遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜
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エピソード37 〜試練 その1〜
私こと、叢雲 翠……、いや、帝 光はとある理由からオシリス・レッドの寮まで足を運んでいた。
私たちがプロである事が公にされ、数日と経ってないのであまり人に会わない方がいいのだが今回だけは仕方がない。
なにせ、"魔王"に挑む"勇者"に試練を与えに行かなければならないからだ。しかも、私自ら。
「うーん、十代君達が勇者ポジなら、私は囚われの姫?いや、それなら戦わないか。じゃあ、啓示を授ける女神的な……?」
寮へと向かう道中、一人ボソボソと呟ていると、無償に人が恋しくなる。
いつもなら、隣にアテナが居て話し相手になってくれるのだが珍しく用事があるらしく、今日は居ない。
若干の淋しさを感じつつ、歩いているとようやく森を抜け、断崖絶壁に立つオンボロ寮が見える。
『クリクリ〜!』
「ん……?」
ふと、声のした方角を向けば茶色いボールのようなモノがこちらへと向かい飛んできていた。
一瞬、空飛ぶ毛玉と色めきたったが、どうやら『ハネクリボー』の精霊らしい。そして、この子が近くにいるという事は……。
「お〜い、相棒〜!どこ行くんだよ〜……って、紫苑の姉ちゃん⁉︎」
「ハロ〜、十代君」
案の定、目的の人物である遊城 十代君もついてきた。
なんでアンタがここ⁉︎と目をむいて驚かれ、若干凹むがいまはそんな事で時間をとっている暇はないので、とっとと本題へと入る。
「ねぇ、十代君、少し暇かな?」
「まぁ、暇だけど?お、もしかしてデュエルか!」
「有り体に言えばそうだけど……」
私が言い終わる前に瞳を輝かせ、やったぜ!とはしゃぐ十代。どんだけデュエルが好きなんだか。
「おーい、兄貴〜!突然、どこに行っちゃ……、光プロ⁉︎」
「……あちゃー、ギャラリーが増えたか」
十代君の事を追いかけて来たと思われる翔君が私の事を見るなり、昼間にお化けでも見たかのようなリアクションをされる。
ちょっとと言わず、だいぶ凹む。
ついでに言うと彼とのデュエルは内密に済ませたかったので観戦者ができてしまった事を残念に思う。
「な、なんでこんな辺鄙なとこに、い、居るんすか?」
「お、翔!いいとこに来たな!今から紫苑の姉ちゃんとデュエルだ!」
「ええええ!?前、僕と兄貴で組んでボコボコにされたばっかりじゃないすか!」
なかなかオーバーなリアクションの翔君とは対照的に楽観的な十代君。
なるほど。紫苑が言うとおり、いいコンビだ。
そして、十代君の方に視線を向ければ早くデュエル!と視線のみで訴えかけてくる。
「うーん、十代君。デュエルはするんだけど、あんまり目立つ場所でやりたくないんだよね」
ほら、立場的な問題で……?と続ければ察してくれたのか相槌をうち、足早に崖の方に行ってしまう。後を追えば、崖下へと続く坂があり、そこにはちょうどデュエルができそうなスペースが広がっていた。
ついでに断崖絶壁の真下という事で人目にもつきにくい。
「あー、もしかして僕ってお邪魔……でした?」
翔君が気まずそうに尋ねてくる。
「内密に済ませたかったのは事実だけど……。けど、翔君は私と十代君のデュエル観たい?」
と尋ね返せば、1秒の間も開けずに肯定の返事が返ってくる。
「まぁいいか。けど、この事はひ、み、つ……だからね?」
おまけにウィンクを添えてあげれば、頬を赤く染めながらコクコクコクと頷く。
たまにはキャラじゃないことをやってみるものだ。
「なぁ〜、早くやろーぜ〜?」
既に十代君はデュエルディスクを構えおり、準備万端の様子。
これはもうただのデュエル好きというより、デュエル馬鹿なのでは……?と心の片隅で思ったりしていた。デュエルを生業にしている私が言えることではないのだが。
「ねぇ、デュエルする前に一ついいかな?」
コレを聞くことは今回の目的の一つでもあるのだが
「十代君は紫苑と、いや、プロデュエリストとデュエルすることをどう思う?」
そう尋ねれば、なんじゃそりゃ?と首を傾げた後、清々しいまでの笑みで
「そりゃ、楽しみだろ!」
と言ってのける。
「もしも、ダメージすら与えられずに完封なんてされても……?」
「そん時はその時だ。けどさ、絶対に楽しいと思うんだよ!紫苑とのデュエル!」
まるで新しい玩具を手にした時の子供のような、無邪気な笑顔を晒しながら言ってのける。そして、その言葉を聞き、安堵を覚える。
「ふふ、勇ましいね〜」
「そりゃそうだろ。逆に強い奴と戦えてワクワクしない奴がいるのか?」
それがいるのだ。いざ強敵を前にし、竦み上がり実力を出せない人などしょっちゅうだ。そして挙げ句の果てにそれを相手のせいにする輩も。
だからこそ、十代君ともう一人の子にも回りくどい方法でデュエルに対する意気込みを確かめているわけだが。
……意気込みは十代。むしろ、有り余るほどだね。
「そうだ、十代君。私に勝ったら、ボス戦に挑む勇者な君にぴったりなカードをあげるよ!」
「勇者……?まぁ、どんなカードが知らないけどきっとスゲェカードなんだろうな〜、ワクワクするぜ!」
より一層表情を明るくさせて喜ぶ彼を見ているとこちらも嬉しくなる。
「さて、話しはこれくらいにして準備はオーケーかな?」
「あぁ、とっくの昔にできてるぜ!」
「じゃ、決闘」
「決闘だ!」
「頑張れ〜、兄貴ー!」
翠:LP4000
十代:LP4000
「私の先行、ドロー!手札から『幻影の魔術師』を守備表情で召喚!カードを一枚伏せて、エンドだよ。」
『幻影の魔術師』
☆3 DEF700
翠
LP4000
手札四枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『幻影の魔術師』
さて、私としては珍しく慎重な立ち上がりだが十代君はどうくる?
「いくぜ、俺のターンドロー!
よし、手札から『E・HERO スパークマン』を召喚して、バトルだ!
『幻影の魔術師』を攻撃!スパーク・フラッシュ!」
スパークマンから放たれた電撃が直撃。いとも容易く破壊されてしまう。
「よし、破壊したっす!」
「のんのん。
破壊された『幻影の魔術師』の効果発動!デッキから攻撃力1000以下のHEROを特殊召喚するよ!」
黒色に光る魔法陣が展開され、そこに人影が浮かび上がる。
「カモン!『V・HERO インクリース』!」
召喚されたのは十代君操るE・HEROとはまた別のHERO。
『V・HERO インクリース』
☆3 DEF900
「なっ!?HERO!」
「おおっ、スゲ!HERO同士の対決じゃん!」
片や驚き、片や好奇心一杯の表情をする。
「なんで、光プロがHEROデッキ⁉︎天使族のエキスパートじゃなかったんすか?!」
端で観戦していた翔君声を荒げながら尋ねてくる。それほどまでに衝撃的なのだろうか?
「まぁ、今回は勇者の試練みたいなものだからね。私のデッキを使うわけにはいかないの。」
「それって手加減って事ですか……?」
眉を顰めながら言ってくる。おそらく自分の尊敬する人物が過少評価されていると思ったのだろう。そんな事は別にないのだから、即座に否定しようとする前に、在ろう事か十代君に翔君の言葉が否定される。
「翔、それは違うぜ。デッキが違うからって手を抜いてるわけじゃない。紫苑だってよくデッキを変えるけど、いつも全力だろ?それと一緒だ!」
「ま、そゆこと。けど、実戦用じゃないから、十代君なら十分に勝てるから頑張って!」
「な、なるほど。なら尚更頑張るっす兄貴!」
理解してくれたのか余計に応援に熱が入る翔君
「けど紫苑の姉ちゃんもHERO使いのか!くぅ〜!俺の知らないHERO、どんな効果があるのか楽しみだぜ!
俺はカードを一枚伏せてターンエンドだぜ!」
十代
LP4000
手札五枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『E・HERO スパークマン』
「私のターン、ドロー!『天使の施し』を発動し、三枚ドロー!その後、手札を二枚捨てる。そして手札の『V・HERO ポイズナー』を捨てて、『V・HERO ファリス』を特殊召喚!さらにファリスの効果でデッキから『V・HERO インクリース』を墓地に送るよ。そして、『V・HERO ミニマムレイ』を召喚!」
『V・HERO ファリス』
☆5 ATK1600
『V・HERO ミニマムレイ』
☆3 ATK1200
どちらも攻撃力が低く、それぞれのレベルの攻撃力の基準値を下回っているが代わりに中々に面白い効果を持っているのだが、どんな反応をしてくれるのだろうか。
「バトル!ファリスでスパークマンを攻撃!ミラージュ・エッジ!」
「っ!向かい打て、スパークマン!」
両者の攻撃力は互角。
互いの攻撃が交差し、各々に直撃に破壊されてしまう。
「リバースカードオープン!『ヒーロー・シグナル』!デッキから『E・HERO クレイマン』を守備表情で召喚だ!」
『E・HERO クレイマン』
☆4 DEF2000
仲間が破壊されるや否や後続が駆けつけるあたりヒーローらしい。
もっとも追撃が防がれてしまい、感心している場合などではないのだが。
「あちゃー、追撃が防がれちゃったね。私はこれでターンエンドだよ。」
翠
LP4000
手札二枚
魔法・罠 伏せ一枚
場
『V・HERO インクリース』
『V・HERO ミニマムレイ』
「俺のターンだ。ドロー!まずは『E・HERO エアーマン』を召喚して、効果発動!デッキから『E・HERO バーストレディ』を手札に加えるるぜ!そして、魔法カード『融合』発動!手札の『E・HERO バーストレディ』と場の『E・HERO クレイマン』を融合!来い、『E・HERO ランパートガンナー』!」
「きたっ!兄貴の融合HEROモンスター!」
早々のエース級モンスターの登場に翔が声をあげる。
モンスターを破壊されてからのリカバリーといい、サーチからの融合といい、中々に堅実なプレイングだ。
「バトルだ!エアーマンでミニマムレイを攻撃!」
「くっ、ライフで受ける」
翠LP4000→3400
「よしっ、兄貴が先制ダメージを与えたっす!」
よっしゃ!と我の事のように喜ぶ翔君。
しかし、これはわざとだ!
「私がダメージを受けた瞬間、墓地の『V・HERO』の効果発動!」
「なっ!?墓地から効果!」
驚きの声とともに私の目の前に二体のモンスターが現れる。
「『V・HERO ポイズナー』、の効果により、ポイズナー私の魔法・罠ゾーンに永続魔法カード扱いとして置くよ。」
現れたHEROはやはり透けており、まさしく幻影の様だ。
「さらに私の場のモンスターが破壊された時リバースカード『出幻』を発動!デッキから『V・HERO インクリース』を特殊召喚するよ!」
「すげぇ、面白い効果だな!けど、俺のHEROも負けてないぜ!
ランパートガンナーは守備表示の時、攻撃力の数値でダイレクトアタックできる!ただし、与えるダメージは半分になるけどな。
いけ、ランパートガンナー!ランパート・ショット!」
「その瞬間、リバースカード発動!『幻惑』!
場に『V・HERO』が存在する時、モンスター一体の攻撃力を半分にする!」
「げぇっ⁉︎け、けどダメージは食らうぜ!」
突如現れた靄に侵食されていき、存在そのものが希薄なものになるランパートガンナー。
翠LP3400→2900
「そして私がダメージを受けた事で墓地の『V・HERO ミニマムレイ』の効果発動!このカードを魔法・罠ゾーンに置くよ。」
早くも三体目となる幻影が出現する。
「け、けどモンスター扱いじゃないから壁にもならないっす!」
しかし、所詮幻影と言ったところか、翔君に言われてしまう。
「カードを一枚伏せてターンエンドだ。」
十代
LP4000
手札二枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『E・HERO ランパートガンナー』
『E・HERO エアーマン』
「ここからが本当のデュエルだよ!私のターン、ドロー!
私は魔法・罠ゾーンの『V・HERO ポイズナー』の効果発動!モンスターカードゾーンに存在する『V・HERO』を生贄にし、このカードを特殊召喚する!実体を持って現れよ!ポイズナー!」
私のフィールドに居たインクリースが消え、代わりに実体を持ったポイズナーが現れる。
「この効果で特殊召喚したポイズナーの効果発動!モンスター一体の攻守を半減させる!私が選ぶのはランパートガンナー!喰らえ、ドレッド・ヴィジョン!」
『E・HERO ランパートガンナー』
ATK500→250 DEF2500→1250
「今度は『V・HERO ミニマムレイ』の効果発動!ポイズナーを生贄にし、特殊召喚!そしてこの効果での特殊召喚時、レベル4以下のモンスター一体を破壊する。対象は、エアーマン!食らえ、ヴィジョン・バレット!」
「っ!エアーマンが!」
ポイズナーと入れ替わり、立ち替わり現れたミニマムレイ。エアーマンが幻影の弾丸に撃ち抜かれ、破壊される。
「そして、ラスト!『V・HERO インクリース』の効果発動!ミニマムレイを生贄にして特殊召喚!そしてこの効果での特殊召喚時、デッキからレベル4以下の『V・HERO』を特殊召喚する!私は『V・HERO マルティブリ・ガイ』を特殊召喚!サモン・ヴィジョン!」
形成逆転、なのだろうか……?エアーマンを破壊し、ランパートガンナーを弱体化、そして、私のフィールドには二体のモンスター。だが、あの伏せカードが気になるが、それもなんとかなる。……召喚時効果じゃなければ。
「私は二体を生贄に『V・HERO ウィッチレイド』を召喚!そして、効果発動!相手の魔法・罠カードを全て破壊する!ヴィジョン・デストラクション!」
「その時、伏せておいた『リビングデッドの呼び声』を発動して、『E・HERO エアーマン』を特殊召喚するぜ!」
「っ !……マジか〜。読みが外れたな〜。」
てっきりミラフォとかの攻撃反応系と思っていたのだが。これは厄介だ。
「リビングデッドが破壊された事でエアーマンは破壊されるけど、エアーマンの効果は発動されるぜ!俺はデッキから『E・HERO ワイルドマン』を手札に加えるぜ。」
「よし、手札を増やした!」
このように融合素材となるカードを手札に加えられ、さらにダメージも与えられなくなる。
「しょうがないか。バトル!ウィッチレイドでランパートガンナーを攻撃!ヴィジョン・レイ!」
放たれた褐色の閃光はランパートガンナーの装甲を貫き、爆発四散させる。
「カードを一枚伏せて、ターンエンド。」
翠
LP2900
手札一枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『V・HERO ウィッチレイド』
☆8 ATK2700
「いくぜ、俺のターンッ、ドロー!魔法カード『融合回収』を発動!墓地のクレイマンと『融合』を手札に加えるぜ。そして、クレイマンを召喚!そして、クレイマンを対象に『ヒーローマスク』を発動するぜ!デッキから『E・HERO ネクロダークマン』を墓地に送って同名扱いにするぜ。」
「なるほど」
これでネクロイド・シャーマンの素材を揃えたと共にネクロダークマンの真価も発揮できるようにしたわけか。
「いくぜ、魔法カード『融合』!ネクロダークマン扱いのクレイマンと手札の『E・HERO ワイルドマン』を融合!来い、『E・HERO ネクロイド・シャーマン』!」
『E・HERO ネクロイド・シャーマン』
☆6 ATK1900
英雄というより、呪術師のようなモンスターだ。
「ネクロイド・シャーマンの効果発動!ウィッチレイドを破壊して、さらに墓地からポイズナーを攻撃表示で特殊召喚するぜ!」
「よし、最上級モンスターを破壊したっす!これで一気に大ダメージっすよ!」
『V・HERO ポイズナー』
☆3 ATK900
「よし、バトルだ!ネクロイド・シャーマンでポイズナーを攻撃しろ!ダーク・シャドウ・ストライク!」
翠LP2900→1900
1000ポイントと中々に大きいダメージを食らってしまう。だが、これくらい必要経費だ!
「ふふっ、私がダメージを食らったおかげで『V・HERO』の効果が発動されるよ。墓地から『V・HERO インクリース』を魔法・罠ゾーンにセッティング!そして、モンスターが破壊された事でリバースカード発動!『ヒーロー・シグナル』!」
宣言ともに夕焼けの空にHの文字が映される。
「私は『E・HERO オーシャン』を特殊召喚!」
水を巻き上げ、海の戦士が私のフィールドに降り立つ。
「おっ、また俺の知らないHEROが!
モンスターをセット。これでターンエンドだ。」
十代
LP4000
手札0枚
魔法・罠無し
場
伏せ一体
『E・HERO ネクロイド・シャーマン』
「私のターン、ドロー!そして、スタンバイフェイズ時にオーシャンの効果発動!私の墓地またはフィールドからHERO一体を手札に戻す。私は墓地の『V・HERO ファリス』を手札に戻す。そして、魔法カード『火炎地獄』!十代君に1000ポイントのダメージを与え、私は500ポイントのダメージを受ける。さらにチェーンして墓地の『ダメージ・ダイエット』を除外し、効果ダメージを半減する!」
「うわっ⁉︎」
十代:LP:4000→3000
翠:LP1900→1650
「ダメージを受けたことで『V・HERO ポイズナー』を墓地から魔法・罠ゾーンに置くよ
そして、魔法カード『幻影融合』発動!私は魔法・罠ゾーンにいる『V・HERO インクリース』と『V・HERO ポイズナー』を融合!来い、虚ろなる英雄よ!『V・HERO アドレイション』‼︎」
『V・HERO アドレイション』
☆8 ATK2800
「来たぁ!カッチョイイ!」
「そうっすね!……って、感激してる場合じゃないっす!ピンチっすよ、兄貴ィ⁉︎」
V・HEROの融合モンスターの登場に感激してくれる十代。こんなリアクションをとってもらえるとデュエリスト冥利に尽きる。
「驚くのはまだ早いよ!アドレイションの効果発動!私の場のこのカード以外のHEROと相手の場の表側モンスター一体を選択し、選択したHEROの攻撃力分、相手モンスターの攻撃力をダウンさせる!私はオーシャンとネクロイド・シャーマンを選択する!シャドウ・ダウン!」
「ヤベッ!ネクロイド・シャーマン!」
アドレイションが放った光は帯状に伸び、ネクロイド・シャーマンを締め上げる。
『E・HERO ネクロイド・シャーマン』
ATK1900→200
「バトルだよ!アドレイションでネクロイド・シャーマンを攻撃!アンビション・サンクションズ!」
「っ!うわぁぁぁ⁉︎」
十代LP3000→400
一気にライフの半分以上を削り、ライフ差が逆転する。
「さらにオーシャンで裏守備モンスターを攻撃!」
「破壊された『フレンドッグ』の攻撃発動!墓地の『E・HERO スパークマン』と『融合』を手札に加えるぜ!」
やられてもタダではおきない十代君。これでまた融合されてしまうかもしれない危険性が出てきた。
「中々にしぶといね。これでターンエンドだよ。」
翠
LP1650
手札一枚
魔法・罠無し
場
『V・HERO アドレイション』
『E・HERO オーシャン』
さて、十代君の手札はスパークマンと融合のみ。このドローが命運を分けるが、何を引く?
「俺のターンッ、ドローォォォ!来たぁ!魔法カード『天使の施し』!」
「っ!予想してたけど、いくらなんでも強運すぎるよね⁉︎」
などと言えば、運も実力のうちだぜ!と笑顔で返される。解せぬ
「三枚ドローして、二枚捨てる。よし、俺は今捨てた『E・HERO シャドーミスト』の効果発動!デッキから『E・HERO エッジマン』を手札に加えるぜ。」
「よっしゃ、このまま突っ切るっす!」
「なんだろ、このアウェー感は……」
こんな時にアテナか紫苑でも居ればな〜、などと思いつつ完全に流れに乗っている十代君を見る。
「『融合』発動!手札からスパークマンとエッジマンを融合!来い、『E・HERO プラズマヴァイスマン』!」
『E・HERO プラズマヴァイスマン』
☆8 ATK2600
3度目となる融合召喚で召喚されたのは、両腕に金色の武装を施した戦士。攻撃力こそ、私のアドレイションに劣るが確か厄介な効果持ちだったはず。
「プラズマヴァイスマンの効果発動!手札を一枚捨てて、アドレイションを破壊だ!プラズマ・ブレイク!」
「っ!やるね……。」
プラズマヴァイスマンの雷を纏った一撃を受け、破壊されてしまうアドレイション。
「バトルだ!プラズマヴァイスマンでオーシャンを攻撃!プラズマ・パルサーション!」
「ぐぅ、うぅ。これは効く」
翠LP1650→750
「だけど、ダメージを受けた事で『V・HERO』の効果発動!墓地から『V・HEROインクリース』を魔法・罠ゾーンにセッティング!」
倒されてもなお、幻影として私を守ってくれるV・HEROに対し、頼もしさを感じる。
「さらにカードを一枚伏せてターンエンドだ!」
十代
LP400
手札一枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『E・HERO プラズマヴァイスマン』
さて、これはだいぶピンチだが……、逆にワクワクさもある。こんな楽しいのは久しぶりだ!
「応えて私のデッキ!ドロー!さらに墓地のモンスター五体を戻し、『貪欲な壺』を発動!追加で二枚ドロー!」
久々に追い詰められ、気分が高揚する中でデッキを信じ、ドローする。
「手札から『V・HERO グラビート』を捨て、『V・HERO ファリス』を特殊召喚!そして、ファリスの効果により、デッキから『V・HERO マルティプリ・ガイ』を墓地に送る。そして、ファリスを生贄にし、『V・HERO インクリース』を特殊召喚!そして、効果により『V・HERO ポイズナー』を特殊召喚するよ!さらに魔法カード『戦士の生還』を発動し、墓地の『V・HERO マルティプリ・ガイ』を手札に加える」
「な、なんか……フィールドが目まぐるしく変わったような」
翔君がぐるぐると目を回す一方で、十代君が瞳をキラキラと輝かせている。おそらく私が何か仕出かそうというのがわかってるのだろう。
「行くよ!魔法カード『融合』発動!フィールドから『V・HERO インクリース』、『V・HERO ポイズナー』、そして、手札の『V・HERO マルティプリ・ガイ』を融合!
私に勝利をもたらせ!『V・HERO トリニティー』!」
『V・HERO トリニティー』
☆8 ATK2500
全身燃えるような紅に包まれた戦士、トリニティーが召喚される。
そしてこのモンスターの効果は……
「融合召喚したターン、攻撃力が倍になる!ビクトリー・チャージ!」
『V・HERO トリニティー』
ATK2500→5000
トリニティーの纏うオーラが一層強大ななものとなる。そして、その攻撃力はサイバー・エンドや青眼すら上回る。
「攻撃力5000⁉︎」
「おおっ、すっげー!」
「バトル!トリニティーで、プラズマヴァイスマンを攻撃!必殺ッ!トリニティークラッシュ!」
「けど、ただじゃやられないぜ!リバースカード『攻撃の無力化』!
これでトリニティーの攻撃は無効だぁ!」
必殺の一撃も一枚の罠によって防がれてしまう。
カッコよく決めれなかったが『聖なるバリア ミラーフォース』よりはマシなのでよしとしよう。
「私はモンスターを裏守備でセット。カードを一枚伏せて、ターンエンド。
そして、トリニティーの効果は切れ、攻撃力は元に戻るよ。」
翠
LP750
手札0枚
魔法・罠伏せ一枚
場
伏せ一体
『V・HERO トリニティー』
「俺のターン、ドロー!プラズマヴァイスマンの効果発動!手札を一枚捨てて、トリニティーを破壊する!プラズマ・ブレイク!」
「ぐっ、やっぱり来ると思ってたけどアッサリ倒されすぎでしょ〜」
一応エースであるトリニティーもプラズマヴァイスマンの効果に倒れ、破壊されてしまう。
しかも、十代君が私のライフを超えるモンスターを出せば、ゲームエンドという……、久しぶりの絶体絶命の大ピンチだ。
「そして、プラズマヴァイスマンの効果で捨てられたシャドーミストの効果発動!デッキからHEROモンスターを手札に加える。俺は『E・HERO ワイルドマン』を手札に加えて、そのまま召喚するぜ!」
『E・HERO ワイルドマン』
☆4 ATK1500
召喚されたのは罠カードの完全耐性持ちのマッチョ。そして、もしも攻撃が全て通れば私の負けとなる。
「いくぜ、バトルだ!プラズマ・ヴァイスマンで裏守備モンスターを攻撃!」
「くっ、フォレストマン⁉︎」
「おっ、またHEROじゃん!けど、プラズマヴァイスマンは貫通効果持ちだぜ!」
『E・HERO フォレストマン』
☆4 DEF2000
翠LP750→150
超過ダメージ分が私のライフを削り、残り500を割る。
「よし、兄貴!チャンスっす!」
「おう、いくぜ!ワイルドマンで紫苑の姉ちゃんにダイレクトアタックだぜ!」
完全に決まった!と確信した様子の二人。だが、そうそう簡単には勝ちは譲らない!
「その瞬間、罠カード発動!」
「無駄だ!ワイルドマンは罠カードの効果を受けねぇ!」
「発動、『リビングデッドの呼び声』!甦れ、『E・HERO オーシャン』!」
「なにっ!?」
確かにワイルドマンは罠カードに対し、強力な耐性を持つが、抜け道はいくらでもある。今回のはそのいい例だ。
「っ!俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
十代
LP400
手札0枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『E・HERO プラズマヴァイスマン』
『E・HERO ワイルドマン』
てっきりプラズマヴァイスマンの効果で破壊されると思っていたのだが、これはラッキー。だが、私の手札も0枚の為、次のドローが命運を分ける。
「運任せってのもたまにはいいよね!ドロー!」
引いたカードを見て、思わず口元がほころぶ。
「お?紫苑の姉ちゃんはどんなカードを引いたんだ?」
「まあ、その前に。オーシャンの効果を発動して、墓地から『E・HERO フォレストマン』を手札に加えるよ。
そして、魔法カード『強欲な壺』発動!デッキから二枚ドロー!」
……案外私も人のこと言えないが、だがその分ワクワクもあるからオーケー、などと内心で言い訳をすると今新たに加わった二枚の手札を見る。
「『E・HERO エアーマン』を召喚し、効果発動!このカード以外の自分フィールド上の『HERO』の数だけ魔法・罠カードを破壊する!十代君のカードを破壊する!」
「げっ⁉︎ミラーフォースが!」
なるほど、だからプラズマヴァイスマンの効果でオーシャンを破壊してこなかったのか。
だけど、それくらい些細な事。一気にゲームエンドまで持っていく!
「さらに魔法カード『融合』!」私はフィールドの『E・HERO オーシャン』と手札の『E・HERO フォレストマン』を融合!
海と大地交わり、生命を育む星となる!来い、『E・HERO ジ・アース』!」
「ぷ、プラネットカードの、HERO⁉︎」
「カッケェェェ!!」
『E・HERO ジ・アース』
☆8 ATK2500
これぞ私が十代君に渡したい一枚。きっと力になってくれると思うから……。
しかし、渡すより先にやる事が一つ。
「け、けど攻撃力は兄貴のプラズマヴァイスマンのが上っす!」
「それは、どうかな!ジ・アースの効果発動!自分フィールドの『E・HERO』をリリースし、その攻撃力をターンの終わりまで自身の攻撃力に加算する。」
「って、ことは…⁉︎」
「その通り!私は『E・HERO エアーマン』を生贄に捧げる!そして、その攻撃力分だけジ・アースの攻撃力をアップさせる!」
『E・HERO ジ・アース』
ATK2500→4300
エアーマンの力を受け継いだエネルギーによって造られたマグマの大剣がその手に握られる。
「バトル!ジ・アースでプラズマヴァイスマンを攻撃!地球灼熱斬!」
「うわぁぁ!?」
プラズマヴァイスマンはジ・アース渾身の一撃に倒れ、そして十代君のライフを0にする。
十代:LP1400→0
◆◇◆
「いっや〜、まさかあそこから逆転されるとは思わなかったぜ」
「兄貴、だいぶ惜しかったっす。けど、残念っすね、カード貰えないや」
きっと凄いカードだったんだろうな〜、となぜか翔君が悔しがる。そんな彼を気にすんな、と十代君が慰めており、普通、逆だろとツッコミたいのをぐっと堪える。
だが、その分なぜだがお姉さんの親切心が刺激され、
「ハイ、これ。やっぱ、十代君が持ってた方がいいと思うだよね」
「え、これって……!ジ・アース⁉︎」
「さっきの、プラネットカード!」
渡されたそのカードを手にし、目をまん丸にして驚く二人。
渡したカードは『E・HERO ジ・アース』とその素材であるオーシャンとフォレストマンの計3枚。
新しいカードを前に喜んでいる二人を見ているとこちらもつい嬉しくなる。
「本当は、初めから渡すつもりだったんだけどねー。それに私が持ってちゃ宝の持ち腐れだから、ね?」
ひとしきりそのカード見つめると、渡すの方へと顔を向け、笑顔を咲かせる。
「おう、ありがとう紫苑の姉ちゃん!んでもって、あいつに、紫苑にぜってー勝つ!」
「おう、そのいきだよ、だけど、うちの弟は強いよ!」
十代君は新しい仲間を手に入れ、気合十分のようだ。
さて、次はなぜかノース校にいるらしい彼だが、元気にやっているだろうか。
後書き
漫画版エド・フェニックスが使った(名前同様、存在も希薄な)V・HEROでした。
あと、V・HEROの共通効果について
『ダメージを受けた時、墓地のこのカードを永続魔法扱いとして魔法・罠ゾーンに置く』
ですが、効果処理がよくわからないため、一度のダメージにおいて永続魔法扱いとしておけるのは一体としました。
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