moon light fantasy
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色欲の最期。夢の始まり。
前書き
炎帝編ラスト!
「んで、何から話そうか?」
あの後、ランの転移魔法でラクーナの酒場まで戻るとニナはニコニコ笑顔でマスター特製キャットフードを食べている。
ちなみにテーブルに座っているのはニナ、アリスそして…。
「とりあえず報告はちゃんと頼むぞ。ニナ。
…はあ、フォルツはなんでこんな時にいないんだ。ニナじゃなんか不安だ。」
「仕方ないよ…。私達を助ける為に吸血衝動を抑えてたんだから。」
そう言ったのゼツとリナの二人だった。かなり衰弱していたが元は丈夫な為、一日休んで直ぐに歩ける様になっていた。ちなみにフォルツは倒れたままだ。
するとニナはそれを見て。
「んじゃ。話すよ。」
それからニナはゼツとリナに話し始めた。前庭での事。本館での事。アスモディウスの事。
それを聞いてゼツはリナに向けて。
「すまない。リナ。あんな変態に囚われてるのに救えなくて。しかも俺までも…。」
「いいんだよ。ゼツ君が無事で本当に良かった。」
2人はそう言って言葉を交わし合っているうちにニナはアリスの所に来て。
「それでアリス。フォルツの事なんだけど。
おそらくこう考えたんじゃないかな?
『フォルツ・レープリカはヴァンパイアじゃないかか?』と。」
「…はい。」
「ヴァンパイアじゃねえよ。」
その言葉を遮る様にゼツが強い口調で言った。その言葉にビクッとなる。それを見てリナが慌ててフォローを入れる。
「えっとね。ヴァンパイアなんだけどヴァンパイアじゃないというか…。でもヴァンパイアなんだけど…。」
「半ヴァンパイア。それが今のフォルツだ。」
ニナがその言葉の答えを言い放つ。そうして説明を続ける。
「ヴァンパイアと人間。どっちつかず。それがフォルツ・レープリカ。
もちろん人間らしさもある。現に血だけじゃなくてここで酒やナッツを食しているからね。普通のヴァンパイアなら人の血以外の物を食べる事が出来ない。
だけどヴァンパイアらしさもある。数ヶ月に何回か吸血衝動が起こるんだ。」
吸血衝動…。アスモディウス戦の後にフォルツは確かに出ていた。その時のフォルツはいつもの他人を突き放す感じではなく。ただひたすらに私の血を求めていた。
「だからいつもこっそりリナちゃんやランちゃんの血をもらっていたんだけどね。美人の血の方が美味しいらしいし。」
「…聞いてねえぞ。それ。」
「ゼツ。大丈夫。私があげたんだし。首元を噛まれて大量に飲まれたわけじゃなくて、指をちょっと切った時の血を飲ませただけだから。」
「……まあ、フォルツの事だし。どこかのバカみたいに『付き合って!』とか言わないか。」
リナがそうやってゼツをなだめていると。ニナがゼツとリナに対してぺこりと頭を下げて。
ニナはバツが悪そうに説明を続ける。
「でもフォルツが完全にヴァンパイアになる方法もある。」
「それが…トランス?」
「察しがいいね。アリスちゃん。そう。僕との合体魔法、トランスをすればヴァンパイアの力を全て解放出来る。ヴァンパイアの身体能力は凄いからね。身体に負担がかかる月華流も夢幻剣も使い放題!なんだけどね…。」
ニナはそう言って言葉を濁す。
「だけど代償もでかい。半ヴァンパイアの状態でさえ吸血衝動を抑えきれないのにヴァンパイアの状態になったらそれ以上だ。現に城館でも我を忘れてアリスちゃんの血を思いっきり飲もうとしてたからね。」
「あっ‼︎」
そう言えばフォルツが気絶する直前、私の首元に口をつけようとしてた。
…あれは私の血を吸おうとしてたのか。
「…とりあえずそっちの話は置いておいて。
んであの変態はどこにいるんだよ?」
「ああ、それがね…。」
ゼツの強い問いかけに、ニナははあ、とため息を吐いて。
「逃げられた。」
「「「えっ⁉︎」」」
3人が同時に驚く中、ニナだけは冷静にため息をもう一度吐いて。
「…アスモディウス自身が言ってたんだけど。
…あいつの主というのが恐らくフォルツの探してる復讐の相手なんだ。
まあ、恐らくあいつが逃がしたんだろうね。ギルドの牢屋をみたらまるで夢の様に消えてたって眼をキラキラしてランちゃんが言っていたしね。」
「…まさか!」
ゼツはガタンとテーブルを叩いて立つとニナを睨む。ニナはそれを見てまたマジメな顔で。
「機械仕掛けの神ソーニャ。あいつだよ。」
「ふわぁ〜。」
「も、申し訳ありません。ソーニャ様。」
ラクーアの郊外にいるのは眠そうないつもの機械仕掛けの神ソーニャと。手足をなんとか再生したアスモディウスだった。
「まったく…。トランスしたとは言え、フォルツに負けるとは…。」
「…。」
「まあ、いいです。」
ソーニャは表情一つ変えないでくるっと回れ右をするとアスモディウスの前を歩きながら。
「夢の残滓。」
「⁉︎」
次の瞬間。アスモディウスに降り注いだのは様々な廃棄物。折れた斧、錆びた剣、先が潰れた槍。巨大なレンガ。それ以外の全てのガラクタがアスモディウスを串刺しにする。
「知ってましたよ?貴方が私を出し抜こうとしてゼツさんやリナさんを拐ったということを。」
「…⁉︎な、ん…。」
アスモディウスがその命を散らしかけてる所でソーニャは眠そうに、だが少し怒気を含んだ声で。
「ですが、それは墓穴を自分で掘りましたね…。ゼツさんとリナさんは私の大切な人たちに含みます。
フォルツさんが仮にしくじったとしても私がその後貴方をグチャグチャにしてましたからね。」
「この…化け…も…の…。」
アスモディウスがそう最後の言葉を言うとヴァンパイアの末路…。灰になって風に流された。
「はあ…。いつものアレ。早く使いたいですね。」
ソーニャはそう言ってため息を吐いた。
後書き
次回からようやく…。第2章!です。
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