ハイスクールD×D 王者の甥に転生した悪魔
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プロローグ
俺の名前は『ナハト・ベリアル』。
前世の記憶をもって生まれた悪魔の子供だ。今日で(肉体年齢)七歳になる(精神年齢は三十過ぎ)。
俗にいう転生者というのだろうが、生憎俺は神様に会ってもないしいつ死んだのかさえわからない。
そして何より、俺の記憶が正しければこの世界は『ハイスクールD×D』という死亡フラグが満載の小説・アニメなのだ。
典型的な弱肉強食の世界で、いったい原作で何人の命がなくなったことやら。そう考えると正直言って生きていく自信が無い。
――というわけでもない。
さっき名乗った通り、俺の名字は『ベリアル』。悪魔の中でもそこそこ実力がある悪魔だ。つーか、俺の伯父にあたる人が『ディハウザー・ベリアル』の時点で俺の将来は安泰だろ。だってレーティングゲームの現王者だぜ? 最上級悪魔、つまり魔王クラスの実力者の伯父だぜ? もう俺は何もしなくていいだろ。なんか伯父は子供産む気ないらしいから、俺がベリアル家の次期当主と肩書ではなっているけど、ぶっちゃけ悪魔の寿命は一万年らしいし、俺の出番はこれから五千年ぐらいは無いと思う。
……けど、現実はそう甘くはなかった。
何故か俺は親父の――『お前もディハウザーさんのように、レーティングゲームの王者を目指せ!』という一言により、中国にいる知り合いのおっさんの元へと一年間預けられることになった。
しかしそれだけじゃない! 一年たったら今度は世界を回り、二年後の誕生日に戻ってこいと言われたのだ! つまり、俺がこの家に戻れるのは三年後の今日ってことだ。
正直に言おう――鬼畜すぎるだろォォォオオ!!!!
お前はいったい何を考えているんだ! たしかに俺だって伯父のように強くなりたいが、何で家から放り出してまで強くならなきゃいけねぇんだよ!? つーか中国の知り合いってあれだろ、なんか拳法の達人とかいうあの爺だろ!? 一度会ったことあるから言うけど、アイツほど怖い人間俺は前世でも見たことないぞ!
「あ~もう嫌だわ~、マジ萎えるわ~、なんで誕生日に家から放り出さなければならねぇんだよ……まさか悪魔の駒を今日貰うのも、世界で眷属を探せってことなのか?」
もしそれが本当なら、これ以上ダルイことはねぇぞ。俺としては気楽に探していこうと思っていたのによ! 原作のリアスだって高校三年生の時点で全部そろっていなかったじゃん!
『ナハト様、そろそろお時間です』
近づきてきた使用人がそう言ってきた。
「(き、きやがったぁぁぁぁぁぁぁああ!?!?)」
くそッ! とうとうきやがったかって、もう夜の十一時じゃねぇか! いったいいつまで俺は玄関のソファーで考え込んでいたんだよ!
『お外で皆がお待ちしております』
「わかったよ……わかったよ! 行けばいいんだろ行けば!」
もうどうにでもなれ! 死んでも知らんぞ!
俺は用意された最低限の手荷物をもって、玄関を出た。
するとそこには見知った顔の人たちが集まっていた。
その中にはなんと、仕事で忙しいはずの伯父の姿まであった。
「息子よ、しばしの別れだ。お前が強くなって戻ってくるのを待っておるぞ」
「私もよナハト。厳しいかもしれないけど、頑張るのよ」
父と母がそう言った。
俺は父から悪魔の駒が入った箱を受け取った後、最も尊敬している伯父の『ディハウザー・ベリアル』さんの元へ歩いて行った。
「久しぶりだね、ナハト。元気にしてたかい?」
「話を聞かされる昨日までは元気でしたよ。……今は、この上なく最悪ですけど」
「はははっ、確かに最悪だろうね。なんせ世界には多くの強者がいるし、預けられる所もすごく厳しいと聞いたしね。
でもそれがナハトの力となる。
いくら才能に恵まれているからって努力を怠ってはいけない。才能は磨いてこそ本領を発揮するものだ。父君も母君もそれを分かっているからこそ、今回のような提案をしたんだ」
「……王者がそう言うのなら、そうなんでしょうね」
「あぁ。レーティングゲームの王者として、嘘はつかないよ」
伯父は微笑みながらそう言うと、俺の頭を撫でた。
とても暖かい手だった。幼い頃からよく魔法とか、レーティングゲームについて教えてもらった。とても思い出深い、大きな手だ。
「……ありがとう伯父さん。なんか自信が出てきたよ」
「ふふっ、礼には及ばないさ。
……私との挨拶もこれぐらいでいいだろう。さぁ、彼女がお待ちだよ」
「かのじょ?」
そう言い、俺はディハウザーさんが向ける顔の方へと視線を移した。
「マリィ。……来てくれたのか」
「うん、ナハトが遠くに行くって聞いたから」
そこには俺と一緒によく遊んだ子、『マルグリット・ヴァレフォール』の姿があった。
人見知りがひどくて最初は顔も合わせてくれなかったが、だんだん遊んでいくうちに仲良くなった無二の親友だ。
こんな夜遅くにお別れを言うため来てくれたなんて、改めてマリーとの友情を確かめられた気がする。
「……いつ帰ってくるの?」
泣きそうな声でそう聞いてきた。
「予定では三年後だよ。もしかしたらもう少し長くなるかもしれないけど」
「そう、なんだ……」
俯きながら彼女は呟き、それから数分の間なにも話さなかった。
今まで経験したことのない、奇妙な時間だった。
「あ、あの、その……わたし、強くなるから」
「!」
それはマリーが必死で絞り出した約束だった。
その後も歯切れが悪いながらも、マリーは言い続けた。
「今以上に強くなるから、ナハトも強くなって帰ってきてね! そしたら、その……」
もじもじとしながら、マリーは真っ赤になった顔で叫んだ。
「わ、わたしを、ナハトの眷属にいれてくれませんか!」
「なっ! いいのかよお前、自分の眷属を持たなくて?」
「うん。わたし、ずっとナハトといたいから……」
「……わかった。じゃあマリィは俺の女王になってくれ」
「――!」
「今は口実だけかもしれないけど、帰ってきたらお前にこの女王の駒をあげる。
お前との約束だ!」
「……うん、うん! 約束だよナハト!」
そう言って、俺とマリィは互いに小指を結んだ。
「わたし強くなるから、ナハトに恥じない女にもなるから!」
「あぁ。俺もベリアル家の、王者の血筋に恥じない立派な悪魔になって帰ってくる!
だから、お互いに頑張ろうな」
「うん!」
マリィは満面の笑みで返事をした。
それを最後に、俺は人間界行きの次元を走るベリアル家保有の電車に乗り込み、冥界を後にした。
そして人間界に着いた後、すぐに俺は中国へと転移魔方陣で送られた――。
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