ロザリオとバンパイア〜Another story〜
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第40話 燦 陽海学園へ
それは数週間しての事
しばらく、ジャックと燦は、行動を共にしてきた。この人間の世界について、様々な事を教えて、見せていた。
燦との旅は、本当に心地よく とても、とても、楽しい時間だった。時間がたつのを忘れるかのようにだ。この世に生を受け、血腥い状況が多かったんだ。でも、燦がそれを変えてくれたと言っていいだろう。
だけど、やはり一人前になる為には、人間との共存についてを、そして世に生きていく為に学業を一通り覚えないといけない事はよく判る。
減衰していく妖の世界では生きてはいけない。燦の場合は考えたくない事だが、同種族に捨てられたのだ。だからこそ、人間社会で生きなければならない。……じゃないと、本当の意味で生き残ることはできない。
そして、何よりもこの子を必要としている者も必ずいる筈だから。この子の優しさが誰かを救う筈だから。そんな未来を知っているから。
だからこそ、ジャックは それとなく陽海学園への編入を燦に薦めた。
それを聞いた燦は、明るい表情から一変した。これまでのジャックの話はみんなみんな、楽しいものだった。知識が沢山増えて、自分の中で光が育っていく事も判ってきた。
でも、今のは違ったんだ。寂しさが溢れてくるんだ。
<わたし… お父さんと離れたくないよ…>
燦は涙ながらに訴えていた。……燦はこれまで一緒にいろんなところを旅した。いつでも…燦は非常に聞き分けがよかった。
しかし、それは、逆を言えば子供らしくないと心配していたのだが…
(燦が、オレに子供らしい事を言ってくれるのは、何だか嬉しい、な…。 後 《お父さん》って読んでくれたのもなんかくすぐったい……)
ジャックは、微笑みながら燦に話しかけた。
『燦。 何もこれでもう永遠のお別れってわけじゃないんだよ。燦に会いに行くさ。それに、これは、燦のためなんだ……。確かにオレも燦と離れたくないよ。……だけど、この世界の事、そして学業のことを考えると、やっぱり俺だけじゃ無理なんだよ』
学業自身は絶対に修めてなければいけないことだと考えている。
そこで、社会を学んでいったり…友達ができたりと、成長してゆくのだから。燦の可能性の全てを自分が摘んでしまう訳にはいかないだろう。そして、依存性をうませる訳にもいかない。
ジャックの言葉を涙ながらに訊いていた燦だったが、それでもやはり 納得できないようだ。
〈で でも…… 今までだってお父さんいろいろ教えてくれた…〉
涙を流しかけながら……、必死にペンを走らせていた。
『……人間の世界で一人前に働くのは非常に大変なんだ…… 学校も出てなかったら尚更、ね。オレも凄く苦労した…。 燦には同じ思いをして欲しくないんだ…… 必ずまた合いに来るから…それは約束するよ。……俺が約束を破ったことあるかい?』
こういったセリフ、それは何か、ワンパターンのような気がした。誰もが使いそして古した言葉だと。でも、燦にとっては違う。これまで、ジャックが嘘をついた事など無かったから。
〈うん……無い…〉
少し顔を暗めながらもきっぱり答えてくれた。
〈…わかった。お父さんの言う通りにする…〉
最後には 燦は分かってくれた。ジャックは、燦の頭を撫でると陽海学園へ向かったのだった。
以前貰ったVIPカードにはある機能がある。
それは、妖力を送ることによって、陽海学園のバスとコンタクトを取れるようになっていた。
(今まで気付かなかった…な…)
何故なら、使い方を教えてくれてないからである。知ったのは、携帯電話で 御子神と連絡を取ったからだ。……くれたその時に教えるべきだ! と、ジャックは思っていた。 そうしてくれていれば、街で暴れてる妖を引っ捕えた時、もっと楽に護送出来た筈だから。
陽海学園のバスが来るまで2人は、バス停のベンチに座って待っていた。そんな時だった。
袖が引っ張られる。……燦がジャックの服を引っ張っていたから。
〈……やっぱりどうしても…お父さんと……別れなきゃ駄目なの…? 離れないといけないの……?〉
と。とても悲しそうな顔をして、そう言っていた。
『燦……』
ジャック自身も燦のことを自分の娘のように思っていた。離れるのは非常に辛い選択だ………、自分が見ている先は……《人間と妖の共存》の事だ。
……ここ最近は燦とともにいることからか、争いがありそうな気配がしても向かってなかった。まだ子供の燦に戦いをあまり見せたくなかったのだ。
そして他の妖を攻撃する自分の姿を、見せたくなかった、と言う想いが一番強かったのかもしれない。まだ、子供である燦に、あの御伽の国と戦っていた時の様な姿を……。
“ぎゅっ”
ジャックは燦を強く…強く抱きしめた。想いが、伝わるように。燦の事を、いつも想っていると。
「ッ…………………」
燦はスケッチブックを落とし、ジャックを抱きしめ返した。燦もまた…ジャック…お父さんに想いが伝わるように…と、抱きしめ返していた。
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