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ケスケミトル

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第二章

「行って来るさ」
「そこまでね」
「ああ、シェラ=オクシデンタルにな」
 そこにというのだ。
「行って来るよ」
「そこでマンネリ打破といければいいわね」
「テキーラも同じ種類ばかりだろ飽きるな」
「だから同じ仕事ばかりしていても」
「完璧に徹するのは当然にしてもな」
「お仕事をするのね」
「そうしてくるな」
 イーコはニキータに言った、自宅のリビングで寝る前にその大好きなテキーラをナッツと共に食べながら。
 そしてだ、こう言ったのだった。今度は笑って。
「そういえばウィチョール族はな」
「あの人達に何かあったの?」
「いや、一夫多妻制らしな」
 その笑みは実に羨ましそうでだ、しかも好色そうなものだった。
「いいよな、そういうの」
「浮気したいの?」
「いや、違うさ。浮気なんかしたらな」
「切るわよ」
 ニキータはこのことは真顔で言った。
「その時は」
「おい、切るのかよ」
「そうよ、浮気した時はね」
「容赦ないな、おい」
「メキシコの女を甘く見ないの、いいわね」
「わかったよ、俺だって切られたくないしな」
 無意識に下の方を見つつだ、イーコは強張った笑みで返した。
「そんなことしないさ」
「そういうことでね」
 こうした話もしてだった、イーコは仕事のスタッフと共にそのシェラ=オクシデンタルに赴いた。その依頼者のところに行くと。
 わりかし大きな町だった、町にはインディオ以外の者の方が多かった。スタッフ達はその町の中を見回りながらイーコに言った。
「やっぱりインディオの人達の場所でも」
「インディオの人だけがいるんじゃないですね」
「私等みたいな人も多いですね」
「スペイン系とか混血とかアフリカ系とか」
「そんな人の方がずっと多いですね」
「メキシコもモザイクだからな」
 アメリカや他の中南米の国と同じく、というのだ。
「だからな」
「どうしてもですね」
「こうした色々な人がいますね」
「そういうことですね」
「この町にしても」
「まあそんなものだろうな」 
 イーコはこうスタッフ達に返した。
「それはな」
「スペインが中南米に入ってから」
「それからですね」
「混血が進んで」
「奴隷として連れて来られた人達もいて」
「それでなんだよ」
 今は、というのだ。
「こうしてな」
「混血が進んだんですね」
「それで色々な人が一緒に住んで」
「それが、ですね」
「メキシコなんですね」
「アメリカや中南米もな」
 アメリカ大陸の他の国もというのだ。
「インディオの人のいる場所でも」
「こうしてですね」
「色々な人が一緒に住んでいて」
「インディオだけの場所じゃない」
「そうなってるんですね」
「まあ元々はあの人達の場所だけれどな」
 イーコはここで少し苦笑いになった、強い日光に照らされた白い家が並ぶ町の中を進みながら。擦れ違う人達も色々だ。 
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