流転の防人
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第5章「戦闘団(カンプ・グルッペ)」
前書き
この章から書き下ろしになります。なお、本編終了後にV/STOLメーサー攻撃機MBF―Xの解説を掲載しております。
戦闘空域
迫り来るドラゴンの集団に向けて前進するパラメイル第一中隊はその途中でロザリー、クリス、エルシャが新兵隊と共に分離して砲撃態勢を整え、それを確認したゴジラ・コマンド側でも陽華と夕凪が分離して砲撃隊に合流した。
「ロザリーさん、こちらスーパーX改、合流します、アーチェリー・エスコートは任せて下さい」
「へ?……あ、ああ、了解」
合流した夕凪が暫定的に砲撃隊の指揮をとる事になったロザリーに通信を送るとロザリーは一瞬戸惑った後に慌ててそれに応じ、それを聞いていた陽華は頬を緩めながら新兵隊の暫定指揮官であるミランダに向けて通信を送った。
「ミランダちゃん、こちらMBF―X隊、宜しくね」
「……は、はい、宜しくお願いします、天龍寺一等陸尉」
「初陣だから仕方無いけどさ、肩の力抜いてリラックス、リラックス、危ないと思ったら遠慮無くスーパーX改を盾にしなさいよ、スーパーXシリーズはそう言う機体なんだから」
「は、はい、分かりました、天龍寺一等陸尉」
ミランダの緊張の滲んだ返信を受けた陽華がそう返信するとミランダは未だに硬さの残る声で応じ、通信を終えた陽華は手早く周辺を確認しながら呟きをもらした。
「いやー初々しくて良いわねー」
「……初々しいと言うよりも、若過ぎませんか、彼女達」
陽華の言葉を受けた雪菜は攻撃態勢を整えながら口を開き、陽華は一拍の間を置いた後に真摯な口調で言葉を続けた。
「……あのドラゴンどもとの戦いが相当な消耗戦になってるんでしょうね、頼んだわよユッキー、あの娘達、死なせない様にね」
「……当たり前です」
陽華の真摯な響きの言葉を受けた雪菜が真剣な口調で応じているとドラゴン接近を続ける警報音が響きそれと同時にゾーラらロザリー達に向けて命令がもたらされた。
「砲撃隊、ドラゴンが接近したならば弾幕を展開しな」
「ゾーラ中隊長、こちらスーパーX改です、スーパーX改並びにMBF―X隊は長射程射撃が可能です、また、両者の射撃特性上、先制攻撃を行った方が有効な射撃を実施出来ます。スーパーX改とMBF―X隊の長射程射撃による先制攻撃実施を具申します」
ゾーラの指示に対してスーパーX改の夕凪が即座に意見具申を行い、それを受けたゾーラは磊落な笑い声と共に返信を送って来た。
「……ハッハッハッ良いねえゴジラ・コマンド、気に入ったよ、先制攻撃はスーパーX改とMBF―X隊による長射程射撃だ、砲撃隊はスーパーX改とMBF―X隊の先制攻撃に引き続いて砲撃を開始、弾幕を展開しな」
「「イエス・マム」」
ゾーラの指示を受けたロザリー達は即座にそれに応じ、それを確認した陽華は鋭い口調で僚機に通信を送った。
「D2、こちらD1、聞いた通りよ、Cと共に先制攻撃をしかけるわ、派手にぶちかましてやるわよ、終ワリ」
「D1、こちらD2、
了解です、ぶちかましてやりましょう、終ワリ」
陽華が指示を送ると二番機機長の檜芳次郎三等陸尉から返信がもたらされ、陽華はそれを聞きながら雪菜に声をかけた。
「ユッキー射撃準備」
「了」
陽華の声を受けた雪菜は素早くMBF―Xの主翼両翼に搭載された高出力メーサー発射器の射撃態勢を整え、接近してくるスクーナー級の内の一匹に照準を合わせながら言葉を続けた。
「発射準備良し、何時でもいけます」
「OK」
雪菜の言葉を受けた陽華は頷きながら指揮統制システムを操作して、スーパーX改に射撃態勢が整った事を伝え、それに相前後して二番機もスーパーX改に射撃態勢の完了を伝えた。
「MBF―X隊が射撃態勢を完了したわ、美鈴、こっちの準備はどう?」
「準備完了、先頭集団に照準しています、何時でも射撃可能です」
「ドラゴン、更に接近中、間も無く射撃圏内に侵入します」
MBF―X隊の射撃態勢完了を受けた夕凪が美鈴と言葉を交わしているとドラゴンの接近を監視していた毛利が鋭い声で報告を行い、夕凪は機長用の戦術統制画面で概況を掌握した後に命令を下した。
「ドラゴンが射撃圏内に入ったならば直ちにMBF―X隊と共に攻撃を実施する、ドラゴンの特性を鑑み攻撃に使用するのはレーザー若しくはアベンジャーとする」
「「了」」
夕凪の命令を受けた美鈴達は即座にそれに応じ、夕凪は頷きながら戦術統制画面に移るドラゴンの進攻状況を確認した。
ドラゴンの群は更に接近を続けて射撃圏内へと侵入を開始し、それを確認した夕凪は即座に各隊に向けて通信を送った。
「こちらスーパーX改、攻撃を開始しますっ!!」
「発射!!」
夕凪の言葉を耳にした美鈴は即座に言葉を発しながら発射ボタンを操作し、スーパーX改に搭載された2基の高出力レーザー砲から鮮やかな蒼い光線が発射された。
「ユッキー、攻撃開始!!」
「ファイヤー!!」
スーパーX改の攻撃開始を確認した陽華の命令を受けた雪菜は鋭い口調で応じながらメーサー発射器の発射ボタンを操作してMBF―Xに搭載された高出力メーサー発射器から蒼い光線が発射され、二番機もほぼ同時にメーサー光線を発射した。
スーパーX改とMBF―X隊から発射された六条の蒼い光線は鮮やかな軌跡を夜空に描きながら接近するドラゴンめがけて吸い込まれていき、発射された光線は狙い違う事無く三体のスクーナー級を直撃して撃墜してしまった。
「今の攻撃って、高出力レーザー!?」
「おおっ、やった、やったっ!!」
スーパーX改とMBF―X隊の攻撃を目の当たりにしたサリアが驚きの表情と共に呟いていると、両者の戦果を目にしたヴィヴィアンが弾んだ声をあげ、そんな中スーパーX改MBF―X隊は更なる攻撃を実施して鮮やかな蒼の光線が再びドラゴンの群へと放たれた。
放たれた光線はドラゴンの群が散開した為に、無為に虚空に軌跡を描いたが、回避の為にドラゴンの群は大きく乱れてしまい、その混乱に乗ずる形でロザリー隊も攻撃を開始した。
グレイブ・ロザリー・カスタムとハウザー・クリス・カスタム、更にハウザー・エルシャ・カスタムの射撃は弾幕となってドラゴンの群に襲い掛かり、回避によって速度と陣形が乱れていたドラゴンの何匹かがまともに弾幕に飛び込んで撃墜される事で混乱しているドラゴンの群は更に乱れさせられてしまった。
「ゾーラ中隊長こちらスーパーX3、我が方と貴隊の擾乱射撃によってドラゴンの群は混乱しつつあります、自分とスーパーX2は直ちに突入し、更にドラゴンの混乱を増大させます」
スーパーX改とMBF―X隊とハウザー隊の射撃によってドラゴンの群が混乱するのと同時に長曽我部からの通信がゾーラの下に届き、それを受けたゾーラは凄味のある笑みを浮かべながら返信を送った。
「了解、こちらはそちらに気を取られたドラゴンどもを片っ端から撃墜していく、スーパーX3にはサリアとヴィヴィアンが、スーパーX2にはあたしとヒルダが後続する、派手にドラゴンどもを引っ掻き回してくれよ、ゴジラ・コマンド、グッド・ラック!」
「了、これより突入します、パラメイル第一中隊、グッド・ラック!」
ゾーラが返信を受けた長曽我部からは小気味良い響きの返信がもたらされ、それを受けたゾーラは不敵な笑みを浮かべながらサリア達に指示を送った。
「各自、聞いての通りだ、ドラゴンどもの群に突っ込んだスーパーX3とスーパーX2を金床とし、あたし等パラメイル隊がハンマーとなってドラゴンどもを叩きのめす、死の第一中隊の実力を見せてやりなっ!!」
「「イエス・マム」」
ゾーラの命令を受けたサリア達は即座にそれに応答し、サリアはその後に後方のヴィヴィアンに向けて通信を送った。
「聞いた通りよ、ヴィヴィアン、あたし達はスーパーX3に後続してドラゴンの駆逐に当たるわ」
「了解~、ねえねえ、さぁりぁ、この、ゴジラ・コマンドって連中、超面白いよねえ」
サリアの通信を受けたヴィヴィアンからは興奮した様子の返信があり、サリアはそれを聞きながらスーパーX2と共に突撃を開始したスーパーX3に視線を向けた。
(強固な装甲に絶大な火力を有する機動兵器群にそれ等を統率する優秀で協調性に富んだ指揮官、このゴジラ・コマンドと言う部隊、相当のエリート部隊……)
サリアがそう胸中で呟く中、スーパーX3はスーパーX2と共に混乱するドラゴンの群へと突き進み、長曽我部は戦局を見据えながらスーパーX2に向けて隊内系通信で交信を行った。
「B、こちらA、事後の戦闘に於いてはAが許可するまでフォックス1の使用は凍結とする、繰り返す、フォックス1の使用についてはAが許可するまで凍結とする、終ワリ」
「B了、フォックス1の使用はAの許可があるまで凍結とし、戦闘には通常火器のみを使用します、終ワリ」
「……切り札は隠す、ですか?」
長曽我部がスーパーX2の羽島との交信を終えると操縦しながらそれに耳を傾けていた藤田が問い掛けの言葉を発し、それを受けた長曽我部は一拍の間を置いた後に言葉を続けた。
「……彼女達を信用していない訳じゃない、だが、彼女達の運営司令部や上級司令部の思惑については五里霧中の状態だ、何枚かのカードは隠しておきたい」
「……指揮官とは大変ですね」
「……全くだ、階級が上がるに従って気を回さなければならない事が増えてくる」
長曽我部の返答を受けた藤田は微笑いながら言葉を返し、それを受けた長曽我部は嘆息しながら言葉を返した。
一方、スーパーX2はスーパーX3との交信を終えた後もドラゴンの群へと接近し続け、機長席の羽島はモニターでドラゴンの群の様子を見据えながら火器統制員席に座る薫に向けて口を開いた。
「薫、先程聞いた通り、通常火器を使用してドラゴンどもとのドンパチだ、出来るか、ファイヤーミラー無しで?」
「……ありったけのミサイルと、アベンジャーで何とか」
羽島の問い掛けを受けた薫は火器統制システムを操作しながら落ち着いた口調で返答し、それを受けた羽島は頷きながら接近するドラゴンの群を見据えた。
スーパーX3とスーパーX2は混乱するドラゴンの群の只中に突入し、ドラゴン達は混乱しながらも突入して来たスーパーX3とスーパーX2に向けて迎撃の光線を発射した。
放たれた幾条もの光条がスーパーX3とスーパーX2を絡らまり炸裂したが、刹那の間を置いた後に発生した爆煙の中から何事も無かったかの様に驀進する2機の特徴的な機体が姿を現し、その光景を目にしたヒルダは驚愕の表情を浮かべながら呟きをもらした。
「何てデタラメな装甲してんのよ、自衛隊の機体はバケモノなの?」
「……まあ、奴等が規格外の機体を運用する為の飛びきりのエリート部隊なのは間違いねえな」
ヒルダの呟きを耳にしたゾーラが声をかける間にもスーパーX3とスーパーX2はドラゴンが発射した光線を物ともせずに前進を続け、長曽我部は油断無く状況を確認しながら後続するゾーラ達に通信を送った。
「ゾーラ中隊長、こちらスーパーX3、ドラゴンの群を左右に分断します、スーパーX3が左に、スーパーX2は右に進路を変えてドラゴンを引き付けます」
「了解した、あたし等でドラゴンどもを叩き潰してやる、ロザリー達には射撃を中止して接近させ、撃ち漏らしたドラゴンを掃討させ、新兵どもは後退させる」
「了、スーパーX改には引き続きロザリーさんの直接支援を実施させ、MBF―X隊はミランダさん達の護衛に残します」
長曽我部とゾーラは手早く方針を決めるとロザリーとミランダ、佐伯と陽華に指示を送った。
両者の指示を受け、ロザリー隊とスーパーX改が射撃を中止して前進する一方、ロザリー隊と共に射撃を行っていた新兵隊はMBF―X隊の護衛を受けながら後退、そして両者が行動を開始するのとほぼ同時にスーパーX3とスーパーX2がドラゴンに対する攻撃を開始した。
「藤田、フォックス1、ファイヤー」
「了解フォックス1、ファイヤー!!」
「薫、フォックス3、ファイヤー!!」
「了、フォックス3、ファイヤー!!」
長曽我部と羽島の発した攻撃命令を受けた藤田と薫は鋭く復唱しながら攻撃を開始、スーパーX3の機首から超低温レーザーが発射され、スーパーX2からは両舷から突き出た収納式ガンポッドに1基づつ搭載されている30ミリガトリング砲GAU―8アベンジャーが激しいマズルフラッシュと共に30ミリ弾の奔流を迸らせた。
スーパーX3の発射した超低温レーザーを受けたスクーナー級が一瞬にして体躯を凍結させられるのとほぼ同時にアベンジャーから迸り出たHEAT弾(対装甲榴弾)とAPDS弾(高速徹甲弾)をまともに浴びたスクーナー級が一体ぼろ雑巾の様にされて血飛沫を撒き散らし、残るドラゴン達は慌てて散開しながらスーパーX3とスーパーX2に向けて光線を発射した。
スーパーX3とスーパーX2はドラゴンの反撃を平然と受け止めながら左右に進路を変更してドラゴンの群を左右に分断し、ドラゴンの群が完全に分断されると同時に後続していたゾーラ達が攻撃を開始した。
「行くぞっヒルダ!ついてきなっ!!」
「イエス・マムッ!!」
ゾーラの指示を受けたヒルダは叩きつける様な口調で応じながら加速を開始したアーキバス・ゾーラ・カスタムの動きに追従し、アーキバス・ゾーラ・カスタムとグレイブ・ヒルダ・カスタムは混乱しつつもスーパーX2への攻撃を続けていたドラゴン達へと襲い掛かった。
アーキバス・ゾーラ・カスタムとグレイブ・ヒルダ・カスタムが剣を一閃させるとスクーナー級が断末魔の咆哮と共に両断され、ゾーラとヒルダは剣と機銃を使ってスーパーX2を攻撃していたドラゴンを次々に撃墜していった。
「ヴィヴィアン、此方も行動開始よ、スーパーX3を援護しなさい」
「OK、それじゃあ行くよーっ!!」
ゾーラとヒルダの行動を目にしたサリアが後続するヴィヴィアンに命令を下すとヴィヴィアンは即座に返答した後にレイザーを加速させてアーキバス・サリア・カスタムを追い抜いて行き、サリアはそれを確認しながら狙撃ライフルを構えてスーパーX3を攻撃しているドラゴン目掛けてそれを発射した。
サリアが発射した炸裂弾は狙い違わず目標のスクーナー級を直撃してそれを撃墜し、新たな攻撃を浴びたドラゴンが動揺の気配を見せる中にレイザーが突進した。
ドラゴンの直中に突進したレイザーは激しい銃撃と鋭い剣撃によってスクーナー級を次々に撃墜して行き、それを確認した長曽我部はパラメイル隊の熟練した動きに内心で感嘆しながら新たな指示を発した。
「B、こちらA、パラメイル隊が攻撃を開始した、直進機動を実施してドラゴンどもを引き付けろ、終ワリ」
「B了、これより直進機動を実施します、見事俎役を務めてみせます、終ワリ」
長曽我部の新たな指示を受けた羽島は涼しげな声で返信し、交信を終えた長曽我部は操縦席の藤田に向けて指示を送った。
「聞いた通りだ、藤田、速度を落としつつ直進機動を実施してドラゴンどもの注意を此方に引き付けろ」
「了解スーパーXシリーズの真骨頂、見せてやります」
長曽我部の指示を受けた藤田はそう言葉を返しながらスロットルを緩め、その操作を受けたスーパーX3は緩やかに減速しつつ直進飛行を開始した。
スーパーX3が直進飛行を開始するのとほぼ同時にスーパーX2も緩やかに減速しながら直進飛行を開始し、その無謀とも言える行動を目の当たりにしたヒルダはスクーナー級を一刀両断にしながら口を開いた。
「……ちょっと、アイツ等一体何のつもりなのよっ!?」
「……敢えて単純な機動をする事でドラゴンどもを引き付けてるのさ、強固な装甲と高い火力を持つスーパーX3とスーパーX2でドラゴンどもを拘束し、機動力に富んだパラメイル隊で叩く、全くやってくれるじゃねえかよ、ゴジラ・コマンド」
ヒルダが疑問の声を上げていると、ゴジラ・コマンドの意図を察したゾーラは凄味のある微笑を浮かべながら呟き、その後にスクーナー級に銃撃を浴びせて撃墜しつつ命令を続けた。
「サリア、ヒルダ、ヴィヴィアン、スーパーX3とスーパーX2の機動はドラゴンどもを引き付ける陽動だ、それに引っ掛かったドラゴンどもを仕留めな、逃げ散った奴等は後続にまかせて追うなっ!!」
「「イエス・マムッ!!」」
ゾーラの命令を受けたサリア達は即座に応答した後にスーパーX3とスーパーX2に攻撃を集中するドラゴンに攻撃を続け、スーパーX3とスーパーX2に引き付けられたドラゴンを激しい銃撃と鋭い剣撃によって次々に屠って行った。
スーパーX3、スーパーX2とパラメイル隊は両者の特性を活かした作戦によって次々にドラゴンを撃墜していき、多数存在していた筈のドラゴンは瞬く間にその数を減らして行った。
両者の猛攻に耐え切れなくなったドラゴンの一部は戦闘空域から離脱、態勢の建て直しを図ったがそれを制する様にスーパーX改とロザリー隊が離脱したドラゴンに接近した。
ドラゴンは接近するスーパーX改とロザリー隊に向けて迎撃の光線を発射したが、発射された光線は先頭に立ったスーパーX改が壁となって阻止し、爆煙を突き抜けて驀進するスーパーX改の姿を目にしたエルシャは穏やかな笑みを浮かべながら口を開いた。
「あらあら、スーパーX改もすっごい装甲なのね~」
「……ぜ、全然ダメージ受けてないみたい」
「……どんだけ規格外の装甲してんだよ自衛隊の機体はっ!?」
エルシャに続いてクリスとロザリーもスーパーXシリーズの強固な装甲に半ば呆れた様に呟きながらスーパーX改と共に攻撃を開始、激しい射撃によって攻撃してきたドラゴンを次々と撃墜して行った。
一方、ゾーラ隊とスーパーX3、スーパーX2は攻撃してきたドラゴンの集団を瞬く間に駆逐、離散した残敵掃討をロザリー隊とスーパーX改に任せつつ2体の大型ドラゴン、ガレオン級に対する攻撃を開始した。
「デカブツども、後はお前等だけだよ」
ゾーラが2体のガレオン級を見据えながら呟いていると2体のガレオン級は迎撃の為に光線を発射、発射された光線は接近するスーパーX3とスーパーX2を捉えてその機体を爆煙で包み込んだ。
光線の直撃から一拍の間を置いた後にスーパーX3とスーパーX2が爆煙を突き抜けて姿を現し、その光景を目にしたヴィヴィアンは満面に笑みを浮かべると興奮を隠しきれない様子でサリアに向けて口を開いた。
「ねえねえねえ、サァリァ、何なの、何なの、何なの、このゴジラ・コマンドって言う連中、超超超超面白いんだけど」
「落ち着きなさい、ヴィヴィアン、今は戦闘に集中するのよ」
ヴィヴィアンの言葉を受けたサリアは努めて冷静な口調を意識しながら返答し、その後にガレオン級の迎撃をものともせずに突き進むスーパーX3とスーパーX2の姿を見据えた。
(ヴィヴィアンが興奮するのも無理無いわね、圧倒的な装甲と火力を兼ね備えたスーパーXシリーズ、そしてその性能に奢る事無く、その性能を十分に活用して私達との共闘を難無くこなしてしまう優秀な指揮官、彼等の事は何も分からないけど、彼等がとびきりのエリート部隊である事だけは分かる)
内心で舌を巻きながら突き進むスーパーX3とスーパーX2を見据えるサリア、一方前進を続けるスーパーX3のコクピットでは長曽我部が油断無く戦局を確認していた。
「C、こちらA、こちらを攻撃していた小型ドラゴンは第一中隊主力により駆逐された、AはB及び第一中隊主力と共に残る大型ドラゴンを攻撃する、Cはロザリーさん達と共に残敵を掃討せよ、終ワリ」
「C了、ロザリーさん達と共に残敵を掃討します、終ワリ」
長曽我部は手早くスーパーX改との交信を終え、モニター等でガレオン級の様子と戦局の推移を確認しながらそれを聞いていた永倉はそれ等から目を離さずに口を開いた。
「パラメイル第一中隊との共闘、今のところかなりスムーズに推移していますね」
「ああ、彼女達が優秀なおかげだ」
永倉の言葉を受けた長曽我部はゆっくりとした口調でそれに応じ、その後にモニターで後続するアーキバス・サリア・カスタムとレイザーを確認しつつ言葉を続けた。
「強固な装甲を持つ我々スーパーXシリーズと機動性に富むパラメイル隊、両者の特性を考慮しつつそれを組み合わせて戦えば部隊の戦力は飛躍的に上昇する」
「……戦闘団と言う訳ですね」
「そう言う事だ」
永倉と長曽我部の会話を聞いていた藤田はスーパーX3を操りながら呟き、長曽我部は静かに応じた後にモニターに映し出されているガレオン級を見据えながら言葉を続けた。
「……ケリをつけるぞ、藤田、冷凍弾を喰らわせてやれっ!!」
「了解フォックス2、ファイヤー!」
長曽我部の命令を受けた藤田は鋭い口調で応じながらトリガーを操作し、スーパーX3はガレオン級めがけて驀進しつて両翼に設置されたランチャーから冷凍弾頭が装備されたロケット弾を発射した。
発射されたロケット弾はガレオンの巨体を捉えて命中箇所周辺を凍りつかせ、その様子を目にしたヴィヴィアンは興奮した面持ちで声をあげた。
「おおー、凄い、凄い、凄い」
「落ち着きなさい、ヴィヴィアン、しっかりトドメを刺すわよ」
ヴィヴィアンの興奮した言葉を耳にしたサリアはヴィヴィアンをたしなめながらヴィヴィアンと共にガレオン級への攻撃を続け、それを確認した羽島はモニターに映るもう一体のガレオン級を見据えながら命令を発した。
「スーパーX3がトドメの攻撃を開始した、こっちも始めるぞ、薫、派手にぶちかましてやれっ!!」
「了、フォックス2、フォックス3発射!!」
羽島の命令を受けた薫は鋭く応じながらコンソールを操作するとスーパーX2の艦体上部から3発の大型ミサイル、91式空対艦誘導弾G型(通常型より射程を大幅に短縮し、炸薬を増量した対怪獣仕様型、形式名のG型は対ゴジラ(怪獣)用を意味する)を搭載したランチャーが姿を現し、続いて薫がトリガーを操作するとランチャーと91式空対艦誘導弾G型が発射され、同時にガンポッドからアベンジャーがマズルフラッシュと30ミリ弾を迸らせた。
発射された91式空対艦誘導弾G型と30ミリ弾はガレオン級の巨体を強かに撃ち据え、連続した爆煙に包まれたガレオン級が苦悶と怒りの咆哮を轟かせるのを目にしたゾーラは凄みのある笑みを浮かべながらヒルダに声をかけた。
「よおし、トドメと行こうか、来な、ヒルダ」
「イエス・マム」
ゾーラの指示を受けたヒルダは即座にそれに応じ、それを受けたゾーラはヒルダと共に爆煙に包まれるガレオン級めがけて愛機を加速させた。
スーパーX3とスーパーX2の支援の下、ガレオン級への攻撃を開始したパラメイル隊、それに対しても2体のガレオン級は迎撃せずに一気に急降下を開始した。
急降下を開始した2体のガレオン級はその勢いを維持したまま暗い海面へと身を投じ、巨大な水柱がそそり立つのを目にしたヒルダは忌々しげに舌打ちした。
「チッ逃げやがった」
「……まあ、しょうがねえな、海中に逃げられちまったらどうしようもねえしな」
ヒルダの悪態を耳にしたゾーラが小さく肩を竦めながら声をかけた瞬間、スーパーX2が突如として急降下を開始した。
急降下を開始したスーパーX2は瞬く間に暗い海面へと接近していき、その様子を目の当たりにしたヒルダは顔色を変えながら口を開いた。
「おい、何する気だよアイツッこのままじゃ」
ヒルダが皆まで言い終える前に急降下したスーパーX2は暗い海面へと突入して巨大な水柱を発生させ、その光景を目にしたサリアとヴィヴィアンも突然の事態に思わず言葉を喪ってしまった。
「……な、何やってんだよアイツッ!!」
「……大丈夫です、ヒルダさん、スーパーX2はドラゴンを追撃する為に海中に突入したんです」
ヒルダが驚愕の声をあげていると長曽我部からの状況説明がもたらされ、それを聞いていたサリアは驚愕の表情を浮かべながら長曽我部に通信を送った。
「ど、どう言う事ですか、長曽我部二等陸佐!?」
「……スーパーX2は水空両用機で、深度1000メートルまで潜航可能な潜水艦としても運用出来ます、ですから海中に逃げたドラゴンを上空に叩き出す為追撃を命じました」
「す、水空両用機!?」
サリアの通信を受けた長曽我部は静かな口調で返信し、サリアが驚愕の声をあげているとゾーラが楽しげな笑い声をあげながら口を開いた。
「ハッハッハッ、驚きだな水空両用機とは、そう言う事ならドラゴンどもがいぶり出させれるのを待つだけだな、しかし、いくらスーパーX2と言えども1対2は中々しんどいんじゃないか?」
「はい、ですから現在ゴジラ・コマンド本隊に増援部隊を要請しました、スーパーX2と増援部隊で海中のドラゴンを攻撃します」
ゾーラの通信を受けた長曽我部がそう応じながら戦術統制用の画面を確認していると画面に新たな輝点が3つ出現し、同時に永倉が口を開いた。
「長曽我部二佐第11護衛隊からSH―60Kが発艦し、こちらに向けて前進を開始しました」
「よし、藤田上空にて旋回しつつ待機してくれ」
「了解」
永倉の報告を受けた長曽我部はモニターと戦術統制画面を確認しつつ藤田に指示を送り、藤田はそれに応じながらスーパーX3を緩やかに旋回させるのを確認しつつゾーラに通信を送った。
「ゾーラ中隊長、ただいま増援部隊が発進しました。同隊は海中に潜む目標に対しては高い能力を発揮出来ますが対空能力は皆無に等しい為現状では護衛が必要です、スーパーX改とロザリーさん達による護衛を具申します」
「了解した、ロザリー達に護衛を命令する、実力を存分に発揮しな」
「了」
長曽我部の要請を受けたゾーラは即座にそれを快諾し、ロザリー隊にゴジラ・コマンドから発進した増援部隊の護衛を命じた。
機体解説
MBF―X(試製メーサー攻撃機)
ゴジラ・コマンド創設に伴いスーパーXシリーズとの協同運用を念頭に開発されたV/STOLメーサー攻撃機、93式メーサー攻撃機(MBF)を母体として開発された機体であり、「雷電」級自走浮きドッグでの運用を可能にする為にV/STOL機能が付与されたコクピット等の機体前部に耐熱合金TA―32の装甲を施し、発進後はコクピットガラスもTA―32の装甲板で覆われる(覆われた後は機体各部のカメラやセンサー類の映像がコクピット内に投影される)
機体前部の重装甲化により正面からであればゴジラの熱線を短時間の間と言う但し書きつきながら防ぐ事が可能となった。
機体の重装甲化に伴う重量増加に対処する為、20ミリバルカン砲が撤去されたが開発母機であった93式メーサー攻撃機に比べて最高速度が100キロ程低下し555キロ(通常兵装時)となっている。
主要武装は両翼端に装備された高出力メーサー発射器であり、この他に両翼下に各三ヶ所づつ設置されたハードポイントに落下増槽、ガンパック、対空ミサイル(91式携帯地対空誘導弾)、対地ミサイル(マーべリック)等の各種オプションパーツが搭載可能である。
ゴジラ・コマンドには4機が配属されており第1特殊戦術飛行隊第4小隊を構成している。
時空跳躍後は機動性に富む小型ドラゴンとの戦闘がメインとなった為、オプションパーツを全く装備しない通常兵装状態若しくは対空ミサイルのみを搭載した状態で運用されており、メーサーによる長射程射撃による支援射撃を実施していく事になる。
なお、オプションパーツ類の内各種ガンパック類はゴジラ・コマンド側がアルゼナル側に耐熱合金の増加装甲類と共に譲渡しようとしたがジャスミンによって没収されてしまい、ジャスミンモールにて増加装甲類ともどもパラメイル用追加兵装として店頭に並ぶ事になる。
搭乗員一覧
小隊長機・コールサイン・D(デルタ)1
機長・天龍寺陽華一等陸尉
ガナー・天龍寺雪菜(てんりゅうじゆきな・旧姓光彩自衛隊内におけるパートナーシップ法適用ペア第一号)二等陸尉
二番機・コールサイン・D2
機長・檜芳次郎三等陸尉
ガナー・宍戸隆太二等陸曹
三番機・コールサイン・D3
機長・乗鞍喜楽三等陸尉
ガナー・和久史郎二等陸曹
四番機・コールサイン・D4
機長・江村親保二等陸尉
ガナー・窪川十四郎陸曹長
後書き
次回予告
ゴジラ・コマンドとパラメイル隊の猛攻を逃れる為海中に脱した2体のガレオン級、それに対して長曽我部は更なる追撃を命じ、水空両用機スーパーX2と第11護衛を発艦した対潜ヘリSH―60K隊はその特性を発揮して海中に逃れたガレオン級に向けて追撃の矢を放った。
流転の防人
第6章・対潜戦闘(ASW)
海中の敵を撃て、ゴジラ・コマンド
ページ上へ戻る