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真田十勇士

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巻ノ十一 猿飛佐助その六

「主従でありますが」
「義兄弟になるのですな」
 穴山も話した。
「これより」
「そうじゃ、よいか」
「はい」
 穴山も確かな笑みで応える、そして。
 彼も根津も指で傷を付けた、それから。
 盃に血を入れた、他の者達も続いてだ。
 全員で回し飲みをした、それが終わってだ。由利は満足した様な顔でその義兄弟となった者達に話した。
「さて、これで簡単には死ねなくなったな」
「御主がそう簡単に死ぬか」
 海野はその由利に笑って問うた。
「わしにしてもじゃが」
「ははは、首が飛んでもくっついてな」
「生きてみせるな」
「そのつもりじゃ」
「そうであろう、皆な」
「まさかこうした流れになるとは思わなかったが」
 しかしとだ、霧隠はまんざらといったものではない感じだった。
「これも悪くはない」
「ははは、地獄に落ちても十一人で鬼共と戦をするか」
 猿飛はここでもこんなことを言った。
「徳川と戦うのもよいしな」
「御主はそこまで戦が好きか」
「だから強い者と勝負をするのが好きじゃ」
「それがか」
「あと生きものに子供も好きじゃ」
 そうしたものもというのだ。
「子供と遊ぶのもまた楽しみじゃ」
「そうなのか」
「しかしおなごは苦手じゃ」
「それは聞いておらぬわ」
 霧隠は猿飛に口を尖らせて返した。
「全くな」
「そうか」
「そうじゃ、とにかくな」
「わしが子供が好きだということがか」
「意外じゃな、しかしそれでいてわかる」
 猿飛がそうした一面を持っているということがというのだ。
「それがな」
「左様か」
「うむ、とにかくじゃ」
 これからというのだ。
「我等十一人、何があろうと一緒じゃな」
「そうなったな」
「義兄弟としてもな」
「ではあらためて進もう」
 話していた一同に幸村がまた言った。
「都、そして大坂までな」
「大坂の城はまだ縄張りもしておりませぬぞ」
 猿飛が幸村に話した。
「そこまでは」
「そうか、それもか」
「はい、まだです」
「そうなのか」
「しかし話は進んでおる様です」
「石山御坊の跡地にじゃな」
「左様です」
 こう幸村に答えた。
「そこに築こうとです」
「これまで羽柴殿は近江、播磨に城を持たれていましたが」
 霧隠も言う。
「大坂に拠点を移されますか」
「大坂は天下の要となる場所」
 幸村は大坂についてこう述べた。
「前に瀬戸内、そして淀川を持ち水の便がよい」
「だからですか」
「羽柴殿はあそこに城を築かれてですか」
「拠点とされる」
「そうお考えなのですな」
「都にも奈良にもすぐじゃしな」
 幸村はこのことについても言及した。
「それこそ一日で行ける、西国を治めるのならあそこじゃ」
「では羽柴殿は」
「西国を治められるおつもりですか」
「いや、天下じゃ」
 西国だけではなくというのだ。 
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