| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

空からのお礼

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章

「俺達は」
「言っても仕方がないがな」
「ええ、言ったところで」
「死んだ人は帰ってこない」
 この現実もだ、飯塚は言った。
「本当にな」
「そうですね、それじゃあ」
「このままやっていくしかない」
「救助活動を」
「そして復興支援もな」
「俺達の出来ることをですね」
「それしかないからな」
 それで、とだ。飯塚は乾パンを食って湯で流し込んでだった。
 そしてだ、また救助活動に入った、奥羽も彼と行動を共にした。
 朝早くから夜遅くまでだ、自衛隊の人達は働いた。それは下士官や兵の人達だけでなく幹部の人達もだった。
 連隊長もだ、疲れきった顔で周りの幹部達に尋ねた、テントの外からは激しい雨音が聞こえている。夜遅くの雨だ。
 その雨音を聞きつつだ、尋ねたのである。
「この雨でもか」
「はい、隊員は皆です」
「文句一つ言わずにです」
「救助活動にあたっています」
「被災者の救助に」
「そうしています」
「そうか」
 そう聞いてだ、連隊長は苦い顔で言った。
「このことは師団長、軍管区に報告しておく」
「誰もがですね」
「どんな状況でも不平を言っていないと」
「黙々として救助活動にあたっている」
「その様に」
「この雨の中で泥に塗れて風呂に入らず動いてくれている」 
 まさにだ、このことをというのだ。
「報告する、しかし救助の方は」
「また犠牲者の方を発見しました」
「これで百二十人を超えました」
「行方不明者もです」
「まだ」
「そうか」
 その話を聞いてだ、連隊長の顔はさらに苦いものになった。
 そしてだ、その顔に沈痛なものも入れて言った。
「物資はまだあるな」
「はい、輸送もしてもらいましたし」
「それはあります」
「隊員の糧食は充分です」
「被災者の方々の分も」
「充分にな」
 まさにというのだ。
「行き渡らせよう」
「はい」
「特に子供やお年寄りの方を優先させて」
「怪我をしておられる方にも」
「そうしましょう」
「毛布も忘れるな」
 身体を包んで暖めてくれるそれもというのだ
「いいな」
「それも避難所に送っています」
「医療器具も薬も来ています」
「ですからです」
「ここはです」
「送りましょう」 
 こう話してだ、そしてだった。
 連隊長は全体の指示を出していった、書類仕事や報告も行いだ。彼もまた休むことなく働いてだった。作業服で自らも陣頭に出ていた、そのうえで。
 連隊一丸となって動いていた、だが。 
 連隊長もだ、発見された犠牲者の亡骸を見てだ、沈痛な顔で言った。
「丁重にな」
「はい、葬らせて頂きましょう」
「ご遺族の方にもお話して」
「そうしましょう」
「私がする、しかし」
 ここで連隊長がその苦りきった声で言うことはというと。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧