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戦国異伝

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第二百十九話 九州に入りその六

「天下はです」
「わしがじゃな」
「我等も上様の下に加わりますので」
 だからこそというのだ。
「この地はです」
「そうか、しかしじゃ」
「それは、ですか」
「島津の領地は既に決めておる」
 ここで信長は義弘に告げた。
「薩摩、大隅と日向も加えよう」
「その三国ですか」
「そうじゃ」
「では九州は」
「三国だけじゃ」
 あくまでだ、義弘に言うのだった。
「よいな」
「ではこれまで我等が手に入れた国も」
「三国までと言ったのう」
 信長のこの言葉は変わらなかった。
「しかと」
「左様ですか」
「そうじゃ、わかったな」
「はい、では」
 義弘も信長がこう答えることはわかっていた、それでだ。
 ここはあえて前に進まずだ、その場に留まりそのうえで彼に答えた。
「その様に」
「よいのじゃな」
「それならばです」
「ふむ、では次は別の場で会おう」
 信長も義弘の返事を読んでいたのでこの場に留まった、そして彼にその場から彼を見据えたまま告げた。
「その時を楽しみにしておる」
「さすれば」
「ではな、さて話はこれで終わりじゃが」
 ここで信長は悠然としたまま義弘にこうも述べた。
「時間はあるか」
「時間が、ですか」
「茶はどうじゃ」
 義弘にこれを誘ったのである。
「これよりな」
「折角の申し出ですが」
 義弘は信長の問いにこう答えた。
「それは」
「左様か」
「田舎育ち故の粗忽者ですので」
「ははは、そんなことは気にすることはない」
 信長は義弘の言葉を受けて笑って述べた。
「では次に会う時にな」
「その時にですか」
「御主達四兄弟を全て迎えたい」
「茶の場に」
「それでどうじゃ」
「そこまで仰るのなら」
 義弘もだ、兄弟達のことを出されては強くは言えなかった。それでこのことについてはこう信長に答えたのだった。
「次の機会には」
「ではな、四人でな」
「お邪魔します」
「では今はな」
「はい、お話したいことも全てお話しましたので」
 それでというのだ。
「それがしもです」
「ではな」
「またお会いしましょう」
 義弘は礼儀正しく信長に応えた。そして。
 家臣達を連れて兄弟達のところに戻って行った、織田の兵達は帰る彼等にもその数と整いを見せていた。
 その彼等が去ってからだ、信長は信忠に対して言った。 
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