戦国異伝
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第二百十九話 九州に入りその二
「島津にしても武門、維持もあるしのう」
「それに、ですな」
「島津はあくまで九州にこだわっておる」
この場の統一にというのだ。
「九州探題の地位にもな」
「九州探題とはまた」
その役職の名を聞いてだ、信長の次男である織田信雄が言った。信長によく似た流麗な顔立ちではある。
「古いですか」
「そう思うか」
「はい、どうにも」
「そうじゃな。既に室町幕府はない」
信長も我が子に答える。
「そうした役職もな」
「最早」
「ないも同様じゃ、実際にじゃ」
信長も言うのだった。
「わしは管領や探題の役職は廃する」
「そうされますな」
「最早意味のない役職じゃ」
信長の政の仕組みの中ではだ。
「それは確かじゃ」
「しかし島津家は」
「まだこだわっておるのじゃ」
「左様ですか」
「確かに古いがな」
だがそれでもというのだ。
「まだ古いものにこだわる者達もおるのじゃ」
「だから島津家も」
「まだ言っておる、しかし」
「それもですな」
「これで終わりじゃ」
織田家の九州攻めがはじまった今からというのだ。
「これでな」
「ではこれより」
ここでだ、今度はだった。
柴田がだ、こう言った。
「島津家とですな」
「そろそろ使いが来るわ」
その島津家からというのだ。
「その者と話をしてな」
「そして、ですな」
「そこで言う」
信長のその考えをというのだ。
「島津家の領地は薩摩と大隅じゃ」
「その二国だけですな」
「そうじゃ、九州全てはな」
それはだった。
「断じてやらぬ」
「それを断れば」
「戦じゃ」
はっきりとした言葉だった。
「その時はな」
「だからこそですな」
「こうして」
加藤と福島がまた言って来た。
「三十万の軍勢で以て来た」
「戦も覚悟しておるからこそ」
「鉄砲も持って来たしのう」
「およそ十万丁」
「それだけを」
「島津も鉄砲は多い」
ただ強いだけでなく鉄砲も多く持っているのが島津なのだ、種子島から鉄砲が広まっただけはあるのだ。
「しかしじゃ」
「十万もあれば」
「如何にその島津といえども」
「勝つ」
必ず、というのだ。
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