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その電車から、降りてはいけない

作者:ザクロ
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目が覚めれば

あれから、どれほどの時間が経っただろう
何も思い出せない。だが、目が覚めた
ここは、病院だ
横の椅子に座っていた両親が、泣きながら私の手を握った
何が起こっているのか全然わからない

「おかえり、やっと目が覚めたんだね」
「お母さん、私、何が起こったの?」
するとお母さんは「何も覚えてないのね」とつぶやいた
「あなたは、静岡県の駅で発見されたの。椅子に座って、眠ったような状態だったらしいわ。でも、脳に何か大きなダメージがかかってたみたいで、もう目は覚めないかもしれないって、お医者さんが言ってたの。

それから、8年も経ったのよ」

あの時16歳だった私は、24歳になっていた
ずっとずっと眠っていたらしい

私はお母さんに頼んで、私のあの時のスマホはないかと聞いてみた
するとお母さんは、バックからスマホを出した。私は8年ぶりにツイッターを開いた
つぶやきを見るからして、夢じゃなかったみたいだ。本当に私は体験したんだ
そして私は帰って来れたんだ、現実世界に帰ってきたんだ!!

「私、帰って来れた、やっと帰って来れたんだ。お母さん、お父さん!!」

そう言って、私がスマホから顔を上げ、両親を見た時だった
そこに、両親はいなかった
そして私は気づいた

あの日、あの場所で、眠ってしまって、二度と目覚められなくなって

これは、私が見ている、理想の世界の夢なのだと、気づいた

スマホの画面に表示されてるのは「圏外」の文字
外に広がるのは、どこまでも続く真っ暗な闇
ふっと、スマホの電源が落ちた。電池が切れたみたいだ

真っ白の病院のベッドの上、私はただ「帰りたい」と泣き続けていた

「あーあ、だからあれだけ忠告しといたのに、欲望に負けちゃったか、やっぱり人間って、雑魚だな
その電車からは、降りてはいけなかったんだよ
また一人、人間がこっちの世界に増えた、ただそれだけのことだ
ようこそ、異世界へ」

どこからともなく聞こえたその声は、あのフォロー外の人のように聞こえた


その電車から、降りてはいけない

終 
 

 
後書き
今回は、都市伝説を調べていて「そういやぁきさらぎ駅って聞いたことあるけど何なんだ?」と思って調べ始めたのが始まりです

創作であったとしても、釣りであったとしても、非常に面白い都市伝説です

きさらぎ駅を調べてみると、茨城の池の中に地図が案内される、なんて面白いのもありましたが、今回はカットです

えー、今回の「その電車から、降りてはいけない」は、2ちゃんねるやツイッター発祥の「きさらぎ駅」「かたす駅」が元です

といっても、釣りだったり、帰ってこなかったり、帰ってきたり、帰ってきても異常だったり、人によって結末はいろいろです

なので、あえて生還できなかった「バッドエンド」にしてみました

最終話にあたる一個前の話は、完全な創作です。都市伝説とは関係ありません

ですがいくつかのサイトから、途中の、やってはいけないことや、生還方法、状況などを引っ張ってきました

NEVERまとめや、ピクシブ百科事典からです。ありがとうございました

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました
 
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