
「まことに」
「ははは、やはりな」 
 信長の言葉を聞いてだ、天守にいた松永は笑って言った。
「上様はそう仰ったか」
「あの、殿」
「まさかと思いますが」
「織田信長とお話をですか」
「されるおつもりですか」
「そのつもりじゃ」
 まさにとだ、松永は己の家臣達に笑って答えた。
「これよりな」
「何と、それは」
「まことですか」
「そうされるのですか」
「これから」
「そうじゃ、ではこれよりな」
 話をしようというのだった、そしてだった。
 実際にだ、松永はその天守からだ。信長を見つつだった。
 すぐにだ、傍に控える己の家臣達にこうも言った。
「上から見下ろすのは非礼じゃ」
「あの、非礼とは」
「それもです」
「我等はまつろわぬ者」
「魔界衆です」
 家臣達は戸惑いつつもだ、松永に答えた。その戸惑いにこそだった。彼等の考えがそのまま出ていた。しかし。
 松永はそれでもだった、その彼等に言うのだ。
「それでもじゃ、非礼は非礼じゃ」
「かつての主君だからですか」
「そういうことじゃ、だからここから降りてな」
「そして、ですか」
「そのうえで」
「これよりですか」
「お話されますか」
「そのつもりじゃ、我等はこれより城から出てな」
 松永はこうも言った。
「それからじゃ」
「そして、ですか」
「そのうえで」
「織田信長と話す」
「そうされますか」
「茶も用意せよ」
 楽しみにしている口調だった、松永の今のそれは。
「よいな」
「はい、では」
「これよりです」
「茶も用意して」
「茶を飲みつつですか」
「そうじゃ、前にこれが最後の茶じゃと言ったが」
 城の茶室で飲んだそれがというのだ。
「また飲む機会があって何よりじゃ」
「そう仰いますが」
「しかし」
「また茶が飲めるのはよいことなので」
「飲みましょうぞ」
「それは楽しみにしておる、ではな」
 こうしてだった、松永は信長の言葉に応じてだった、信長の下に人をやった。その返事を聞いてそしてだった。
 信長は笑みを浮かべてだ、こう言った。
「そうか、茶を飲みつつか」
「はい、そのうえで」
 松永の使者で来た彼の家臣が答えた。
「お話をされたいと」
「そう言っておるのじゃな」
「場所は城の外です」
「そこで茶会を開き」
「そのうえでと」
「わかった」
 これが信長の返事だった。 
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