パンデン
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第二章
「チベット族の人のお店みたいだな」
「チベット族ですか」
「ああ、この国にもいるんだよ」
そのチベット族の人がというのだ。
「中国だけじゃないくてな」
「へえ、そうだったんですね」
大山はチベット族というと中国のチベット自治区に生活の場所があると思っていた、だから春日の今の言葉に少し驚いて言ったのだ。
「ネパールにもいるんですか」
「そうなんだよ、ブータンにもいるからな」
この国にもというのだ。
「チベット族の人は」
「あっちのお国にもですか」
「いるんだよ」
「そうなんですね。ただ」
「今度は何だ?」
「先輩何でこのお店がチベット族の人のお店ってわかったんですか?」
怪訝な顔になってだ、大山は春日にこのことを尋ねた。
「それはどうしてですか」
「服でだよ」
「ああ、チベット族の服ですか」
「チベット族っていってもな」
それでもとだ、春日は大山に笑ってこう言った。
「僧服だけじゃないんだよ」
「ダライ=ラマが着ているみたいな」
「チベット仏教の黄色い僧服な」
「あれ確かに皆テレビで観ていますけれど」
「あの服だけじゃないんだよ」
「そうなんですね」
「あの娘の服な」
また女の子が春日の横を通った、足首までの長い黒いスカートはワンピースタイプで肩から着ている。その下に手首のところが毛で覆われている黄色い何処か着物に似ている生地の厚い上着を着ている。靴は黒く縁が赤の可愛いものだ。
帽子は裏のダークブラウンの生地を上までめくっている黄色いもので生地は毛皮だ、そして黄色や青、赤、白、緑、黄土色と様々な色が縞模様で入れられているエプロンを前に着けている。春日はそのエプロンを指差して大山に言った。
「チベット族の服なんだよ」
「あの服が」
「特にあのエプロンな」
「虹みたいに色々な色が入ってますね」
「パンデンっていってな」
そのエプロンの名前をだ、大山に話した。
「結婚した人だけが着けるものだったんだよ」
「えっ、じゃああの娘は」
大山は春日の今の言葉を聞いて驚いて言った。
「人妻さんですか」
「だったって言っただろ。今は違うさ」
「結婚していなくてもですか」
「着られるからな」
そこはそうなったというのだ。
「ちゃんとな」
「そうなんですね」
「ああ、それでな」
「チベット族の女の人はですね」
「ああした服を着てるんだよ」
パンデンだけでなくスカートや上着も見ての言葉だ。
「寒いしな」
「防寒対策もしっかりしてますね」
「あと雲より上にある国だからな」
こうも言ったのだった。
「紫外線も強くてな」
「そのガードもですね」
「してるからな」
「だから帽子も被ってて」
「服の袖も長いんだよ」
「成程、そこまでしてるんですね」
「そうだよ、それとな」
春日は飯を食べながらさらに話した、カレーを思わせるそれを。
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