戦国異伝
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第二百二十一話 肥後の戦その三
「ですからここは」
「それがしが」
「いや、それがしが」
「それがしこそが」
「それがしでなければ」
三人はそれぞれ言い合う、その彼等に。
信康は確かな声でだ、こう告げた。
「それならばです」
「はい、誰がでしょうか」
「誰が先陣なのでしょうか」
「一体」
「お三方にお任せします」
一人ではなく、というのだ。
「鍋島殿が中央、立花殿が右高橋殿が左で」
「その位置で、ですか」
「我等三人に全て」
「先陣を」
「お願いします」
是非にというのだ。
「その様に」
「では」
「我等三人で」
「共に千陣を」
「お願いします、それでは」
こう言うのだった、信康のその言葉を受けてだ。三人も納得してそのうえでそれぞれ大友、龍造寺の兵を率いて。
千陣に入った、そして。
信康は今度は服部にだ、彼が家康から聞いたことを確認した。彼もその場にいて話を聞いていたが確認したのだ。
「森にじゃな」
「はい、そこにです」
「島津の伏兵がおるか」
「左様です」
服部は信康にも答えた。
「鉄砲を持ち」
「そうじゃな、ではな」
「どうされますか」
「まずはこのまま正面の島津の軍勢に向かう」
信康は服部にこう答えた。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「伏兵にはな」
ここでだ、信康は。
井伊を見てだ、彼に命じた。
「御主に頼む」
「伏兵が出て来た時は」
「すぐにそちらに向かいじゃ」
そしてというのだ。
「あの者達を防ぐのじゃ、よいな」
「畏まりました」
井伊は信康の命に強い声で答えた。
「そうさせて頂きます」
「ではな」
「はい、それでは」
「そしてじゃ」
さらにだった、信康は四天王の残り三人である酒井、榊原、本多に対しても声をかけた。彼等に言うことはというと。
「御主達は先陣の鍋島殿達に続き」
「正面の島津の軍勢をですな」
「倒すのですな」
「そうじゃ、平八郎は正面から攻めてじゃ」
そしてというのだ。
「小平太は右、小平次は左じゃ」
榊原、酒井にそれぞれ命じた。
「そこから攻めよ、して御主達もじゃ」
十六神将、四天王以外の十二人にもそれぞれの役を命じた。そこまで命じてだった。信康は軍勢をさらに進めて。
森が左右にある道を越えた、今は気配はないが。
平岩と高木がだ、信康に言って来た。
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