リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another30 チキンライス
前書き
大輔と太一、一時的に現実世界に
先ほどまでエテモンと戦っていたはずの大輔、太一、パートナー達。
今、彼らの目の前には先ほどまでとは全く違う光景が広がっている。
太一「こ、ここは…」
大輔「俺達のいた世界だ。間違いない」
周りに何人もの人間がいるこの光景はデジタルワールドで太一が何度も望んだ光景。
しかし、望んでいたとはいえ、それが前触れもなく突然手に入ると、簡単には受け入れられない。
その証拠に太一は微動だにしなかった。
大輔「太一さん、放心してるぜ」
ブイモン[おーい太一くーん。朝だぞ。目覚めの朝だぞ。起っきろー]
太一「はっ、大輔…ここ…」
大輔「間違いないです俺達の世界。どうやら暗黒エネルギーによって発生したブラックホールに巻き込まれちまったようですね。」
コロモン[人間ばっかり…]
ブイモン[あれ?コロモンに退化してる]
コロモン[あれ?本当だ?何でだろう?]
ブイモン[んー?コロモンはまだまだ弱いから、大輔達の世界じゃあ成長期でいられないんじゃないのか?]
コロモン[そっかー、痛っ!!?]
コロモンに女の子が投げたボールが当たる。
大輔「おとと、気をつけてな」
ボールを拾うと女の子に手渡す。
大輔「こっから先は…太一さんの家に近いですよね。俺んち姉貴や父さん達もいるから帰ったら誤魔化せないんで」
太一「あ、ああ…」
場所を移動すると、お台場海浜公園前と書かれたバス停が目に飛び込んできた。
太一「本当に帰って来れたんだ……」
大輔「皆を置いてね…」
太一「そ、それは…と、とにかく…俺んちに…」
しばらく歩くと、自宅のある団地の前まで辿り着いた。
そして深呼吸して自宅の扉を見つめた。
大輔「お邪魔しまーす」
無情にも後輩が扉を開けてしまった。
太一「ま、待てよ。まだ心の準備が!!」
大輔「誰かいませんか~?」
ヒカリ「はーい」
玄関から出て来てくれたのはヒカリだった。
太一「ひ、ヒカリ…」
ヒカリ「あれ?お兄ちゃん?キャンプ、どうしたの?」
こてん、と首をかしげるヒカリに、太一は崩れ落ちる。
何だかドキュメンタリー番組で見た1年ぶりの感動の再会みたいな兄に、ヒカリは疑問符を沢山浮かべている。
大輔「久しぶりヒカリちゃん。風邪、大分良くなったみたいだな」
ヒカリ「あ、うん。大輔君も風邪治った?」
大輔「へ?」
ヒカリ「だって大輔君、夏休み前に休んだから…」
大輔「ああ、そうか。だからか…風邪じゃないんだけどな…まあいいか。太一さん太一さーん。現実に帰ってきて下さい。太一さんったら」
太一「あ…ああ…あれ?ヒカリも家も全然変わってない…」
大輔「そりゃそうでしょうね。だってまだ1999年8月1日の12時26分ですから」
太一「はああ!!?」
びっくり仰天する太一にコロモンとブイモンがひっくり返る。
忘れもしない。
サマーキャンプでカレーを食べ損ねて腹が減りそうで仕方なかったから覚えている。
デジタルワールドに太一達が漂流する羽目になった、全く同じ日、全く同じ時間、いや厳密には26分経っているが。
大輔「太一さん落ち着きましょう。」
太一「これが落ち着いてられるか!!逆に何でお前は落ち着いていられるんだよ!!」
大輔「…何でですかねえ……」
ヒカリ「お兄ちゃんどうしちゃったのコロモン?」
コロモン[分かんない。あれ?何で僕の名前……]
ブイモン[知り合いか?]
ヒカリ「この子コロモンのお友達?」
ブイモン[友達というか仲間だ。苦楽を共にしたな…というか俺見ても驚かないなんて肝が据わってるなあ…太一、案外お前より肝が据わってるんじゃないか?]
太一「うるせっ!!」
ここまで肝が据わっていると普通に感心する。
グウ…。
その時、ブイモンとコロモンの腹が鳴った。
ブイモン[大輔腹減った]
コロモン[僕もお腹空いたよ]
大輔「腹が鳴るタイミングも同じか。呆れたぜ…台所借りていいかなヒカリちゃん…?」
ヒカリ「作れるの?」
大輔「…人並みにはね」
取り敢えず手っ取り早くチキンライスを作った。
というかチキンライスかオムライスがようやく作れる材料しか無かったというのが現実。
買い物くらいしていて下さいと太一とヒカリの両親にツッコむ大輔。
オムライスは冒険中に食べたからチキンライスにした。
太一、大輔、ブイモン、コロモンがチキンライスを頬張る。
太一「美味え!!やっぱ大輔は料理上手だな!!」
ヒカリも大輔手製のチキンライスを一口頬張る。
ヒカリ「…美味しい」
ヒカリは素直に何の捻りもない感想を述べた。
ご飯がパラパラとほぐれており、ほど良くケチャップが絡んだケチャップライスとチキンは脂っこくなく香ばしい風味が広がる。
大輔「そう?ありがとう。」
太一「ぷはー、ああ、食った!!よし、これからのことを考えようぜ。俺達どうやったら向こうの世界に帰れるのかな?」
水を一気飲みした太一は、どうやったらデジタルワールドに戻れるのかを考え始めた。
大輔「ゲンナイさんの言葉を信じるならデジタルワールドはパソコンの中の世界。だからパソコンから行けばいいんじゃないですか?後はキャンプ場まで行くか」
太一「今からキャンプ場何て無理だろ…」
大輔「ですね…じゃあ何とかしてパソコンで…ん?」
ガタッと物音がした。
ブイモン[何だ?]
太一「父さんの部屋からだ。でも父さんはいないし…まさか、泥棒か!!?」
大輔「え?」
ブイモン[よーし、俺が追い出してやる]
大輔のリュックから愛用の剣、ロングソードを取り出すと、部屋に駆けていく。
太一、コロモン、大輔、ヒカリもブイモンを追い掛けた。
部屋の扉を一気に開けてロングソードを向けた。
ブイモン[動くな!!…あり?]
大輔「どうしたブイモン…ああ!!?」
太一「ん?何だ?どうしたんだ?…いいっ!!?」
ヒカリ「お兄ちゃん?…あ、犬…?」
[犬じゃない。私はプロットモンだ]
コロモン[プロットモン?]
そこにいたのは大輔とブイモンにとってかなり見慣れた姿であった。
しかもこの声は…。
プロットモン[ふう…いきなり現れたから驚いたわ!!]
ブイモン[そりゃこっちの台詞だ!!]
間違いない。
この声とか偉そうな口調はヒカリのパートナー、テイルモンの成長期だ。
取り敢えず、プロットモンから事情を聞き出すことにした大輔達であった。
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