魔法少女まどか☆マギカ こころのたまごと魂の宝石
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第15話
あすなろ市の外れ。ここで、二組の少女達が戦っていた。一組は露出度の高い服を着て巨大な剣を持ったピンク色の髪の少女と、猫耳を付けて猫の顔の付いた杖を持った少女。もう一組は白いシスター服を着てメガネをかけた少女とスポーティな格好のオレンジの髪の少女だ。彼女達はあすなろ市を守る魔法少女チーム“プレアデス聖団”のメンバー、ミライ、里美、海香、カオルだ。しかし、女達は今、仲間同志で戦っていた。原因は海香とカオルの持つトランクである。
「この裏切り者が!!」
ミライが大剣を振るうと、海香とカオルがそれを回避した。
「どう言う積もりかしら?プレアデス聖団を抜けなんて?」
「もう、サキの事が信じられないからだよ!」
里美の質問に対し、カオルがそう答える。
「今まではまだ良かった。でも、今はエンブリオなんて言うあるかどうかも分からない物の為に皆の心を魔女もどきに変えてるじゃないか!そんなの“あいつ”と一緒だ!!」
「黙れ!サキの事を“あいつ”と一緒なんて言うな!!」
ミライが再び剣を振るう。それにより、トランクを持つカオルの腕が斬り飛ばされた。そして、トランクを里美がキャッチする。
「あら?」
その時、里美は気付いた。トランクが妙に軽い事に。
「まさか!?」
里美がトランクを開けると、その中身は既に空だった。
「へへっ、バレちゃったか。」
里美の驚く顔を見て、カオルが切り落とされた腕を抑えながら不敵に笑った。
「・・・かずみちゃんをどこへやったのかしら?」
「別ルートで目的地に送ったよ。魔女の力を抑える結界のある街にね。」
「それがどこか教えてくれるかしら?」
「やだね。」
カオルはそうはっきり拒絶した。
「そう。ならもう消えなさい。」
里美がそう言うと同時に、ミライがカオルに向かって大剣を振り下ろした。
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僕の名前は辺理唯世。聖夜学園中学の生徒会長をやっているんだ。僕達の学園の生徒会は小学校のうちから強い権限が与えられて、その分仕事が多いのが特徴なんだ。
でも、今日日曜日であるにも関わらず、相馬君も誘って生徒会室に集まったのは“ある議題”について話し合う為だった。
「今日の緊急会議の議題は、昨日あむちゃんから届いたメールについて。」
昨日、僕達聖夜中生徒会、および聖夜小ガーディアン全員の携帯にあむちゃんからあるメールが届いた。それには、彼女が犬耳と首輪を付けて、メイド服を着た姿の写真が添付されていた。文章は何も無く、それが僕達を困惑させた。
「これ、どう言う意味だと思う?」
「そんな事の為に集めたの?」
「あむ、コスプレ趣味にでも目覚めたのかな?」
真城さんが文句を言う中、クスクスが冗談っぽく言った。
「いや、多分罰ゲームとかだと思うよ。目も何か虚ろだし。」
「ホントね。」
「ノリが良く無いぜ!」
そんな2人に藤咲君がツッコミを入れる。てまりも同意見だけど、リズムはそれよりあむちゃんがこの格好をしてる時のノリが良く無い事が気になるみたい。
「だろうな。どうやらあいつ、向こうで相当愉快な友達が出来たみたいだな。」
「俺たちも会ってみたいよな!」
相馬君はあむちゃんに愉快な友達が出来て満足そうだ。ダイチはその友達に会いたいらしい。
「あむちーすっごいプリティだよ。笑顔じゃないのが残念だけど。」
「そうでちゅね。」
結木さんはあむちゃんの格好に目を輝かせていた。ペペはあむちゃんが笑顔じゃない事に注目している。
「向こうで出来たって言う日奈森さんの友達でこう言う事をしそうな子となると・・・」
「美樹さんとかじゃないかしら?」
「意外にも美国さんという事も考えられるよ。」
あむちゃんが転校した先で出来た新しい友達については、全員メールや電話で聞いてある。そして、魔法少女についても。初代キングにこの街に展開されている結界についてと合わせて聞いてみたけど、本当だった。
「にしても日奈森の奴、魔女とか言う化け物相手に大丈夫か?」
「大丈夫だよ。あむちゃんならきっと。」
「そうそう!あむちーなら今頃、魔女を千切っては投げ、千切っては投げってやってるよ。」
心配そうに言う相馬君に藤咲君と結木さんが言った。その時、生徒会室の扉が開いた。そこから入って来たのは、イクト兄さんだった。
「よお、唯世。久しぶりだな。」
「イクト兄さん!?どうしてここに!?」
「ここの理事長にお使いを頼まれてな。」
そう言うイクト兄さんの手には、大きなトランクが持たれていた。
「それは?」
「さあな。俺も中身が何だかは聞かされて無い。けどまあ、やたら重くて大変だったぞ。」
そう言って兄さんはトランクを床に下ろす。
「聞かされて無い?どう言う事ですか?」
「理事長が言うには、開けてからのお楽しみだそうだ。」
「へ〜。何かな、何かな?」
真っ先に結木さんが興味津々で近付いて来た。それに続いて他のメンバーも集まって来る。そして、兄さんがトランクを開けると、中には眠った状態の女の子が入っていた。
「・・・兄さん。これって。」
「お、俺は知らねえぞ!!俺はただ理事長に頼まれて運んだだけだ!!」
「しらばっくれるな!正直にはけー!!」
結木さんはどこからともなく電気スタンドを出してきて、その光を兄さんに当てた。
「歌唄の奴が悲しむな。兄貴が誘拐に手を染めるなんて。」
「そうね。面会にはちゃんと行ってあげるわ。」
相馬君と真城さんも悪ノリする。
「だから、俺は知らねえって言ってるだろうが!!」
そんな風に2人に向かって叫ぶイクト兄さん。僕はそんな兄さんの手を取ってこう言った。
「イクト兄さん。自首しよう。」
「お前俺の話聞いてたか!?」
そんな感じで、生徒会室が大騒ぎになる。すると・・・
「う〜ん・・・」
問題の女の子が目を覚ました。
「あれ?ここは?」
「ええと。君、名前は?」
「私はかずみ・・・って、私に近付いちゃダメ!!」
僕が名前を聞くと、かずみと名乗った女の子はいきなり後ろに下がった。
「あれ?」
でも、突然自分の腕や足を確認し始めた。
「模様が無い。どうして!?」
「模様?何を言っているのだ?」
それを見たキセキがかずみさんに近付いて話しかけた。すると・・・
「うわっ!?何これ?妖精!?」
彼女にはキセキの姿が見えていた。
「しゅごキャラが見えてるでちゅか?」
「でもこの子からしゅごキャラの気配はしないぜ。」
「のぶ子先生みたいに霊感が強いのかしら?」
興味を持ったしゅごキャラ達がかずみさんに集まって行く。
「何これ!?妖精がいっぱい!?」
しゅごキャラ達に囲まれて、かずみさんは困惑する。その時・・・
「やあ。予定通り来れたみたいだね、かずみちゃん。」
聖夜学園の理事長で初代キングにして僕の親戚“天河司”さんがやって来た。
「あ!あの時のお兄さん!!」
どうやら、かずみさんは司さんの事を知ってるみたい。
「久しぶりだね。元気にしてたかい?」
「はい。でも、どうしてここに?って言うか、ここはどこなんですか?」
「ここは、僕が理事長をやっている聖夜学園の中等部の生徒会室さ。」
僕らをよそに司さんはかずみさんと会話を始める。その時、イクト兄さんが司さんに詰め寄った。
「おい理事長!こいつはどう言う事だ!?」
「ああ、そうだったね。皆、紹介するよ。この子は明日からこの学校の生徒になる昴かずみちゃんだ。」
「俺が聞きたいのは、何でトランクなんかに入ってたかって事だ!!」
「彼女はちょっと訳ありなんだよ。かずみちゃん、説明してもいいかな?」
「え・・・」
司さんにそう聞かれると、かずみさんは表情を曇らせた。
「言いたく無いのなら構わないよ。でも、これだけは言っておくよ。この街に居れば君の心配事は起きない。だから、伸び伸びとここで学園生活を送るといいよ。」
「本当に、いいの?」
「もちろんさ。必要な物は既に用意してあるから。ほら。」
そう言うと司さんは何処からともなく制服と教科書それに鞄の一式が入った段ボール箱を取り出した。
「これ、全部私の!?」
「そうだよ。大切にしてね。」
「ありがとうございます!でも、どうして私にここまでしてくれるんですか?」
「君のお友達に頼まれたんだ。君に、人として当然の幸せを与えてあげて欲しいって。」
「それって、海香とカオルの事!?2人はどうなったの!?」
「ごめん。それは僕にも分からない。ただ、彼女達は君を逃す為に囮になると言っていた。」
「そんな・・・」
司さんの話を聞いて、かずみさんは不安そうな表情になる。
「囮って、穏やかな話じゃねえな。お前、誰かに狙われてんのか?」
その時、相馬君がかずみさんに話しかけた。
「ええと・・・」
「さっき理事長も言ってたけど、言いたく無いんなら無理に聞かねえよ。皆もそれでいいだろ?」
相馬君の言葉に、僕達は全員頷いた。
「あの、ありがとうございます。ええと・・・」
「俺は相馬空海。ここのサッカー部に入ってる。こいつはダイチだ。」
「よろしくな!」
「んで、こいつらは生徒会役員だ。」
相馬君にそう紹介されて、僕達は自己紹介を始めた。
「僕が生徒会長の辺理唯世。こっちはキセキ。」
「よく覚えておけよ、庶民。」
「副会長の真城りまよ。こっちはクスクス。」
「よろしく!」
「僕は会計の藤咲なぎひこ。こっちはてまりとリズム。」
「お見知り置きを。」
「イェーイ!」
「書記の結木ややだよ!この子はペペちゃん!」
「よろしくでちゅ。」
「うん、皆よろしく。それで、その妖精達って何なの?」
「そう言えば、説明しないとね。」
僕達はかずみさんにしゅごキャラについて説明した。
「こころのたまご、しゅごキャラ、それに✖️たまかあ・・・」
「信じてくれる?」
「うん。私も、そう言うファンタジーな物とは無縁じゃないから。」
「訳ありって言うのもファンタジー関係かしら?」
「うん・・・」
真城さんの質問にかずみさんは短く答えた。
「そう。さっきも言ったけど、詳しくは聞かないわ。それで、あなたは何処で住むの?」
真城さんの言う通り、かずみさんの住む場所についても考えなくちゃいけない。すると、司さんが答えを告げた。
「それなら、唯世君のご両親にもう頼んであるから、唯世君の家に住む事になるよ。」
「そうなんですか。なら、良かったです。」
「いや、良くねえだろ!!」
僕が司さんの言葉に納得していると、相馬君が反対してきた。
「どうして?別におかしな所は何も無いけど?イクト兄さんと歌唄ちゃんが一緒に住んでいた時もあったし。」
「いや、そう言う問題じゃないって。いいか、お前の家に女子生徒の1人が居候しているなんて話が学園で広まったらどうなる?」
「え?どうなるって言っても・・・」
「きっと、女子の大半が暴動を起こすわね。」
僕が首を傾げていると、真城さんがとんでもない事を言った。藤咲君と結木さん、それにしゅごキャラ達はそれに同意するように頷く。
「暴動!?何で!?」
「お前の鈍さは相変わらずだな。直さねえと、あむを取っちまうぞ。」
「イクト兄さんも何を言ってるの!?」
「まあまあ。要はバレなければいいんだから、そんなにうるさく言う必要は無いよ。」
兄さんの反応に僕が困惑していると、司さんがそう言った。
「それに、もう頼んじゃったから、今更取り消す事は出来ないよ。」
「まあ、それならしょうがないか。」
司さんの説明に、相馬君を始めとする皆は納得した。
「あの、それじゃあ不束者ですが、よろしくお願いします。」
「いや、昴。それ、結婚の挨拶だぞ。」
続く
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