とあるの世界で何をするのか
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第四十一話 レベルアッパー取引現場
木山先生とファミレスで話をした翌日、俺は騎龍の姿で散歩をしていた。本来なら佐天さんがレベルアッパーを見つけていてトリックアートという能力者に出会ってしまうはずなのだが、昨日の様子を見る限りでは佐天さんがレベルアッパーを持っていないようだったので、その辺の所も確認しておきたいのだ。
「あれ、神代君」
レベルアッパーの取引場所はあらかじめ調べていたので、そこに向かって歩いていると佐天さんから声を掛けられた。どうやらレベルアッパーを持っていなくてもトリックアートと出会う事になりそうである。まぁ、トリックアートと出会うのが今日では無い可能性もあるのだが……。
「おー、佐天さん。こんなところでどうしたの?」
「うん、えっとね……」
俺が答えて尋ねると佐天さんは気まずそうにケータイを取り出した。佐天さんのケータイは電話だけで無く音楽プレイヤーを兼ねているので、一瞬レベルアッパーの事が頭をよぎる。
「実は……今、レベルアッパー持ってるんだけど……どうしたら良いかなと思って……」
「え?」
前もって少し予想できていたこともあってか、佐天さんから告げられた衝撃の事実に対してあまり大きな反応が出来なかった。
「あ……あのね。昨日の夜に気付いたんだけど、重福さんからメールが届いてて……その中に添付ファイルとして入ってたの。本当は一週間ぐらい前にメール来てて、重福さんとは手紙でのやりとりしかしてなかったからちょっと変だなと思って見ずに持ってたんだけど、この前白井さんが言ってたバンクに登録されたレベルと実際の能力に差があるっていうのを思い出して開けてみたんだ。そしたら、中にレベルアッパーが……」
俺の反応が薄かったためか、佐天さんが少し早口でしゃべり始める。早口なのに言いにくそうにどもっているのは器用というか何というか……。そう言えば、重福さんは保護観察処分と言う事で、すでに普通の生活に戻っていると倒れる前の最後に送られてきた手紙に書いてあった。しかし、レベルアッパーは取り上げられなかったんだな……っていうか、まだレベルアッパーは公になってないからそこまで調べられなかったのか。
「そっか。それで、それを初春さんの所に持って行く途中だったりする?」
どう考えても現在地は風紀委員の177支部とは方向が違うのだが、俺は取り敢えずそう聞いてみた。
「え……っと……それが……」
レベルアッパーを実際に入手してしまった事で、佐天さんはやっぱり使ってみたいという気持ちが強まっているようだ。
「あー、まだ使ってみたいって思ってるのかな。それでも取り敢えず、レベルアッパーだけは初春さんの所にも送っといた方が良いんじゃない?」
「あっ、そ……そうだね。……あれ、充電切れ……」
俺の進言で佐天さんがケータイを操作しようとするが、ピッという音と共にバッテリー切れを示す表示が出ると、佐天さんのケータイはそのまま電源が切れてしまった。
「あらま、それならレベルアッパーの入ってるメモリーカード貸して?」
「う……うん」
佐天さんからメモリーカードを受け取り、俺のケータイでデータを読み込む。
「レベルアッパーってこのファイル?」
「うん、それ」
一応俺は知っているのだが、佐天さんにレベルアッパーのファイルを確認してから初春さんへ電話を掛ける。
「あ、もしもし、初春さん? レベルアッパー入手したからそっちに送るねー」
『え、神代君? どういうことですかっ!?』
「取り敢えず、今から送るから待ってて」
『ちょっ、こ……』
佐天さんの事もあるので余計な詮索をされないうちに電話を切って、すぐにメールで初春さんにレベルアッパーを送った。
「送信っと、これで良し。はい、メモリーカード」
「あ……うん」
こうして一通りの作業が終わったのでメモリーカードを佐天さんに返し、最後に一つだけ忠告をしておく。
「それはしばらく持っておけば良いと思うよ。佐天さんの能力を使いたいっていう気持ちは、最初から能力が使えてる俺なんかに正しく理解できてるはずも無いからね。レベルアッパーの危険性とか、使ってる人がどうなってるかって言うのも佐天さんは知ってるんだし、それでもなお使いたいって言うなら……俺は止めない」
「う……うん。ありがと」
佐天さんの表情が少し明るくなっただろうか、昨日の話し合いの事もあるし、佐天さんがレベルアッパーを使う可能性はかなり減っているのでは無いだろうか。そんな事を考えながら佐天さんと一緒に歩いていると、空き地の方から声が聞こえてきた。
「これじゃー足んねーんだよなぁ」
「この値段でレベルアッパーを売ってくれるって言ったじゃないか!?」
「ついさっき値上がりしちゃってさぁ。コイツが欲しけりゃ、もう10万持ってくるんだな」
話の内容から間違いなくトリックアートがレベルアッパーを取引している現場だろう。そしてレベルアッパーを売りつけられている相手は、二次創作などでよく『ヒムラ』と言われていた人物だ。本当の名前は知らないし、もしかしたらアニメのエンディングでも『少年A』ぐらいにしか表記されてなかったのかもしれないが……。そんな事を考えながらも俺は、持っていた超小型ビデオカメラをマグネットで近くの金属板に固定してから録画し始める。
「そっ……そんな大金すぐに用意できるわけ無いだろ。だったら、今渡した金を返してくれ」
「あぁ? 何言ってんだコイツ。お前のレベルが上がるのと、たかだか10万程度の金と比べるまでもねぇだろーが! レベルアッパーは売ってやるって言ってるんだから、素直に金用意して来りゃ良いんだ……よっ!」
さすがに『ヒムラ』とか『少年A』では問題ありそうなので、適当に『マッシュルームカット』とでも呼ばせて貰うが、そのマッシュルームカット君に対してトリックアートの舎弟が脅しを掛けて最後に蹴りを入れる。「たかだか10万程度」等と言っているけど、レベルアッパーを欲しがるような人が、その金額を工面するのにどれだけ大変か知らないのだろうか。
「うぐっ……がっ……や、やめてくれ」
「ど……どうしよう、神代君」
トリックアートの命令によって舎弟達がマッシュルームカット君に暴力を奮い始めたのを見て、佐天さんが俺の腕にしがみついてきた。このままじっとしていても意味が無いので、俺は佐天さんに自分のケータイを渡す。
「これで初春さんか白井さんに電話して。」
「ん、なんだ? お前ら」
俺が佐天さんに頼むと、その声に気付いたのかトリックアートが振り返ってこっちを見ていた。
「まー……何て言ったら良いのかねぇ……。ちょっと通りすがっただけで、特に善良ってほどでも無い只の一般市民……ってところだ」
俺はトリックアートの方に向かってしゃべりながら歩き、見えている位置と気配を感じる位置の誤差を確認する。わざわざ時間を掛けるようにしゃべっているのは、佐天さんが初春さんに連絡する時間を稼いでいるのである。舎弟の二人は能力が分からないのでそちらへの注意も怠らない。
「何だと? ちっ、ヒーロー気取りのガキかよっ!」
「初春! すぐに白井さんをっ、レベルアッパーの取引現場だから早くっ!!」
トリックアートが悪態をついたところで、初春さんとの電話が繋がったようだ。後は初春さんから白井さんに連絡が行って、白井さんがこの場所に到着するのを待つだけである。
「ああ? ジャッジメントでも呼んだってかぁ?」
「はい、呼ばれましたの」
馬鹿にしたように言ったトリックアートに答えたのは俺の隣に現れた白井さんである。
「のわぁっ!?」
「早っ!!」
いきなり現れた白井さんにトリックアートと佐天さんが驚く。いや、俺も驚いたのだが声を出す事が出来なかった。
「いくら何でも早すぎない? 白井さん」
取り敢えず冷静になって白井さんに聞いてみる。まだ佐天さんが掛けている電話は初春さんと繋がったままか、初春さんが電話を切った所ぐらいのはずで、どう考えても白井さんまで連絡が来ているとは思えないのである。
「初春からレベルアッパーが取引されている可能性のある場所ということで、元々こちらにも来る予定だったのですが、初春からの指示で先ほど神代さんがメールをしていた場所に行ってみたところで佐天さんの声が聞こえましたの」
「あー、なるほど」
白井さんの説明で俺は納得した。俺がレベルアッパーを送った時に初春さんから俺の居た場所へ行くように指示されていた白井さんは、その場所からここで初春さんへ電話している佐天さんの声を直接聞いたのだ。その為即座にこの場所まで来られたというわけである。
「それで、レベルアッパーの取引をしているというのは、こちらの方々ですの?」
「うん、そうみたい。まー、値上がりしたとか何とかって難癖付けて結局金だけだまし取ろうとしてたみたいだけどね」
白井さんからの確認に俺は今までの状況を答える。多少俺の主観で説明しているが、ほぼ間違ってないだろう。
「あら、そうでしたの。というわけで、ジャッジメントですの! おとなしくお縄を頂戴して下さいな」
「へっ、ジャッジメントだとよっ! いきなりの登場は驚いたが、ただガキが一匹増えただけじゃねーか!」
俺の説明を聞いたところでようやく白井さんからお約束の台詞が放たれ、それを聞いたトリックアートの舎弟が白井さんに向かって言い返す。この舎弟は、さっきマッシュルームカット君に蹴りを入れていた方だ。
「はぁ……今日はここまで無駄足続きだったというのに、佐天さん達がいきなり当たりを引き当てているとは……」
すでに俺がレベルアッパーを初春さんに送っているので、レベルアッパーの取引場所を探す必要は無くなったはずなのだが、それでも俺達の方が先に取引場所に遭遇していた事がショックだったのだろう。
「何だぁ? 余裕かましやがって、テメェ一人で何が出来るってんだ!」
「あなた方を確保するぐらいなら私一人でも何とかなりますわよ」
怒りを露わにして白井さんに詰め寄る舎弟に対して白井さんは冷静に答えている。確かに今の白井さんなら舎弟ぐらいは簡単にあしらえるだろう。
「はっ、出来るモンならや……べふっ」
白井さんに掴みかかろうとした舎弟がいきなり逆さまになって頭から落下する。テレポートによって相手を逆さまにするだけなのだが、かなり有効な手段なのだろう。何というか、首の骨がぐしゃと変な音を立てたようにも聞こえたが、その辺は白井さんもちゃんと手加減をしていると思いたい。
「なっ! テメェ、よくもっ!!」
いきなり一人が倒されて、もう一人の舎弟が白井さんに殴りかかってくる。ただ少し距離があったので、殴る構えのまま走っているというちょっと滑稽な状態である。
「はぁっ!!」
「あぐっ」
白井さんはテレポートで後ろに回り込み、思い切り鞄を頭上に振り下ろした。鞄の角が頭頂部に直撃したのでかなり痛そうである。これで舎弟の二人は簡単に撃沈してしまったわけだ。
「さて、後はあなた一人ですわよ?」
「へへっ、なかなか面白ぇ能力使ってるじゃねーか。コイツは楽しめそーだなぁ」
殴り倒した舎弟が気絶しているのを確認した白井さんがトリックアートの方へ振り返ると、ゆっくりとトリックアートが白井さんの方へ向かって歩き出した。ここでようやくトリックアートの気配を感じる位置と見えている位置にずれが生じる。白井さんがテレポーターなのはさっきまでの戦闘を見て分かったはずだし、白井さんの目をごまかす事はかなり有効な方法だろう。
「白井さん、ソイツ見えてる位置と実際に居る場所が違うよ」
「ああっ? テメェ、俺の能力に気付きやがったのか」
俺が白井さんに注意を促すと、トリックアートが驚いたように俺の方を見てきた。いや、“見えている”トリックアートは俺の方を見ているように見えないのだが、トリックアートが俺を注視している気配をひしひしと感じるのである。
「なるほど、そう言う事でしたのね」
白井さんはすぐに正しく把握してくれたようで、トリックアートに対しての警戒を更に強めている。
「代わりに俺がやろうか?」
「いえ、大丈夫ですの。相手の能力を知らなければかなり危なかったかもしれませんが、教えて貰いましたし後はこちらで何とか致しますの」
俺は気配が分かっていると言う事で一応白井さんに声を掛けてみるが、思った通り白井さんは自分で決着を付けたいようだ。
「じゃ、頑張って」
「勿論ですの」
どういう方法でトリックアートを撃退するかは想像も付かないが、白井さんなら大丈夫だろうと思って任せる事にする。白井さんの雰囲気からもかなり強い勝算があるのだろう。
「テメェら、ふざけやがって!」
「他人の演算を借りて能力と暴力を奮ってるあなた方には言われたくありませんの」
俺と白井さんのやりとりにトリックアートが声を上げ、それに対して白井さんは呆れたように返していた。
「だいたい、俺の能力に気付いたところで、俺の居場所は分からないんだからな!」
「いや、分かるけど……」
「分からなくても分からないなりに対処のしようはありますのよ」
「なんだとっ!?」
トリックアートの言葉に対して俺がボソッと呟く中で白井さんはそう言うと、廃ビルの解体作業で使う足場用の鉄パイプが置いてある場所に向かう。
「テメェら、黙って聞いてりゃいい気になりやがって!」
「いや、黙ってなかっただろ」
「対処する方法があるなんてはったりだと思われているのかもしれませんが、あなた程度ならこれで充分ですの」
怒りを露わにするトリックアートに対して俺が突っ込みを入れる中、白井さんは淡々としゃべりながら鉄パイプに触れた。
「なっ!! うがっ」
白井さんがテレポートさせた鉄パイプは2本だったのだが、腰の高さと胸の高さで横向きに飛ばされた鉄パイプは、見えているトリックアートをすり抜けて斜め後ろに居た実体へ見事に直撃したのである。確かに矢のように飛ばす白井さんの武器だと相手の正確な位置が分からなければ当てる事が出来ないわけだが、一本5mを超えるぐらいの鉄パイプを横向きで飛ばせばかなり離れた位置に居ない限りは当たるだろう。しかも縦方向まで考えて二本を上下に配置し同時に飛ばしている辺り、さすが白井さんとしか言いようがない。
「それで白井さん、コイツらどうすんの?」
「そうですわねぇ……初春がアンチスキルにも連絡を入れているはずですし、到着するまえに気がつかれると厄介ですから拘束しておきますわ」
俺が聞くと白井さんは鞄からロープを取り出して犯人達を拘束していく。慣れているというのか、あまりの手際の良さに思わず感心してしまった。
「神代君、白井さん、もう大丈夫なんですか?」
「もう大丈夫だよ」
「ええ、大丈夫ですわ。後はアンチスキルが来るまで待つことにして……その間に詳しい話を聞かせていただきますの」
白井さんが犯人を拘束し終えた後、これまで後ろの方で隠れて状況を見ていた佐天さんが聞いてきたので、俺と白井さんが答える。
「それなら、俺達が見かけてからの一部始終を録画してあるからこれを見ると良いよ」
「いつの間にそんな事してたんですか!?」
「いつの間にそんなものを?」
もし白井さんが来るのが遅くなって、俺がトリックアートの相手をしなければならないという状況になったときのために仕掛けておいた、小型ビデオカメラを取り外して白井さんに見せる。
「ここに来てすぐぐらいからだよ」
「ま……まずは見せて下さいまし」
「はい、どうぞ」
白井さんにビデオカメラからメモリーカードを抜き取って渡すと、白井さんは自分のケータイに差し込んで映像を見始める。白井さんのケータイって特殊な形してるけど、メモリーカードを挿す場所ってあったんだ……。
時間にして数分と言ったところだろうか、白井さんが全ての映像を見終わってメモリーカードを返してくれた。映像データは白井さんから初春さんの方へ送られたらしい。
「ビデオを撮る前の状況とかはどうでしたの?」
「俺達が来たときにはすでに被害者が「話が違う」みたいな事言ってて、コイツらが「値上がりしたからあと10万持ってこい」って言ってた所ですぐにビデオ回し始めたから、ビデオの前はそのぐらいしか見てないよ」
白井さんからビデオ映像より前の状況を聞かれるが、ここに到着して早々にビデオを回し始めたのでそれほど説明できる事が無い。そんな事を言っている間にアンチスキル車両のサイレン音が聞こえてきた。
「そうでしたの」
「あ、アンチスキルが来たみたいですね」
白井さんがうなずいたところで佐天さんもサイレン音に気付いたようだ。
「うん、思ったよりも早いね。セブンスミスト爆破の時はもっと遅かった気がするけど」
「あれは店の前まで到着してから、中に入って爆発現場まで行くのに時間が掛かっただけらしいですわよ」
セブンスミスト爆破事件の時は結構待たされたようなイメージがあったので、つい思ったままを声に出してしまったが、白井さんからその時の状況が説明された。爆発が起きた階以外はそれほど被害も無かったので、アンチスキルの隊員は停止していたエスカレーターを使って上っていたらしいのだが、俺達の居た階に上るエスカレーターは爆発のショックでロックが壊れていたようで、エスカレーターで上る事が出来ず、そして、階段を使って上るも非常扉が閉まった状態で変形しており、それを開けるのにもまた一苦労したと言う事である。
「でも初春さんに連絡が来た時にはアンチスキルも出動が掛かってたはずだよね。だったら、爆発した時には店の前ぐらいまで来てても良かったんじゃない?」
「爆発物事件ですから装備とか色々あったのではありませんの? 今回は暴行傷害の犯人拘束だけですから特殊装備の装着などは必要ないですし」
「なるほどねぇ」
俺が更に疑問をぶつけてみるが、アンチスキルではない白井さんにそこまでの事は分からないのだろう。そんな話をしている間にアンチスキルの車両は目の前に到着していた。
「こいつらがレベルアッパー使って暴れてたってやつかじゃん?」
車から降りてきた黄泉川さんがトリックアート達を指差して白井さんに尋ねる。
「ええ、そうですの」
「よし、こいつらをしょっぴくじゃん」
白井さんの答えを聞くと、黄泉川さんは後から降りてきた隊員達に指示を出していく。こういう状況だと凄く格好良いのに何であんなに残念臭がするのだろうか……。
「ちょっと事情が聞きたいじゃん」
「はいですの」
黄泉川さんに呼ばれて白井さんが向かうと、黄泉川さんは俺達の方にも手招きをしている。
「あ……私達もですか?」
「当然じゃん」
俺は何も言わずに歩き出していたのだが、佐天さんは関係ないと思っていたのか確認をしていた。
黄泉川さんに対しての説明も、ビデオのデータがあったのでそれほど時間が掛かる事も無くあっさりと終わった。とはいえ、当事者であるマッシュルームカット君が逃げ出してしまっていたので、佐天さんと白井さんから「抜けている」とまた言われてしまったわけだが……。また、その会話とトリックアートの事を白井さんに伝えた部分のビデオ映像から、黄泉川さんも俺が気配を読める事を確信したようである。
「しかし、ジャッジメントのはともかくとして、どういう偶然だか郵便局強盗に巻き込まれたのと銀行強盗に巻き込まれたのがそれぞれ一人ずつ居るじゃん」
「ええ、そうですわね……え?」
一通りの事情聴取が終わって、黄泉川さんが言った言葉に白井さんがうなずいてから首を傾げた。どうやら黄泉川さんはまだ俺の事を知らないらしい。そう言えば、郵便局強盗事件の時はまだ男女の切り替えが出来なかった頃なので、バンクを見てもそんな事が書いてあったはずは無いのだ。
「ん? どうかしたかじゃん?」
「いえ、神代さんは銀行強盗事件の時にも居たかと……」
「うん、居たね。姫羅だったけど」
白井さんの反応を不思議に思った黄泉川さんが聞いてきて、それに白井さんが答える。しかし、それだけでは伝わらないだろうと思ったので、俺も一言付け加えた。
「……きら? 神代姫羅ってお前かじゃん!?」
「ええ、そうですよ」
こうして黄泉川さんは大いに驚き、佐天さんと白井さんは苦笑いをしていたのである。
後書き
お読みいただいた皆様、ありがとうございます。
長い間お待たせして申し訳ありませんでした。
アイテム組が超電磁砲組と接点を持ったので、超電磁砲系のストーリーはかなりプロットを組み直しました。……いや、組み直している途中です。
一体いつになったら禁書目録ストーリーに入れるのやら^^;
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