魔法少女まどか☆マギカ こころのたまごと魂の宝石
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第12話
あすなろ市の連中と一緒にあたしはイースター社のビルに潜入していた。
潜入方法はあたしの魔法だ。あたしは幻術が使えて、よく万引きや寝床の確保の為に使ってる。本当なら分身を作ったりして戦闘にも使える能力なんだが、今は色々あって戦闘で使えるレベルじゃなくなっちまった。まあ、今はそんな事はどうでもいい。
で、今は会社にあるコンピューターからあすなろ組の“ニコ”って奴がデータを取り出してる所だ。
「どうだ、ニコ?何か分かったか?」
あすなろ組のサブリーダー…いや、ミチルが死んだから今はこいつがリーダーか。とにかく、リーダーな奴、サキがニコに聞いた。
「ダメだね。記録からここがエンブリオを見つける為の部署を作ってたのは分かってるけど、研究データは綺麗サッパリ消されちゃってるよ。」
「そう言えば、昔テレビのワイドショーで見たな。失敗作のデータであっても、技術流出を防ぐ為に研究データはしっかり処分すると。」
「おいおい。それじゃあ無駄足だったって事になんじゃねえか。」
あたしが文句を言うと、ニコはこう答えた。
「そんな事は無いよ。記録の方には計画には誰が参加したかについては残ってたから。」
「なら、そいつらから直接聞き出すしか無いか。で、誰かは分かるか?」
「ええと。当時の専務とかここの技術者達、それに何故か昔ここの事務所に所属していたアイドルとそのマネージャーとかも居るね。」
「アイドルとマネージャー?何でだ?」
「さあ?それで、居場所についてだけど、退職したり解雇された奴が多いから、今の居場所が分からないのが多いね。」
「個人情報保護の為か。で、分かる奴は誰だ?」
「まず、エンブリオ捜索の為の技術開発をやっていた九十九って奴とその部下だけど、海外に転勤しちゃってるから接触は難しいね。」
「じゃあ、アイドルの方はどうだ?少なくとも、今の事務所の場所くらいは分かるだろう?」
「いや、そうなんだけど・・・」
サキの問いにニコは言葉を詰まらせた。どうしたんだ?
「ねえ、サキ。覚えてる?何年か前、1人のアイドルがイースターから移籍して、騒ぎになったのをさ。」
「ああ。あの時彼女はすっかりテレビとかに出なくなってしまって、でも暫くしてから復活してくれたから本当に嬉しくて・・・っておい!まさか!?」
「そう。そのアイドルっていうのは“ほしな歌唄”の事だよ。」
一応、あたしも知ってる名前が出て来て驚いた。でも何か、サキの方が驚きがデカイような気がすんのは気のせいか?
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あたしとスゥは皆の所から走り去ったあむちゃんを追いかけて着いて来た。今、あむちゃんはトボトボと道を当てもなく歩いていた。
「あむちゃん・・・」
「分かってるよ。あたしがやろうとした事はミキの言う通りだって。」
あたしが話しかけると、あむちゃんはそう答えた。
「さっきは否定したけど、自分でも認められなかったけど、でもあたしは手がちゃんと届いたのに、助けられなかったのがそれが認められなくて、無かった事にしようとしただけ。それでゆまちゃんが、あんな小さな子が危険な目に遭う事になるのに・・・あたし、最低だ。」
ちゃんと、ミキの言った事は分かってくれたみたい。でも、それだけじゃダメ!ちゃんとあむちゃんがそれならこれからどうすればいいの考えないと。そうあたしが考えてた時、あむちゃんの首元に変なマークが浮かび上がった。
「これって!?」
「魔女さんの口付けですぅ!!」
前、仁美ちゃんが魔女に操られた時にあむちゃん達と一緒にマミさんに教えてもらったの。魔女の口付けは心の弱った人に付くって。
「あむちゃん!しっかりして!!」
あたしはあむちゃんを正気に戻す為に叫んだ。でもその直後、あたしの視界をしゅごたまの殻が覆った。
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私が“下僕”の結界で下僕の毛並みの手入れをしていると、1人の女の子が入って来た。首元に魔女の口付けが付いているから、下僕が自分の餌として呼び寄せたんでしょう。
「おや?驚いたね。まさか彼女が魔女の口付けを付けられてしまうとは。さっきの件で余程心が弱ってしまったようだね。」
すると、いつの間にか現れたキュウべえがそんな事を言った。
「キュウべえ。彼女の事、知っているんですか?」
「ああ。彼女は日奈森あむ。オリジナル魔法少女の1人で、マミとは協力関係にあるよ。実力も、小学生の頃からオリジナル魔法少女をやっているだけあって、中々のものだ。」
「へえ。それは、いい事を聞きました。」
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あむちゃんが走り去った後、ゆまちゃんは織莉子さんのケータイでおじいちゃんの家に電話した。おじいちゃんは電車で迎えに来てくれるそうだから、私達は駅までゆまちゃんを送る事になったんだけど、その途中でいきなりミキとダイヤがしゅごたまの殻に包まれちゃった。
「どうしたの、2人とも!?」
「新しい遊びかい?」
しゅごたまの状態で浮かんでいる2人にエイミーとレンが聞いた。すると、ダイヤが答える。
「違うわ!勝手に殻が出てきて閉じ込められちゃったの!!」
「この現象・・・まさか!?」
「ミキ、心当たりがあるの?」
「前、キセキに✖️が付きそうになった時も、一回たまごに戻っちゃって。」
「って事は、あむちゃんのこころに✖️が付きそうって事!?」
「多分、そうだと思う。」
私がそう言うと、ミキは落ち込んだような声で答えた。
「どうしたの?」
「あむちゃんのこころに✖️が付きそうなっているのは、僕のせいかもしれない。持ち主のこころを追い詰めるなんて、しゅごキャラ失格だ。」
「いえ、そうとは限らないわ。」
落ち込むミキにエイミーが言った。
「どう言う事?」
「もしかしたら、魔女に魔女の口付けを付けられてしまったかもしれないわ。」
「それってどう言う事!?」
「マミさんが言ってたでしょ、魔女は弱った人のこころに浸け込んで口付けを付けるって。」
「もしそうなら、あむちゃんが危ない!!」
私達はゆまちゃんを織莉子さんに任せて、あむちゃんの捜索に向かった。
「ミキ!ダイヤ!あむちゃんの気配はどう?」
「なんとなくだけど、近付いているよ。」
「さやかちゃん、魔女の反応は!?」
「こっちも近付いてる!」
私は走りながらミキとさやかちゃんに確認した。でも、その直後・・・
「がっ!?」
「くう・・・」
突然、ミキとダイヤが苦しみ始めた。
「ミキ!ダイヤ!!」
「大丈夫!?」
私とエイミーが声をかけるけど、ミキとダイヤのしゅごたまはだんだん黒ずんでいって、表面に白い✖️が浮かび上がった。
「そんな・・・」
✖️たまになってしまった2人を見て私達が愕然としていると、2人は何処かへ飛び去ってしまった。
「待って!!」
私は2人を追いかけようちするけど、直ぐに見失ってしまった。
「ど、どうしよう!!」
「落ち着いて、まどか!魔女を倒せば何とかなるハズ!!」
取り乱す私にさやかちゃんがそう言ってくれた。だから、私達は魔女の反応に向かった。
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私はいつも通り、魔女探しの為のパトロールをしていた。そして、公園の中に入った時・・・
「巴マミさんですよね?」
突然、声を掛けられた。
「誰かしら?」
私が声のした方を向きながら問いかけると、1人の少女が現れる。
「初めまして。私、優木沙々と申します。あなたと同じ魔法少女ですよ。」
そう言って彼女はソウルジェムを見せて来た。
「で、私に何の用かしら?」
「もちろん、ここを預かるベテラン魔法少女の巴マミさんから、この見滝原を貰いに来ました。」
そう言うと、彼女は道化師を思わせる姿に変身した。私はこの事を予想していたので冷静に変身する。この見滝原は魔女の良く出る“狩場”の1つ。だから、こうやって縄張りを横取りしようと別の街から魔法少女がやって来るのは初めてじゃない。
「そう。でも、はいそうですかと渡す訳にはいかないわ。」
「分かってますよ。だから、力強くで行かせてもらいます!!」
優木沙々がそう言った時、魔女の結界が展開された。
「魔女!?こんな時に!?」
私は銃を構えて警戒する。すると、優木沙々の背後から複数の魔女が現れた。
「これはどう言う事!?魔女が徒党を組むなんて!?」
「驚きましたか?この子達、私の下僕なんですよ。」
「下僕ですって!?」
「そう。これが私の魔法。でも、下僕はこれだけじゃありませんよ。」
彼女がそう言うと、魔女の後ろから1人の女の子が現れた。嘘、あれは!?
「日奈森さん!?」
「そう。あなたの協力者の日奈森あむですよ。さあ、やってしまいなさい!」
優木沙々が命じると、日奈森さんの周りに4つの✖️たまが現れた。でも、普通の✖️たまとは違って真っ黒な表面に白い✖️が描かれているのではなく、黒みがかった模様の上から✖️が描かれていた。そして、その模様は間違い無く、日奈森さんのしゅごたまの物だった。
「あたしのこころ、アンロック。」
そして、日奈森さんが淡々とした口調でそう言うと、4つのたまごは彼女の胸に吸い込まれた。
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「あれ?魔女の反応が遠ざかってる。まさか、移動してるの?」
魔女の所へ向かっている途中、さやかちゃんがそんな事を言った。
「急がないと!!」
私達は走るスピードを上げたけど、反応はどんどん弱まってる。そして、公園の中に入った所で完全に消えてしまった。
「そんな・・・」
私達はさやかちゃんのソウルジェムを見ながら立ち尽くした。その時、近くの茂みからガサリと音がした。私達がその方を向くと、そこから出て来たのは、ボロボロの状態のマミさんだった。
「マミさん!」
「大丈夫ですか!今、治療します!!」
私達は慌ててマミさんに駆け寄って、さやかちゃんに治療をしてもらった。
「ありがとう、美樹さん。助かったわ。」
「マミさん、何があったんですか?」
「別の魔法少女に襲われたのよ。」
「まさか、佐倉杏子!?」
「いいえ、それとは別の相手よ。優木沙々と名乗っていたわ。」
「でも、マミさんがこんなボロボロにやられるなんて、相当手強い奴だったの?」
「いえ、彼女自身の戦闘能力は大した事は無いは。一対一ならきっと新人の美樹さんでも勝てるかもしれないわね。」
「え?でも、マミさんはボロボロに・・・」
「問題なのは、彼女の固有魔法よ。彼女は魔女を自分の手下として操る事が出来るの。」
「魔法少女が魔女を!?」
マミさんの言葉を私達は信じる事が出来なかった。だって、魔法少女と魔女は敵対関係にあるんだよ。それをどうやって・・・
「信じられないかもしれないけど、本当よ。おそらく、彼女の魔法は洗脳関係だと思うわ。それを利用して複数の魔女を操って攻撃を仕掛けて来たの。でも、それ以上に問題だったのは・・・日奈森さんが操られていた事よ。」
「あむちゃんが!?」
「ええ。戦っている途中、魔女の口付けを確認出来たから、きっと手下の魔女に口付けを付けられて結界に連れ込まれて来た所を洗脳したのでしょうね。」
「ちょっと待って!って事はそいつの魔女も人を襲うって事!?」
「おそらく、そうでしょうね。」
さやかちゃんの質問をマミさんは肯定した。それを聞いてさやかちゃんは拳を握り締める。なんだか、その沙々って子に対する怒りであむちゃんの事を忘れてるみたい。
「あの、マミさん。それで、あむちゃんの様子はどうだったんですか?」
「虚ろな目をしてたわ。魔女の口付けを付けられた人特有の症状よ。それとあの子のしゅごキャラ、✖️キャラになってしまっていたわ。」
「✖️キャラに!?本当ですか!?」
「ええ、たまごの状態だったけど、確かに✖️のマークが付いていたわ。それで、4人とキャラなりして、魔女と一緒に私に襲いかかって来たの。しかも、魔女が日奈森さんをサポートする形で攻撃して来たから、反撃出来なくてさっきの有り様よ。それでも、何とか魔女を1体倒して逃げて来たんだけど。」
「そんな・・・」
ラン達に✖️が付いちゃったなんて、浄化が出来ない私達はどうすればいいの・・・
「大丈夫だよ、まどか。」
すると、キリカさんが私に言った。
「その操ってる魔法少女と、口付けを付けた魔女を倒せば、きっと何とかなる。」
「今は、そう信じるしか無いわね。」
マミさんもキリカさんと同じ意見みたい。そうだね。うじうじしていても、あむちゃんは戻って来ない。
「・・・分かりました。絶対、あむちゃんを助けましょう!」
「そうと決まったら、戦力を集めないとね。」
「あれ?あたし達だけじゃダメなんですか?」
マミさんの言葉にさやかちゃんが質問した。
「言ったでしょう。優木沙々は多くの魔女を引き連れているって。それなら人手は多い方がいいわ。」
「まあ、確かにそうですけど。あたし達に手を貸してくれる奴って、居るんですか?」
「そうね。暁美さんなら、手を貸してくれるかもしれないわ。彼女も、優木沙々が見滝原で好き勝手するのは気に入らないでしょうし。」
「げっ、あいつかあ・・・」
マミさんがほむらちゃんの名前を出して、さやかちゃんは明らかに嫌そうな顔をした。さやかちゃん、ほむらちゃんと仲悪いからなあ。
「美樹さん。今はそうは言っていられないわよ。」
「分かりましたよ。でも、明日休みだから学校で会って頼むっていのうは無理だし、どうするんですか?」
「そうね。悠長に待つ事は出来ないわ。日奈森さんのご両親も心配するでしょうし。」
マミさんの言う通り、その沙々って子は自分の魔女が人を襲ってもいいって考えてるみたいだし、あむちゃんを家に帰らせるなんて事はしないと思う。
「私がどうかしたかしら?」
その時、私の背後にいきなりほむらちゃんが現れた。
「うわっ、びっくりした!?あんた、いつもそうだけど、いきなり現れるのやめなさいよね!心臓に悪い!!」
さやかちゃんがほむらちゃんに文句を言うけど、ほむらちゃんはそれを無視して話を続ける。
「それで、何の話かしら?」
「暁美さん。あなたに頼みたい事があるの。」
マミさんがほむらちゃんに事情を説明した。
「そう。それで、見返りは?」
「あんた!こんな時にそんな事を!!」
「あなたが倒した魔女のグリーフシード全てと、私が倒した魔女のグリーフシードの半分でどうかしら?」
見返りを求めるほむらちゃんにさやかちゃんは文句を言おうとするけど、マミさんがそれを止めて見返りの内容を言った。
「それで充分よ。取り引き成立ね。」
「ありがとう。それじゃあ、早速あの子を探しに行きたいんだけど。」
「それなら心当たりがあるわ。着いて来て。」
そう言って、ほむらちゃんは歩き始めた。
「ちょっと待って!?何であんたがそんな事を知ってんのよ!!」
「優木沙々は前から少しマークしてたの。だから、ある程度は行動を読む事が出来るわ。」
怪しむさやかちゃんにそう答えると、ほむらちゃんはそのまま先に進んで行った。
続く
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