ランス ~another story~
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第3章 リーザス陥落
第38話 仕事は早い者勝ち
ランス達は、アイスの町の武器屋へと向かっていた。
その道中、何故かランスは鼻の下を伸ばしているようだ。はっきり言ってその意味が判らないのだった。
「ぐふふ、カオスってのが女の子で、魔人の天敵~だったら、可愛がってやるんだがな!」
何故か、ランスはリーザスで封印されてるカオスが女の子では?と想像を膨らませていた。ついさっき、ユーリやかなみが恐らくとはいえ 武器である可能性が高いと言った筈なのに……。だが、ユーリとかなみの憶測なのは間違いないけれど。
「なんでそうなるんだよ……相も変わらず明後日方向……」
「ランス様、流石にカオスって女の子じゃないと思うんですけど……、名前的にも」
シィルも、言う。名前的に違うだろう、と言っている。
そう言う問題なのか?とも思えたが結構的を得ている気もしていた。《カオス》と言う名を女の子に付けたくは無いからだ。そして、あってほしくも無い。
「ぐふふふ、そうかな? オレ様は太古の昔に封印された美人の女戦士か、魔法使いに違いないと思うぞ? 多分リアはオレ様ならばそのじゃじゃ馬をS○Xでならして、魔人を倒せる戦闘力を持つ部下に仕立てるだろうと期待してるのだ」
「想像力が随分と逞しいな。全く相変わらず」
「逞しいと言いますか、呆れましたよ……」
ランスの滅茶苦茶な推理、推測を聞いてかなみとユーリはため息を吐いていた。シィルだけは、ランスにしっかりと言う。否定をしていた。
「あのぉ……やっぱり、あまりにも無理があるのでは?」
「違うと言う保証も無いだろ? 可能性は五分五分だ」
「ま、それで良いんじゃないか? それなら、ランスだって気合が入るってものだろ?相手は女、美女だ。リーザスも救って、更に美女だらけ」
「ぐふふふ! 目に浮かぶぞ! 流石はオレ様、ハーレムではないか!」
「んでもって、ランスが俺に負けたらハーレムもお預けって訳だ。だからしっかりとやれよ?」
「むかーーーー!!! 誰が貴様なんぞに負けるか!! おおぅ、以前は貴様はしれっと抜け駆けしたからな! 今回は首に縄で繋いでくれるわ!」
「誰が縄で繋がれるか、わんわんじゃあるまいし、それに馬鹿言ってないでさっさと行くぞ。気合入ってるんだろ?」
ユーリは、さらっとランスを躱す。
ランスは只管追い回そうとするが、紙一重でするすると躱してしまい捕まらない。……家を出て結構時間が経ってるのに、まだ武器屋に付かないのはランスの馬鹿な妄想のおかげと言うのもあったりする。この発破のおかげで、速度が上がりそうだ。暫くしてランスは、捕まえるのを諦めたのか、或いは飽きたのか判らないが、大股で先へと歩いていった。
「やれやれ……、レベルなんか関係なく実力はある癖に、如何せんムラがありすぎるんだよな、アイツは」
ユーリは前にどんどん進んでいくランスを見ながら苦笑いをした。確かに、レベル自体は恐らくはこの場のメンバーの中で最弱だろう。……が、それだけでは、計れないものをあの男は持ってるのだから。ユーリはこれまでの冒険者としての経験から、様々な戦士や兵士、そして冒険者、同業者も見てきている。……だが、ランスはその中でも、特段に違う。かなりの変わり種だ。……色んな意味で。
とりあえず、深く考えるのは止めて、ユーリはランスに続いて武器屋を目指していた時に視線に気が付いた。
「………」
その視線の主はどうやら直ぐ横にいる少女からだ。
「……?? ほんと どーしたんだよ。かなみ。さっきから」
確か、ランスの家でもこんな感じで悲しそうな、怒っているような表情をしていた彼女がいた。ユーリはそれを思い出していた。
「い、いえ……何でも在りませんよ?」
「……リーザスが心配なのは判るが、落ち着け。きっと、大丈夫だ」
そう言うと、軽くかなみの肩を叩いた。ユーリは、挙動不審気味であり、表情も険しくさせている、悲しそうにさせているかなみを見て、そう判断したようだ。つまり、リアたちを見捨ててしまったと思ってしまったであろう自責。
そして、どことなく険しい、怒っているのは、ヘルマン軍に対しての感情。
……それらがまるで無いとは言えないけれど、当然かなみがこの時に強く考えてしまったのは、別の事なのである。
「(……うぅ、ランスが、負けたらお預けって事は……ユーリさん、本当は……)」
かなみはそれを考えてしまっていたんだ。
ユーリの事は、あったら多分、皆十中八九は、お顔の特徴に目が奪われてしまう?だろうと思える。だけど……彼に救われたら?戦っている所を見たら?……どうも思わないと言えるだろうか?
「ほら、行くぞ。必要だろう?」
「ッ、はぅい!!」
かなみは裏返ったような声を出すと足早にユーリの横に並んだ。
かなみは、色んな思考を張り巡らせていたが、今は隣に立てているのは自分だと思えた。ランスの隣はシィルが、ユーリの隣は自分が。間違いなくその構図。
「(……ずっと、隣にいれたらどれだけ……)」
かなみは、そう 思いながらユーリと歩幅を合わせて歩いていた。
……それは、不確実であり、正直な所 現実味が無い。儚い夢なのだと言うこと……かなみはこの時、本気では考えてもいなかった。
そして、一向はアイスの町の武器屋へと到着した。
そんなに遠くないのに、なぜこんなに時間が?とも思えるが、とりあえずスルーをしよう。
「がははは! この武器屋にはレンチちゃんが店番をしてるからな! さっさと入るぞ!」
「相変わらず、見てるところはそこか」
「うるさい! そもそも貴様はホモだったではないか! ホモの癖に女に目覚めるとは何事だ!」
「だから、わけのわからん事言うな! さっさと入るぞ!」
ユーリはそういえば、以前にこの男にそんな事言われたな、と思いながら否定をしていた。シィルも、そういえば……と一瞬表情を引き攣らせていた。
「(……ええ!! ひょ、ひょっとして……以前の悪寒の正体は?)」
かなみはそう想像していた。
それは、間違いないのだが結構昔の話であり、最大級の悪寒とは違うのである。
~アイスの町・武器屋~
ランスが一番先に店に入り……そして、首を傾げていた。
店番をしていたのは、可愛い女の子~と言う事だったが、どっからどう見ても可愛くないし、何より女でもない。額に大きな傷があり、ランスの姿を見るなり何処か不機嫌な表情になっている中年の男がいる。
「む? おかしいぞ、ここにはレンチちゃんが店番をしてたはずだ、常識では可愛い女の子が店番でなければおかしいだろ。なんだ? このオヤジ」
「無茶苦茶だな。ランスが常識を語るのか?」
ユーリのつっこみを無視したのか、或いは聞いていなかったのか。恐らくは後者だろう。ランスはそのまま、ずかずかとカウンターにまで向かった。
「おい、オヤジ! ここにいたレンチってコはどうしたんだ? 男のおっさんの顔はみたく無い、目が腐る! 早くレンチちゃんを呼べ」
無茶苦茶傍若無人だ。ランスは、そう言うと睨みつけていた。……が、武器屋のおっさんも負けずと劣らず睨み返すと。
「かぁー! ぺっ!! お前がランスか」
「それがどうした。早くレンチちゃんを呼ばないか!」
「ぺぇっ! オレはレンチの父親だ。オレがいる限り絶対にレンチは店番に出さない」
「何故だ。オレ様は何も悪い事をしていないぞ!」
ランスはそう言っているが。
「納得だ」
「私も同感です……」
ユーリとかなみはそう言っていた。シィルだけは、何も言わず涙目になってしまっている。ランスを想っている娘だからだろう。気苦労が絶えない様で、同情をしてしまうかなみだった。
「ぺぇっ!! 悪い事をしてないだと?? よくその様な事がへらへらと言えた物だな! 散々娘を騙して傷物にしたくせに……この野郎」
「騙して傷物だとは、人聞きが悪いだろう。オレ様はレンチちゃんとは合意の上だったのだ!」
「娘は泣きながらランスに騙されたと言っていたぞ。嘘をつくな嘘を、兎にも角にも娘には近づくな。店番には絶対にださん」
「けちけちすんなよ。減るもんじゃあるまいし」
「……いい加減にしろ、馬鹿。今回もランスが悪いで万事解決だ。本題に入れ本題に」
「おいコラ! 何を勝手に、と言うか、《も》とは何だ!」
ランスをとりあえず横に押しのけたユーリは、店のオヤジに声を掛けた。ランスは怒っているけれど、自覚無くしているから始末が悪い。世の中の女性がリアやシィルの様なコじゃないと言う事だ。
「悪いな、少し急ぎの用だ。娘さんは出さなくて全然問題ないから 聖剣と聖鎧はまだあるか?」
「ん?? ああ、あるぜ? ってか、ランスの連れの割には常識的な男だな」
「……コレが一般常識だろうに」
「ユーリさんを、ランスと一緒にしないで下さい」
かなみは何処か怒った様子で突っ掛かるけれど、ユーリが手で抑える。ランスとオヤジが喧嘩してたのを漸く止める事が出来たのに。
「まぁ怒ってくれたのは嬉しいが、今は止めておけ」
「喧嘩売ってんのか、お前ら」
ランスがふんぞり返ってそう言うけれど、シィル何とかフォローをして荒波を立てずにする事が出来た。
「とまぁ話を戻すが、その装備はあるんだな?」
「ああ、なんせ高い値段で、レンチが買わされたもんだからな。買い手がいなくて困ってたってもんだ」
「2,000GOLDだしな……気軽に出せる値じゃないだろう」
「そうかそうか、まだあるんだなラッキー! そう言うわけで返せ」
「返せだと? なら払った金を返してもらおうか」
「おう、そうだな。300GOLDだったか?」
「……今オレが2,000と言っただろう。無茶苦茶に値切りすぎだ」
「そうだァッ! 何が300だ。ぺぇっ!! 利子が付いて2、200だ。耳を揃えて払わないとぜってぇ売らねぇぞ!」
オヤジのその言葉にランスとユーリが同時に口を開いた
「非売品の物を店が決めた売値じゃなく、買い取った値にちょっと上乗せしてるだけか、酷い扱いを受けた割には随分と良心的だな」
「なんだと、200GOLDも上乗せするとはこの悪徳商人め!! 1500にしろ!」
随分と対照的な2人の判断。一般的に装備に関しては買う時は相場で売値の2倍だ。それを1.1倍程度で済ませてくれているから随分と話がわかるオヤジのようだ。……恐らく、値段を上げすぎたら買い手が見つからないと言うのもあるだろうけれど。
「色々とご迷惑を掛けてるのに……とっても良い人です」
「本当に大変ね……シィルちゃん」
思わずうるうるとさせているシィルを見てかなみは肩を叩いていた。
全然種類が違うけれど、想い人の距離を縮めようと頑張っていると思えるから。……かなみは、なんでこんなに良い子がランスを好いているのかは判らないし、理解もしたくなさそうだったけれど。それよりも、今はリーザスの事を考えなければならないから……。
「かぁぁぁ、ぺぇっ!! これ以上はびた一文も負けないからな。嫌ならさっさと帰れ。別のヤツに売るから」
「ちっ、足元見やがってこの腐れ親父がいつか刺されるぞ。月の無い夜道には気をつけるんだな!」
「それ絶対にお前だろ?刺すのは? 自業自得だ。それよりどうするんだ? 金はあるのか?」
「がはは、勿論だ! 当然だろう!」
「……次の言葉、何を言うか、察してるぞ。間違いないだろう」
「そうかそうか! さぁ、とっとと払え、ユーリ!」
ランスは人差し指を ばーん!と指しながらそう言うけれど。
「……一言一句、間違えてなかったな。全く嬉しくないが。兎も角、オレは今は金は持ち合わせが無い。諸事情でな」
「なにーーっ!! 貴様から金を取ったらただの童顔冒険者では無いか! 下僕の癖に、自覚が足らんぞ!!」
「童顔言うな!!! それに誰が下僕だ下僕!!」
ユーリも応戦していた。
普段は冷静沈着である男だけれど……とある単語を言ってしまえば根こそぎ失われてしまうようだ。つまり《童顔》と呼ばれたら。『やかましいわ!!!』
「あぁぁ……聖鎧と聖剣が……」
「す、すみません。かなみさん……」
「シィルちゃんのせいじゃないよ……この馬鹿のせいで……」
かなみはがくっと項垂れてしまった。
ユーリは、怒ってはいたけれど この時ばかりは仕様が無かったのだ。口には彼は出さないが、説明をするなら家族が増えたからだ。ヒトミに外の世界を見せたいと考えたユーリは、ヒトミでは行くこと自体が難しい人間の世界を一緒に見て回ったのだ。
その時、色々と散財してしまったのが祟った様だ。
それに、依頼料も壊れてしまった為、半額以下で構わないと、自ら辞退をしてしまったのも祟ってしまったうちの1つだ。
「かぁぁ ぺぇっ! さぁさぁ、帰えんな」
「いつまでもいい気になるなよ、この糞オヤジが! ……そうだ、町で悪い噂を広げてやろう!」
「ガキか……癇癪を起こしてるんじゃない、さっさと行くぞ」
「貴様に言われたくないわ。さっきまでぎゃーぎゃー喚いていたくせに」
「……うるさい」
一向は、金が無い以上はここにいても無意味な為 早々に出て行く事にした。ランスとここのオヤジが一緒にいれば火に油だから。
「とりあえず、ギルドにでも行くか。そこが一番手っ取り早く稼げるだろ?」
「ちっ……ああ面倒だ」
ランスが渋々了承するのを見届けると、一行はキースギルドへと向かっていった。
~アイスの町・キースギルド~
一行はアイスの町、ユーリやランスが所属しているギルドへと到着した。
「おっ、ランスじゃねぇか。ユーリも一緒とは珍しいな。元気にやっとるか?」
「まぁ……色々とあってな」
同じ仕事がダブルブッキングする事はあっても、こう一緒にギルドに来たことは初めてだった。だからこそ、キースは驚いていてユーリは苦笑いをしていた。そもそもランスは一度仕事をこなすと金が無くなるまで仕事に来ないから ブッキングする事自体が稀である。……つまり、ユーリはそこまで思ってもおらず、何かあっても対処出来る自信があるから、問題ないのだが…… ランスとくんでしまうのは、基本的に、運が悪いと言う事なのだ。
「貴様の世間話に付き合ったら長い、だから手短に話す。少し金が入用だ。楽で役得があって、簡単に直ぐ終わって、報酬ががっぽりで、可愛い女の子をお持ち帰り出来る仕事を紹介してくれ」
「んなの、あるか」
「そんな良い話がコロコロと転がってるほど世の中甘くないぜ、ランス」
「はい。ユーリさん、ランスさん。お2人もどうぞ」
キースとユーリのダブル突っ込みにランスは、舌打ちをしていた。そして、奥から出てきたハイニが、4人に茶菓子を差し出した。
「ありがとう、ハイニさん」
「あ、私にもどうも……」
「ありがとうございます」
3人は礼を言っているが、ランスは何も言わず一気に茶を飲みほすと。
「ちっ、しけてんな。兎に角仕事を何か寄越せ、オレ様が見事に解決をしてやるから」
そう続けていた。これもいつも通りなので、ハイニは嫌な顔ひとつせずに、コップを片付ける。
「頑張りますので、良い仕事をお願いします! キースさん!」
「ん~そーだな」
キースは、考え込むような仕草をするとニヤリと笑った。
「一足遅かったなランス。美少女救出と言う美味しい仕事があったのだが、さっき決まったんだ」
「何!? おい、キース! 何処の馬の骨だ。オレ様の仕事を横取りした命知らずは?」
「横取りって……、基本的に早い者勝ちだろう。それに、多分だが……、依頼を受けたと言うのはあの2人か? キース」
ユーリがキースにそう訊いた。ユーリが思っている2人は、もう前の仕事は終わっている筈だから、タイミング的には あり得ると思ったからだ。
「ああ、察しが良いな。ラークとノアだ。今回の仕事は彼らがしてくれると言う事になったのさ」
「げ! あの3流か!! いい加減ノアさんをオレ様に預けないと、直ぐに殺られてしまうと忠告しているというのに、まだ 馬鹿な事をしているのか! ええぃ、とっととその美少女依頼をオレ様によこせ!」
はっきり言って、ランスが何を言っているのか、判らないから、華麗に半分はスルーする。
とりあえず、ユーリ自身は、あの2人が行っている以上は 今回の仕事は難しいだろうとも思えていた。
「……だから、あの2人に渡したって言っただろう?」
「オレ様が先に解決をしてやり、そして報酬はオレ様が頂く。所詮この世は弱肉強食だ」
「……どこかで聞いたようなセリフをそのまま言ってるんじゃない」
ユーリはランスにそう軽く突っ込みをいれる。
キースは、ため息を吐いていた。ギルドとすれば、仕事がこなす事が出来れば正直誰が解決しても問題ない。ランスだけなら、あの2人よりも仕事をこなす事などは無理だろうと思えるが、今は後ろにあの男が控えている。
本来、横取りをする様な男ではないが、今回は訳ありの様なのだ。
「おい、キース! さっさと言わないか、真の英雄であるオレ様とクズの差が判らない貴様ではあるまい」
「ま、良いさ。仮に無駄だったとしても 依頼さえクリアしてくれたらどっちに金を渡すのも一緒だ」
キースはそう言うとインダスの依頼書をハイニに持ってくるように伝えた。
その内容は、インダス書房の会長である《ジンゲル・剛・インダス》の娘、《ローラ・インダス》を救出すると言う事。彼女を無事に救出する事が出来たら報酬額2、300GOLD。
依頼額を聞けば、お誂え向き、だと言えるだろう。
ランスはそれを聞くと、シィルに依頼書を持っているように指示をだす。
そして、かなみはユーリに聞きたい事があった。勿論 今回のバッティングの件、冒険者達の事だ。
「依頼額的には好都合でしたね。……あ、それと、先に行っていると言う2人は強いんですか?」
「ああ、ランスはああは言ってるが、間違いなく一流の冒険者で このギルドのエースだ。こなしてきた依頼も多い。と言うより、達成率100%を誇る一流の剣士の《ラーク》。そして、神魔法も使えるし 戦闘の腕も申し分ないヒーラー兼戦士の《ノア》 容姿端麗だし、人気があるから、名指し依頼も多いそうだ。……最近だったら 《魔獣カースA》の討伐、かな。 アイツ等の知名度を上げた1件だし。 兎も角、多方面に信頼も得ている冒険者達だ」
「う……、なら 今回も……」
「ああ、その2人が受けている以上、無駄骨になりそうだな」
ユーリの言葉を聞いてがっくりと項垂れてしまったかなみ。
ランス同様に、先に解決できれば、とも思えていたようだが、それは淡い期待だったようだ。
「ま、そりゃ 真実を捻じ曲げてる部分が多いだろ? ユーリ。お前さんの変なコンプレックスのせいで」
「……うるさいな! 横槍するな」
「え?? それは、どういうことですか?」
キースは、ニヤニヤと笑っていて……、ユーリは何を言おうとしたか判った為、邪険をしていた。かなみは判らないから聞いてしまう。
「ん? ああ、自分の顔が売れるのが嫌だからって、ユーリのヤツは一緒に倒したくせにその事を辞退して、さっさと帰っちまったんだと。《カースA》を倒したときに」
カースA討伐の件は、ユーリも一枚噛んでいるのだ。
それは、正規の依頼ではなく、偶々居合わせただけだが、その時からラーク達とは親密になり、時には一緒に仕事をすることも有るほどになっているのだ。
「ラークだって言ってたんだぜ? 『ユーリがいなかったら危なかった。勝てなかった』 ってな。それに、『これが自分達の代表的な功績になって本当に申し訳ない』 とも言ってたぞ」
「いや……オレとしては、好都合だったからな。……だが、誰かさんのせいで酷い目に合ったんだ。それで、もう、この話は終わり」
「かっかっか! お前さんのブロマイドを大々的に飾ったのが悪かったか?? ラークたちと一緒にな、もう一回y「……次、やったら本気でギルドごと燃やす」判ってる判ってる」
ユーリの殺気が迸って……まるで戦いの時の様に。
彼の必殺技である≪煉獄≫を発動するつもりだろうか? とも思える裂帛の気合ならぬ殺気を放っていた。
「ゆ、ユーリさん、落ち着いて下さい……」
かなみは必至にユーリを抑えていた。
ユーリが顔を気にしているのは知っているけれど、ここまでと思ってなかったようだ。だが、その心配も杞憂となる。
「あはは、スキンシップの1つになってるんですよ? えっと……かなみさん。これは 大丈夫なんですよ。所謂、ご愛嬌と言うものです」
「全く……この2人は」
「へ?」
かなみは目を丸くさせてしまった。
この手のやり取りはもう恒例になってしまっているらしいのだ。だが、かなみは初めてここに来たから判らないのも無理は無いだろう。
「ふむふむ、このコがローラか、75点と言う所か。よし、まぁやる気が出てきたぞ。シィル、読め」
「あ、はい。ランス様」
シィルは、渡された依頼書を読むように言われた為目を通しながら読み出す。そもそも、ハイニが一通りは説明をしてくれたのだけれど……。とりあえず、それはスルーをして、内容を説明する。
ローラ・インダスはこの町の北東に位置する場所にある洞窟≪リスの洞窟≫の主のリスに捕まっていると言う事。洞窟には色々とモンスターが棲息している為、一般人では近づく事は危険すぎるとの事だ。
「よく判った。要はリスの洞窟に行って、リスってモンスターをさくっとブチ殺してローラを持って帰れば良いんだな? 簡単だ簡単」
「その簡単な仕事にラーク達が行ってるんだぞ?」
「馬鹿者、あの3流冒険者のラークがこなせる筈がないだろう。ノアさんもきっとピンチに違いない。『きゃー、ラークなんて役立たずだわ~、ランス様助けて~~』って感じだな。がはは! 纏めてお持ち帰りするぜ!」
「……とことんポジティブな奴だな」
ユーリはランスの言葉を聞いて苦笑いをしていた。
あの2人の実力を知っているからこそだ。この辺りのダンジョンのモンスターに遅れを取るとは到底思えないからだ。
「そんな、ありえない結果を言わない事だランス。そんな事より、お前さんはまだ結婚しないのか? オレはてっきりそこにいるシィルと直ぐに結婚するのかと思っていたが」
「アホ、シィルはオレ様の奴隷だ。それにオレ様は結婚する気は今の所さらさら無い」
「うぅ……」
「元気出して……シィルちゃん」
ランスの言葉を聞いて涙ぐんでしまうシィル。
その彼女を慰めるかなみ。想っている人から言われてしまったらショックだろう。それはかなみにも判るから。ランスが相手、だと言う事、それは全然理解出来ない様だが。
「そりゃ残念だ。俺はお前さんの結婚式でクソ危ないスピーチするのが楽しみなのに……」
「それ以前の問題として、結婚をしたところで絶対にお前は呼ばん」
「……キース。似たような話を色んなヤツにするんじゃない!」
「お前らにしか、してないって。それにユーリだって同じだ。とっとと結婚くらいしろ。そして、呼んでくれ。色んな意味で危ないスピーチを盛大にしてやるから」
その言葉を聞いたかなみは、まるで、『耳がでっかくなっちゃった!』って見間違える程大きくなって動いた気がする程、全神経を総動員して耳を澄ませた!
「しろ、と言って出来るもんじゃないだろうが。オレは異性にモテた事など…………」
ユーリは一瞬言葉を詰まらせた。誰を思い浮かべたのだろうか?思い浮かべる相手を考えたら嫌な汗が背中を伝っているのを感じていた。
「……っ!?」
かなみは自分の事がわかってくれたのだろうか?とも思えていた。だが……それは間違いだという事が直ぐにわかる事になる。
「おおっ!? 相手がいるのか??」
「……こっちの話だ。ちょっと、どっかの《規格外の馬鹿》を思い出しただけだ。懐かれたみたいでな。……そんな大例外はあっても、オレは基本的にモテたりはしない。だから、予定は全く未定だ未定。後ランス同様、仮に結婚式をしたとしても、お前は呼ばん」
「ぅぅ……」
かなみは肩を落とした。
ユーリの言葉を聞いて、自分ではないとはっきりと判ったからだ。自分の前で自分の事を馬鹿とか、規格外とかは言わないと思える。それに、馬鹿……と思われてしまってるのなら悲しいが、規格外では決して無いと思えるから。それ以上に想いを伝えてる人が他にもいる事……その事実を知ってしまって……。
「か、かなみさん。元気出してください」
今回はシィルがかなみを励ましていた。随分と仲が良くなった者だ。……似た者同士なのだろう。互いに想い人に気づいてもらえないと言う意味では。
「お?ならオレが紹介をしてやろうか?」
「要らんわ!」
「がはは、コイツはホモだからな。女には興味が無いのだ!! そうなのだ!!」
「何? そうだったのか、ユーリ」
「違うわ!」
ランスは、まるでそうであって欲しいと言わんばかりにそう言っていた。……万が一にでも、リーザスで先を越されてしまった時を考えたのだろう。
「ん? でも、ユーリは童貞じゃないとかって言ってたじゃないか?」
「がははは! 男相手だろう? ケツ穴だケツ穴! 童貞じゃないな、処女喪失したんだろう!」
「はぁ……もう否定すんのも疲れたわ! 一体何回やるんだ、このやり取り!」
疲れたと言いながらも怒って言ってるユーリ。疲れた~なんて、言っても全然説得力は無いのである。
「……シィルちゃん、ユーリさんがホモなのは嘘よね?」
「え?あ、はい。そんな事無いですよ。見た事ないです」
「……そうよね」
かなみはシィルにも確認しながら胸に手を当ててほっとしていた。
そして、一頻り言いあった後。
「そうだ。やる気なら急いだ方が良いぞ? もうあの2人は出発してる筈だからな。勝負にすらならんかもしれんぞ~?」
「貴様が話をおかしな方向にするからだろうが!」
「お前が言うなよ……」
「がははは! それくらい軽いハンデだハンデ。直ぐに追いついてやる! 行くぞ、オレ様の奴隷と下僕達」
「はい! ランス様」
「「誰が「下僕よ!」だ」
ランスにしっかりと付き添うシィルと悪態を付く2人。随分と凸凹パーティだけれど、何処か頼もしくも感じるキースだった。
そして、4人がギルドから出て行った後に呟く。
「はぁ、嵐の様な連中だったな」
「そうですね……」
互いに苦笑いをしている。そして、勿論気づいた事はあった。
「ハイニ。判ったか? ユーリの隣にいた忍者のお嬢さん」
「ええ、勿論ですよ。間違いなく……ユーリさんに惹かれてますね?」
「全く罪な男だな。アイツは。結婚もして無いくせに子持ちになって、女泣かせになって」
その事だった。
時折ユーリの方を見る視線は、信頼以上の何かを含んでいる事が一目瞭然だったのだから。そして、キースはユーリがいたら、思いっきり怒りそうな人聞きの悪い事を言っていた。
「お顔を気にしてますからね……。それは、キースさんのせいじゃないんですか? 素敵だって言っても聞いてくれませんし」
「おいおい、人聞きの悪い事を言うなって」
……それはどっちの言葉が人聞きの悪い言葉なのだろうか?だが、ハイニの言う言葉は正解なのである。
半分くらいだが……。
~アイスの町・キースギルド前~
「ちっ、キースの馬鹿の話を聞いてて時間を大分くったな、これで先を越されてたらその分の賠償をしてもらう!」
「話を一緒になって大きくしたのは何処のどいつだ。全く……」
ランスも加わった為、話が長くなったのだが、ランスの耳は都合よく出来ているのである。
「兎も角、リスの洞窟に行きましょう」
「そうですね」
かなみとシィルはそう言った。今回の件でかなり、信頼度が増したようだ。
――かなみとシィルの互いの信頼度が10上がった。
~アイスの町・近辺~
一行はリスの洞窟を目指してアイスの町から移動を開始。当然だが町から離れるとモンスターと遭遇する可能性も高くなってくる。それは、どんな冒険者でも同じだ。
「早速だな」
「だぁぁ、鬱陶しい! 先を越されてしまうではないか!」
現れたのはグリーンハニー数体。数体……と言うより十数体だ。一面が緑緑緑……。
「魔法使いの天敵だ。シィルちゃんは下がってて」
「あ、判りました。ありがとうございます!」
「おい、オレ様の奴隷に命令をするな!」
「馬鹿な事言わないで、手を動かして!」
迫りくる緑の陶器達。
「だぁぁ! 皆殺しだぁ!! ランスアタァァァック!!」
「あいやーーーっっ!!」
ランスの一撃で数匹のハニーを蹴散らした。レベルが下がったと言っていたが、それでもやはり大した腕だろう。通常の一般的な同レベルの技量とは比べ物にならないから。
「かなみもまた腕を上げたな。カスタムで会ったあの時よりもずっと」
「あっ ありがとうございますっ!ユーリさん」
ユーリは、グリーンハニーの一匹を叩き割りながら隣にいるかなみにそう言っていた。
動きもそうだが、一撃の重さもある。あのカスタムの町では雰囲気のみで判断をしたが、相手は格下とは言え傍で戦ってみればより判るのだ。
「やぁっ!!」
かなみのくないは、正確にハニーに突き刺さり、ヒビを入れていた。
「ナイスだ」
動きが鈍ったハニーをユーリの剣でトドメをさした。
そして、ものの数分後、さっきまで一面にいた筈の緑色は消え失せていた。いや、破片が所処にあるから まだ緑色の数的には多いが。
「全く雑魚の癖に、実に鬱陶しい」
「そうね。緑だし、すごく鬱陶しい」
「おいコラ! 誰を見て言ってる!!」
かなみは、意味深な言い方をしていた。すると、ランスも意味が判ったようで、憤怒していた
「皆さん大丈夫ですか? いたいのいたいのとんでけー!」
そして、シィルは、皆にヒーリングを施した。
確かに敵の数は多かったが所詮はハニーだった為特に皆の怪我はなく、シィルはほっとしていた。
「がははは、これでいつものオレ様のレベルにまで戻った筈だ!」
「……なんで、アレくらいのハニーで元に戻るんだよ。まだ町から出て1戦目だぞ?」
「凡人には気づかんのだ。ならば、証明をしてやろうではないか!いでよ! ウィリス!」
ランスが手を掲げると……、レベル神ウィリスが出てきた。
「私は偉大なるレベル神、ウィリス。レベルアップをお望みですか?」
「おう! その通りだ」
ランスは、腰に手を当ててふんぞり返るように立っていた。
「あの一戦だけで、レベルが上がるようなら苦労なんてしないわよ……」
かなみは、ランスの方を見ながらそう呟く。
自分自身これまでに、訓練に訓練を経て、更に軍の副将との模擬戦も行ってレベルを上げてきたのだから。
「ふふ、本当に頑張ってるみたいだな」
「は、はい。ユーリさん。 ユーリさんが私の目標……ですから」
「まぁ、オレは剣士だから忍者の君の目標になるかは判らないが、そう思ってくれてるのは嬉しいよ。オレも頑張らないと、って刺激にもなる」
ユーリはそう言って笑っていた。
「あ……」
かなみはその笑顔を見れて思わず顔を赤くさせていた。
その赤くなった顔をユーリに見られそうになったが、何とか誤魔化す事が出来たようだ。自分の気持ちを知ってほしいが……でも、まだ恥ずかしさの方が勝っているから。
「と、ところで、ユーリさんは今のレベルはどれくらいになられたんですか?」
「ん……、そうだな」
ユーリは腕を組み考える。
あのカスタムの事件以来、レベル屋に行っていない事実を思い出していた。ヒトミに自分の事を救いの神と形容されてから、次は専属のレベル神がいても良いかと思っていたのだが……。
「ぐぬぬ……」
「ら、ランス様……流石に1回くらいでは難しいですよ」
「うるさい!」
「ひんひん……」
そんな時ランスは、何やら不機嫌だった。シィルは必至にフォローをしているが、ランスに頭を叩かれてしまっている。
「あ、ユーリさん。お久しぶりですね」
ランスのレベルアップの儀式を終えたウィリスは、ユーリを見かけて声を掛けた。
「ああ、そうだなあのカスタム以来……だったな。ウィリスとも」
ユーリも答えるように手を挙げる。この機会にレベルアップの儀式、そして専属神を得ようとユーリは思った。
「すまない。オレの方も構わないか?」
「はい。お安い御用です。では、いきますねー。うぃりす、ふじさき、しーろーど……うーら、めーた、ぱーら、ほら、ほら、らん、らん、ほろ、ほろ、ぴーはらら!」
何処か、懐かしささえ覚えるいつも通りの呪文を唱えるウィリス。
レベルアップの儀式、その事自体も大分久しぶりの事だ。上がっているかもしれない期待感。この感覚も懐かしいとユーリは思っていた。
「(ユーリさんはどのくらいになってるんだろう……、確か以前は45、だったかな? でも、ユーリさんくらいの高レベルだったら、1上げるのも凄く大変だと思うし……)」
かなみは、ユーリのレベルに興味津々のようだ。目標としているからこそ、当然だろう。そして、結果が……。
「………」
「………」
何故か、シーンと静まり返る場だが。
「こうしてくれる!!」
「ひんひん……。ランス様ぁ……痛いです……」
ランスとシィルの声だけが響いていた。そして、ウィリスはゆっくりと口を開いた。
「おめでとうございます。ユーリさんは経験豊富とみなされてLv49になりました」
「!!!」
「ん。上がっていたんだな」
ユーリはウィリスの言葉に軽く答える程度だったけれど……、かなみは驚きが大きかったようだ。
「そ、それほどの高レベルで、また上げるなんて……やっぱり凄いです! ユーリさんっ」
かなみは思わずユーリの手を取った。
自分の事の様に喜んでくれているかなみを見て、ユーリ自身も嬉しく思ったようだ。
「はは……、ありがとな?」
「っ///」
至近距離でユーリの顔を見て、その上手を握っている事に気づいた。かなみは、一気に顔を赤くさせ……、それと同時にユーリのレベルを聞きつけたランスがまたまた、ユーリの事をチートだの、ズルだの、卑怯者だのなんだのと騒ぎ出した。
勿論、ユーリもランスにはそうは言われたくないから、負けじと言い返し……、顔を赤らめたかなみの事は見ていなかったようだ。見られると恥かしいけれど、見られてなかった事を考えるとやっぱり……
「うぅ……」
「か、かなみさん! が、頑張りましょう! 私も頑張りますっ!」
……落ち込み気味のかなみを必至にシィルはかなみを慰めていたとさ。
「ユーリさん、不明レベル値も儀式をしましょうか?」
「んー、そうだな。あれは、不規則に上がったり下がったりしてるし、一応聞いておくよ」
ウィリスの問いに、ユーリは頷いた。ウィリスは、別にこれと言って何かがある訳でもないけれど、気になるレベルでもあるからだ。その言葉を聞いたランスはいきり立つ。
「ああ!! そうだったな、貴様の不正が明らかになるレベルを持っていたな! 損害賠償を請求する!!」
「誰が何に対して損害したんだよ!」
「オレ様の気分を害したのだ! オレ様を差し置いて、貴様が高レベルなど許せん! 下僕の癖に!」
「もう、わけが判らんわ! ってか、高レベルになりたきゃ、鍛えろ! お前こそ限界値が無いって言うチートを持ってるだろうが!」
ランスとユーリは、ぎゃいぎゃいと言い合っていた。その2人を見たら……。
「なんだか仲、良いですね」
「まぁ……そうね」
かなみはやや納得しづらかったけれど、シィルの様に思ってしまったのは事実の為頷いていた。そして、そうこうしている間にウィリスは、儀式を終了させていた。
「ユーリさんの不明レベル値はLv189となっていました。この数値は、私で、ですが。過去に測定した中でも高レベルの位置ですね」
「……一体なんなのだ? そのレベルは。もう驚きとかを通り越して逆に呆れるぞ」
「なんだかお前に言われるのは心底心外だが、オレも知らん。ランスみたいなイレギュラーだと思ってくれ」
ユーリがそう言うと、シィルが両手をぽんっと叩いて言う。
「そうですね、ランス様も才能限界値が無いと聞いてますから。それなら納得です」
「てい!」
「ひんひん……」
「オレ様と一緒にするな! 凡人と英雄とでは格が違う!」
「ユーリさんが英雄で、ランスが外道でしょ?」
「誰がだコラ!」
かなみの言葉にランスが突っ掛かっていくが、ランスより遥かに高いレベル+その身軽さがある為、ひょいひょいと躱すかなみ。
「やれやれ、仲が良いな?」
「っ!!」
「おわっ!! 何をする!」
かなみは思わずくないをランスに放ってしまっていた。そのくないは、ランスの股の間を抜けて地面に突き刺さる。
「ななな、何を言うんですかっ! ユーリさんっ!」
「あー、いや、思った事を言っただけだが……」
「間違っても、思わないでください! 言わないでくださいっ!! お願いしますっ!」
「……判った」
かなみの剣幕に思わず頷いたユーリ。何処となく鬼気迫るモノをかなみから感じた為だ。
「喧嘩売ってんのか! ひんひん言わすぞ!」
「うるさーーいっ!!」
ランスの口撃もかなみは真っ向から弾き返すが如く言い返していた。間違っても……万が一にでも、自分がランスに好意を思っているとユーリに思われたくないのだ。自分自身が想っている相手は後にも先にもきっとただ1人。
「ほら、そろそろ洞窟に向かって行くぞ。ラーク達に追いつくんだろう?」
ユーリはため息を吐きながらそう言っていた。
「(私が想ってる人は、ただ1人だもん!)」
かなみはそう思うと一足で、ユーリの隣へ。この人の隣にいたいから……。
――かなみの儚く切ない願いが成就する日はくるのだろうか……某世界では、極限までの不幸属性であり、神様からもありえないと否定された可哀想キャラなのだが……。果たして、この世界ではどうなる?? 生暖かい目で見守ってあげましょう!
「うるさぁぁいっ!! 頑張るもんっ!!」
「うおっ!? い、いきなりどーした??」
「ひゃっ……何でもありません……」
天の声を聞く能力を持っている数少ない女の子、かなみ。
――……かなみの気苦労はここから先も続いていく。
〜人物紹介〜
□ オルガ・カーティス
アイスの町で武器屋を営んでいるオヤジ。凶悪な顔をしている上に武器屋だから、怖がっている人も多いとか。
因みに、ヒトミは見かけた瞬間ユーリの影に隠れてしまった。勿論隠密スキル最大限に発動させて。
名前(オルガ)はFLATソフト作品「うたてめぐり」より
名前(カーティス)バンダイソフト作品「テイルズオブジアビス」より
□オルガ・レンチ
アイスの町の武器屋のオヤジの娘。
ランスにさんざん騙されて傷物にされた女の子。
アイスの町では看板娘として、人気が高かったのだが、ランスのせいで店先に出ることが極端になくなってしまった。
因みに売り上げに結構響いたらしい。
名前(オルガ)はFLATソフト作品「うたてめぐり」より
□ ウィリス・藤崎 (3)
ランスの担当になったせいで色々と苦労をしている真面目なリーザス出身のレベル神。
今回ユーリのレベルアップの儀式をした後、ユーリの専属レベル神ともなった。
因みに、ランスに知られるといろいろとうるさいので黙ったままにしている。
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