魔界転生(幕末編)
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第14話 龍馬と象二郎
後藤象二郎は長崎にいた。
どうしても会いたい男がいたからだった。その男はいずれこの時代の中心に位置するだろう象二郎は思っていた。
「象二郎さん、久しぶりぜよ」
屈託のない笑顔でその男は現れた。その男の名は坂本龍馬。
京都で以蔵に敗れた後自分が起こしていた会社・亀山社中へと戻っていた。
「おぉ、龍馬、ほんに久しぶりじゃのぉー」
龍馬と象二郎は握手を交わした・
「時に象二郎さん、わしになんの用ぜよ」
象二郎は道々、見聞を広げ学問を学んできたことを龍馬に告げた。
「なぁ、龍馬、今、長州も薩摩も瀕死の状態ぜよ。異国との戦でコテンパンに負け、薩摩は食料を。長州は武器弾薬が不足している。このままでは薩摩も長州も異国にとられ大陸と同じように異国に支配されてしまうぜよ」
「そのことはしちゅる。わしもあの2強がこれらの日本を変えるとおもっちょる」
龍馬はうなずきながら言った。
「そこでじゃ。おまんの会社でなんとかできんもんかのぉー」
象二郎は難しい問題を龍馬に突き付けた。
「うーん、なんとかはなるじゃろう。じぇけぇ、薩摩と長州が手を結ばん限り難しいと思うぜよ」
二人は腕を組み思案した。
「あっ、そうぜよ」
龍馬は名案を思い付いたように拳を掌に落とした。
「多分、わしが声かけても両県とも乗ってこんじゃろう。じゃけぇ、勝先生ならなんとかしてくれるかもしれん」
「幕府海軍奉行の勝阿波守様か」
象二郎は喜びのあまり目を見開いた。
「早速、勝先生に連絡を入れてみるぜよ」
龍馬は一時席を外した。
数分後、旅支度を済ませた龍馬が現れた。
(さすがに行動が早いな)
象二郎はこの男の行動力と判断力がうらやましかった。
「じゃあ、象二郎さん、また今度逢うときはいい知らせを持ってくるぜよ」
龍馬は象二郎を置いて出かけようとし始めた。
「ちょ、ちょっと待つぜよ、龍馬」
「うん?」
龍馬は足を止め象二郎へ向き直った。
「どうしたぜよ、象二郎さん?」
「実は話はそれだけでないぜよ」
象二郎の顔色が青くなっていた。龍馬は再び象二郎の前へ座った。
「わしは土佐であってはならないものに出くわした」
象二郎の顔が歪んでいくのを龍馬はみつめた。
「あってはならないもの?それはなんぜよ」
勘がいい龍馬にはすぐに察しがついた。
「それはな、龍馬。わしは土佐で武市半平太と岡田以蔵に会ったんだよ」
「やっぱり、生きていたんかよ。武市さは」
龍馬は喜んだ。が、象二郎の表情は青く固まった状態であった。
「いや、武市も以蔵も死んだ。わしはこの目でしっかりと確認した」
「やはり・・・・」
「やはり?」
龍馬の言葉に象二郎は反応した。
「龍馬、おまんも会ったのか?」
「いや、武市さには会ってはいないぜよ。じゃけ、以蔵には京であった」
象二郎は目を見開いた。
「以蔵め、京におったのか」
「あぁ、わしは負けてここに逃げ帰ったってことです」
龍馬は頭をかいて笑った。
「龍馬、気をつけろ。わしは長州、薩摩以外にも武市が何やら鍵になるような気がしてならんのじゃ。あの男が何をたくらんでいるのか不気味で仕方がない」
「確かに以蔵もとんでもない化け物なっておったぜよ」
龍馬も象二郎も再び腕を組んで思案し始めた。
「まぁ、ここで考えても仕方ないぜよ。ともかく、まずは勝先生に会って話をすることじゃ」
龍馬は立ち上がった・
「龍馬、気をつけるぜよ」
「あぁ、象二郎さんもな」
二人は頷きあった。
この会談により、一気に時代は動き始めるのだった。
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