ドリトル先生と森の狼達
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第十幕その一
第十幕 神戸に戻って
先生達は奈良県と和歌山県の境の生態系の調査を終えました、そうして神戸まで皆で無事に帰りました。
そしてです、先生はお家に帰ってから皆に言いました。
「さて、調査が終わってお家に帰ったけれど」
「あらためてだね」
「狼さん達のことをどうするか」
「そのことをね」
「考えないといけないね」
「その通りだよ」
皆に答えて言うのでした。
「あらためてね」
「発表する?ニホンオオカミがいたって」
「絶滅していなかったって」
「そのことを」
「狼さん達もいいって言ってたし」
「そうする?」
「学者としてはね」
先生はお仕事の立場から答えました。
「やっぱりこうしたことはね」
「発表しないとだよね」
「いられないよね」
「とても」
「先生にしても」
「そうだよ」
まさにというのです。
「こうしたことはね」
「発表することが義務」
「学者のね」
「絶滅していなかった」
「それを確かに言うことは」
「あっ、それでだけれど」
ここで王子が言いました、そして。
皆にあるものを見せました、それは。
「これね」
「あっ、ニホンオオカミの写真」
「撮ってたんだ、王子が」
「毛もあるね」
「それも手に入れてたんだ」
「狼さんのうちの一匹にお願いしてね」
そしてというのです。
「毛を貰ってね」
「写真もなんだ」
「撮ってたんだ」
「いるっていうの確かな証拠」
「それを貰ってたんだ」
「それも二つも」
「そうだよ」
まさにというのです。
「だから先生が発表して嘘って言う人はいないよ」
「証拠があるからね」
「それも確かな証拠が」
「だったらね」
「それ見たら疑わないね」
「証拠を調べてもらってもいいし」
その写真と毛をです、科学的に。
「確かだよ」
「では、だね」
「うん、後は先生次第だよ」
「発表するかどうかを決めることは」
ニホンオオカミがまだ生きているということをです。
「僕がどうするかだね」
「そうだよ」
「ううん、それじゃあ」
「どうするのかな」
「ううん、難しいね」
先生は王子にここでも考える、悩んでいる声で答えました。
「ここは」
「まだなんだ」
「決められないね」
「やっぱり狼君達のことが心配なんだね」
「日本のマスコミはパパラッチより酷いからね」
とにかくです、先生はこのことを念頭に置いています。
「学者の人も変な人がいるから」
「何ででしょうか、日本の知識人と呼ばれる立場の人は」
トミーも首を傾げさせて深刻に考えるお顔になっています。
「マスコミの人や学者さん、本を書く様な人も学校の先生も」
「酷い人が多いっていうんだね」
「何か普通の日本人と比べて酷過ぎません?」
「うん、僕もそう思うよ」
「言っていることもやっていることも滅茶苦茶で」
「どうもね、このことはね」
日本の知識人についてです、先生はトミーにお話しました。
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