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フリージング 新訳

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第31話 Sanction 3

 
前書き
い、以外と進まない……早くキャシーさん編を書きたいのに‼︎
てかフリージング今すごいことになってますね⁉︎あの主人公はどうも… 

 



「さてと、次のお相手は君かな、一年生?」

アーネットが淀みない足取りで、余裕を保ちながらカズトへと近づいていく。
そして、それを止めるようにクレオが立ちはだかった。

「何よ、クレオ〜。横取りする気〜?」
「今回の目的はサテライザーだ。この少年ではない。」
「えぇ〜、いいじゃん別に〜、ちょっと味見するだけだよ〜。」

呑気に、余裕に話し始める2人を、カズトは未だに腕を組んで動か無かった。その姿に、少し離れた位置にいたアティアは、それを訝しんだ。

「あなた、随分と余裕ね。お仲間がやられたっていうのに。」
「……なにか勘違いをしていませんか、お三方。」

漸く開いたカズトのセリフは、三人を嗜める物だった。まるで、何もわからない子供に諭すかのような口ぶりだ。

「何を、勘違いしているのかしら?」
「いえ、簡単な話ですよ。」

ニヤリと、今までとは違う気味の悪い笑みを浮かべている。まるで、あの小鬼と同じように。

「内の姫様方は、こんなんじゃ倒れませんよって事です。」

それは的確だった。背後に立ち上がった気配を感じ、アーネットはゆっくりと振り返る。そこには、自分が先ほど倒したはずの女王が立ち上がっていたのだ。

「さぁ、第二幕の始まりだぁ……」

****************

気がつくと、カズトは謎の部屋にいた。
いや、謎のと言うのは少し違う。以前も来た事のある、赤と黒のタイルが敷き詰められた部屋だ。以前と内装は変わっていない。変わっていないはず……

「て、待て。俺別に気絶してないぞ。」
「いやぁ、安心しな相棒。表は俺が切り抜けてやってるからよぉ。」

視線を落とすと、やはりそこには小鬼がいた。そこで気がつく。自分の格好が、小鬼のスーツと同じものだった。

「なんだこれ……」
「似合ってるぜ相棒。」

心にも無いようなことを言う小鬼に舌打ちをして、グラディウスを展開した。
さっさと終わらせてサテラのところに戻らないといけないのだ。

「待てよ相棒。話を聞けって。」

そう言って、小鬼はパチンと指を鳴らした。すると、部屋の一点が明るくなる。

「なんだ、あれ……」

そこにあったのは、一台のピアノ。普通の物とは違い、どこか重々しい雰囲気を醸し出している。

「さてと、今サテライザーとラナは一種の極限状態にある。」
「……どういう事だ?」
「簡単に言えば、ダメージが許容範囲を超えて、聖痕がカバーしてる感じだ。」
「……それで、どうなる。」

小鬼はより一層笑みを浮かべ、ピアノを指差した。

「お前さんが、コントロールしろ。」

コントロール。その言葉が、カズトの神経を逆なでした。この小鬼は、まるで二人のことを道具のように言ったのだ。

「ふざけ……」
「おっと、拒否権はないぜ?お前さんがやらなければ、あの二人は死ぬぜ?」
「……なら、なんでピアノなんだよ。」

自分はピアノなどまともに弾いたことはない。あるとしても、まだ小さい頃にカズハが弾いているのを見様見真似で弄ったくらいだ。そんなこと、こいつならば分かっているはずなのに。

「あるだろ?取って置きの一曲が。」

カズトは答えない。いや、答えられない。この小鬼が、どうしてアレのことを知っているのだ?などと、的はずれな疑問が脳内を駆け巡っていた。知っているのは当たり前なのに。自分の中にいるのならば、知っていて当然なのに。

「……分かった。」

何も分かっていないのに、そう言って、ピアノへと歩いていった……



サテライザーの動きは明らかに異質だった。先ほどまでの単調な動きなのには変わりない。だと言うのに、その刃のキレは段違いに跳ね上がっている。一撃一撃が重く、鋭い必殺といっても良いものだ。
対してラナの方は、立ち上がりクレオと再び戦闘を開始していた。
クレオの拳は先ほどと打って変わって一撃も当たらず、逆にラナの拳の方が当たり始めていた。


カズトはピアノを弾く。それは、白と黒が逆転した奇妙なピアノだった。ゆっくりと指を起き、力強く弾き始める。


サテライザーに意識はほとんど無い。あるのは、負けてはならないという脅迫観念と、耳に微かに聞こえてくるピアノの音だけだ。
それに導かれるように、ただひたすら前に進むだけだ。

ラナには意識があった。だが、体はまるで自分のものでは無いかのように動く。拳は重く響き、その蹴りは鋭く敵を切る。まるで、耳に届くピアノの音が自分を強くしているようだ。


カズトの曲は、カズハが好んで弾いていた物。喜びと悲しみに分けられた曲の中で、いつも悲しみの方を弾いていた。
いつか、どうして喜びを弾かないのかと、訪ねたことがあった。

その時あの人は……なんと答えたのだったろうか……?


サテライザーとラナ。耳に響くピアノの曲が、クライマックスに入ると同時に、背中の聖痕から、羽が生えた。
あまりに突然。何かに呼応するかのようなその姿は、愚かな人間を見下す天使のようだった……
 
 

 
後書き
ピアノの演出難しい……次回決着‼︎アーネットさん達を攻略するのは、だいぶ先になりそうです……申し訳ありません。 
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