ティナラクブラウス
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第三章
「売ってるのよ、お父さんもお母さんも商売で」
「あら、もうなの」
「そうした服はもう売ってるの」
「用意がいいわね、それはまた」
「というか商売上手ね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「そうした服についてはね」
「もうなのね」
「売ってるからアウト」
「そういうことね」
「アウトじゃないけれどもう売ってるから」
間に合っているというのである。
「今の時点でね」
「じゃあ他になのね」
「他のものがいいのね」
「そう、私も色々考えたけれど」
それでもというのだった。
「これといってね、いいのがなくて」
「難しいところね、どうしても」
「こうした時はどうしてもなのよね」
「見付かりにくいのよね」
「これだっていうのがないのよね」
「そうなのよね、だからね」
レギニータは口をへの字にさせて言った。
「私も困っているのよ」
「まあね、探すしかないわね」
「これだっていう服ね」
「それがあればね」
「お父さんにもお話して」
「お店で売るといいわね」
「ええ、探すわ」
とりあえずの結論をだ、レギニータは出した。
「というかそれしかないわね」
「結局のところね」
「それしかないわね」
「今のところはね」
「ないのなら探す」
「それしかないわよ」
クラスメイト達もレギニータにこう言う、そしてだった。
マニラの街を歩き店という店を巡っていい服を探した、しかし。
やはりこれといった服がない、そのまま一ヶ月程が経った。
この日も街を巡っていた、そこで。
ふとだ、レギニータは一人の妙齢の女性と擦れ違った。その人の服は。
麻の様な生地で織らえていた、生地は薄く濃い赤を主体として。
細かいクロスステッチ模様で薄い赤や白、水色で彩られている。スカートの丈はかなり長く足首の辺りまである。
上着も同じ生地で黒く赤いラインが横に何本も入っていて。白い鈴模様が幾つも入れられている。そのブラウスに巻スカートというのだ。
ベルトのところは幾つも白と赤、青、黄色の四色の紐がありそのベルト黒地で縦に赤、青、黄色、緑の模様が入っている。
頭にはビーズの髪飾りがあり色は赤と黄色、黒に緑で髪の毛を束ねると共に手前に垂らしている。その人を見てだった。
レギニータは思わず立ち止まってだ、その人に尋ねた。
「あの」
「何か」
その人も立ち止まって振り向いてレギニータに応えた。
「私に御用ですか?」
「その服何ですか?」
レギニータは服のことを尋ねた。
「一体」
「この服ですか」
「はじめて見ましたけれど」
それでもというのだ。
「凄くいいですね」
「この服ですか」
「一体何ていうんですか?」
「この服はティナラクブラウスといいます」
「ティナラクブラウスですか」
「そうです」
こうレギニータに答えた。
「この服の名前です」
「ティナラクブラウスですか」
「ミンダナオ島の服です」
フィリピン南部の島だ、列島国家であるフィリピンの中では大きな島だ。
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