インフィニット・ストラトス~黒衣の創造神~
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第4巻後編
夏祭りの準備風景
俺は今、月中基地支部に来ているが下界ではもうすぐお盆と言う事で、この週末は箒が篠ノ之神社にでも行ってる頃だろう。俺は大人だが箒はまだまだ子供であるが、IS操縦者としては少しだけ大人になったのかもしれない。
基地に到着してから、二重三重のセキュリティーから照合してから中枢地区に行く。トレミー1番艦のブリッジに到着したら、そこには仕事をしていたリンと奏に優斗がいたのだった。
「よう奏に優斗。仕事お疲れさん」
「一真、いつここに来たの?」
「さっき。下界ではやっと仕事が一段落したんでな、こちらに来てみた訳だ」
「そう言えば父さんは昇進したんだよね。おめでとう父さん」
「ありがとう優斗。そんで今頃、下界では篠ノ之神社にて箒が何かしらやっているだろうな」
そう言っている間に、スクリーンには篠ノ之神社に来ていた箒の姿があった。板張りの剣術道場は、今でも昔と変わらずだったが定年退職した警察官が善意で剣道教室を開いているようだ。剣とは礼に始まり礼に終わると言う教えの通り、子供達に道具の手入れと道場の掃除を欠かさずにやっているとか。
「篠ノ之神社と言えば、昔の剣道道場の門下生は一真と千冬さんと箒だけでしたね」
「今では結構な人数がいる様子だが、壁の木製名札を見ながら何か思い出している箒の様子だな」
いつもいつも箒と対戦したが、瞬殺で終わらせていたように思える。剣術以外の思い出はないだろうけど、今でも箒は俺には一度も勝ててない。すると箒は生徒手帳を取り出して、そこに挟んである写真をそっと覗いていた。
剣道着を着た箒と私服姿の俺が二人で写っているような写真だが、箒の横に束、俺の横に千冬と並んでいるがその両端は折って見えないようになっている。写真を折り曲げてツーショット捏造というのは、鈴もしている事だというのは知っている。俺らもいいがそろそろ箒側にした方がいいと思って、俺らは箒視線として見ていた。
「箒ちゃん、ここにいたの」
「は、はいっ!?」
急に声を掛けられて、箒は生徒手帳を後ろ手に隠しながら振り向いたら四十代後半の女性ではあるが、年齢相応の落ち着いた物腰と柔らかな笑みを浮かべていた。箒にとっては懐かしくてつい見て回っていたが、元々住んでいた場所なのだ。
雪子叔母さんは、純粋に楽しんでいた微笑みを見せていたし、昔から箒はこの叔母さんに怒られた所を見た事がない。例え箒が悪い事をしたとしても、叔母さんは怒る事も叱る事もない。
「それにしても、よかったの?夏祭りのお手伝いなんてして」
「め、迷惑でしょうか?」
「そんな事ないわよ。大歓迎だわ。でも、箒ちゃん?せっかくの夏祭りなんだから、誘いたい男の子の一人もいるんじゃないの?」
「そ、そんな事はっ・・・・それに私が知っている一夏は子供ではなく大人となってしまった」
「そういえば最近のニュースでも取り上げられていたわね~。織斑一夏君は、IS学園に入学時は箒ちゃんくらいの容姿だったけどいつの間にか大人となっていたわよね。まあそれについてはいいとして、厚意に甘えさせてもらうわ。六時から神楽舞だから、今の内にお風呂に入って頂戴ね」
「はいっ」
元々篠ノ之神社で行っていたお盆祭りと言うのは、厳密な分類では神道というよりも土地神伝承に由来するものらしく、正月だけでなく盆にも神楽舞を行う。現世に帰った霊魂とそれを送る神様とに捧げる舞であり、それが元々古武術であった『篠ノ之流』が剣術へと変わった理由でもあった。
正確な事は戦火によって記録消失したので不明であるが、この神社は女性の実用刀があったりととにかく『いわくつき』の場所である。
箒達一家が離れた後も、こうして親戚がその管理を受け続いている。実はここを管理しているのは、最近だと蒼い翼が管轄として管理をしているからだ。定年退職した警察官は、蒼い翼関連の者だからたまに定時通信をしてくる。
脱衣所でかつて住んでいた家を懐かしむ箒であったが、不意にこの家を離れた理由は束がISを作った事だった。そして箒が転校してから、俺も本来の所属である国連軍になってから色々とあった。
「まあ箒が家を離れたから、束の事を恨んでいると思うが紅椿の待機状態があるのも束のお陰だろう」
「険しい顔をしていますが、赤い紐が交差するように巻かれていて、先端がそれぞれ金と銀の鈴が一対になっているのはいいデザインよね」
「初めて言った妹のワガママを答えてくれたのも姉である束さんのようですが、既にISはこちらの方が最強だよね父さん」
「現在エヴォルトシステムを積んだISは、既に換装されたので全員に配り終えました」
あの時の心の底から楽しそうな声を思い出していたが、恨みが少し晴れていたように見えた。風呂場の所までは音声のみで伝えらているが、許すのか断じたいのかは今の箒はまだ分からない様子だ。神楽の前の禊ぎである為、本来は川か井戸の冷水を使うのだが、その辺りは結構いい加減というより続けさせる為に緩くするという先人達の工夫でもある。
篠ノ之神社の禊ぎは風呂に入るだけで構わないので、箒は紅椿の腕飾りだけを身につけた姿で浴室へと入った。箒が幼い頃に改築したと言う風呂場は、総檜木のしっかりとしたものであって、先月に臨海学校で行った温泉宿にも引けを取らないくらいだ。広さはそこまでではなくとも、四人くらいは充分に足を伸ばして入れるだけの広さがあるからだ。
「ふぅっ・・・・」
何年か振りに入る湯船は、やはり昔と同じで心地が良かった。箒の好み通りで、湯船に少し熱めの湯が張られているのかその中で体を伸ばすたびに小さな水音が鳴った。どこまでも気分が良さそうにしていたが、やはり日本人にとっては風呂はとても気持ちいい。
本来なら先月の事を思い出す箒だったが、夜の海でキスしそうになった事だったが残念ながら主人公年齢が15から24へと引き上げたので回避となった。なので箒については、最近飛行機ハイジャック以降会ってないし、俺付近には常にセシリアとシャルがいるので友人以上恋人未満のままとなっている。
「そう言えば一真・・・・じゃなくて今は一夏だったわね。最近はどうなの?」
「ここではどっちでもいいが、最近になって蒼い翼が認識したし更識家の者達が俺らと同じ次元パトロール隊の者だったらしい。楯無と簪は記憶共有者だったから、俺としてはとても驚いた」
「別の一真だと、巨大グループ蒼い翼の社長兼CEOですからね。月中基地本部に行くと、一真が各外史にて蒼い翼を展開してました。ここは一真以外の者だと、セシリアさんとシャルロットさんにブラック・シャーク隊の者らとグリーン司令ですよね」
「僕も驚いたよ。別の父さんだと結構戦闘狂だからね~、まあここ限定だと別よりも丸い方だと思うよ」
別の俺は結構戦闘狂なのか~、まあいいけどね。箒とは未だに片思いだが、箒自身はどう思っているんだろうか。様子見してたら、箒は風呂の中で妄想をしていたようだが箒自身と俺との年齢差を考えていた。結局風呂から上がったのは五十分後だったが、こちらとしては初心だなと思っていた。
「よし、と。これで準備万端ね」
純白の衣と袴の舞装束に身を包み、金の飾りを装った箒はいつもよりも大人びていたので、一瞬奏の戦闘服である巫女姿を想像してみた。箒が着ている服装を奏に着させると、やっぱり奏の方が似合っていると感じ取った。神秘的な雰囲気を纏い、息を呑むような美しさがある。
「口紅は自分で塗れる?」
「は、はい。昔もしていましたから」
「あ、そうよね。箒ちゃん、小さい頃からやってたもんね。神楽舞。う~ん、あの姿も可愛いかったわぁ」
「む、昔の話は・・・・」
「うふふごめんなさいね。歳を取るとどうしてもそうなのよ」
照れ隠しに表情を引き締めた箒は、小指の先で小皿から取った口紅をすっと唇に塗っていく。スティックルージュではなく、昔ながらの口紅を使うのもこの神社の仕来りとしてだった。箒は鏡を見て、上手く口紅を引けた事を確認して箒自身は満足していた。
昔母親がしていたのをどうしても真似したくて、無理を言って小さな頃から神楽をやっていた事を俺らは記憶媒体として見ていた。箒にとって恥ずかしい過去であるが、今の箒にとっては過去よりも美しくなったと思った。
「(雪子叔母さんの化粧は流石だ。鏡の中の私は別人だな。まるで・・・・)」
まるで姫君のようなというフレーズが浮かんでいるが、箒はまた頬を赤くしていた。最近になってからは、アタックしようとしていたがそれをことごとくセシリアとシャルによって粉砕されていた。一度咳払いをした後、再度表情を引き締めていたが叔母さんにとっては成長した箒の今の姿を見て楽しそうにしていた。祭壇から宝刀を持ってきたが、箒が小さな頃は一人では持てなかった頃があった。
「そう言えば別の一真の武器が、聖剣エクスカリバーになっているのよ?知ってた一真」
「知らんが、別の俺はそんな伝説的な剣を使って戦っているのか?『そう質問して来ると思って預かってきているわよ』やはり別の俺でも創造神なのは変わりがないという事か」
そう言ってきてから、優斗が鞘ごと持ってきたので俺は試しに持ってみる。すると持ち応えがあるし、すぐに対応するかのようにしていた。ふむふむ、聖剣エクスカリバーには七つの能力があって刀みたいになったのが擬態能力があるのか。
七つの能力を全て使える別の俺は、まるで戦闘狂みたいに戦っていると聞いて驚いた。それと今いる奏と優斗は、俺みたいに別の奏とかはいない。それぞれの外史に俺の分身体を放っているので、今まで知らなかった事とかは全てオリジナルの奏や優斗に聞く事が多い。オリジナルの俺は、拠点を持ってから色々と暴れているらしいな。
まあ俺の事はいいとして、箒は一息で刀を抜いてみせたが刀を右手に扇を左手に持った。一刀一扇の構えは古くて『一刀一閃』に由来しているが、現在も篠ノ之流剣術の型の一つにある。とはいえ、実戦で扇を使う事もなく『受け』『流し』『捌き』を左手の得物に任せて、右手で『斬り』『断ち』『貫き』を行うと言うのを守りの型に二刀流に近い。他流派では小太刀二刀流の型として呼ばれる事がある。
「ねえねえ箒ちゃん、扇振って見せてよ。叔母さん、小さい頃のしか見た事無いから」
「え、ええ。それでは練習も兼ねて舞ってみましょうか」
刀を鞘へと戻し、それを腰帯に差す。それは神楽というよりも侍に見えるかのような構えであったが、これが正しいと言う篠ノ之流はな。俺みたいに我流のは、一刀一殺で振っているかのようなもんだ。閉じた扇を開き、それを揺らす。
左右両端一対に付けられた鈴が、シャン・・・・と厳かに音色を奏でてみた。練習ではあったが、神楽を舞う箒は本番みたいに気迫に似た雰囲気を出し、辺り一帯が静かになったような錯覚を覚えた。扇を左右へ揺らしながら、腰を落としての一回転で刀を抜き放つ。刃を扇に乗せてから、ゆっくりと空を切るようにしていくのは『剣の巫女』の名に相応しい厳格さがあった。
「箒さんの神楽舞、小さい頃と比べてもまるで別物のようね」
「そうだな。小さい頃の記憶は余りないが、箒が小さい頃に舞っていた事は覚えている。それに今度から俺の剣が、ISを展開しない時用に使う主要武器となった。とまあ箒の様子見をして来た訳だが、これから奏と優斗は暇か?篠ノ之神社での祭に誘いに来たのが本命なのさ」
「なるほど。だから父さんがこうして来た訳なのか、それに家族で祭に行くのは余りない機会だね。母さんはどうする?『無論行くわ』そう言うと思ったよ」
「こちらの仕事はお任せを。それにたまにはこちらでの一真さんとお祭りを楽しんで来てはどうです?」
そうして俺と奏に優斗はそれぞれの浴衣を創造の力で創ったのを、奏と優斗に渡してから俺と優斗で着替えた。浴衣にはちゃんとメンズ用もあるので、俺と優斗は主に青系統ので、奏のは白と赤が特徴的な浴衣だった。ワンタッチで着替えるモノだったので、すぐに着替え終えた俺達は夜となった事で箒が本番でやる神楽舞を見てから箒に挨拶しようと思った。
一方練習を本番だと思いながらやっていた神楽舞を踊り終えた後だったが、叔母さんはとても絶賛していた。ここを離れても舞の練習はしていたと質問を受けたが、一応巫女だと言った箒だった。これに関して絶対に俺には知られたくなかったそうだが、女らしい事をしていたとしても俺は正直に拍手するし昔も悪ガキ男子に冷やかされた事をハリセン一発で粛清した事もな。粛清した事で、最初の印象が最高だった為なのか今でも覚えているそうで。
「(昔は数人掛かりで女子をいじめる男子が気にくわないからだったが、もし今の一夏が女らしい事が似合わないと言われたらどうすればいいのだ?・・・・まあ今は神楽舞に集中すればいい事だが、アイツは夏祭りが覚えていたとしても国連軍日本支部基地で仕事ばかりしているから忘れているだろう。とにかく一夏は来ないのだから、私は精一杯舞うだけでいい!)」
と言う事だったが、いざ本番となった事で周辺一帯にいた客達は箒の舞を心から踊らされていたかのように見ていた。俺らも遠くで見ていたが、画面で練習風景を見るよりも実際に見た方が良いと改めて思った。奏も神楽舞が出来るし、俺らの仲間となる前は嵩月組の者だったからよく和服を着ていた。
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