ドリトル先生と森の狼達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第九幕その三
「化ける狸さん達と」
「川獺さん達はイギリスから来てたけれどね」
ホワイティが言うにはイギリスから来た生きものもです。
「それでも日本の生きものの方が化けるわね」
「というか日本の生きものって誰でも化けてるわよ」
ポリネシアの見たところです。
「穴熊さんだって鼠さんだってね」
「そういえば鳥もね」
「姑獲鳥っていう妖怪もいてね」
チープサイドの家族はこの妖怪を知っていました、先生が持っている日本の妖怪の本に載っていたのです。
「それで鳥から人間になるんだよね」
「あの妖怪もね」
「中国から来たって書いてあるけれど」
「日本の妖怪にもなってるね」
「馬や牛が言葉喋るとかあったね」
老馬も言います。
「人の頭を持っている牛とか」
「そうそう、件だった?」
「そんな妖怪もいるね」
オシツオサレツは老馬の言った人の頭を持っている牛が何かを知っていてそれでこう応えたのです。
「動物が化けたり妖怪になったり」
「しょっちゅうの国だからね」
「あっても不思議じゃないね」
それもとです、先生も応えます。
「熊が人に化けたりするのも」
「やっぱりなんだ」
「日本じゃそれが普通なんだ」
「妖怪になったりとか」
「それも普通なんだね」
「この国はイギリス以上にそうした話が多いからね」
動物が人になったりするお話がというにです。
「人と他の生きものの境目が少ない国だから」
「僕達と先生みたいに」
「垣根が少ないんだ」
「だから動物が生きものになったり」
「そんなことがあるんだね」
「あと人間が動物になる話も多いよ」
逆もまたというのです。
「そちらもね」
「山月記ですね」
トミーは先生のお話を聞いてこの作品を出しました。
「中島敦の」
「そう、あの作品は中国が舞台だけれどね」
「日本にそうしたお話の下地があるから生まれた作品ですね」
「そうだよ」
「人が動物になったりもですか」
「日本じゃ結構あったりするんだ」
「成程、そこも面白い国ですね」
トミーは先生とのお話からしみじみと思うのでした。
「本当に」
「そうだよ、だからね」
「それで、ですか」
「熊君達も歳を経ると妖怪にもなったりするよ」
「やっぱりそうなんだ」
「じゃあ熊も人になったりとか」
「そうしたこともあったりするんだ」
「日本だと」
「まあこの山奥のツキノワグマは違うかな」
先生はこうも言いました。
「そうした話はこれまでなかったし」
「その熊さんもだね」
「別に人間に化けたりしない」
「そうなんだね」
「この国も」
「そうかもね、とにかく行こう」
是非とお話してです、そのうえで。
先生達はテントを収めてから先に進みました、それから。
ページ上へ戻る