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戦国異伝

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第二百二十二話 耳川の戦いその八

 義弘はすぐにだ、義久に対して言った。
「どうされますか」
「話か」
「はい」
「話を聞こう」
 こう答えてだ、そしてだった。
 義久は実際に戦を止めさせてだった、そのうえで。
 明智を自分の前に呼んだ、慶次と可児も同行させた。歳久は慶次のその派手な出で立ちを見て義弘に言った。
「あの者がですな」
「うむ、前田慶次郎利益じゃな」
 義弘も慶次を見つつ答える。
「天下一の傾奇者という」
「その御仁ですな、戦の時は随分暴れていましたが」
「強かったのう」
「まるで鬼の如きでした」
 家久も言って来た。
「あの強さは」
「全くじゃ、あの者が一緒におるとな」
「おかしな気を起こす者もいませんな」
「うむ、しかももう一人も随分と戦の場で暴れておったが」
「あれは笹の才蔵ですな」 
 また歳久が言った。
「前田慶次と並ぶ武辺者の」
「あの者も一騎当千じゃ」
「実際に強かったですな」
「うむ、あの者までおると」
 慶次に加えてだ。
「軽挙を働く者も出ないわ」
「決して」
 二人から放たれる気もかなりのものだった、それは流石に力尽きようとしている島津の者達も見ていた、それでだった。
 島津の者達も三人を黙って通した、そしてだった。
 義久にだ、明智は言った。
「まずは御屋形様の前においで下さい」
「そしてじゃな」
「はい、お話をして頂きたいのです」
「左様か」
「そのことをお伝えに来ました」
 明智はあえて多くは言わなかった、ここでは。
 ただこう言っただけだ、その言葉を受けてだ。
 義久は頷いてだ、明智に答えた。
「わかった、ではな」
「おいで下さいますか」
「わしの刀は預ける」
 この言葉もだ、義久は出した。
「御主にな」
「では」
「これから行こうぞ」
 信忠の前にとだ、こう答えてだった。
 義久は弟達にもだ、声をかけた。
「では御主達もじゃ」
「我等もですな」
「信忠公の前に」
「揃って」
「行くぞ」
 義久の言葉に従いだ、彼の弟達もだった。
 明智にそれぞれの刀を預けたうえで織田軍の本陣に向かった、そして信忠の前においてだった。
 深々と頭を下げた、義久が前にいて後ろに三人が従っている。
 その四人にだ、信忠は言った。
「顔を上げられよ」
「はい」
 四人共応えてだ、そしてだった。
 その彼等にだ、信忠は告げた。
「ここに来られ刀を預けられたということは」
「我等の命お預けします」
 義久が答えた。
「されど他の者の命は」
「わかり申した、では各々方は」
 義久達四人はというと。 
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