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戦国異伝

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第二百十八話 太宰府入りその十一

「一気に攻め落としていくぞ」
「岩屋城からですな」
「大友家を滅ぼし」
「そして龍造寺家も」
「何とか間に合う筈じゃ」
 織田家の軍勢の確かな動きはまだ四兄弟の耳にも入っていない、それで義久もこう言ったのである。
「まだな」
「ですな、ですから」
「急ぎましょう」
「ここで岩屋城を攻めて」
「そして、ですな」
「大友を滅ぼし」
「龍造寺も」
 弟達も言う、とにかくだった。
 島津家は一刻も早く岩屋城を攻め落とさんとしていた。それが為だった。
 義久は自ら立花と対し彼の動きを止めようとしていた。そしてその間に弟達が城を攻め落とすことになった。
 まさに島津家の総攻撃がはじまろうとしていた、そこに立花は突っ込み。
 高橋もだ、城の者達に言っていた。
 既に残り僅かで皆傷ついている、その彼等に言うのだ。
「よいか、道雪殿が来られようとしているが」
「まずは、ですな」
「我等が、ですな」
「戦い」
「そのうえで」
「そうじゃ、生き残るにしろ討ち死にするにしてもじゃ」
 例えだ、どうなってもというのだ。
「もむのふらしく最後の最後まで戦おうぞ」
「ですな、大友の武士の戦を見せてやりましょう」
「島津の者達にも」
「ここで死んでもよい」
 高橋はこうまで考えていた。
「少なくともじゃ」
「大友の武士の戦をですな」
「すべきですな」
「最後の時まで」
「必ず」
「そういうことじゃ、よいな」
 こう言ってだ、高橋は自ら傷だらけの身体に槍を手にしてだった。
 戦おうとしていた、大友の者達も覚悟していた。   
 そうしてだ、まさに双方決死の戦いに入ろうとしていたところで。
 不意にだ、城の北東の方からだった。
 法螺貝と歓声の声がした、その声を聞いて誰もがいぶかしんだ。
「何じゃあれは」
「歓声が起こったぞ」
「それもかなり大きいぞ」
「何じゃ、一体」
「法螺貝の声もしたが」
 こう言うのだった、すると。
 橘の軍勢の後ろにだ、突如として赤と黒の大軍が現れた。その旗はというと。
「なっ、風林火山!」
「毘沙門とな!」
 誰もが驚いて言った。
「武田家」
「それに上杉家か」
「共に今や織田家の家臣」
「当主の武田信玄、上杉謙信もまた」
「ではもうか」
「もう来たというのか」
 大友の兵達は誰もが驚いた、そして。
 それは彼等の敵である島津の者達も同じだった、彼等もまた。
 その風林火山と毘沙門天の旗、赤と黒の軍勢を見て驚きを隠せなかった。天下に知られた薩摩隼人だけに狼狽はしなかったが。
 それでもだ、その彼等を見て言った。
「何と」
「もう来たというのか」
「信じられぬ」
「恐ろしい速さじゃ」
 その進軍がというのだ。
「しかもじゃ」
「こちら来るぞ」
「我等に対して」
「休まずにそのまま」
「ここはどうされますか」
 旗本の一人が義久に問うた。 
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