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真田十勇士

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巻ノ七 望月六郎その十一

「その心、行いを見ることじゃ」
「そういえば我等も」
「確かにな、生まれも育ちも雑多じゃ」
 ここで六人は言った、自分達のことを。
「誰も真田家に代々仕えてはおらぬ」
「殿の旅で殿とお会いしてじゃ」
「皆生まれも育ちも違う」
「真田譜代は一人もおらぬ」
「そういうことじゃ、拙者も心を見る様にしておる」
 実際にとだ、幸村も答えた。
「御主達にしてもな」
「ですか、人はその心」
「怪もまたですか」
「心が大事なのですな」
「そうじゃ、拙者は怪でも人に害を為さぬならよい」
 あくまでこう言う幸村だった。
「人であっても同じであろう」
「邪な者は成敗すべき」
「そういうことですな」
「そうじゃ、ただ道を誤った者は正せばよい」
 先に会った賊達の様にだ。
「それでな、しかしな」
「どうしようもないまでに腐った者は」
「成敗する」
「そうするのですな」
「そうした輩は止むを得ない」
 幸村は本質的に殺生を好まない、しかし必要とあれば彼も武士だ。その武士の刀はただの飾りではないのだ。
「斬る」
「左様ですか」
「ではそうした輩は我等もです」
「成敗します」
「外道は」
「頼むぞ、拙者はどうしても義を見る」
 そして大事にするというのだ。
「義を忘れることは出来ぬ」
「着に生きる、ですな」
「殿ならではですな」
「やはりです」
「我等もまた」
「うむ、共に行こうぞ」
 幸村は六人に応えた、そうした話をしつつ近江に入るのだった。その近江に入ったところでだった。望月が幸村に言った。
「殿、近江といえば」
「琵琶湖じゃな」
「はい」
「海の様に大きな湖と聞いておる」
「左様です、見事な湖でして」
「拙者は海を見たことがない」
 このことは当然のことだ、信濃に生まれ育ったからだ。それで海を見ている筈がない。
「湖はあるがな」
「しかしです、琵琶湖はです」
「相当にじゃな」
「大きくてまさに」
「海か」
「左様であります」
「見てみたいのう」
 幸村は前を見つつ笑顔になっていた。
「是非な」
「では楽しみにして下さいませ」
「ではな、ところで湖、水といえば水練じゃが」
「水とくればそれがしですな」 
 海野が水と聞いて笑顔で言って来た。
「水のことはお任せ下され」
「うむ、それで他の者達は泳げるか」
「はい、そちらにも自信があります」
「こちらの六郎程ではありませぬが」
「それでもです」
「泳ぐことは得意ですぞ」
「溺れることはありませぬ」
「ならよい、やはり逃げるならな」
 それならっというのだ。 
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