ジャラーの悪戯
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3部分:第三章
第三章
「生きておるし。これは何事なのじゃ」
「驚いた?」
ところが。ここで不意に女の声が聞こえてきたのでした。
「おや?」
「あの声は」
「うむ、間違いない」
御后様達も王様の今の言葉でわかりました。それが誰の声なのか。
「王様、いる?いたら返事してくれない?」
「ここにいますぞ」
「ああ、そこなんだ」
また声が返ってきました。それはやっぱりジャラーの声でした。早速部屋の中にそのジャラーがやって来ます。あまりにも大きくて宮殿の天井を取り外してそこから入って来たのでした。最初からもうかなり迷惑な部屋の入り方でした。
「やあやあ、こんにちは」
「こんにちわですか」
「最初はまず挨拶をしないとね」
何故か変なところで礼儀正しいジャラーでした。
「だからこんにちは」
「御機嫌麗しいようで何よりです」
「堅苦しいねえ」
ジャラーは王様の今の挨拶に少し口を尖らせてきました。
「別にそんなふうにしなくていいんだよ、あたしにはね」
「そうなのですか」
「あたしは堅苦しいことは嫌いなんだよ」
また笑って話すのでした。
「だからさ。こんにちはでいいんだよ」
「はあ」
「この話はこれでね」
話し終えるともう別の話に移るのでした。
「さてと、困ってるみたいだね」
「おわかりなのですか」
「だから。あたしは神様だよ」
王様と御后様達の前に聳え立つように立って話をしてきました。
「わからない訳ないじゃないか」
「それでおわかりなんですか」
「丁度今ここにその困ってる話があるしね」
ちらりと半分半分になっている子供を見ます。
「おやおや、これは」
「これなのですよ」
王様はその半分に分かれて泣いている子供を見てジャラーに話すのでした。
「どういうわけか。何で半分に分かれたのか」
「そうです」
「どうしてこんな」
御后様達も困り果てた顔になっています。その困り果てた顔でそれぞれ子供を抱いています。その半分ずつをしっかりと。
「あたしがやったからね」
「えっ!?」
「ジャラー様が!?」
王様も御后様達も今のジャラーの言葉に唖然とします。
「それはどういうことですか!?」
「やったとは」
「だから。マンゴーを半分ずつなんだよ」
ジャラーは笑いながら王様達に話すのでした。
「半分ずつ食べたからね。だから」
「子供達が半分ずつなんですか」
「それでなんですか」
「そういうことだよ。驚いたかい?」
「驚くも何も」
王様達は驚くことしきりでした。とりあえずどうして子供が半分ずつになったのかわかったのです。ところが問題はまだ残っていました。
「それはわかりましたが」
「そうです」
「子供はどうしたら」
三人揃って口を開いてきました。半分半分なのはおかしいのは言うまでもないです。問題は子供がどうやったら元に戻るかです。三人はそれをジャラーに問うたのです。
「そんなのは簡単だよ」
にこりと笑って答えるジャラーでした。
「子供を普通にしたいんだね」
「そうですよ」
「それはどうしたら」
「貸してみな」
あっけらかんとした笑顔で少し怒った顔になっている御后様達に答えるのでした。
「子供をね。すぐに終わるから」
「すぐにですか」
「あたしは悪戯はするけれど嘘はつかないよ」
こうしたところでは正直なジャラーでした。
「絶対にね」
「それじゃあ」
「今度も」
「だから。貸してみな」
ここであらためて子供を渡すように二人に言うのでした。
「本当にすぐだからね」
「はあ」
「そうでしたら」
御后様達も今はジャラーの言葉を聞くしかありませんでした。とにかくこの半分半分になってしまった子供をなおせるというのはジャラーしかいないのですから。正直今は藁にもすがるような気持ちだったのです。元々ジャラーのせいなのですから考えてみればおかしいのですが。
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