僕のお母さんは冥界の女王さまです。
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拝啓義母様。日本にきたのはルカ君の叔母様でした。
前書き
遅くなりましたけど頑張って更新
「セフィーネ王、ひかりが妃とはどういう・・・」
私は目の前の光景に戸惑いを隠せないでいました。
突如妹と姿を現した。若き羅刹の君。
最初は本当にこの少年が私達人類の王であるカンピオーネなのかと懸念を抱き、疑っていました。
見た目は妹と年端の変わらない外国人の少年。
車椅子姿の彼からは羅刹の王の持ち得る力強さ、覇気、神々しさ処か呪力の欠片も感じられませんでした。
後にひかりら聞いたのですが。若君は普段、脚が動かない上に、その瞳も光を写さず。生活の大半を病院で過ごしているとか。
実際最初は強さよりも、弱々しさ、病弱さをかれから感じていました。
しかし、それは間違いでした。
若きが羅刹王として覚醒した瞬間、その弱々しさは消し飛びました。
四肢には強靭な力が、瞳には覇者の炎が宿り、身体から吹き出出す。“死”を体言したかのような純粋なまでの漆黒の呪力。
ただの少年が一瞬で王の風貌を纏った魔王へと姿を変えたのです。
かの王は既に四柱の神を葬った今代四番目の魔王。
その魔王がひかりを妃、妻と言ったのです。
「ひかりさんのお姉さんにはご報告が遅れてすみません。なにぶん昨晩に決まったことですし、実際にご挨拶に伺ったら草薙さんが面倒事を持ってきた場面に遭遇してしまったもので」
「俺のせいじゃない、と言いたいが客観的に見れば俺のせいなんだよなぁ」
「まぁ、自分の配下の愚行も王である僕達の責ですよ。勝手に面倒事を起こそうなら力で押さえ付ければいいんです」
ゲンナリと肩を落とす草薙さんとその肩をにこやかに叩き慰めるセフィーネ王。エリカさんは気まずそうに自分の王の後ろで小さくなっていました。
「ひかりは昨日の晩からセフィーネ王のもとに?」
「うん、草薙王の御生誕をルカ様にお伝えしに行ったの。ルカ様は今までずっと隠れてたから早くお伝えしないとって。その時に妃になってくれって言われたんだ」
この子は私がどれだけ心配したのか。
おもいっきり叱ってやりたかったが理由はなんであれ無事だった。それも世界で一番安全であろう魔王の腕の中にいたのだから傷ひとつない状態。妃の件についてもセフィーネ王が無理矢理妃にしたのではなく、双方合意の下なんでしょう。
セフィーネ王の腕の中で嬉しそうにしながら彼の華奢な胸板に
すり寄っている姿を見ると怒る気が失せてしまいました。
「セフィーネ様。ひかりを見初めていただましたことを万里谷家の者を代表しまして深く御礼申し上げます。何かと不出来な妹でございますが御身にその生涯をもって尽くすことでしょう。どうかひかりをよろしくお願いいたします」
どうか私の妹をよろしくお願いいたします。
深く頭を下げた私にセフィーネ王は笑顔を浮かべ
「はい。我が父と母に誓って」
しっかりと頷いてくださった。
「それでは草薙様、セフィーネ様。これより霊視を始めます」
ひかりさんのお姉さん、万里谷祐理さんの託宣が始まった。
エリカさんからの依頼を受けて日本に来るまつろわぬ神の特定をするためだ。
今、彼女の手にはゴルゴネイオンと草薙の手が握られている。草薙さんの手を取るのはなんでも彼がイタリアの地でかの神と遭遇したことがあるからだそうでその時の感覚が託宣に役立つとか。
さていったい何がくるのか。
見る者全てを石に変えた蛇髪の妖女、メドゥサか。
その首を跳ねた神代の英雄、ペルセウスか。
「ルカ君。誰が来てると思う? メドゥサかなペルセウスかな?」
僕にだけ聴こえるように、後ろに控えていたひかりさんが耳元で小さく囁いてくる。
「いや、もしかしてかもしれませんがもっと上位の神各かもしれません」
ぼくはというとおおよその当たりをつけていた。
「夜・・・夜の瞳と、銀の髪を持つ幼き女神。いえ、幼いのではなく、その女神は位と齢を剥奪された・・・故に小さく・・・故にまつろわずーーー」
彼女にはおそらくあの女神の姿を捉えていることだろう。
まるで千里眼のように、呟く女神の特徴に草薙さんはは驚きを隠せないでいる。
どうやら草薙さんが遭遇した女神と祐理お姉さんが霊視している女神、そして僕が予想している女神は一緒のようだ。
「その女神、まつろわぬ神霊の御名はーーーえぇっ!?」
彼女は不意に目を開いて絶句した。
そのの反応に互いに目配せし合う草薙さんにエリカさん。
「どうやら見えたようね、どうだった? もしかして、あなたも知っている女神様だとか?」
「え、ええ・・・。でもこれは何かの間違いだと思います。この女神はゴルゴンーーー邪神の敵のはずです。わたしのような者でさえ知っていんですから」
「日本の巫女でさえ知るほどのビックネーム。で、その神は?」
問うエリカさんの表情には先程のような弱々しさない。
「その女神は天空神の娘にして、頂の十二神の一角。智慧と戦いの女神ですね?」
「はい。かの女神の名はアテナ。草薙さんが遭遇し、日本に到来したという女神の御名はおそらくアテナのはずです」
信じられませんがと云う彼女に、厄介なと頭を掻く草薙さん。
頭の中で戦略を練っているだろうエリカさん。
「ルカ君」
そんな中、僕はひかりさんに手を引かれ彼等の輪から外れた。
「ルカ君大丈夫? アテナ様ってーーー」
「ひかりさんもご存じの通り、アテナはメティスお婆様の娘であり、お母さんとは腹違いの姉妹。そして僕の叔母上です」
「アテナ様、叔母様が日本にいらしてるって途中で気付いてから顔色を悪くしているみたいで」
「あはは、顔には出してないつもりでしたけとひかりさんには気付かれちゃいましたか」
「辛いなら無理して参戦しなくても」
「僕なら大丈夫。確かに叔母上と戦うのは辛いですけどそれよりもひかりさんの故郷が壊されるよりはましです」
それにと続ける。
「叔母上なら説得の余地があります。僕は覚えてませんがナタ達によれば僕はお母さんにつれられてオリュンポスで叔母上達にお会いしているそうです。それも女神達からはさぞ可愛がられたとか」
「あはは・・・ルカ君年上にモテモテですね」
頬をひきつらせながら苦笑するひかりさんにつられて僕も苦笑する。ここだけの話、僕の親権を巡って女神大戦が起き掛けたそうです。
「ということはわたし義母様がいらっしゃらない今、わたしの小姑はお婆様のデメテルさま? ハードルが高すぎるよぅ・・・」
なにやらひかりさんが呟きながら戦慄しているがそろそろ本格的に時間がないので僕は草薙さんに声をかける事にした。
「草薙さん。そろそろ時間がないので行きましょう」
「わかった。万里谷、上司に連絡して戦える場所の用意をさせてくれ。エリカは足の用意を頼む」
「「我らが王の仰せのままに」」
「ひかりさんもお姉さんと一緒に行ってください」
「うん。気をつけて」
ひかりさんは祐理お姉さんと一緒に神社の奥へと走っていった。それを見送った後に僕は草薙さんに向き直る。
「セフィーネ王、移動はご一緒されますか?」
携帯を耳に当てながらエリカさんが聴いてくる。それに対しては首を横に振ることで答えた。
「僕は先に行くところがあるので遠慮しておきます。草薙さんも準備ができ次第応戦に入ってくださって結構です。それに合わせて防衛に入ります」
「わかった。あと、俺のことは護堂でいいぞ」
「はい、護堂お兄さん。では先に失礼します」
直後風が僕を取り巻き荒々しく吹き荒れる。
少しの浮遊感を感じた後に僕は七雄神社から姿を消した。
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