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欲しいものは

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2部分:第二章


第二章

「欲しかったら自分で作るのよ」
「僕が。自分で」
「じゃあ。お家に帰ったらね」
 続いてこう話します。
「プラモデル作りなさい。いいわね」
「ううん、欲しかったら作るの?」
「そうよ」
 また彼に言います。
「わかったわね。作りたくなかったら欲しいって言わないの」
「欲しい」
 弘道はこの要求には勝てませんでした。これだけは。
「僕、あのプラモデルが欲しい」
「それじゃあ作りなさい」
 お母さんはまた弘道に言いました。何度でも言うつもりですし実際にそうしています。こうして彼によく言い聞かせるのでした。
「いいわね」
「うん」
 お母さんの言葉に頷きました。こうして弘道は家に帰るとすぐにそのプラモデルを作ることになりました。けれど実は弘道は。
 プラモデルを作ったことがありませんでした。箱を開けてプラモデルを見てまず。思わず目を丸くさせてそのうえで大声で言うのでした。
「何!?これ」
「これがプラモデルなんだよ」
「嘘だ」
 お父さんの言葉を聞いても信じませんでした。
「こんな小さいのが一杯一緒になってるだけじゃない。こんなのプラモデルじゃないよ」
「ここから作るんだよ」
 けれどお父さんはまた弘道に言いました。
「ここからね。皆そうやって作るんだよ」
「プラモデルって作るものなの?」
「プラモデルだけじゃないよ」
 お父さんも言葉は優しいです。けれどしっかりとした声で弘道に言うのでした。そうしないと何も手に入らないと言うかのように。
「何でもそうなんだよ」
「何でも」
「欲しいのなら作るんだよ」
「欲しいのなら作るの」
「そう。何があってもね」
 優しい声で弘道に教えます。見ればその目もかなり優しいものになってます。お父さんはその目でも弘道に言うのでした。
「作らないとけないんだよ。自分でね」
「自分で作るの」
「そう、自分でね」
「お母さんも同じこと言ってた」
「お父さんもお母さんも同じなんだよ」
 この言葉にはこう、といった感じで待っていたかのような言葉になっていました。
「皆。同じことを言うから」
「同じなの?」
「そう、同じだよ」
 言葉を繰り返してみせます。
「同じだからね。だから作るんだ」
 あらためてプラモデルを作るよう弘道に言うのでした。
「いいね」
「うん」
 素直な弘道はその言葉に頷きました。
「それじゃあ」
「はい、これを塗ってね」
 ここであるものを出してきました。それは瓶に入ったものでした。
「こういうふうにね。塗るんだよ」
 パーツを二つ取ってそれを合わせながら説明します。
「それで付けてみるんだよ」
「ええと」
 まだ小さい弘道にはよくわかりません。その瓶も何とか開けた感じです。ここで弘道はお父さんにこの瓶のことを尋ねるのでした。見れば蓋の先に瓶の中に入るようにブラシがあります。
「これ何なの?お父さん」
「セメンダインっていうんだ」
「セメンダイン?」
「そう、これをね」
 その蓋を手に取って今取った二つのパーツの端にそれぞれ塗る動作をしてみせます。
「こうして。すると」
「すると?」
「これとこれがくっつくんだ」
 実際に二つのパーツを合わせてみせます。
「そうしたら外れなくなるから」
「そうなんだ」
「さあ、やってみるんだ」
 そのうえでまた息子に言うのでした。
「よおくね。そうそう」
 見ればはじめてなのに結構上手く塗っていきます。そうしてちゃんとくっつけるのでした。
 
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