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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦十日目(3)×最終戦からの対ドウター戦と後夜祭合同パーティーでのダンス

真夜達が撤収後、俺らはアイスを食べていたが昨夜の事が気になる事だったので、人気の無い所に来てから防音と人払いの結界を張って更に遮断防壁をした事に二重三重の結界で聞こえないようにしといた。今いるメンツらは、深雪・美月・エリカ・ほのか・雫・エイミィ・スバルの一年女子七人とレオ・幹比古・俺である一年男子三人が集まっていたのだった。

「さてと昨夜一真君が外出した理由を教えて欲しいな~」

「そうだね。私もスバルもちょうど気になっていた所だし、一真君がどこに行ったのかを」

「僕らも一真さんについて、話題となっていたんだ。まあ守秘義務が発生するのなら、ある程度一真さんの事を知っている僕らが代表として聞いてきた訳」

「私とほのかは守秘義務やら箝口令の満載を聞いているから、今更一真さんから聞いたとしても言わないお約束」

「そうですよ!」

「それに今更ではありますが、一真さんが蒼い翼やらCB所属については知ってます」

「俺と幹比古は、既に箝口令やら守秘義務満載の技術を使った事あるからな。今更何を言われたって驚かないと思うぜ」

「でも僕らには言えない任務があった事は確かだとは思ってたけど、昨日は一体何をしていたんだい?」

上からエリカ、エイミィ、スバル、雫、ほのか、美月、レオと幹比古の順だった。深雪は既に知っているので、昨夜行われた無頭竜潰しについてを機密に関わる事は省いてから説明をしていた。まあ俺らの敵は犯罪シンジケートもだが、大亜連合にて取り憑いたドウターやらを処分するのが俺らの仕事となっている。もうすぐモノリス・コード決勝戦も始まるからか、簡潔に答えたのだった。

「まあホントは箝口令やら守秘義務満載だけど、既にエリカ達一部の生徒だけは守秘義務やら箝口令や口止めなどの技術を知っている。簡単に言うけど、今まで九校戦に対して妨害工作をしてきた輩を排除してきただけなんだよ。四月の事件みたいにな」

「それって渡辺先輩の事故や新人戦での妨害工作や本戦で工作をしていた者達を排除して来たって事なの?」

「そういう事だ。四月の事件ではブランシュを潰したが、今回は別口の犯罪集団らを俺らの仲間と一緒に排除してきた」

「なるほどな。だったら納得だが、もうドウターは出てこないんだろ?」

レオの質問に俺は頷こうとしたら念話で蒼太らに呼ばれてから、俺と深雪は通信機をはめた事で何か問題が起こったと思い静かにしてくれたのだった。そして数分間後、通信機を外してからしばらく口を閉じていたがレオらの力を借りる事にした。

「お前らはドウターを知っているだろ?」

「俺とエリカは実際倒した事があるし、他のメンツなら九校戦六日目の時に知ってると思うぜ一真」

「そのドウター反応であるゲートがまもなく開かれようとしています。場所は観客席が四方八方に囲んである中心に、ゲートが出現すると言ってました」

「あらあら、これは私達の出番なのかしらね」

ドウターゲートの反応があった為、俺はここにいるメンツらに援助要請を出した事で皆はやる気を出した。ただし非戦闘員である美月とほのかとスバルは、幹比古が観客席から守護してくれるらしいので近接戦闘は俺とエリカにレオで中遠距離戦闘は深雪とエイミィと雫だ。それと蒼い翼とCB関連の者にもコンディションイエローを発動させてから、観客席周辺と渓谷ステージにオートマトンとIS部隊を配備させた。

モノリス・コード決勝戦は第一高校対第三高校となり、色々な意味で因縁のある対決とも言うが別の意味だと『宿命の対決』とも言える。試合自体は準決勝以上に一方的な展開となっていた。一応渓谷ステージにIS部隊とオートマトン部隊を配備させたが、ステルス兼ミラージュコロイドなので誰にも見えていない事となっている。新人戦で一条がやってみせた事を、そのままそっくりやり返せていた。

「あれは俺らと戦った一条と同じ圧縮空気弾か?氷の礫やら崖を砕いた石を飛ばすやら沸騰させた水をぶつけたとしても、十文字会頭の魔法障壁であるファランクスによって無傷だろうな」

「質量体の運動ベクトルを逆転させて、電磁波や音波を屈折させて分子の振動数を設定値に合せてますね。想子(サイオン)侵入を阻止していますが、あらゆる種類の攻撃が展開された幾重もの防壁によって阻まれています」

会頭の歩みは止まらないままだが、多重移動魔法『ファランクス』は十文字家の術者の真価は単に魔法障壁を維持し続けるのではなく、何種類もの防壁を途切れる事なく更新し続ける持続力にある。数百人いた兵士が一塊になって整然と行進する事により、集団としての防御力を高めそれをそのまま攻撃力に転化する重装歩兵密集陣形。最前列にいる兵士が倒れたら、後列の兵士と入れ替わり常に堅い防御を維持する古代用兵を冠した魔法はその名に恥じぬ防御力とプレッシャーを発揮する。

「左右に狭いフィールドを一歩一歩敵陣へ突き進む会頭を見て、三高選手は一体どのような心境なのでしょうか?回避不可能に近い事で、攻撃を少しでも緩めたらその直後に攻撃を返されてしまう」

「あれは一種の無効化を盾として具現化させたもんだろうよ。ああやって攻撃を繰り返していると、三高選手の消耗は半端が無い程だ。息が上がっている所を見るのに対して、会頭は一切疲れを感じさせない程だ。互いの距離が十メートルを切った所で、会頭はようやく攻撃をする態勢のようだな」

会頭の足が一歩一歩踏み出す事を止めてから、勢いよく地を蹴った。巌のような身体が水平に宙を飛んだ事で、自らに加速と移動魔法を掛けた事で敵選手目掛けてショルダータックルの体勢で突っ込んでいく。内部への侵入を許さぬ、対物障壁を張ったままなのでちょっとした交通事故でもあるな。

大型車の勢いのまま対物障壁で弾かれた三高選手だったが、停滞なく次の獲物として魔法防御も運動量改変も相手よりも強大な干渉力を発揮しているフィールドでは効力を持たない。三人目が倒された事で、モノリス・コード決勝戦が終えた事で観客席の前方に巨大魔法陣が輝いた事で観客らは動揺した。

『こちら主催者である蒼い翼副社長の青木だ。観客席にいる者達はそのままで待機してくれたまえ、観客席には強力なシールドバリアーが張ってある。そして目の前から出て来たのは、CBの敵であるドウターだがコイツらについては我々の者と一部の生徒が殲滅してくれるので安心して欲しい!』

「オラァっ!行くぜー!」

「ここからは私らの戦場よ!」

そう言ってから、レオとエリカはそれぞれ持つエレメンツビットと対ドウター戦用にと、一真から貰った疑似聖剣を持ったエリカだった。対ドウター戦について、攻撃出来るのはCBが持つ武器でしか対抗出来ないはずなのにレオとエリカは次々出てくるドウターを屠っていた。

四方八方にある観客席に向けた攻撃をするが、青木副社長が言った通り強力な防御壁での守護結界だったので安心していた。ちなみにIS部隊とオートマトン部隊もいるので、トレミーにいる者らもコンディションレッド発令で既に動いていた。

「私達も行きますよ!エイミィに雫!」

「いっくよー!トリガーフルバースト!」

「一真さんからのオリジナルデバイスなら倒せると実証出来る」

そう言って光の破壊光線をした後、エイミィが持つショットガン形態のデバイスにてチャージ中に雫からの攻撃をしてから一気にエイミィが屠った。それを見た他の魔法師らは、最前線で戦っている一高生徒に負けてられるかと思い前線へ行こうとしても守護結界によりこの先からは行けなかった。

オートマトンとIS部隊が残りのドウターを倒すとレオ達は最後の攻撃として、地面にてゲートという魔法陣を消滅させるためにグラビティーメモリを差したレオとIS部隊のお陰でゲートは閉まった。

「な、何だ!あれはっ!」

「あれがCBの敵であるドウターだよ辰巳先輩。そして倒せるのは、僕達魔法師じゃなくてCBだけが持つ武器だよ」

「そう言う事だ!」

目の前に来た事で、十文字会頭はファランクスを発動させたとしてもすぐに破られてしまうが、一閃の刃が目の前に来た事で会頭は辰巳と服部がいる所まで後退した。そこにいたのは、既に変身していた俺がいたからだ。

金色の刃で次々とドウターを屠る姿を見てから、ISを展開させた沙紀がいた事で会頭らに援助要請を出した。会頭はすぐに了承後、量子変換された量産型聖剣エクスカリバーを持って赤白龍神皇帝と共に屠っていた。

「赤白龍神皇帝、辰巳と服部については俺が何とかするんでな。お前はアイツを頼む!」

『了解したよ。十文字会頭』

我はそこにいたゼットンを倒すべく、三高選手三人を念力で服部がいる場所まで飛ばしてから剣劇をした。会頭は持ち味の鉄壁ではなく、貸し出された剣のみで倒す姿を見た事で辰巳と服部はどこか新鮮な所を見たのだった。

レオ達がいる所は、全て屠ったのであとはコイツのみとなった事で重力を乗せた剣で一振り。ゼットンを屠った事で、対ドウター戦が終了となったのか次々と撤退していくIS部隊とオートマトン部隊。幹比古らは手薄であった観客席にて、古式魔法とエレメンタルにより防御魔法を展開していた。

スバルも行きたかったらしいが、跳躍や近接戦については余り得意そうではなかったしほのかも光系統のが得意であって攻撃魔法については不得意である。

「流石織斑印のデバイスだね。圧倒的な攻撃をしていたのに対して、守護結界から出れない生徒らにどう説明するのかな?僕らもホントは行きたかったんだけどね」

「しょうがないよスバル。一真さんからの指示だったんだし、私らは攻撃魔法を余り持ってないと言った方がいいかもしれない」

「非戦闘員である私には納得ですが、ほのかさんやスバルさんは不満のようですが実力とデバイスがないと最前線には行けませんからね。それに一部の者以外は通過出来ないようになっていますし、結界から出ようとしても精霊によって戻されてしまうようになっています」

「僕は今回守護役だけど、しょうがないと思うよ。まあここが手薄だから、任されたかもしれないけどね。今の内に対ドウター戦の戦い方を学ばせたかったんだと思う」

戦いが終わった後、会頭らが持つ剣を返還してから赤白龍神皇帝は立ち去ったと共に、観客席がある場所へと移動してきた赤白龍神皇帝が現れた事で観客らは圧倒的なオーラにて動きが止まっていた。

『我は対ドウター戦において、邪魔な者らを閉じ込めるために守護結界を張った。そして織斑一真によって調整されたオリジナルデバイスは、元々対ドウター戦において魔法師でも使えるようにしたモノだ。だからそれを持たない魔法師が邪魔だった為に出られないように処置をした事だが、普通の魔法師だと瞬殺だからだ。それでは我はそろそろ撤退するんで、さらばだ!』

赤白龍神皇帝が消えた場所は、ドウターが出現する前の状況となっていてそのまま大会は終了となった。それとファランクスについての説明不足の為、ここで説明するが四系統八種という全ての系統種類の障壁を不規則な順番で切り替えながら絶え間なく作り出し続ける高度な力任せとなる。十文字家の代名詞とも言える多重防壁魔法『ファランクス』は、人の目に触れる機会は少ない事を知っている俺でもある。

「あれは同時に全系統全種類の防壁を展開する必要性が無いし、別々の魔法師が同じ相手に同時攻撃を仕掛けたとしても攻め手が多い程に攻撃魔法の種類が増える程魔法干渉が生じ易くなるのも当然な事だ」

「先程の試合で見せたのは、全系統全種類の魔法が含まれますし誰もが『ファランクス』だと思います。最後の攻撃は本来の使い方ではない気がしますね、お兄様」

いつの間に戻ってきた一真を迎えた深雪らだったが、俺が調整したデバイスは間違いなく対ドウター戦でも魔法師ならば使える事が確証として得た事だ。そして改めて終わった九校戦だったが、この後表彰式の手筈となっていた。

本戦と新人戦にて優勝者と準優勝と三位の者にはメダルを貰う事となっていたが、俺は新人戦で四種目出場した事なので各競技では代役として蒼太や沙紀が代わりに貰っていた。新人戦モノリス・コードにて、メダルを貰ってから、第一高校が三連覇した事で旗を受け取った会頭であった。

二週間前と言っても正確には十二日前とは打って変わって、ホールは和やかな空気に包まれていた。今は十日間にわたる激闘から解放されたばかりであって、目の前で対ドウター戦を見たというのだがそれを気にしないかのようにして、短期間緊張というプレッシャーから解放されたからか。

生徒達の多くは、過度なフレンドリーな精神状態となっていた。後夜祭合同パーティーのドレスコードは相変わらず各学校の制服であり、俺はこのためだけの一科生用のブレザーを着ていた。隣には蒼太と共に、遠くで深雪の事を見ていた。

「ダンスがあるならそれなりの格好の方がいいとは思わんか?」

「まあ生徒同士でありますし、各学校の制服なら分かりやすいかと思います」

「君も遠くから見ると人気者のように見えるが?」

人の悪い笑顔で話し掛けてきたのは、昨日完治したと判断した事で完全復帰した摩利だった。その判断も俺が直に診察をしたんで、問題は無いが対ドウター戦やら新人戦での活躍により人の目線がこちらに来るのは分かっている事だった。

「新人戦での選手兼エンジニアとしてだったので、人気者なのは変わりませんがそれは深雪の方だと思いますよ。俺の周辺には絶えず蒼い翼関連が、こちらをガードしてますからね」

俺よりも二重三重に人垣に囲まれている深雪だったが、こちらにも来ようとしている他校生徒と大会主催者に会場を提供した基地の高官と大会を後援している企業の幹部らだが、大会主催者と国防軍幹部はこちらの知り合いであり大会後援している企業幹部は蒼い翼の傘下であるから心配はしていない。

そこまでは良かったが、メディアプロという枠組みされた番組制作会社・CM制作会社・芸能プロダクションの関係者と思しき人間が纏わり付いていた。

『大丈夫よ一真さん。こちらはしっかりとガードしているから、声掛けをしていたとしても蒼い翼関連がガードしているから問題ないわ』

『流石は織斑深夜であり、旧四葉の一族であるな。俺としてはあのような礼儀知らずな輩を蹴散らす所だが、ここで殺気やら覇気のオーラをばら撒く訳にはいかんしな』

深夜と真夜と穂波さんと鈴音が怜悧な眼差しで不躾けなアプローチからガードしていたので、俺は飲み物を飲みながら雰囲気オーラだけを出していた俺だった。

「妹さんでもあるが、人気者は君の事でもあるのだよ。一真君・・・・にしても、本当に蒼い翼関連の者がガードしている様子だし君から発するオーラは尋常じゃない程のようだな」

「ほとんどが面識のある大人だと別に問題はありませんが、面識の無い者については一切話し掛けるなと言っておりますので問題はありませんよ」

「今さっきのはローゼンの日本支社長だろう?一年生が声を掛けられてくるのは初だと私は思うぞ」

「ほとんどの者とは面識がありましてね、過去の例は無いと思いますが俺的には名前を売る行為はしていません。ほとんどの者が必然的に俺の事を知っていますし、俺の方も知っている者らですから」

「あとはダンスだけなのだからな、そうすれば学生だけの時間となる」

そう言ってから、摩利は飲み物が置いてあるテーブルへと歩み寄った。ここ最近はずっと機嫌が良いのは、彼氏が近くでいるからだと思う。恋人という特効薬のお陰なのかもしれんが、この後パーティーを抜け出して千葉修次のとこに行くのだろう。蒼太としばらく話していると大人らの気配が無くなり、ダンスの時間という特別な雰囲気となっていた。

「お偉い方は退出したみたいですし、ますます和やかとなり浮いているかのような空気となっていますね」

「そのようだな。管弦の音が鳴っていると言う事は生演奏か?相変わらず青木は良い仕事をするようになったな、その熱意に少年達は応えるかのようにして、懸命に話術で親交を深めた事を成功した者らが少女の手を取る、か。ホールの中央に進んでいるからか、踊っている当人達が着ている服装については関係が無い事なんだな」

「それでも九校共通の女子生徒用正装である、シルクテイスト・オーガンジーのインナーガウンがターンのたびに翻る事でドレスと見劣りしない華やかさを持っています」

シルクテイスト・オーガンジーのインナーガウンとは、上着の下に着る袖無しガウンの事だ。無論深雪の所には予想通り、学校学年関係なく少年達が群がっていた。まだ誰も手を取る事は出来ていない様子だったし、今は沙紀がガードをしているので話を進められていないのだろう。

時間ギリギリまで来賓に囲まれていたし、その中心にいたのが青木だからな。深雪も俺も舞踏会というダンスパーティーのマナーについても、しっかりと知識としてあるので相手が礼儀を守ればダンスを頑なに断りはしない。

「あの状態だと少年達は気後れしている様子のようですね。まあ誰とでも踊る訳にはいかない事ですし・・・・あれは一条のプリンスでは?」

「そのようだから行くぞ」

一言言ってから、今まで壁際にいた俺らだったが見知った顔であり面識有りならばと思い人垣へ進めた。そしていつものハリセンというエクスカリバーを抜いた俺だったのか、途中途中ハリセンの音が聞こえるようだったが音を最小限にしたので群がる少年達を倒しながら突き進んで行った。

「二日振りだな、一条将輝」

「むっ、織斑一真か」

気安い挨拶を互いに交わしていたが、俺と一条も友人とは考えていないし堅苦しい挨拶も不要である。

「身体の方は大丈夫か?ダウンバースト威力抑え気味バージョンと雷撃をプラスさせたから、まだ痺れているかと思っていた」

「あの威力でも手抜きとは恐れ入るが、お前に心配される筋合いは無い」

「それもそうか」

社交辞令を提示してきた俺に対して、一条は友好的とは言えない応えを返した。九分九厘手中にしていた勝利を覆した苦杯を嘗めた敗者にとって、勝者からの気遣いなど愉快な気分なはずも無い。一条の対応にて、ある意味当然の素っ気無さの態度に対して深雪が不快な目を向けてきた事に気付いた一条は、心を狼狽に覆われた。

「えっ、あ、・・・・あっ?織斑!?」

突然素っ頓狂な声で俺の名字を小さく叫ぶ一条だったが、俺達は『大丈夫かコイツ?』という目で眺めていた。

「もしかしてお前、彼女と兄妹か!?」

一条のセリフは俺に言い様の無い脱力感を与えたので、俺らが最初から気付かない方が可笑しいと思った。

「今まで気付かなかったのか?マジで?」

いくら名字が同じだとしても、それを気付かない方が可笑しいと思ったが俺をライバル心で見ていたのか全然気付かなかった様子だった。呆れ顔で問い掛けて、一条は絶句したまま立ち尽くしていた。短く控えめな笑い声が聞こえるが、深雪は口元を抑えていた。

「・・・・一条さんは、私とお兄様が兄妹には見えなかったのですね」

「いくら何でも気付くの遅すぎだろ。現代魔法を使う妹と現代でも古式でもない魔法を使う俺だと、親族でも思ったのではないのか?」

笑いを噛み殺して、一条に話し掛ける深雪の声に俺も真顔で答えていた。そして俺が言った事で、深雪は更に嬉しそうな声で笑っていた。

「えっ、いえ、その・・・・ハイ」

言い訳を断念して項垂れた一条を、深雪はニコニコと笑みを浮かべて見ていた。どこを気に入ったかは分からないが、一条は深雪の目に適った様子だった。目に適ったとはいえ、ダンス相手としてというレベルでしかない。

「とまあいつまでもここにいると邪魔になりかねんから、深雪、一条と踊ってきたらどうなんだ?」

俺のセリフに一条はガバッと顔を上げたが、正確には『一条と踊っ』の所で上げていた。彼の目は期待に輝いていたが、兄が許可を出した事で深雪はクスクスと笑ってから小首を傾げていた。

「兄からの許可が出た所ではありますが、どうしますか?」

「是非・・・・一曲お相手願えませんか」

上ずりかけた声を精一杯抑えて、一条は恭しく深雪に向かい作法通りに一礼した。

「こちらこそ、よろしくお願い致します」

深雪も作法通りの一礼を返してから、差し出された手を取った。ポジションに付く直前、一条は感謝と感激の籠った眼差しで俺に目礼した。俺はそれを見て一言。

「全く現金な奴だな」

「その通りではありますが、一条にとっては余程嬉しかったのかと思います。懇親会の時に一目惚れをしていたそうですよ」

「その時も気付いていましたが、頬を少し赤めではありました」

一条の見せた微笑ましいラブコメは、俺にとっては他人事のような感じであった。まあ気楽に対応出来たから、これは良しとしよう。そんで目の前にいるのは、もじもじと上目遣いに俺を窺い見るほのかを前にしてから俺は言った。

「ほのか、一緒に踊らないか?」

「はいっ!喜んで!」

本来ならここでウエイトレスをしているエリカに言われるが、己の未熟さは無いので言われないで済んだ。エリカは相変わらずのウエイトレスとして働いているし、幹比古と美月にレオは裏方にて皿洗いでもしているのだろう。

このホテルに泊まる条件は、このようなパーティーの時にはホテルの従業員として働くのが条件だったからだ。それに女性を誘うテクニックを持っているので、経験豊富な俺だと楽であった。

「一真様もダンスに行ってしまいましたが、俺らはどうします?沙紀」

「今回は一応ボディガードなんだし、遠くから見ているだけでも良しとしましょうか」

蒼太と沙紀は遠くから見ている事だったが、俺はほのか、雫、エイミィ、スバル、和美である一年女子選手筆頭と真由美やあずさの相手もする事となった。一年女子達はこれまでのお礼として、一通りの者らとダンスをしてから三年生や二年生の先輩女子ともお相手をした事で壁側にあった椅子に座っていた。蒼太が隣にいるので、こちらに戻ってきた時にドリンクをもらった。

「それにしても一真様のダンス相手はとても数が多かったようですね」

「まあな。まさか一年女子選手ら全員と相手するとは思わなかったが、今までカウンセラーやら治療とかをしてきたからな。それにしてもまさか三年生と二年生の相手もするとは思わなかった」

一年女子らはリズムが同じなんだが、三年生と二年生のリズム感が独特であったとしても相手のリズムを見様見真似で合せている。ダンスとかも深雪同様上手いので、ミスをほとんどした事はなかった。特に雫に関しては、まるでダンスマシーンと踊っているという感じだった。真由美に関しては演奏とステップが合っていないが、そこも優雅に踊る姿を見た者達。

「踊り終えたら、七草会長は上機嫌で次のパートナーを探しに行きましたね」

「そのようだな。一年女子らと踊り終えたのか、他校の女子らがこちらを見ているのは気の所為か?」

「気の所為ではなさそうですが、一条みたいに深雪様とのダンスが終えると上級生のお姉さまの引っ張りダコとは比べものになるくらいかと」

俺らは座りながら、ドリンクを飲んでいると会頭が近付いてきたので少し話した。二人共慣れているので、この場を簡単に話してから空のグラスをウエイトレスを渡してから無言で会頭に付いて行く。大会開幕直前の夜、武装してきた侵入者を捕えた庭には忍び寄る人影も気配もなく静まり返っていた。完全な静寂ではないが、窓が開いているのか僅かな音楽の音が聞こえてくる。

「俺に何用でしょうか?そろそろ祝賀会が始まる頃だと思いますが」

パーティーの後、会場では第一高校貸切の優勝祝賀会が開かれる予定となっている。総合優勝を勝ち取った学校に与えられる些細な特権らしいので、一高チーム幹部であり主力選手である会頭も俺も当然出席しなければならない。

「心配するな。すぐに済む」

振り返って答えるが、大した用事では無いという事だろうか?パーティー途中で俺を連れ出す必要は無いように思えるが、短時間で決着する話題なのだろうか。それと一応なので、気配を消しているが烈と真夜が待機していた。

「織斑、お前は十師族の一員だな?後ろ盾ではなく、本来の家系では一員なのではと俺は推測しているがどうなんだ?」

「確かに俺の強さは十師族かもしれませんが、十師族の一員ではありませんよ」

「そうよね。一真様は一見十師族の一員かもしれないけど、それを言ってしまうと流石に答える訳にはいかないでしょ」

気配を察知した会頭だったが、そこには九島烈と四葉真夜がいた事で驚愕まではいかないが真顔を保っていた。

「九島閣下に四葉真夜様、いつの間にいたのでしょうか?」

「最初からだよ。それに一真様が十師族の一員だとしたら、今後の動きに支障が出るだろう。十文字家代表補佐を務める次期当主殿に助言をするが、織斑家は表では十師族とは関係ない家系であるが、裏では零家とCB総司令官との後ろ盾を持つ者。今更十師族になるべきだと思っていたとしても、権限やら権力については既に知っていると存じている」

「それに克人君は、一真さんの本当の年齢やら容姿を知っている訳なんでしょ?ここで言うけど、一真さんは織斑家現当主であり私の姉である深夜の夫なのよ。零家の分家みたいな感じだから、十師族の一員ではなく蒼い翼とCBの一員なのよ」

そう言った後、会頭は渋々了解と言ってから十師族の次期当主に勝ってしまうという意味であっても重くは無い。戻った会頭であったが、背中を見送ってから烈と真夜も先に戻って行った。深雪が近くにいる事を察知した俺らは、先程話していた内容を簡単に話してからそろそろパーティーが始まるようだった。

「流石に創造神黒鐵に関しては、まだバレてない様子だった」

「まあそうでしょうね。そろそろパーティーが始まりますが、パスする訳にはいかないでしょう。部屋に戻ったとしても、ほのかやエリカの襲撃を受けるだけかと思います」

「ほのかは分かるが、エリカは会長に捕獲されたようだな。ラストの曲が始まったから、ラストのダンス相手を深雪にお願いしてもいいかな?」

「もちろんですが、せっかくここには誰もいないので久々に大天使化をしませんか?そうすれば神界やら精霊界にいる音楽の神らが、生演奏をしてくれるはずです」

そう言って二人共大天使化をしてから、創造神黒鐵と女神雪音となった我らは女神らを呼び出してから男神と女神でのダンスパーティーとなった。蒼太と沙紀は、唯一の人間としてだがたまにはと思い一緒に踊った。

月光と星の光の下にて、透き通った笑みを浮かべる我と雪音であったが神々しい所で最後のダンスを行っていた。そして祝賀会では、主に四種目出た俺が目立っていたが終わるまで食べたり飲んだりしていたのだった。 
 

 
後書き
ここまで読んでくれてありがとうございます。長い九校戦編はこれにて終了となります。 
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