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オズのカエルマン

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第十一幕その九

「もう僕は海に帰るよ」
「じゃあもう二度とだよ」 
 魔法使いはモビーディッグに念を押しました。
「川に入ったら駄目だよ」
「そうするよ」
「さもないと誰にもいいことが起こらないからね」
「本当にその通りだね」
 モビーディッグもしみじみとして思うのでした。
「もうこんなことはしないよ」
「幾ら欲しいものがあってもね」
「うん、皆に迷惑をかけたみたいだし」
「まだそこまではいっていないけれど」
 カエルマンはモビーディッグに穏やかな声で諭すのでした。
「それでもね」
「こうしたことは二度とだね」
「するべきでないよ」
「水の気を乱すとよくない」
 青龍が言うことはといいますと。
「それはオズの国全体に及ぶんだよ」
「そうなるんだね」
「かく言う私も」
 ここで自分のことにも気付いた青龍でした。
「気になったとはいえ」
「東から離れますと」
「よくない」 
 ケーキにも言うのでした。
「反省しないと」
「長い時間東から離れれば」
「やはりよくない」
「青龍さんは東にいるものだからですね」
「その通りだよ」
「だからですね」
「もう二度と」
 それこそというのです。
「東を長い間留守にしてはいけない」
「もう絶対にですね」
「心に刻んでおくよ」
 ケーキにも約束しました。
「もうね」
「旅行位ならいいんだよ」
 魔法使いはこう穏やかにお話しました。
「それ位ならね」
「旅行はいいんだ」
「うん、ただね」
「長い間自分のいるべき場所を留守にすると」
「よくないんだ、そしてモビーディッグ君の場合は」
 魔法使いも彼に言うのでした。
「また違っていてね」
「海にいるべきだからだね、僕は」
「川や湖にいると君にもよくないから」
「僕は完全に海にいるべきなんだね」
「身体の構造がそうなっているんだ」
 そもそもというのです。
「僕達人間がそのままではお空を飛べないことと同じで」
「僕は川には住めない」
「実際川にいてあまり体調はよくなかったね」
「どうにもね」
「そのことにもう出ているよ」
 モビーディッグが川にいてはいけないことが、です。
「既にね。それに居心地もだったね」
「あまりね」
「海の方がいいね」
「僕にとってはね」
 こうも答えたモビーディッグでした。
「ずっといいよ」
「そうだね、だからね」
「川に入らないよ」
「それがいいよ。若しどうしても欲しいものが川にあれば」
 それが我慢出来ないまでならというのです。
「何時でもお願いすればいいよ」
「誰にかな」
「私達にだよ」 
 魔法使いはモビーディッグに微笑んでこうも言ったのでした。 
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