身近な殺人犯
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依頼
身近な殺人犯
この物語の主人公、天海來翔は元高校教師で現在は相談所で相談を受けている。この相談所は1年前に天海自身が設立したものである。学生の学習相談、進路相談、恋愛相談などから、身内が殺されたが警察が捜査をやめてしまったので調べてほしいなどという探偵の仕事も頼まれたりする。最近は浮気調査の依頼や、離婚すべきかどうかの相談、DV被害を受けているのだがことを大きくせずに解決するには、などという男女間の問題の相談が多い。
「天海社長、おはようございます」
今日も朝から電話が鳴っている。
「千葉、電話にでてくれ」
千葉悠也、25歳。探偵志望だったが、親に猛反対されこの職についた青年。一流大学を卒業しており、少々頭がお堅い。
「はい、こちら・・・・・・はい?大丈夫ですか」
電話相手が泣き出したのだろうか。詰まっているときに相談するのだから、そんな事は珍しくない。
「あの、どちら様でしょうか」
『・・・・・・天海さんいますか』
「はい。お名前うかがってもよろしいでしょうか」
『っあ、すみません。朝霧です』
「朝霧さんですね。しばらくお待ちください」
指名なんて珍しい。一体誰なんだろう、と千葉は考える。天海さんの元カノだろうか。
「お電話代わりました、天海です」
『天海先生、学校に来てください!脅迫状が届いたんです!』
「もしかして、朝霧さんって・・・・・・美月先生?」
『っえ、言い忘れてました?すみません、興奮してしまって」
「いえ。それより、脅迫状とおっしゃいましたよね。警察には?」
『いいえ。悪戯かもしれないので、事を大きくするなと校長が』
「なるほど。俺、久しぶりに北高に行くのも悪くなさそうなんで、今すぐ行きます」
天海は電話を切ると、コートをサッと羽織って外にでた。県立北高校は天海の以前の勤め先で、朝霧美月はその職員だ。
北高校の教務室に入ると、そこにいた全員がこちらを向いた。
「うわあ、天海じゃないか」
「天海先生!」
去年からこの学校にいる教師が次々と話しかけてきた。
「お、天海。北高ぬけてどこの高校にいったかと思えば、どこの高校にもいないなんて心配したんだぞ。少しは連絡くれよ」
「大友先輩、すみません」
大友は数学教師。40歳独身。しかも彼女なし。天海と出身大学が同じなので、お互いに親しみをもっている。
「大友先輩は、まだ美月先生を狙ってるんすか」
「んなわけないだろ」
この話も校内では有名である。
「天海先生、校長室に」
そういってやってきたのは依頼人の朝霧美月。そのかわいさに、大友は今現在やられている。校長室には森校長、教頭など数人の教師がいた。
「脅迫状が送られてきたそうですが、実物は?」
「それが、これだよ」
出されたのは一枚の葉書。
午前9時 用具庫C
24707 刺す
「脅迫状は1枚のみですか」
「はい」
そのとき、校長室のドアが勢いよく開いた。そして2人の生徒が入ってきた。去年、天海のクラスにいた結城奏人と松本ゆずるだった。
「うわあー天海先生!」
「奏人、松本!・・・・・・あ、失礼。用件は?」
「脅迫状がFAXで2通送られてきました。これです」
2月2日に全て終わらせる
カギは朝霧美月
これが脅迫になっているのかどうかはわからない。雑誌や新聞、マンガを切り抜いて貼っただけの物ではないのか。
「依頼はこれを解読して、送った人物を特定し、目的を定かにすることですね」
「お願いします」
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