何かわからないうちに
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第三章
「いいよな、御前は」
「もう彼女、いや許嫁がいてな」
「沙織ちゃんと何処までいったんだよ」
「キスしたか?」
「もっといったか?先まで」
「そんなこと出来る筈ないじゃない」
大輝は周りにいつもむっとした顔で答えた。
「だって沙織ちゃんはね」
「将来の奥さんだろ」
「だったら何してもいいだろ」
「親御さん達が許してくれてる関係だろ」
「だから何してもいいだろ」
「だから、僕は分家筋の神社の息子で」
そしてというのだ。
「沙織ちゃんはご本家の大社の跡取り娘で」
「ああ、お互い神社の子供だからか」
「そういうこと厳しいか」
「そういえば沙織ちゃん神社の中で巫女さんにもなってるな」
「舞も舞うし」
「僕だって神社を継ぐから」
その大社をだ、本家の。
「そんなこと出来ないよ」
「で、家の神社は弟さんが継いでか」
「御前は婿養子さんになるんだな」
「じゃあ彼女とかか」
「そういうのじゃなくてか」
「キスなんてしてないよ」
大輝は顔を赤くさせて言い切った。
「一切ね」
「いや、そこで力説するのはな」
「それはないだろ」
「結婚する前でもそういうことしていいだろ」
「許嫁なんだしな」
「そういうのじゃないから、許嫁は」
とかくだ、大輝は言うのだった。
「僕達もね」
「そうか、まあとにかくな」
「御前と沙織ちゃん大人になったら結婚するんだな」
「それであの大社を継ぐんだな」
「そうなんだな」
「そうだよ、何か最近ね」
中学生になってからだというのだ。
「そのことがやっとわかってきたかな」
「神主さんになるのか、夫婦で」
「正月忙しそうだな」
「じゃあ俺達も大人になったら正月お参りするな」
「破魔矢とかお守りとか買うな」
「結婚式もやってるよ」
大輝はクラスメイト達もこうも返した。
「神式のね」
「というかそれ御前等だろ」
「あの大社でそうした結婚式するんだろ」
「日本の趣きでな」
「そうなるんだな」
「そうなると思うよ」
こう言うのだった。
「やっぱりね」
「だよな、大人になったらか」
「大学を卒業したら」
「あの大社に入ってか」
「神主さんになるんだな」
「あちらがご本家で」
このこともだ、大輝は意識しだしていた、そうした世間のことも知る年頃になってきているせいである。
「凄く大きいからね」
「でかい家に住むか」
「そうなるんだな」
「そうなるかな、まあお家自体はね」
住む家はというのだ、敷地はともかく。
「普通だから」
「ああ、お家はか」
「普通か」
「そうだよ、確かに社は凄いけれど」
それでもだというのだ。
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