鬼館
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第三章
「お話は聞かせてもらったわ」
「話は早い、それでは」
「ええ、早速ね」
「その洋館に行ってもらって」
「鬼、私の国では怨霊というけれど」
その怨霊達をというのだ。
「退けさせてもらうわ」
「では報酬は」
「事前に契約金は受け取っているから」
「仕事をしてくれたらなら」
それが成功したならというのだ。
「払わせてもらうよ」
「頼むわ、ただ」
「ただ?」
「まだ私の名前を聞いてはいないわね」
「いや、秘書から聞いているよ」
既に最初からというのだ。
「松本沙耶香さんだったわね」
「そうよ」
その通りだとだ、その黒づくめの妖艶な美女松本沙耶香は王に答えた。
「日本、いえ世界一の黒魔術師よ」
「日本には黒魔術師もいるのだね」
「そうよ、陰陽道とかもあるけれど」
「貴女の様な魔術師もいてか、西洋の」
「私はその中でも黒魔術を専門にしているのよ」
沙耶香は王に妖しく微笑みながら話した。
「そしてその黒魔術でね」
「鬼とかを退治しているのか」
「そうよ」
「黒魔術は邪法と聞いているがね」
「それは使い方によるわ」
沙耶香は妖しい微笑みのまま王に答えた。
「人を呪ったり世を害することに使えば白魔術でも邪法になるわ」
「しかしこうしたことに使えばか」
「黒魔術も正しい力になるわ、もっとも私は人を呪ったりはしないけれど」
それでもと言うのだった。
「心清き人間ではないわ」
「悪人には見えないがね」
「これでもお酒と女の子が好きなのよ」
沙耶香は笑ってだ、王にまた答えた。
「男の子もね」
「両刀使いか」
「それにギャンブルもね。そっちでは負けたことがないわ」
「生活が爛れていると言いたいのかい?」
「そうよ、キリスト教から見れば私はね」
まさにと言うのだった。
「異端、魔女よ」
「黒魔術を使うしか」
「そうよ、だからね」
「心が清らかじゃないって言うんだな」
「そうなるのよ」
「それを言ったら私だってそうだよ」
王は笑ってだ、沙耶香に返した。
「これでも大きくなる為にな」
「色々したのね」
「危ない橋も渡ったさ、黒社会の連中と会ったりな」
「それでというのね」
「まあ殺人とか密売とかはしてないけれどな」
最後の一線は踏み越えていないというのだ。
「これでも散々悪いことはしているさ」
「そう言うのね」
「そうさ、その悪い奴とも付き合ってきた私が言うが」
王は沙耶香を見つつ彼女に話した。
「あんたは黒魔術師でもな」
「それでもというのね」
「そんなに悪い人間じゃないさ」
「昔のキリスト教では火炙りよ」
「それは昔のキリスト教がおかしいんだよ」
異端審問の時代のこの宗教がというのだ。
「別に女が女を好きでもいいだろう」
「寛容ね」
「私の趣味じゃないが否定はしないさ」
少なくとも王はそのことには否定的ではない、自分の趣味なくとも他人の趣味にとやかく言うことはしないのだ。
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