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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【東方Project】編
  088 5つの難題(ノーマル)と夜明け。


SIDE 蓬莱山 輝夜

「……でも、これはきっと夢よ。あれから一体どれ程の年月が経過したと思ってるのよ」

「俺が〝現在(ここ)〟に居ることが信じられない──か…。まぁ、それもそうだよな。……あっ──だったら、俺が〝升田 真人〟だと判る様な〝問題〟を出題すればいいんじゃないか?」

〝彼〟に抱きつきながら一通り嗚咽を漏らし〝思い出〟が巻き戻されると、今度は〝感情(こころ)〟を〝思考(りせい)〟が上回った。……すると、そんな私の言葉を聞いたらしい〝彼〟は〝良いことを思い付いた〟と云った風体で私にそんな提案をしてきた。

「……えっ…?」

「……かぐや姫は、5人の貴族に求婚されたと云う。かぐや姫はその貴族達に1人1つの難題──5つ難題を出した。……しかし、難題を突破してかぐや姫の心を射止めたのは…」

そこまで言ってもらえれば〝彼〟の言いたい事がわかる。

「っ? ……そう云うことね──んっん、いきなり話を遮る様な風になってしまうけれど──ねぇ〝お兄さん〟、一寸(ちょっと)そこまで散歩に付き合ってもらえないかしら? かぐや姫からの逢瀬(おうせ)の誘いよ」

「……喜んでお付き合い致しましょう」

〝彼〟はいくらか逡巡(しゅんじゅん)した様子を見せると、(うやうや)しい態度で私の〝お誘い〟を了承してくれた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

〝彼〟を連れて庭へ出る。空を見れば、……永琳の言っていた話では〝本物の月〟が浮かんでいるはずだったのに、誰の仕業かは判らないが〝曇天(どんてん)〟で〝月〟は雲に隠れていた。

「……今度は私が先ほどの話を進めようかしら。……ねぇ〝お兄さん〟? その──今更になってかぐや姫に顔を見せた〝(ひと)〟は、かぐや姫からの5つの〝難題(スペルカード)〟を解く事は出来るかしら?」

「……必ずや突破してみせよう」

〝現在の天候(どうでもいいこと)〟から気を切り替え〝彼〟へと問う。……〝彼〟のその返事が〝決闘〟の開始の狼煙(のろし)となった。

SIDE END

SIDE 升田 真人

「……今度は私が先ほどの話を進めようかしら。……ねぇ〝お兄さん〟? その──今更になってかぐや姫に顔を見せた〝(ひと)〟は、かぐや姫からの5つの〝難題(スペルカード)〟を解く事は出来るかしら?」

「……必ずや突破してみせよう」

俺の言葉を開始の合図としたのか、輝夜はふわり、といきなり浮かび上がった。……それとほぼ同時に弾幕を展開するが…。

(右、下、右上、左上、右、左上…)

先ほど──八意 永琳の時と同様に〝見聞色の覇気〟と〝RISE(ライズ)〟の身体強化──〝STRENGTH(ストレングス)〟と感覚強化──〝SENSE(センス)〟で避けて避けて避ける避けて避ける。

「1つ目の難題よ! “龍の(くび)の玉―五色の弾丸―”」

輝夜がそう宣言した途端、光り輝く弾が降り注いできた。

………。

……。

…。

「……私の負けね…」

5枚目の〝難題(スペルカード)〟──“蓬莱の弾の枝―虹色の弾幕―”のスペルカードを突破した時、輝夜は空からふよふよ、と下りて来ながら万感が籠められている様な声音でこの〝決闘〟に敗北した事を認めた。

「ねぇ、〝真人〟…。貴方は自分の事を〝独占欲が強い〟と揶揄(やゆ)したわね」

「……ああ」

輝夜の独り言に近い問い掛けに首肯する。

……輝夜の俺に対する二人称が〝お兄さん〟から〝真人〟に変わっているのに気付いた。……どうやら〝〝お兄さん(おれ)〟=〝升田 真人(おれ)〟〟である事を認めてくれたらしい。

閑話休題。

「……だったら〝現在(いま)〟でも──1300年経った今でもその心に変わりはあるかしら?」

「……輝夜…」

つまり輝夜は〝私達、やり直しましょ?〟──と、言いたいらしい。……対する俺は…

「……輝夜、俺は鈴仙に〝輝夜がここ──【永遠亭】に居る〟と聞いた時は一寸(ちょっと)驚いたよ。……そして、八意 永琳に〝輝夜に会いに行って〟と言われるまでは輝夜には会わないつもりだった。……だって俺からしたら三行半(みくだりはん)叩き付けられて実家に帰られたみたいなものだっかからな」

「うっ…!」

「そんな状態でどの(つら)下げて会えば良いかも判らないしな…。……しかも睡眠薬(くすり)まで盛られたし…」

「うぅっ! それはその…」

輝夜は俺の言葉にばつの悪そうな顔で呻き、言い訳(二の句)が継げないでいる。……何しろ、俺は離婚届を叩き付けられて〝実家に帰らせてもらいます〟とほぼ一方的に言われた様な感じだったので、俺の皮肉も(あなが)ち間違いでは無いだろう。

「……で、【永遠亭】に来て八意 永琳と会話したりした結果──1つ判った事がある。……〝輝夜との関係を精算したい〟──って事が判ったんだ」

「……えっ?」

輝夜なら理解出来るだろうと、言外に〝やり直すなら1300年もの〝ズレ〟を直す為にも1から始めよう〟と言ったら、輝夜の顔から表情が抜け落ちた。……俺の発した言葉を3割も理解出来ていない模様。

「あー、何を考えてるか判らんが、俺が言いたいのは〝1からやり直しましょう〟って事なんだ。……だってよく考えてみろ、俺と輝夜との間には1300年以上の〝ズレ〟が在るだろう?」

「……えっ?」

さすがに、輝夜の様相を見ていて居たたまれなかったので、俺が言いたかった事を噛み砕いて輝夜に伝える。……輝夜は、それこそ絵に描いた様な〝きょとん〟とな顔になり、(やが)て俺の言葉の真意を理解したのか…

「……ひっぐ…ひっぐ…」

その場で、所謂(いわゆる)〝女の子座り〟に崩れ落ちる。……そしてすんすん、と泣き出した。

………。

……。

…。

「話は変わらないかもしれないが…。……今、俺は人里に【満足亭】って店を開いてるんだ──〝不定期開店〟の、〝利潤の追及〟の概念に真っ正面から喧嘩を売っている店なんだが。……輝夜は覚えてるか?」

「ええ、覚えてるわ。……楽しかったもの」

【永遠亭】の縁側。泣き出した輝夜に落ち着くであろう頃合いを見計らって輝夜に問えば、輝夜は俺の肩に頭を乗せながら答える。……俺はその輝夜の答えに気が良くなり、〝倉庫〟から1升瓶──ウン十年モノの日本酒を引っ張りだす。

「……月──は曇りだから、時たま雲の切れ間から洩れる月の光でも(さかな)にして呑まないか?」

「あら、それは良い提案ね。……なら私が注ぐわよ」

「止めておくよ。同じ轍は踏みたくないからな」

輝夜の冗句に相槌を打ちながらも、(さかづき)に注いで輝夜と酒盛りを始めた。……もちろん酒を注ぐのは各々(おのおの)である。

「ねぇ、真人。〝月〟で1句詠んでよ」

「うわ、出た。輝夜の無茶振り」

「……でも真人はちゃんと乗り越えてくれるでしょう? 弾幕(なんだい)然り」

「……そこまで言われて〝出来ません〟じゃあ、男が廃るか。……まぁ、判ったよ。……んっん──〝十六夜(いざよい)に 水溜まりの月見て 惜しみ酒〟」

「……字余りじゃない。雨も降ってないし…」

「降らせてみようか?」

そこから酒のペースが上昇する。……輝夜と俺──2人だけの小さな酒宴は、まだ始まったばかりである。

………。

……。

…。

「あ、太陽…。……意味も無く完徹かよ。こりゃ昼まで惰眠貪るしかねぇな。……ははっ…!」

「……本当、いつの間にか朝になっていたわね。何なら〝ここ〟で寝ていかない? な~んて、冗談だから鳩が豆鉄砲喰らった様な顔をしないで頂戴。……ふふっ…!」

……いつの間にやらミナが掛けた“ラナリオン”の雲も無くなっていて、いつの間にか訪れていた暁。完徹特有(+アルコール)の変なテンションで2人して意味も無く笑い合うのだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……確か、俺は【博麗神社】で宴会してたはずだよな。……そうだろう──ミネルヴァさん」

「……そうじゃのう。」

輝夜との再会から数日後、紫から【博麗神社】へと来るように言われた。……何でも、〝幻想郷〟では今回みたいな大きな〝異変〟が解決された時は【博麗神社】で宴会をするのが慣わしらしい。……本来なら霊夢が──それか魔理沙だったりが〝異変〟を解決するのだが、今回は俺が──と云うよりかはミナが解決したが、それでも宴会は開かれた。

……当初は顔出し程度の心積もりだったが、〝異変〟を解決した〝立役者〟な俺達は乾杯の音頭を取らされる事とかになったのは、割かしどうでも良いことである。

閑話休題。

「いや、まぁ酒の(アルコール)には勝てなかったよ…」

「ぶっ!」

(……ミネルヴァさん、このネタセリフ知ってるのか…)

俺のネタに吹き出すミネルヴァさん。……そんなミネルヴァさんを見て、どうでも良い事を考えたのは内緒である。

また閑話休題。

宴も(たけなわ)と云った頃合いに、〝鬼並みに呑んべえ〟と悪名高き天狗(射命丸 文)にたらふく──それこそ〝仙術〟で内臓を強化してアルコールの分解を早めてもそれが追い付かないペースで呑まされ、潰された。

……そして、ガンガン、と痛む頭を堪えながら起きてみれば、目の前に女神(ミネルヴァさん)が──それも、最早お馴染みの〝転生の間(仮)〟に居たら、「驚くな」と言う方が間違っているだろう。

「さて、単刀直入に言おう。お主には頼みたい事が有ってこちらに呼んだ」

「……その(たのみ)を聞かなければ──いえ、何でもありません」

……その宝石よりも輝いている双眸に〝強い意思〟を感じた俺はその質問を途中で下げた。……どうせこの前みたいに「無限ループって恐いよな」ってオチになるのが見えてしまったので、愚問だと悟ったのだ。人は学習出来る生き物である。

(……俺は〝人間〟じゃなかった…)

「何を考えて項垂れて居るかは推して知るが敢えてここはスルーさせてもらおうか。……さて、お主──また一度転生してみないか」

「はぁ…。……て──また一度転生?」

ミネルヴァさんからの想定外の提案に、俺は鸚鵡(おうむ)返しする事しか出来なかった。

SIDE END 
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