黒魔術師松本沙耶香 紫蝶篇
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15部分:第十五章
第十五章
街を歩いていると。一人の日本人の若者を見つけた。場所はソル広場、熊の置物の前であった。女の子が二人である。見れば困った顔をして辺りを見回している。
「どうかしたのかしら」
沙耶香は日本語で二人に声をかけてきた。二人共黒い髪で髪の長い女の子は小柄で短い女の子は背が高くボーイッシュである。小柄な女の子は軽やかなロングスカートでボーッシュな女の子はズボンであった。沙耶香は二人のそんな対象的な姿と服装を見て笑みを浮かべていた。
「困っているようだけれど」
「貴女は」
二人は沙耶香の言葉に同時に顔を向けてきた。
「日本の方ですか?」
「ええ」
沙耶香はその言葉に答える。
「そうだけれど。何かあったのかしら」
「いえ、実はですね」
「両替をしたいのですけれど」
二人は困った顔で述べる。
「お金がなくなって。けれど」
「両替できる場所が閉まっていたのね」
「はい」
ボーイッシュな女の子が彼女に答えてきた。
「そうなんです、シェスタで」
「まさか公共の場所までなんて」
小柄な女の子も困った顔である。その顔で沙耶香に不安を述べていた。
「どうしたらいいのか」
「困ってるんです」
「時間を潰せばいいわ」
沙耶香はすっと笑ってこう言ってきた。
「ここは素直にね」
「素直にですか」
「そうよ」
今度は小柄な女の子に答える。
「わかったわね」
「わかりました。けれど」
それでも二人はまだ困った顔をしていた。
「時間を潰すにも場所が何処も閉まっていて」
「どうすればいいのか」
シェスタのせいである。スペインやイタリアの風習で昼寝をするということである。この時間は殆どの店が閉まっている。彼女達はそれに鉢合わせしてしまい困り果てているということであったのだ。
「それではね」
沙耶香はそんな彼女達に助け舟を出してきた。
「いい場所があるわ」
「いい場所ですか」
「それは何処ですか?」
「一緒に来てくれるかしら」
目を妖しく細めて二人に問う。
「私と一緒に。どう?」
「ええ、じゃあ」
「そういうことでしたら」
二人は沙耶香が女性であることに油断していた。日本人であることと親切なこと、何よりも彼女が同性であることに安心したのだ。しかしそれこそが大きな罠だったのだ。何故なら沙耶香は二人が女だからこそ声をかけたのであるからだ。
二人はそのまま沙耶香について行った。案内された場所は沙耶香のホテルだった。しっかりした感じの綺麗なホテルで二人はそれを見ても安心した。
しかも場所はスイートルームであった。二人はもう安心したどころか喜んでさえいた。笑顔でその豪奢な白い部屋を見回していた。
「わあ、綺麗」
「こんな部屋に泊まっているんですか」
「そうよ」
答えながら部屋の扉に魔術を仕掛ける。それでロックしたのだ。
「凄いですね。何かお城みたい」
「アクセサリーも立派だし」
二人は部屋の細かい場所まで見ていた。沙耶香を見てはいなかった。それが間違いであった。二人は沙耶香がゆっくりと二人の前に来ているのに気付いてはいなかったからだ。
「ねえ」
妖しい響きの声を二人にかけてきた。
「はい」
「何ですか?」
「目を見て」
振り向いた二人にすぐに言ってきた。
「私の目を」
ほぼ条件反射でその目を見た時だった。沙耶香のルビーブラックの目が紅に輝いた。
それは一瞬であった。しかしその一瞬で充分だった。二人の動きが止まった。それから目の輝きがなくなる。人形のようになっていた。
「いい?」
また二人に問う。
「服を脱いで」
「わかりました」
「それじゃあ」
人形のようにこくりと頷く。それから言われるがままに服を脱ぐ。小柄な少女は白い下着に、ボーイッシュな女の子は青い下着にその身体を包んでいた。二人はその姿で沙耶香の前に立っていたのだ。
「ベッドよ」
沙耶香も服を脱いでいた。黒い下着にガーターストッキングであった。髪を下ろしその姿で二人にまた述べる。
「いいわね」
「ええ」
「そして」
「そして。次はね」
まだ部屋は明るい。しかしその明るい部屋の中で妖艶に笑いながら述べる。
「楽しみましょう。いいわね」
そうして二人をベッドへと入れる。次に沙耶香自身が。そのまま二人の肢体を楽しむのであった。
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