一休さんの頓智
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第一章
一休さんの頓智
将軍である足利義満公はこの時退屈していました、それで。
幕府に仕えている幕臣の人達にです、こう言うのでした。
「政で忙しい合間がのう」
「どうもですか」
「お暇ですか」
「全くじゃ、何かよい遊びはないものか」
退屈凌ぎだけでなく気分転換になるものもというのです。
「能もよいがこう楽しいな」
「楽しい、ですか」
「上様はそうしたものをお望みですか」
「うむ、ないか」
こう尋ねるのでした。
「何かのう」
「ううむ、書も楽しいものはですな」
「大抵ですな」
「読んだわ、だからのう」
「他の、ですな」
「楽しいことをお求めですか」
「何かあれば余に紹介してくれ」
将軍様は将軍様なりにかなり真剣です。
「新しい書でも何でもよいぞ」
「さすれば」
幕臣の人達も応えてでした、そのうえで。
将軍様に色々と楽しいものを紹介したり勧めたりしました、ですが。
将軍様はどうにもというお顔で、です。こう言うのでした。
「どれもな」
「お気に召されませんですか」
「どうにも」
「うむ、悪くはない」
紹介されたり勧められたどのこともというのです。
「決してな、しかしじゃ」
「それでもですか」
「ご政道のお疲れを完全に癒せる」
「そこまではですか」
「至りませんか」
「そうじゃ、何かないか」
こう問うのでした。
「何でもよいのじゃ」
「笑いがご所望でしょうか」
幕臣の一人蜷川親当が将軍様に尋ねました。
「それとも頭の回転になるものが」
「そのどちらもじゃな」
これが将軍様の返事でした。
「そう聞かれると」
「左様ですか、では」
「何か面白いことがあるか」
「はい、安国寺に一人面白い修行中の小坊主殿がおられまして」
「その小坊主がか」
「一休さんといいますが」
これがこの小坊主さんのお名前だというのです。
「これが中々博識でしかも頭の回転も早く」
「しかし小坊主となると」
将軍様はこのことから言うのでした。
「まだ子供じゃな」
「左様です」
「子供が相手ではのう」
将軍様はやれやれと笑って親当さんに応えました。
「余も相手がな」
「出来ないと」
「そうじゃ」
こう言うのでした。
「どうもな」
「いや、それがです」
「その知識と頭の回転がか」
「随分と素晴らしく」
「わしでもか」
「きっと楽しめまする」
「御主がそこまで言うのならな」
それならとです、将軍様も応えてでした。
そしてでした、こう親当さんに言いました。
「会おう」
「それでは」
こうしてでした、将軍様はです。
親当さんを介して安国寺の一休さんに会うことにしました、ここで将軍様は意地悪そうに笑って言うのでした。
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