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知っててやっている

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第五章

「秀弥君が私に告白するのね」
「そうよ、心構えはいいわね」
「最後の正念場よ」
「最後にして最大のね」
「それを受けるのよ」
「わかったわ、じゃあクールにいくわね」 
 理央もだ、強く頷いてだった。
 そしてだ、その時を待った。その時が来たのはこの会話から暫く経ってからだった。
 秀弥からだった、手紙が来てだった。
 その手紙に書いてあった放課後に体育館裏に行くとだ、彼がいてだった。顔を真っ赤にして告白してきた。
 わかってはいた、だが。
 理央はその告白を受けて心臓が破れそうになった、だが。
 ここでだ、友人達に言われた通りにだった。
 理央は何とか冷静さを保ってだ、こう秀弥に答えた。
「私でよかったら」
「それじゃあ」
「ええ、お付き合いしてね」
「うん、お願いするよ」
 泣きそうな顔でだ、秀弥は理央に応えた。
 こうして理央は望みを適えた、だが。
 告白の後でだ、友人達にこう言った。
「私の方から告白したら」
「もっとね」
「話がスムーズだったっていうのね」
「そう言うのね」
「そうだったけれど」
 それがというのだ。
「ここまでやったのは」
「相手に告白させたいのならよ」
「ここまでしないと駄目なの」
「自分が出来ないのならね」
「相手にさせるしかないじゃない」
 その告白をというのだ。
「だからよ」
「こうしてね、相手の気持ちを知っていて」
「そのうえで相手を誘うの」
「こっちに告白させる様に」
「そうしたらいいのよ」
「これも一つのやり方なのね」 
 理央もしみじみとして言った。
「相手の気持ちを知ったうえで」
「そうさりげなく気を惹かせてね」
「誘ってそして告白させるのも」
「そのこともね」
「恋愛のうちよ」
「そういうことなのね、わかったわ」
 理央はしみじみとしてまた言った。
「じゃあこのままね」
「秀弥君の気持ちつないでおくのよ」
「そのファッションと仕草ののままね」
「そのファッションと仕草で彼をゲットしたんだから」
「いいわね」
「ええ、そうするわね」
 にこりと笑ってだ、理央は応えた。そうしてこれからの自分達のことも思うのだった。


知っててやっている   完


                        2015・5・20 
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