ティナラクブラウス
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第五章
「ティボリ族の間では」
「売られているというか織られていて」
「皆さん着ておられるんですね」
「はい、年に一回あの島に行って祖母の故郷に里帰りしていますけれど」
「今もですか」
「着ています」
「わかりました、教えてくれて有り難うございます」
深々と頭を下げてだ、レギニータは女の人に礼を述べた。
「助かりました」
「いえ、私はお話しただけですが」
「そのお話がです」
「貴女をですか」
「助けてくれました、実は」
女の人にもだ、レギニータは事情を話した。
「こうしたことがあったので」
「だからですか」
「はい、服を探していたのですが」
「このティナラクブラウスはですね」
「まさに運命の出会いです」
そこまでのものだというのだ。
「ですから」
「この服をですね」
「お店に調達して」
そのうえでというのだ。
「売らせてもらいます」
「わかりました、では」
それならとだ、女の人は微笑んでレギニータに話した。
「ティボリ族の人と連絡を取って」
「そこからは私がさせてもらいます」
「お店の方で」
「はい、それでその服を」
「貴女のお家のお店で、ですね」
「売らせてもらいます」
「そうですね、この服はデザインもいいので」
女の人も言った。
「私から見ましても」
「売れますね」
「そうなると思います」
実際にというのだ。
「いいことです」
「それじゃあ」
レギニータは女の人にまた礼を述べた、そして女の人の分までコーヒー代を払ってそうしてからだった
家に戻ってだ、カルロに話したのだった。
レギニータのその話を聞いてだ、カルロはこう返した。
「そんなにいい服なんだな」
「ええ、何なら自分で調べてみる?」
「そうする、ティナラクブラウスだな」
「ミンダナオ島のティボリ族のな」
「そこまでわかってるなら話が早い」
調べるにしてもというのだ。
「すぐに俺もその服のこと調べるからな」
「ネットで」
「ネットならすぐだ」
調べることもというのだ、いい時代になった。
「それをやってからだ」
「決めるのね」
「そうするからな」
「それじゃあね」
「それでいい服なら仕入れて売る」
店でというのだ。
「そうするからな」
「じゃあね」
こうしてだった、カルロはすぐにその服のことを調べた。そして実際に調べた後でだ。彼はレギニータに言った。
「いい服だな」
「私の言った通りでしょ」
「涼しそうだしな」
「生地が麻の一種だからね」
夏に合う麻のだ。
「余計にいいのよ」
「よし、じゃあ後は仕入れ先調べるな」
「お店で売るのね」
「これは売れる」
そのティナラクブラウスはというのだ。
「いい服だからな」
「お父さんもそう思ったのね」
「稼ぐぞ」
カルロは店の中で娘ににやりと笑って言った。
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