黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
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7部分:第七章
第七章
「それは」
「別に驚かないのね」
「わかっていることだから」
だからだと返してみせた沙耶香であった。
「もうね」
「同じだからだというのね」
「そうよ。私は男もまたいけるけれど」
「そうかしら」
今度は美女が沙耶香の言葉に笑うのだった。
「私の知る限りでは貴女のお相手は女の子ばかりだけれど」
「たまたまよ」
沙耶香は女の問いに対して楽しげかつ妖しい笑みで返してみせる。
「それはね」
「たまたまかしら」
「私がいいと思う相手に女の子が多いだけ。それだけよ」
「それだけだというのね」
「そうよ。私は男でもいいのよ」
それを繰り返して述べる沙耶香なのだった。
「ただ。本当に食指を動かすのは最近は女の子ばかりね」
「女はいいわ」
白衣の女も言う。その言葉と共に笑みをさら妖しいものにさせていく。
「同じ性だから。わかっているしね」
「その通りよ。何がいいのか。何をすれば達するのか」
沙耶香の言葉は女に完全に同意するものであった。
「それはもうわかっていることだから」
「そうよ。私も男を嫌いなわけではないけれど」
「あくまでメインは女の子というわけね」
「そういうことよ。そして」
さらに言ってきたのだった。
「その女の子達だけれど」
「どうしているのかしら」
「私がある場所に集めているわ」
「ある場所にね」
「ええ、そうよ」
言いながらその右手に何かを出してきた。それは青い炎であった。それを立てた右手の人差し指の先に照らしてみせてきたのである。
その青い火を横目に見ながら。女はさらに言うのであった。
「そして像にして愛でているのよ」
「それも貴女らしい趣味ね」
「時には動けるように戻して」
そうもしているというのだ。
「肌と肌を重ねているわ」
「成程。楽しい日々を過ごしているのね」
「貴女はそうしたいと思わないのかしら」
自分が今していることを話し終えてから沙耶香に問い返してきた。
「それは」
「別にいいわ」
沙耶香はそれについては興味のないといった調子で言葉を返した。
「そういうことはね。いいわ」
「いいの」
「美女は私の行く場所には常にいるから」
だからだというのである。
「その娘達をその都度篭絡していけばいいだけだから」
「このパリでもね」
「その通りよ。パリは美しい街」
その美しさを認める言葉を出してみせた。
「そしてそれをさらに際立たせているのが名花達だから」
「では貴女はその名花達を、というわけね」
「いつも通りよ。摘み取るのよ」
そうするのだと言いながら。また妖しい笑みを浮かべてみせる。そのうえで言葉を出すのであった。
「そうして私の懐の中に入れていくのよ」
「貴女も相変わらずね」
今度は女が沙耶香に言ってきたのだった。
「そうした趣味は」
「否定はしないわ。美女も美少女も私の相手をする為に存在しているものだから」
女を愛している言葉だった。ただしそれは何処までも淫靡で愛欲に彩られた、そうした愛を紡ぐ言葉になっているのであった。
「だからね」
「そういうことなのね」
「そうよ。それでだけれど」
ここで話を一旦とぎってみせて。さらに言ってみせた。
「私の今回の仕事はね」
「私が今愛でている美女達を解放する」
「その通りよ。わかっているのね」
「充分にね。じゃあ」
それを受けての言葉であった。
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