FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
MPF
2人の挑戦によりモンスターがいなくなってしまった神殿は消えてしまい、それを展開していた魔法陣が闘技場へと降りてくる。
そこから剣を掲げるエルザさんと両手を広げるシリルが無事に出現する。
「す・・・すげぇ!!」
「なんだあいつら!?」
「昨日タクトを破った妖精の尻尾最強の女魔導士、エルザ・スカーレット!!」
「妖精女王のエルザ!!」
「ちっこいのは1日目ノーランと互角に戦った奴だろ!?」
「最強のコンビじゃねぇか!!」
会場中が2人の勝利に歓喜する。その興奮は今大会最高の盛り上がりと言っても過言ではないほどのものだった。
『いまだに鳴り止まないこの大歓声!!』
『こりゃ参ったねぇ』
『言葉もありませんよ』
実況のチャパティさん、ヤジマさん、ラハールさんもシリルたちの勝利に酔いしれている模様。
第三者side
シリルとエルザの完全勝利・・・その姿をドムス・フラウの観客席で見ていたこの男は大粒の涙を流す。
(無謀な行動の先・・・俺が見られなかった物はこれだったか)
評議院の正装に身を包んだドランバルトは溢れ出る涙を拭い、7年前に自らの目で見ることの出来なかった妖精の尻尾の勇姿を見ることのできたことに感動している。
大歓声に答えるエルザとシリル。ドランバルトはその2人の姿を涙が流れ出る瞳に、しっかりと焼き付けていた。
ウェンディside
「「エルザァ!!」」
「「シリルゥ!!」」
私たちは他を圧倒する大勝利を納めたシリルとエルザさんがいる闘技場へと降り、2人のもとに駆けていく。
「お前たち・・・」
「皆さん!!」
エルザさんとシリルは近づく私たちに気づき視線をこちらに向ける。
「すまない・・・思ったより時間がかかってしまった・・・」
エルザさんはなぜか申し訳なさそうにそう言うが、隣にいるシリルは全くそんなことなど気にしていないようで・・・
「やったぜウェンディ!!」
「すごいよシリル!!」
両腕を広げ駆けてきた私を傷だらけの体をがっしりと受け止めるシリル。私もそんなシリルの体をぎゅっと抱き締める。
「やっぱスゲーよ!!」
「後で俺と勝負しろー!!」
「あたし感動しちゃった!!」
グレイさん、ナツさん、ルーシィさんはあまりにも興奮しているのか、エルザさんと私を抱き締めているシリルに顔を近づけて一息でそう言う。
「私・・・もう胸がいっぱいで・・・」
私はシリルの肩に顔を埋める。2人の戦いがすごすぎて目から溢れ出るものを抑えられないでいる。
「オイオイ・・・まだ優勝したわけじゃないぞ」
「そうですよ。ここからが本番なんですから」
「いいじゃーか!!」
「そうだそうだ!!」
「アハハハハッ!!」
エルザさんとシリルは状況を冷静に把握し私たちにそう言う。だけどこんなに感動しちゃったんだもん!!感情を抑えろって言う方が難しいよ。
「ちょっと・・・思ったより時間がかかったとか・・・え?」
まるで優勝したかのような盛り上がりを見せる私たちを見ていた大会公式マスコットのマトー君。マトー君はさっきエルザさんが言っていた「思ったより時間がかかった」ということを聞き、被り物の上からでもわかるぐらい青ざめていた。
「かなわないねぇ」
「すごいわ!!エルザ!!シリル!!」
闘技場にいる競技参加者のカナさん、ミラさんがそう言う。
「こりゃあぶったまげたねぇ」
「エルちゃんやっぱり最強だね!!元気最強!!」
同じく参加者の人魚の踵のリズリーさんとミリアーナさんも興奮気味にそう言う。
「さすが一夜さんの彼女さん。僕には眩しすぎる」
「さすがは僕のお嫁さんだね、シリルちゃん」
「あれを見せつけられた後に命知らずなボケかますねぇ!!」
「ワイルドォ」
ヒビキさんとイヴさんはキラキラしながらエルザさんとシリルを見つめ、その発言に四つ首の仔犬のノバーリさんとセムスさんが突っ込みを入れる。
「見事!!」
「すげぇなシリル。思わず見入っちまった」
蛇姫の鱗のジュラさんはそう言い、レオンさんはお菓子を喰わえたままシリルたちに盛大な拍手を送る。
「これは驚いたね、しかと記憶させてもらったよ」
剣咬の虎のルーファスさんも2人の戦いに驚いているみたいにそう言う。
「気に入らねぇな」
「全くでさぁ」
「・・・」
競技参加者の皆さんも2人に脱帽している中、ルーファスさんと同じ剣咬の虎のオルガさんと大鴉の尻尾のナルプディングさんは機嫌の悪そうな態度を取り、オーブラさんは全く関心を持っていないような態度を見せた。
「「「「「エルザ!!エルザ!!エルザ!!エルザ!!」」」」」
「「「「「シリル!!シリル!!シリル!!シリル!!」」」」」
会場中から2人の名前の大喝采が起こる。エルザさんは自分たちを見守ってくれた妖精の尻尾の応援席に視線を向け、シリルは私を包んでいた手を離し、観客の皆さんに手を振って答える。
「さすがエルザ!!」
「やった!!」
「シリルも頑張ったね~!!」
「すごいわ!!」
「祝福じゃ!!」
ハッピー、レビィさん、セシリーとシャルル、そしてマスターが大声でそう叫ぶ。
普段人を誉めるようなことがあまりないシャルルまで声を上げるんだもん、2人のやったことは本当にすごいよ!!
『1日目、ブーイングから始まった妖精の尻尾!!それがウソのようなこの大歓声!!』
『あの姿を見れば誰でもねぇ』
『私も正直、胸を打たれましたよ』
実況席も観客ももはや敵味方など関係なくなっている。
それだけのことをシリルとエルザさんはやったのだと私も思う。
第三者side
(俺にとっての失われた7年・・・全く、あの日々がどうでもよくなるようだ)
妖精の尻尾主要メンバーが行方不明になった7年前から最近までドランバルトは自暴自棄な生活を送っていた。
だが、そんな日々など忘れさせてしまうほどの衝撃を受けた彼の胸の中はこみ上げてくるものでいっぱいだった。
「た・・・大したことないですよ・・・うちだってあれくらいのことできますって!!」
「う・・・うん!!そうだよね!!」
「フ・・・フローもそうもう!!」
剣咬の虎のレクター、キセキ、フロッシュのエクシードトリオはこのそう言う。
「面白い。口先だけではないということか、妖精の尻尾」
ユキノの代わりにメンバー入りしているミネルバは笑みをこぼしながらエルザに視線を向けている。
「スティング、ローグ」
「あ?」
王者である剣咬の虎の面々すら驚愕している中、グラシアンは自分と同じ滅竜魔導士である2人に話しかける。
「お前らはナツさんとガジルさんだったなぁ」
「あ・・・あぁ」
「それがなんだ?」
グラシアンは2人にそう確認を取ると不敵な笑みを浮かべる。
「だったら、あのガキは俺が頂いてもいいってことだな?」
そう言ったグラシアンの瞳には、同じ滅竜魔導士であるシリルの姿しか映っていなかった。
「すごいねあの人たち・・・アチキ、初めて見たよあんなの」
「妖精女王って呼ばれるだけのことはあるね」
人魚の踵の待機場所でもベスとアラーニャが感嘆の声を漏らす。
「あのシリルって子、7年前に水の妖精って言われてた子かな~?すっごく可愛い~♪」
ソフィアは完全にシリルの性別を間違えているらしく、なんとかして体を触れないものかと頭の中で試行錯誤しているようだった。
(エルザ・スカーレット・・・ジェラールをよく知る者)
そんな中カグラは自分のすべてを奪った男、ジェラールのことをよく知っているエルザに興味を持っているようだった。
ウェンディside
『『伏魔殿』完全制圧!!妖精の尻尾A、10ポイント獲得!!』
会場に響き渡るアナウンスを押し消すような歓声、エルザさんは私たちを応援する仲間たちに『やったぞ』という意味を込めた拳を掲げる。
「イエーイ!!ありがとう~!!」
シリルは自分に向けられる歓声に答えようと両手を上げて答えているのだが・・・
「ハハッ・・・ハッ・・・」
その体がフラッと傾き、
「ダハァッ!!」
「ちょっ!!シリル!!」
天狼島でのハデスとの戦いを終えた際のナツさんみたいな転倒を見せる。私はあまりの倒れ方に心配し横たわる体を抱き起こす。
『あっとシリル選手、あまりの戦いで疲労しすぎたのか!?』
『まぁあれだけの戦いをしたんだからしょうがないよねぇ』
『むしろ、なぜエルザ選手が平然と立っていられるのかが疑問ですね』
シリルが倒れたことにチャパティさんとヤジマさんがそう言い、ラハールさんはなぜかあまり疲労の色も見せずにいるエルザさんを見て疑問を投げ掛けていた。
「大丈夫!?シリル!!」
「はにゃあ~・・・目が回る~・・・」
私が抱き抱えたシリルはあまりにも疲れすぎて目をクルクルと回してしまっていた。
「ダメだこりゃ」
「しばらく起きねぇだろーな」
「そりゃああんだけのことやったらねぇ」
「うむ、そうだな」
「てかなんでエルザは平気なのよ(汗)」
グレイさんたちもシリルのことを心配し、駆け寄ってくる。とりあえずここにいると迷惑もかかるし、しシリルとエルザさんのケガも治療してもらわないといけない。目を回しているシリルをナツさんがおんぶし、グランディーネのいる医務室へとシリルを連れていくことにしました。
「えー、協議の結果、残り7チームにも順位をつけないといけないということになりましたので・・・」
私たちが医務室にシリルを置いて(あとはグランディーネが見守っててくれるそうです)闘技場に戻ってくると、マトー君が他のチームの競技参加者の前に立ち話し始める。
「些か味気無いのですが、簡単なゲームを用意しました」
そういうマトー君の後ろにボールみたいな魔水晶がついたマシンのようなものが現れます。
「なんだこりゃ?」
「魔力測定器、名付けてMPF」
「魔力測定器というところか」
マトー君にマシンの名前を聞いたジュラさんがそう言う。
「ご明察、この装置に魔力をぶつけることで魔力が数値として表示されます。
各チーム2名の数値の合計が高い順に順位をつけようと思います」
魔水晶ビジョンにイメージ図としてマトー君がMPFに杖から魔法を放ち、装置の上に50MPという数値が表示される映像が流れる。
「純粋な力比べか・・・これはちょっと分が悪いかな」
「頭脳派のヒビキには厳しいね」
競技参加者のヒビキさんとイヴさんがそう言う。
「ところでカナさん?今日の夜ってヒマ?」
「ん~?」
ヒビキさんは隣でお酒の入っている瓶に口をつけているカナさんに話しかける。
「ヒマだけど・・・もう・・・一樽くらいしか入らないかも」
「飲みすぎだよぉ」キラッ
「っていうレベルじゃねーけどな!!」
「あらあら」
「すごいや!!」
「ワイルドォ」
闘技場にはカナさんがエルザさんとシリルが100体のモンスターと戦っている間に飲み干した大量の酒樽が転がっています。カナさんあんなにスタイルいいのにどこにあれだけのお酒が入るのかな?
「あの酔っ払い!!」
「ダメだな、ありゃあ」
「カナさん!!まだ競技終わってないですよ!!」
「ほえ?」
「まぁカナだし、仕方ないかな?」
ガジルさんとラクサスさんはお酒ばかり飲んでいるカナさんに呆れ、ジュビアさんが注意しようと叫ぶがすでに目がトロンッとなっているカナさんはわかっているのかよくわからない。カナさんの隣のミラさんはいつも通り笑顔を振り撒くだけだし、大丈夫なのかな?
「それでは始めましょ!挑戦する順番は先程の通りでカボ」
「じゃあ私たちからだね」
「私が先に行くよ!!」
最初の挑戦者は人魚の踵のミリアーナさん。ミリアーナさんは昨日まで被っていたフードコートを脱ぎ捨てるとそこからはまるで水着のような露出の高い服装へと変わる。
『おぉっと!!マントの下は何とも大胆な!!』
チャパティさんもミリアーナさんの格好に少々興奮気味、ミリアーナさんはそんなことなど気にすることなく手からMPFに向かって魔法を放ちます。
「キトゥンブラスト!!」
チューブがMPFの魔水晶へとぶつかり、その魔力の数値が表示されます。
ピッ【365】
『数値は365!!』
ザワザワ
ミリアーナさんの数値を見て観客たちは様々な反応を見せます。その理由は・・・
『とは言ったものの・・・比べる数値がないとこの数値が高いかどうかわかりませんね』
『うむ』
チャパティさんの言葉にヤジマさんがうなずく。
ミリアーナさんの出したこの数値はどれだけのものなのかMPFのことをよく知らない私たちと観客の皆さんはどんな反応をすればいいのか困っているのです。
『MPFは我々ルーンナイトの訓練にも導入されています。この数値は高いですよ。部隊長を任せられるレベルです』
『おおっ!!すごいということですね!!』
「元気最強!!」
ゲストのラハールさんの解説により、この数値が高いものだということがわかるとミリアーナさんは得意気に拳を掲げて叫ぶ。
「ミリアーナの真の力はパワーじゃないんだけどね」
「こりゃあちょっと不利かな?」
待機場所で待っているベスさんとアラーニャさんがそう言う。その間にリズリーさんもMPFに魔力をぶつけ、その数字が表示されます。
ピッ【221】
『続いてリズリーの数値は221!!合計で586となりました!!』
現時点でのトップとなる数値となった人魚の踵のミリアーナさんとリズリーさんの合計数値。他のギルドの人たちはどれくらいの数値を出すのかな?
「この競技、うちだったらカグラさんが一番向いてたかもね」
「まぁうちのギルド最強の魔導士だからね」
ソフィアさんとアラーニャさんがそう言う。
「ソフィアはこの競技絶対出れないけどね」
「何言ってるのベスさん!!ソフィアならパンチであれくらい出せるよ!!」
「それ魔力関係なくなってない?」
ベスさんの言葉にソフィアさんがシャドーボクシングしながら答えます。ソフィアさんって何だか子供っぽいですよね。なんか親近感が湧きます。
ピッ【124】
『続いて四つ首の仔犬ノバーリ!!数値は124!!先に終えたセムス選手と合わせて322!!ちょっと低いか?』
「フォー・・・」
「俺の扱いひどくね?」
ソフィアさんたちが話しているうちに次の挑戦者である四つ首の仔犬のノバーリさんとセムスさん。
ノバーリさんはあまり高い数値が出さなかったことに対して力ないフォーを言い、セムスさんは貴重な出番をカットされたことにショックを受けているようだった。
「僕たちの番だね」
「うん!!先に僕がいくよ」
「「「「「「「「「「キャーーーッ!!」」」」」」」」」」
次の挑戦者である青い天馬のヒビキさんとイヴさんは襟をただしながらMPFの前に向かう。会場のヒビキさんとイヴさんのファンの方たちは黄色い声援を送っている。
『どうやら先に行うのはイヴのようですね』
『イヴくんは元々評議院だったんだよな』
ヤジマさんにイヴさんが元々評議院だったことを聞いた会場の皆さんは「へぇ~」と声を漏らします。
『そうです。我々と同じ強行検束部隊、ルーンナイトの一員でしてね。いやぁ・・・当時からものすごい逸材でしたから、どれだけ成長しているのか楽しみです』
ラハールさんがそうコメントするとイヴさんは魔法を放つ体勢に入ります。
「白い牙!!」
イヴさんがMPFに向かって魔法を撃つとその数値が表示される。
ピッ【216】
『青い天馬イヴ!!数値は216となっております!!』
現段階ではミリアーナさんとリズリーさんに続いて3番目の記録を打ち出したイヴさん。それと入れ代わるようにヒビキさんがMPFの前へと立つ。
「イヴさんはともかく、知力タイプのヒビキさんには厳しいですね」
「俺とタクトが出てればな」
青い天馬のタクトさんとレンさんは2人の挑戦を見てそう言う。確かに昨日のタクトさんの魔法もすごいパワーだったし、レンさんも力はありそうだからイヴさんとヒビキさんよりも向いてたかもね知れませんね。
「君たち、友を信じたまえ」
「師匠!!・・・あれ?さっきまでどこにいました?」
「競技参加者を決める時はいませんでしたよね?先輩」
「うむ、ちょっとトイレの香りを」
突然現れた一夜さんにタクトさんとレンさんが質問し、一夜さんはポーズを決めながらそう言う。
ピッ【95】
一夜さんたちが話している最中にヒビキさんはMPFに魔力をぶつけたのだが、その数値はご覧の通りでした。
『青い天馬のヒビキ、魔力は95。先程のイヴ先輩と合わせて合計311です』
ヒビキさんの数値が低かったことにファンの皆さんが残念という声を上げる。
「な・・・なんてことだ・・・」
ヒビキさんはそれに対し手と膝をついて涙を流しています。
「信じた結果がこれか」
「とかいいつつよそ見してましたけどね」
「メェーン。だが失敗から学ぶことも大きい。これを糧に努力をしようではないか」
「「オスッ!!ありがたきお言葉です!!先生!!」」
寝転がりポーズを決めながらそういう一夜さんにレンさんとタクトさんは頭を下げて返事をする。
「あっひゃっひゃ!!お姉さんが慰めてあげようか?」
「ああ・・・今は君に甘えたい」
「ヒビキずるいよ!!カナさん!!僕も!!」
「あの・・・」
「さっそく努力してますね・・・」
酔っぱらっているカナさんがヒビキさんの頭を撫で、ヒビキさんはそのカナさんに抱きつき、イヴさんが羨ましそうにその様子を見ています。
『続いては大鴉の尻尾!!』
「まず俺からいくでさ」
コクンッ
大鴉の尻尾は1日目の競技パートに参加したナルプディングさんが先にやるようです。
「ニードルブラスト!!」
ナルプディングさんは腕に無数の棘を出してMPFにそれをぶつける。
ピッ【298】
『おおっと!!ナルプディングの数値は298!!次のオーブラ次第では1位になる可能性もあるぞ!?』
ナルプディングさんの数値はミリアーナさんほどではないけどそれに迫る数値でした。そして次に挑戦するのはオーブラさんなんだけど・・・
「あいつは・・・」
「シャルルとセシリーを襲った・・・」
「えぇ」
「プ~」
リリーとハッピーの言葉にシャルルがうなずき、セシリーは不機嫌そうに頬を膨らませています。
「レイヴンか・・・」
「どんな魔法を使うんだろ?」
ルーシィさんと私はオーブラさんの魔法を見ようと闘技場の様子を目を凝らして見ます。シリルが眠っちゃってるから今は私が情報を得ておかないと!!
バサッ
「キキッ」
オーブラさんが腕を広げると連れている黒い生き物がMPFに体当たりし、その数値が表示されます。
ピッ【4】
『なんと!!魔力は4!!先のナルプディングと合わせた合計は302!!』
チャパティさんも予想だにしなかった数値の低さに驚いているみたいです。
「なっ!?」
「ふざけてんのか!?」
これには当然ナツさんとグレイさんもそういうしかありません。
「ん~・・・」
「何なのあいつ!?」
私とルーシィさんは少しおふざけが過ぎるオーブラさんの態度に苛立ちを感じています。
「ウム・・・」
「てか、医務室にいなくていいの?」
エルザさんもその様子を見て唸っていましたがルーシィさんがさっきまで戦っていた傷だらけのエルザさんを見て心配しています。エルザさんってタフですよね、さすがS級魔導士です。
「これはちょっと残念ですが、やり直しは出来ませんカボ」
ヒョイッ
マトー君がオーブラさんにそう言うと突然その頭に被っていた帽子が後ろから取られてしまう。
「フフッ♪」
「あのちょっと?」
帽子を取ったのはカナさん。カナさんは帽子を頭に乗せながら楽しそうに鼻歌を歌っています。カナさんさすがに酔いすぎなんじゃ・・・
「まったく・・・何やってんだよオーブラ!!バッカじゃないの!!」
「黙れフレア。奴の魔法は人前では見せられん」
「は・・・はい」
「本気にさせると一番面倒な奴だからな」
「くくく」
オーブラさんの挑戦を見ていた大鴉の尻尾の皆さんはそんな話をしていたそうです。
「さーて現在トップは人魚の踵ミリアーナとリズリーの586カボ」
「やった!!私が一番だ!!ミャー!!」
「人魚なめちゃいけないよ!!」
現在の1位と言われたミリアーナさんはマトー君の腕を握ってブンブン振り回し、リズリーさんは誇らしげに胸を張っています。
ちなみに現在の順位はこんな感じです。
1位 人魚の踵 586
2位 四つ首の仔犬 322
3位 青い天馬 311
4位 大鴉の尻尾 302
「そいつはどうかな?」
「フフッ」
「「え?」」
喜ぶ2人にそう言って登場したのは現在フィオーレ最強ギルドの2人。
『ここで剣咬の虎ルーファス&オルガ登場!!すごい歓声です!!』
1日目の競技パートで1位を取ったルーファスさんとその後のバトルパートで圧勝したオルガさんの登場に会場の皆さんは大きな声援を送ります。
「さぁオルガくん!!ルーファスくん!!やっちゃってくださいよ!!」
「オルガ強いよねぇ」
「ルーファスだってすごいよ!!」
剣咬の虎の応援席にいるエクシードたちがそんな話をしています。
「私が先に行かせてもらおう」
そう言ってMPFの前に先に立ったのはルーファスさん。
「記憶造形」
「出た」
「何なんだあの魔法は?」
ルーファスさんがこめかみに人差し指と中指を当てる姿を見てグレイさんとリオンさんがそういいます。
「エンシェントスペル、つまり、古代魔法」
「目に見えているものだけが全てではないということですな」
初代とマスターがルーファスさんの魔法を見てそう言います。
「燃ユル大地ノ業」
ルーファスさんが地面に手を当てるとそこから赤い炎がMPFを強襲します。
ピッ【1028】
『なんとルーファス、4桁の数値を叩き出した!!』
「ミャー!?」
「私たちの倍だって!?」
ルーファスさんの出した数値がさっきまでの挑戦者たちより遥かに高く会場のミリアーナさんとリズリーさんも驚きを隠せません。
「いきなり数値上がりすぎだろ!!」
「1人でトップに立っちゃったじゃない!!」
ナツさんとルーシィさんも驚愕しています。
(記憶の造形魔法・・・)
皆さん驚きに包まれている中、グレイさんだけはじっとルーファスさんを見据えています。
(あいつを倒すのが俺の仕事だ)
グレイさんは心の中でそう思い、決意を新たにしていました。
『さ・・・さぁ続いてはオルガ!!果たしてどれだけ残りの蛇姫の鱗と妖精の尻尾Bにプレッシャーを与えられるか!?』
現段階で1位になっている剣咬の虎。オルガさんの一撃は残りの2チームに追い付かれないためにもより高い数値を出しておきたいはずです。
「120mm黒雷砲!!」
オルガさんが両手に溜めた魔力を砲弾のように使いMPFにぶつけます。
「「なーっ!!?」」
その威力に近くにいたヒビキさんやノバーリさんは思わず動きを止めてしまう。
ピッ【3825】
『さ・・・3000超え!?』
「ミャー!?私の10倍!?」
オルガさんの数値の高さに実況のチャパティさんとミリアーナさんがそう言う。
「なーっ!?」
「なんじゃそりゃあ!?」
「すごい!!」
ナツさんたちもオルガさんのパワーに目が飛び出るんじゃないかというほど驚いています。ミリアーナさんの365で評議院検束部隊の隊長クラスなんだからオルガさんの数値は圧倒的に高いことがわかります。
「さすがルーファスとオルガ!!」
「2人共最強ギルド剣咬の虎なだけありますね!!」
「フローもそうもう!!」
剣咬の虎のエクシードたちが小躍りしながらそう騒ぎ立てています。
「最強最強No.1!!俺たちゃ天下の剣咬の虎!!」
「歌はもういいですカボ」
「やはりすごいね、オルガは」
オルガさんがマイク片手に歌のようなものを披露しています。でもこれだけ高い数値が出せるなんてセイバーの人ってすごいですね!!
シェリアside
『さぁ続いては1日目のバトルパートでタッグを組んでいた聖十のジュラとレオン。果たしてこの2人はオルガとルーファスの出した4853という数値を超せるのか!?注目したいところです!!』
さっきのオルガって人が出した3825という数値とルーファスって人が出した1028という数値の合計を越せるかどうか・・・か。
「ジュラさんとレオンなら勝てるよね?」
「無論。俺の心配は他のところにある」
「え?」
あたしが心配しながら闘技場を眺めているとリオンが突然そんなことを言い出す。心配は他のところって・・・どういうこと?
あたしがリオンの言った意味をわからないでいるとレオンとジュラさんは何やら小声で話をしている。何話してるのかな?
「本当にそれで良いのだな?レオン」
「はい。これで行かせてほしいです」
「わかった。お前の力を彼等に見せてやるといい」
「あざす!!」
話し合いも終わったらしくレオンがMPFの前へと足を進める。MPFの前に立ち止まるとどこかにレオンは一度視線を向け、小さく微笑むとすぐに視線を戻す。
「今レオンどこに見てたの?」
「実況席の方を見ているようだったが・・・」
あたしとリオンはレオンが何をしようとしてたのかわからずにそんな話をしている。レオンはそのまま両手を合わせ、魔法の体勢に入る。
「アイスメイク・・・・・スノーライオン!!」
レオンがそう言って作ったのは薄い赤色のライオン・・・あれ?
「なんでレオン普通の造形魔法使ってるの!?」
「あいつ・・・何を考えているんだ?」
「オオーン?」
「レオン奴、ジュラがいるからってふざけていいわけじゃねぇんだぞ」
あたしとリオン、トビーとユウカもレオンの出した魔法にそう言うと後ろからやって来たオババ様が・・・
「うるさいね!!レオンが判断したんだからつべこべいうんじゃないよ!!回すよ!!」
「オオーン!!なんで俺だけー!?」
怒った口調でトビーを回し始める。オババならてっきり「なんで全力じゃないんだいレオン!!回すよ!!」とかいうかと思ってたのに、ずいぶんレオンのことを庇うんだね?ジュラさんも容認してるみたいだし、何か事情でもあるのかな?
ウェンディside
「あれ?レオンさんの氷って1日目は確か”黒“だったようね・・・」
「あたしもそう思ったんだけど、今は”赤“い氷になってるわよね?」
シリルと仲のいいレオンさんの出した氷のライオンを見て私とルーシィさんが疑問を持ちます。
「氷の造形ってそんな簡単に色変わんのか?」
「いや・・・んなはずはねぇと思うんだが・・・」
ナツさんがレオンさんと同じ氷の造形魔導士であるグレイさんに聞くけどそんなことはないのが普通みたい。私たちが話しているうちに、レオンさんはMPFに造形したライオンをぶつけます。
「いけ!!」
ガオオオオオオッ
けたたましい叫び声と共にライオンがMPFに体当たりするとその魔力の数値が表示されました。
ピッ【4798】
『なんと今度は4000超え!?』
「「なんだとぉ!?」
「えぇっ!?」
レオンさんの出したあまりの数値にナツさんとグレイさんが目を飛び出させ、簡単に記録を更新されたオルガさんも驚いていました。
それにしても4000超えなんてすごすぎるんですけど・・・
シェリアside
「もうレオンたら!!いつもの造形魔法ならあと1000くらいは出せたんじゃないの!?」
「それより、早くあの魔法を元通り使えるようしていればさらに2000は手堅いはずなんだがな」
「ラウルももう気にしてねぇんだからいい加減あれ単体で使えるようにしてくれねぇと困んだろ」
あたしとリオン、ユウカはレオンの現在の最高得点に少々納得がいかないでいる。レオンはパワーはすごいんだから本気になればもっといけるはずなのに!!
「うるさいねあんたたち!!レオンにだって事情があるんだよ!!」
「オオーン!!俺はいつまで回ってんだぁ!!」
あたしたちの不満にオババ様がそう怒鳴る。その被害者は間違いなくトビーだけどね。
「オババ様があれだけレオンの肩を持つのも珍しくよね?」
「それは俺も思った」
あたしとリオンはオババ様に聞こえないようにコソコソとそう言う。ジュラさんも全く注意する気もないみたいだし、もう本当に何かあるんじゃないの!?
『さぁ続いて聖十のジュラはこの数値をさらに更新することができるのか!?』
レオンとジュラさんがすれ違い様にハイタッチする、といってもレオンが手を出してジュラさんがそれに合わせて手を出しただけなんだけどね。
「そういえばリオンの言ってた心配って何なの?」
「ああ、それはだな・・・」
あたしがリオンにさっきの心配事を聞こうとするとジュラさんはMPFの前で手を合わせる。
『蛇姫の鱗ジュラ、集中しているようです』
目をつむり深く呼吸をしているジュラさん。その体が次第に光だすと同時に、会場であるドムス・フラウが大きく揺れる。
『地鳴りが!!』
『すごいプレッシャーを感じますね』
そしてジュラさんが目を開くとMPFの下からたくさんの光が現れ、MPFを飲み込む。
「鳴動富嶽!!」
その光は空へと伸びていき、次第に消えていく。
ピッ【8544】
MPFに表示された驚愕の数字に会場の観客たちは目を見張る。
『8544!?これはすごすぎる!!』
「ナニーッ!?」
「オッサンおかしいだろそれ!?」
「うわぉ!!」
「さすがの一言だな」
妖精の尻尾のAチームの人たちとレオンがそう言う。やっぱりジュラさんってすごすぎだね!!
「そのあまりの強さに聖十の称号を持つ者の出場を制限されないか、ということだ」
「そっか、それがリオンの心配」
リオンの心配にはあたしも納得できる。だってそれくらいすごいもんね。
ウェンディside
『こ・・・これはMPF最高記録更新!!やはり聖十の称号は伊達じゃない!!』
ジュラさんの数字はオルガさんの倍以上の数値、現時点でのトップは蛇姫の鱗のジュラさんとレオンさんの13342となりました。
「こりゃあたまげたわい・・・ギルダーツと良い勝負か」
「ウフッ。そのギルダーツの血を引くものがそこにいるのをお忘れなく」
マスターと初代が応援席でそんな話をしています。そう、次はついに私たち妖精の尻尾の番です!!
『最後の挑戦者は妖精の尻尾B、ミラジェーン&カナ!!』
「ヒック、やっと私たちの出番かい?」
コールを受けたカナさんはすでにベロベロで立っているのもやっとのように見えます。
「大丈夫なの?カナ」
「大丈夫大丈夫!!あんたは心配せずにいい数字出してきなって!!」
さすがのミラさんも心配しているけどカナさんは全く気にした様子もなくミラさんを送り出す。
『ジュラのあとはなんともやりずらいでしょうが・・・』
「ま、頑張ってくださいカボ」
「は~い♪」
ミラさんはマトー君に笑顔で答えると接収で1日目に見せたあの姿へと変身します。
「あれは確かミラさんのサタンソウルの中で最強の姿!!」
「魔人、ミラジェーンシュトリ!!」
「ハアアアアアッ!!」
ミラさんはさっそく最強の悪魔の姿でMPFへと攻撃をぶつけます。果たしてその数値は?
ピッ【3448】
『おおっ!!これもすごい!!3000を超えてきました!!』
「すごい!!」
「さすがミラさん!!」
ミラさんの出した数値もオルガさんに迫る好成績!!次のカナさん次第では2位の記録は出せるかも!!
「じゃ、あとはよろしくね。カナ」
「ウェーイ!!」
元の姿に戻ったミラさんとカナさんはタッチして入れ代わります。
「カナの奴、べろんべろんじゃねぇか」
「あれで4桁いくんでしょうか?」
「いくらなんでも難しいかな?」
グレイさん、私、ルーシィさんがそう言います。だけどミラさんのお陰ですでに3位は確定ですし、カナさんもあまり無理しなくても大丈夫ですかね。
「ん~!!」
カナさんは上に羽織っている白いシャツを脱いでいき、上半身が水着だけの姿へと変わります。
「ん?」
マスターは上着を脱いだカナさんの右腕にあるあるものを見ています。
「さ!!ぶちかますよ!!」
マスターが驚いたのは右腕に刻まれている赤く光る紋章。それに見覚えのある私とルーシィさん、そしてナツさんは驚いています。
「ま・・・まさか・・・」
「特別に貸して差し上げました。勝つために!!」
「がぁぁぁ!!」
キラキラした瞳でそういう初代。マスターはそれに真っ白になっています。
「集え、妖精に導かれし光の川よ!!」
腕を掲げるカナさん。その回りには金色の光がカナさんを包むように空へと伸びる柱を作っています。
「元々あの者にはすごく高い潜在能力があります。彼女なら使いこなせるでしょう」
「照せ!!邪なる牙を滅するために!!」
カナさんが腕を降り下ろすと天狼島で見た光の輪がMPFに向かって落ちてきます。
「妖精の輝き!!」
砂塵に包まれる闘技場。その煙が晴れると、なんとMPFがあった場所には何も残っておらず、【9999】という数値だけが大きく残されていました。
『な・・・なんということでしょう!!MPFが破壊!!カンストしています!!何なんだ!?このギルドは!?』
会場の皆さんはカナさんの放った妖精の輝きに威力に言葉を失っています。
『これにより妖精の尻尾Bの数値は13447!!なんと蛇姫の鱗レオンとジュラの数値を上回りました!!
競技パート1、2フィニッシュ!!もう誰も妖精の尻尾を止められないのか!?』
「止められないよ!!なんたって私たちは妖精の尻尾だからね!!」
両手を広げてそう言うカナさん。観客の皆さんはそれを聞きさっきまでの言葉を失っていた様子から一転、大歓声へと包まれます。
闘技場にいるカナさんとミラさんに送られる声援。2人はそれに笑顔で答え、闘技場を後にしました。
後書き
いかがだったでしょうか?
今まで書いたお話の中で一番長かった気がします・・・
最後の方はside何度もチェンジしてすみませんでした。
最終日にレオンの過去やらラウルを連れてる理由やらを出す予定なのでこのようにさせていただきました。
それと参加者たちのMPF数値は「このくらいこのキャラには出てほしいなぁ」という作者の願望の元設定させてもらっています。
次はバトルパート突入です。
次回もよろしくお願いします。
ページ上へ戻る