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気さくな鬼

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2部分:第二章


第二章

「僕は鬼だよ。その通りだよ」
「ならばだ。おぬしはこの山にいて散々悪さをしているな」
「人を取って食べたりとか?」
「そうだ。違うのか」
「あのね、鬼だからっていってもね」
 それでもだとです。鬼の声は重太郎に対して困った口調で答えます。
「誰もが人を食べるものじゃないよ」
「違うというのか」
「そうだよ。僕人なんて食べたことないよ」
「その言葉信じろというのか」
「やれやれ。疑い深い人だねえ」
 重太郎の頑なな態度に呆れた様な調子でした。
「そんなに言うのならね」
「どうするというのだ?」
「僕そこに出るから」
 鬼がです。遂に姿を現すというのです。
「そうしたらわかってくれるかな」
「出て来い。退治してやろう」
 重太郎がその右手に持っている山伏の杖、今は鬼を退治する為に持っているその杖を握り締めます。それで鬼が出てきたら退治しようというのです。
 けれどその重太郎にです。鬼の声はまた言ってきました。
「おじさんもかなり強いから僕の気配は感じるよね」
「気配か」
「僕の気配はそんなに悪いかな」
 その気配を感じ取って欲しいというのです。
「そうしてくれるかな」
「言うな。ではだ」
「うん、どうかな」
「そうだな。ではな」
 鬼の声に応えてです。その気配を探ってみます。姿は見えなくても気配は確かに感じます。その気配はといいますと。
「ふむ。特にな」
「悪くないでしょ」
「邪気がない」
 そのことをはっきりと感じ取ったのでした。
「むしろ無邪気だな」
「人を取って食べるみたいに思える?」
「そんな気配は感じない」
 微塵もだとです。こう答える重太郎でした。
「全くな」
「そうでしょ。だから僕悪い鬼じゃないから」
「では何故この山にいる」
「だって。鬼は山にいるものじゃない」
 だからだというのです。
「それでいるんだよ」
「鬼は山にいるものか」
「そうでしょ。だからいるんだよ」
 こう鬼の声はです重太郎に言います。そしてそれを受けてです。
 重太郎は納得しました。それでなのです。
 あらためてです。鬼の声に対して告げました。
「いいか」
「姿を見せろっていうんだね」
「そうだ。怪しい鬼でなければ姿を見せよ」
 こう告げます。
「御主のその姿をだ」
「厳しいね」
「厳しいのも当然だ。信じよというのならだ」
「姿を見せてその口で語れっていうんだね」
「そうだ。それができるか」
「できるよ」
 それはできるとです。声も答えます。
「じゃあ今からおじさんの御前に出るからね」
「うむ、そうせよ」
 こうしてでした。声の主は重太郎の前に姿を現したのでした。
 それは平安時代の公家の、若草色の服を着た子供でした。頭には黒い烏帽子があり黒髪を奇麗に整えています。そしてその顔は白く女の子の様に整っています。目は黒く悪戯っぽい光を放っています。
 その子供がです。こう重太郎に名乗ってきました。
「青山童子だよ」
「それが御主の名前か」
「どうかな。男前でしょ」
「男前というにはまだ若かろう」
「そう言うけれどこれでも百年生きてるんだよ」
 重太郎の否定の言葉にです。童子はむっとした顔で返します。
 
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