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零から始める恋の方法

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入学式

 春・・・。
 それは出会いと別れの季節・・・らしい。
 でも、実際出会いこそあれど別れってそんなにないよね。


 さて、そんなわけで私は見事地元の名門校である私立平道学校へと入学できた。
 しかも、トップ10に入って。
 正直、頭いいとは周りから言われていたけれども、実感がわかなかった。
 今回でようやく・・・といった感じだ。
 成績とかはよかった。
 でも、何故かそうとは思えなかった。
 なぜかというと・・・。


 「・・・迷った」


 おかしい。
 つい数分前は学校は目の前だったはずだ。
 なのになんで・・・。


 ・・・え、と。


 「そ・・・そうだ!地図があったはず・・・!!」


 確か学校案内のパンフレットにあったはず・・・。
 よし、あった!


 「・・・わからない」


 いやー・・・どうしてだろ。
 地図ってどうも見方が・・・。


 「うぅ・・・これはちょっと・・・」


 流石に入学早々遅刻とか冗談じゃない。
 さて、どうしたものか・・・。


 「おい、誰かいるのかー!?」


 少し独り言をしつつ考え事をしていたら誰かが駆けつけてきてくれたようだ。
 ・・・そんな大声でしゃべってたっけ。
 恥ずかし・・・。


 「こっちです!こっちですー!!」


 ここは森。
 ちょっと前までは舗装されていた道だったはずだったのに、いつのまにかこんな森に来ていた。


 「ん?・・・どうしてこんなところにいるんだよ。こんなところハイキングでもない限り来ねえだろ」


 「えと・・・道に迷っちゃいまして・・・」


 「・・・どうやったら迷うんだ?一本道だろ」


 「それを言われると困ります・・・」


 初対面の人に・・・恥ずかしい・・・。
 しかも、ちょっとイケメンじゃないですか。
 これは惚れるシチュエーションですねそうですね!


 「ところで、見ない顔だが新入生か?」


 「え・・・ええ・・・。まあ・・・」


 「そうか・・・。なら、案内するぜ。ついてきな」


 当然私達は制服。
 いやー、お兄さんはいいですよねー、ズボンで。
 わたしなんかこーんなヒラヒラのスカートで・・・。
 枝とかに引っかかったら面倒くさいこと確定ですよまったく。


 「いたっ・・・」


 「おい、気をつけろよ」


 うぅ・・・心配してくれるのはうれしいですけど、ならもうちょっと・・・。
 ほら・・・手を握るとか・・・。


 「ほら、ここをまっすぐだ」


 そうしているうちに元の舗装された道についた。
 ちょっと安心。


 「あの・・・ありがとうございました」


 「ん?ああ、別にどうだっていいさ。それより早くしないと初日早々遅刻だぜ?」


 「あ、そうでした!急がないと!!」


 つい急ごうと焦ってしまい、足がもつれる。
 当然、こけた。


 「・・・お・・・おい、大丈夫か・・・」


 「・・・」


 「な・・・なあ・・・その・・・」


 「・・・!」


 「・・・え?なんで・・・走ったし・・・」


















 「うぅ・・・何とか間に合ったけど・・・」


 結構悪目立ちしてしまった・・・。
 恥ずかしいよー・・・。
 しかも、せっかく助けてくれたあの謎のイケメンにもお礼言えなかったし・・・。
 しかも、最後こけるとか・・・我ながら情けない・・・。


 「あの・・・雪菜さん・・・であってたっけ」


 「ひゃ・・・ひゃい!?なんでひょうか!!」


 「・・・」


 「・・・」


 もういやだよー・・・。
 思わず噛んじゃったし・・・。
 絶対引かれた!絶対「こいつ何かんでんの、キッモ!!」とか思われた・・・。


 「うぅ・・・」


 「その・・・ね!大丈夫だから!私何も聞いてないから!!」


 しかも気使わせちゃったし・・・。
 どうしてこうドジばっかり・・・。


 「あのー・・・元気出して?」


 「うぅ・・・ありがとうございますー・・・」


 背中をさすってくれる・・・。
 いい人だなー・・・。


 「人・・・よんでるから・・・ね?ほら、あそこで立ってる男の人・・・」


 「あ・・・」


 そこに立っていたのは朝のイケメン。
 まさかこんなベッタベタな展開があるとは・・・。


 「だから早くいってあげて?」


 「わ、わかりました!ありがとうございます!」


 「あ・・・走ったらあぶな・・・っ!」


 うぅ・・・。
 また焦ってこけちゃった・・・。
 痛いのと恥ずかしいのとの二重の意味でつらいよー・・・。


 「お・・・おい・・・大丈夫か?」


 朝のイケメンさんが手を差し伸べてくれる。
 優しいなー・・・。


 「大丈夫です・・・。ちょっと床の強度実験をしていただけです」


 「そ・・・そうか・・・。それはそうと、これ、お前のだろ?」


 といって、みせられたのはお気に入りの髪飾り。
 え!?嘘!?


 つ・・・ついてない・・・。


 なんでそんなことにも気づいてないんだろ・・・。


 「はい・・・そうです・・・」


 「なんでそんなテンション低いんだよ・・・」


 「だ・・・だってえ・・・」


 つい涙目になってしまう。
 幼いころはよく泣き虫だのなんだのってからかわれたっけ・・・。


 「ちょっと!上本、あんた一年泣かせないでよ!!」


 「わ!?な・・・泣かせてるわけじゃねえって!な!?」


 私に振ってくるイケメン・・・もとい上本さん。
 そっかー・・・上本さんっていうんだ・・・。


 「そうです・・・全部私が悪いんです・・・私が・・・」


 「あんた!責任押し付けてるんじゃないわよ!!」


 「違うって!これは本当に!!」


 「おい・・・あいつらまた・・・」


 「本当に朝から仲がいいわねえ・・・クスクス・・・」


 「!?ち・・・違うんだから!こ・・・これは幼馴染として・・・!って、ああもう!!帰る!!」


 幼馴染なんだー・・・。
 いいなあ・・・私もそういうの欲しかったなー・・・。
 私ひとりっこだし、両親どっか行っちゃうしで大変なのになー・・・。


 「・・・その・・とりあえず、もう授業あるから俺も行くから!じゃあな!!」


 そう言って爽やかに去る上本さん。
 あ、背中叩かれてる。





















 「ねえねえ、雪菜さん!」


 お昼休み。
 話しかけてきたのはさっき慰めてくれた女の人だった。
 ・・・誰だっけ。確か・・・凛堂・・・。


 「忘れちゃった?じゃあ、改めて自己紹介!」


 そう言って気を付けの姿勢を取る女の人。


 「凛堂利英、16歳です!好きな食べ物は海苔!嫌いな食べ物は人参です!!」


 えーと・・・海苔が好きで、人参が嫌いな利英さんね。
 よし、覚えた。


 「えーと・・・それで何の用でしょうか」


 「そう!ズバリ、私はあなたと一緒にひるごはんが食べたいんだよ!!」


 「は・・・はあ・・・」


 そんなことだったんだ・・・。
 でも、初日だから友達も少ないし、今のうちに作っておくのはいいかもしれない。


 「いいですよ。じゃあ、一緒に食べましょうか」


 そう言って、私はお弁当を出す。
 利英さんは椅子を自分の席から持ってきて、私の机の前に置く。


 「わあ!雪菜ちゃんお弁当!もしかして手作り!?」


 「ええ、そうですよ。利英さんは?」


 「ん?私はこれ」


 そう言って取り出したのは・・・海苔・・・。
 え・・・それだけ・・・?
 しかも、さらっとちゃん付けにされたし・・・。


 「えーと・・・それだけですか?」


 「あ、一応ご飯もあるよー」


 「・・・お腹すかないんですか?」


 「海苔は最強の食べ物なんだよー」

 そう言って、バリバリと海苔を食べ始める利英さん。
 海苔の欠片制服に落ちてるし・・・。
 なんか・・・さっきと雰囲気違うなー・・・。


 「・・・さっきはありがとうございました」


 「んー?気にしなくていいよー。それより海苔食べる?」


 「あ、じゃあ一枚だけ・・・」


 ・・・海苔だ。
 味付け海苔とか韓国の里香と思ったらふつうのノリだった。
 あ、でも微妙に醤油っぽい味が・・・。


 「それはしょうゆにつけて、ドライヤーで乾かした奴だよー。何とかうまくいってよかったよー」


 何やってるんだろう、この人は。
 とにかく、この利英さんというちょっと変わった人が私の最初のお友達だった。


 
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